第65話 『シュルツ艦』
山岸マユミの帰還とシュルツ艦の捕獲。
聞こえは良いが、泥棒。
それでも、エヴァ技術を除いた既存技術を凌駕する科学技術体系は、地球にとって大きな飛躍で
転移ミラー装置は、転移を理論的に推測させるものだった。
反重力装置の価値は、大きかった。
例え、レリアースを奪われても、レリアースは、建造できる。
しかし、シュルツ艦は、まったく新しい技術体系が得られ次元が違った。
「いやぁ〜 山岸マユミ君。お手柄だよ」
「実に素晴らしい貢献だ・・・・・etc・・・(長すぎて省略)・・・etc・・・・」
マユミの葬式を挙げ、失望していたお偉い方が、手のひらを返したように褒め称える。
一番嬉しいのは、帰還を涙ながらに喜んでくれた碇シンジだろう。
次が、養父。
そして、相田ケンスケ。
こっちは、苦手なのだが喜んでくれるのは、嬉しい。
自分の葬式弁当も、まぁ 悪くない。
しかし、葬式用の写真は、別に撮っておこうと心に誓う。
それからが大変だった。
チルドレン以来の英雄に祭り上げられてしまう。
やれやれといえるが結果から勝手に人物像が推測されていく。
新時代の幕開けをつくったらしい。虚栄、虚飾の女傑。
・・・・・・まじ??・・・・・
国益のために理想的な山岸マユミ像が政府によって作られ、
報奨金と同時に契約書へのサインを求められ、
本当は、こういう人間と、言い張る気力もなくなる。
とりあえず、見栄えの良さそうな、葬式用の写真だけは、確保。
因みに相田ケンスケ撮影だったりする。
ご因縁だろうか。
I・S・I 本社
アスカとマナが、モニターを見詰めている。
「ったくぅ〜 また、あの二人ね」
「どうする。アスカ。トリニティに追跡させる」
「たぶん、ここと、ここの分岐で、逆探されると、切られてしまうみたいね」
「あいつら、公共の通信ネットを物理的に破壊するなんて、良識を疑うわね」
「・・・そうだ。あそこのセキュリティに回線を回してみて」
アスカが、回路を指し示す。
「えぇ〜 やばくない?」
「少しは懲りれば良いのよ。あのバカども。こっちも利用させてもらおうかしら」
「相変わらず。悪巧みだけは、上手いわね」
「違うわよ。人の欲望を利用させてもらっているだけ。柔道の極意よ」
「あはは・・・・」
「そうだ。加持さんのあれは?」
「一応、あるけど」
「家庭不和を未然に救うのも、友達の義務ね」
「友達ねぇ・・・・」
アラエルNERV本部
レリアース2番艦が建造されつつあった。
山岸マユミ、朝霧ハルカ
「マユミ。2番艦が完成したら忙しくなるわ」 ハルカ
「でしょうね」
「でも、平行次元宇宙か。面白い現象ね」
「天城(赤木)博士みたいに “もっと、いっぱい、見てきたら良かったのに” なんて、言わないでね」
「・・・・・」
「あ・・・思っていたんだ」
「で、でも、我慢するわよ。リツコちゃんは、シュルツ艦のおかげで余裕ないから」
「帰ってこれないかもって、物凄く不安だったのに・・・・」 ぶすぅ〜
「お礼は、十分にするわよ」
「例え、レリアースのオリジナルを失っても、シュルツ艦と交換なら、元が取れるわ」
「2番艦は、シュルツ艦の技術も流用するの?」
「ええ、できるものはね。エヴァ技術が優勢だけど反重力装置の概念は使えるわ」
「転移装置は?」
「無理ね。本体じゃなくて、ミラー装置だけだし、概念を推測できるだけ」
「それでもシュルツ艦のコンピューター解析が進めば、何とかなるかも」
「シュルツ艦のコンピューターに勝てそう?」
「トリニティは、エヴァ技術によって構築されている」
「手足さえ、もぎ取れば、負けはしないわ」
「2番艦が建造されたら、また行くのね」
「ええ」
「オリジナルのレリアースは?」
「艦籍から外したわ。もとより、艦籍に入る前だったけど」
「例え未夜に出会っても、返却を求めなくてもいいわ」
「そう、良かった」
「まぁ 人類を滅ぼそうとした使徒だけど。気が退けるのは確かね」
「勝者の驕り?」
「命がけでも、7割程度の勝ちが自然よ。必要以上のデータは、手に入れたもの」
「もう、エヴァンゲリオンは、使わないの?」
「エヴァンゲリオンは、戦闘で使いやすいけど。汎用性は、レリアースが上になるわね」
「ほかにパイロットはいないの?」
「あなたの葬式の後、リツコちゃんが、レリエルのコアに入るところだったわ」
「でも、何とか、4人のパイロットを確保できそうね」
「知っている人?」
「元量産型のパイロットよ。見たことはあるかもね」
「そう・・・本当は、コアを背景にしたシンジ君や綾波さん、朝霧さんが強いのに・・・」
「わたしたちの事は秘密にしておいてね」
「ええ、いいわ」
「マユミは、まだ、コアからの力を引き出せないの?」
「オリジナルは、未夜の影響で無理だったのかも、でも2番艦はいけるかもしれないわね」
「そう、わたしたちは、準使徒。用心した方がいいわ」
「リリンは、信用できない?」
「リリン系人類にすれば、ロンギヌスの槍があっても、渚カヲルと戦うのは危険よ」
「でも、不確定要素は常にあるわ」
「まぁ わたしたちでも人類を全て敵に回すのは、危険だし」
「市民権を得るまで全貌を隠しておきたいわね」
「ええ、レリアースは、希望になるかもしれない」
「リリンが、敵に回ったとき?」
「ええ、でも、そうならないように誘導するつもりよ」
「逃げるとしたら、どこ?」
「魔法の世界は、悪くないわね」
「うん、わたしも、いいかなって」
「例の具現化ウィルス」
「この世界では、増殖できそうにないけど、閉鎖された特殊な環境の中では保存できそうね」
「そう、もう一度、ドラゴンを見たかったのにな・・・・」
「わたしもドラゴンを見たかったわ」
「2番艦は、もう少し大きくした方がいいかも。ダブルエントリーが可能なら、だけど」
「朝霧さんも来るの?」
「そうねぇ・・・二号機のコアとの関係もあるし、その方が、虚数空間での座標を確認できるかもしれないわね」
「やったぁ! 一人だと寂しくて」
「あら、ロボットがいたじゃない」
「んん・・・結局、トリニティだし・・・ATフィールド使えないと足手まといだし」
「アダム系とレリエル系のシンクロで時間がかかるかもしれないけどね」
高校2年の夏になると進路のことで悩んだり、情緒不安定になりやすい。
I・S・I財閥の当主、碇シンジも、漠然と悩んでいたりする。
惣流・アスカ・ラングレーの傀儡なのだから、悩むこともないのだが、
周りが悩んでいると、付き合いで悩んでみたりもする。
将来、どうしょうかと・・・・
とはいえ、アスカに 「シンジは、何も考えるな、何もするな」
と言われているので、頭の中は空回り。
結局、実務レベルでアスカに負けているため、
お任せするしかない操り人形のシンジだった。
気付くとシンジは、赤い世界に立っていた。
赤い色の海に赤い色の空。
潮風と踏み締める砂浜は、現実味のない世界をリアルに感じさせる。
山岸マユミに虚数空間の向こう側にある異世界の話しを聞いていた。
ここも、そういう世界なのだと思うと不思議に抵抗がない。
海岸線に沿って歩くと、少年と少女が砂浜に寝ている。
一人が自分自身で、もう一人は、アスカで、怪我をしている。
不思議な世界で、不思議な組み合わせ。
何があったのだろうか。
綾波は、いないのだろうか。
見渡すが、それらしい気配はなかった。
ここに自分自身が寝ていなければ、アスカだけだったら恐慌を起こしていただろう。
寝ている自分自身の姿が自分がこの世界の住人ではないと証明していた。
しばし、逡巡する。
シンジの場合、逡巡と言う言葉がぴったり。
迷って時間を空回りさせていく。
アスカであれば、同じ時間でも浪費しない。状況判断に費やすだろう。
レイであっても、いくつか本質的な事柄で模索し。
マナであれば、生き残るということに関して、有利な状況を作ろうと動くだろうか。
眠っていたシンジが目を覚ますと、見下ろしているシンジに気付く。
!?
互いに似たような反応を見せる。
天上天下唯我独尊。古今東西唯我独尊。
世界には似た人間が三人いても、同じ人間はいない。
とはいえこっちのシンジの方が少し背が低く、線が細いように見えた。
「君は・・・・」
沈黙に耐えかね。
くだらないことを聞くのもこの世界のシンジだったりする。
「・・・碇シンジ」
「碇シンジは、僕だ」
「そう・・・何が起こったんだ。この世界?」
「わ、わからないよ。気付いたら、こうなっていたんだ」
「ふ〜ん」
天城(赤木)博士に聞いたことがある。
ゼーレのサードインパクトが成功した後の世界。
12個のコアが沈められているプールと同じ色の海。
数万年後には、LCLに溶けた人類の心身が再構築を繰り返しながら整理され。
地球全体をATフィールドで守った一つの群集意識体にしていく。
「綾波は?」
「し、知るもんか!」
この世界では、シンジとレイの間で恋愛感情が育っていなかったらしい。
違和感。
そして、セントラルドグマで綾波が告白したように存在しなくなったのだろうか。
喪失感。
シンジは、寝ているアスカに近付く。
ATフィールドは、心の障壁。自分と他者を分ける。
しかし、侵食も可能だった。
山岸マユミのおかげで、ATフィールドの運用も幅が広がっている。
自分のいた世界では、パターン青を出されるため。大規模に使えず、いつも絞り込んで使う。
おかげで、効率良く使え、こういった微妙な、ことにも応用が利く。
自分のいた世界のアスカより少し幼い、
それでも、親しい気持ちがわいてくる。
アスカの頭をやさしく撫でながら、ATフィールドでアスカの傷ついた体と気持ちを補完していく。
第15使徒、第16使徒のやった方法を足して、二で割って、逆の事をするだけ。
慣れていないせいか、荒削りで、応急処置としては、まずまずだろうか。
そして・・・・・
「・・・あんた誰よ」
思った通りの反応。
「ふ;つ 碇シンジ」
「なんで、碇シンジが、二人いるわけ」
なんとなく、おかしい。
そして、むかしのアスカの言い回しと似ていて、なんと、かわいい。
「・・・あ、あんた。バカシンジの癖に。なに、加持さんの真似しているのよ」
「くすっ」
「・・・・・・・・」 憮然
「・・・二人にこの世界のことを教えてあげるよ」
「「!?」」
「この世界は、ゼーレの仕組んだ人類補完計画が成功した世界なんだ」
「成功? こんな世界が?」
「本当に完成するまで、数万年必要だよ」
「人類全ての心身が溶けた人間社会全般に存在する葛藤と苦しみのない世界」
「ぼ、僕たちは?」
「君たちは、この世界を作るために拠り代として、一時的に利用されたんだ」
「何ですって!」
「どうして?」
「君たちは、この世界のアダムとイブというところかな」
「君たちは、生み増えながら、この紅い海へ新しい命を継ぎ足していく」
「冗談じゃないわよ。だれが、こんなヤツ!!」
「・・・ぅぅ・・」
なんとなく自分のいた世界の自分自身とアスカの関係とあまり変わっていない気がする。
「・・・二人とも、なかよく・・・・・」
ふいに襲ってくる喪失感、自分自身が、この世界から消えていく。
目を覚ますと、自分の部屋のベット。
不思議な夢。
そして、夏休みに入っていることを思い出す。
今日の予定は、なんだろうか。
バカ殿シンジに自分の予定を組む権限はなかった。
リビングに下りていくとレイが朝食の準備を終えている。
夢で見た赤い世界にレイは存在しなかった。
レイのありがたみと、愛おしさが込み上げてくる。
食事を終える。
「・・・・碇君。行きましょう」
不意にレイが腕を組んでくる。
「えっ!」
「今日は、盆祭りと言う、イベントがあるらしいの」
「・・・・・・」 苦笑いのシンジ
無論、盆祭りは、知っている。
「・・・ねぇ 綾波」
「なに?」
「僕の将来とかさ、何ができるかな?」
「・・・私の夫」
「そ、そうだけど・・・ほかにも、何か・・・こう・・・」
「健康であればいいわ。あとは、私たちで、全部やってしまうから」
「あ・・・・そう・・・」
自分ができることで、彼女たちにできないことは、一つもないといえる。
「・・・碇君。何かしたいことがあったら言って、こっちでやるから」
「う、うん」
こういうのをなんというのだろうか。植民地だろうか。
独立しようにも、圧倒的な力で押さえ込まれているような気もする。
碇シンジのスキルが不足しているわけではない。
むしろ、高校生のレベルでは高い。
I・S・I財閥の神輿という進路が決まっていなければ、将来性も有望だろう。
そして、レイ、アスカ、マナが組んだ時に発揮されるレベルは、高く、
口出しも、手出しも必要なし。
下手をすると足手まとい。
あの赤い世界のシンジと、この世界のシンジは、どっちが幸せなのだろうと。思ったりもする。
碇シンジの悩みは、普通の高校二年の悩みと、少しばかり違う。
レリアース1番艦
未夜、千歳ミズキ
「ようやく、自分の体を取り戻した」
「・・でも、未夜様。トリニティがユニットごと逃亡では、使いにくいですね」
「なくても、なんとかなる。元々、ATフィールドが最大最強の武器なのだから」
「リリンのナノ加工技術など小賢しい」
レリアース系光質が急速にアダム系光質をレリアース系の光質へと変えて厚くなっていく。
そして、山岸マユミの数倍のエネルギーで反陽子砲を放つと虚数空間の彼方に光線が吸い込まれていく。
「・・・今後は、どうされますか?」
「既にリリスはなく。インパクトも起こせない」
「それなら、渚カヲルと同じように生きて行くしかなかろう」
「では、地球へ戻ると」
「・・・しばらく、平行次元宇宙を旅行しよう。君とだけでも共鳴できて良かったよ。ミズキ」
「わたしも、未夜様と共鳴できて良かったです」
ボーレス財閥
I・S・I財閥の後を追い掛けて急成長の企業。
それなりに悪徳だったりする。
少年が二人がボロキレの様に転がされている。
一人は、吾妻ケイタ。
一人は、ムサシ・リー・ストラスバーグ。
有能な二人だが、たった二人で、大企業に挑むのは、無謀。
盗もうとしたのは、エヴァ技術を利用した新型モジュール。
しかも、殺人可能なプログラムが組み込まれている。
コンピュータのブラックボックス。
核になる部分は、I・S・I財閥の独占だった、にボーレス財閥が食い込もうとした。
当然、殺人可能プログラムなど、違法も、違法。
「・・・このガキどもを処分してしまえ」
そういって、ボーレス会長が去ろうとすると暗闇から人影が現れる。
「・・・会長さん」
「・・・き、貴様!」
加持は、銃をボーレス会長に向けている。
ボレースの部下たちも侵入者にマシンガンを向けたが既に遅し。
雇い主が確実に殺される状況では、手が出せない。
「どうです。会長さん、既に証拠は上がっていることだし。手打ちにしては?」
「て、手打ちだと・・・・」
「自重していただきたいですな」
「わたしが、ここにいる。ということは、誰の依頼なのか、分かっても良さそうなものですが・・・・」
「・・・・・・・」
加持がマイクロチップをポケットから出す。
「この、殺人可能プログラム。廃棄して頂きたいですな」
「部門は、I・S・I財閥で、吸収できますので、ご安心を・・・・」
「・・・・っつ・・・」
「のちほど・・・弁護士を送るそうですので惣流社長が、よろしく。とのことです。ボーレス会長」
「・・・・・・・・・・」
うな垂れるボーレス会長。後ろから秘書らしき男が駆け寄ってくる。
「会長。ビルの周りにパトカーが・・・」
「洗いざらいやられるか。部門ごと引き渡すか・・・」
「・・・・・」
「今後は、まっとうな商売を期待しますよ」
「・・・好きにしろ!」
ボーレス会長は、引き揚げていくと、
武装していた者たちは、銃を降ろし、自分の部署に戻っていく。
「アスカ・・取捨選択で、また、恨みを買うかな・・・」
意識を失っている少年二人は、残される。
I・S・I財閥 技術系社長。
伊吹マヤと技術者
「悪くないわね。少し、むかしめいているけど・・・」
「ええ、問題は、シュルツ艦の影響が、どの程度反映されるかですね」
「反重力装置は、こいつの売上に影響を与えるかもしれません」
「すぐには、無理ね」
「光質で代用が利くものもあるけど、シュルツ艦は、未知の物質も多いし、すぐには、でないと思うわ」
「それに性能は、悪くない。少なくとも、大気圏内では、割が良さそうね」
「プロペラ飛行機の復活というのは、面白いですがね」
「ヘリウム3を利用した核融合燃料電池」
「そして、プロペラ片面抵抗は、20分の1」
「これなら、ジェットエンジンとたいして変わらない」
「さすが光質ですか?」
「燃料も耐久年数分は、あるから、好きなだけ、乗っていられるわね」
「法整備も青写真ができていますし」
「少なくとも、この製品が行き渡るまでは、ボーナスの心配は要りませんね」
「惣流社長は、何か言ってきた?」
「はぁ 贅沢は敵だ。ボーナスをもっと減らした方がいいと」
「くすっ 趣味で宝飾業をやっているとは思えない発言ね。適当に合わせていいわ」
「贅沢慣れを敵視。総論では、分かりますがね。各論になると、なかなか・・・」
「それに嗜好品の利潤も良いですし。この新製品も、嗜好品のようなもですし」
「自動車兼飛行機は、人類の夢でもあるから、需要はある」
「それに・・・わかって言っているのよ。どちらにせよ。上が見本を見せないとね・・・・」
「利益追求を決め込む企業は、人間をクビにして、トリニティとロボット1000体で利潤を上げようと考えますから」
「新興企業は、しがらみがなくて良いわ」
「自分の望む形で会社を作れる。わたしも、そうだった」
「NERV在籍は、伸びそうですか?」
「そうね。シュルツ艦の情報は得ておきたいし、NERVを辞めるのは、もう少し先になりそうね」
「シュルツ艦。碇会長と会談した方が良いのでは?」
「どうかしら、自分が会長になっていることすら、知らないかもね」
「こう言っては、なんですが、無責任では?」
「それで、上手く行っているのだから、世の中面白いわね」
「本当に、会長は、こういったことに興味がないので?」
「国防省の退職金すら、まともに使いきれてないから、アスカより見本になりそうね」
「それは、言えるかもしれませんね」
「レイが代理で把握しているから、それで、十分よ」
「トップに野心がないほうが上手く収まってしまう場合もある」
「ボーレス財閥のモジュール部門。どうします?」
「惣流社長の査定で人事していいわ。この手のことは、アスカ、レイ、マナが得意だし」
「戦友同士の信頼関係ですか?」
「そうね。信頼できる間は、信頼する方が楽ね」
「時間も、労力も、資本も無駄にしなくて済むもの」
「なるほど」
海岸近くの大豪邸。
スイカ畑。
惣流アスカ 霧島マナ 加持リュウジは、スイカを頬張る。
「あの二人は?」 加持
「結果的に、囮に使ったんだし。今回は、見逃すことにするわ」
「アスカも、やさしいなぁ」
「一応、先生と生徒だし。学年も同じだし」
「いくらボーレス財閥の警備システムを見せてやったからって、無謀なやつらね」
「わたしに牙を向けてくる人間は、あまりいないから刺激があっていいわ」
「でも、あのモジュールじゃ 本体側のセキュリティーレベルを上げると接続できなくなると思うけどな」
「それじゃ 弱みを握れないでしょう」
「ボーレス財閥の、あの部門は、目障りだったから丁度良かったわよ」
アスカが数枚の写真を加持に渡す。
「・・・やれやれ、俺もヤキが回ったものだ。アスカに利用されるとはね」
「加持さんも、内定していたんでしょ」
「国の自由にできるはずだったんだがな・・・こういう結果になるとは思わなかったよ・・・」
雑誌を見ると、I・S・I財閥とボーレス財閥のナノモジュール部門が統合されるという見出しと、
調印が終わって、アスカとボーレス会長が親しく握手している写真。
ボーレス会長の表情が泣き笑いに見えるのは、事情を知っている者たちだけ。
くさいものに蓋をして、なあなあで、済ませてしまったのは、日本式といえる。
病院
吾妻ケイタとムサシ・リー・ストラスバーグは、ボーレス財閥の提示した念書にサインする。
互いに後ろめたい間柄、どちらも自殺的な行動を取れば、残りの人生は暗く。
互いに秘密を守れば、補填できないこともない。
吾妻ケイタとムサシ・リー・ストラスバーグは、ボーレス財閥施設内での事故に巻き込まれたことになり。
医療費と賠償金を貰って、済まされることになる。
叩きつけられる雑誌。
「くそぉ 惣流のやろう。はめやがったな」
「だけど、ケイタ。俺たちがボーレス財閥から、モジュールを盗み出すなんて、どうして分かる?」
「誰でも! I・S・I財閥のメインコンピュータに侵入する連中には、ああいう餌をばら撒いておくのさ」
「つまり、I・S・I財閥のライバル企業の機密や弱点を置いて」
「自分の手を汚さないで、第三者にライバル企業を蹴落とさせているんだ」
「つまり、俺たちは、I・S・I財閥のためにタダ働きさせられたわけだ」
「くっそぉ〜 あの女狐が!!!!」
海辺
レイは、イルカと戯れながら泳ぐ。
『イルカ・・・碇君が仲が良いのなら、名前を付けたら、と言った・・・・』
『名前・・・群れの中で、個体を識別してしまう・・・・』
「イルカ・・・名前が欲しいの?」
キキキュキュキュ
「そう・・・名前が欲しいのね・・・」
キュキキュキュキュ
「・・・・・・・・・・」
キュキキュキュキュ
「・・・・・・・・・・」
キュキキュキュキュ
「・・・・・・・・・・」
キュキキュキュキュ
「・・・・・・・・・・・」
綾波レイ。生まれて初めてかと思うほど、最大級に悩む。
キュキキュキュキュ
「・・・・・・・・・・・」
キュキキュキュキュ
「・・・・・・・・・・・」
キュキキュキュキュ
アラエルNERV基地
ゼーレの元量産型エヴァのパイロットであり。
その後、実験体としてレリエル系種子の薬剤を打たれた者たち。
そして、サードインパクト・バウンドインパクトによる再構成で、ATフィールドが使えるようになった者たち。
これまで、山岸マユミだけが確認されていた。
しかし、レリアース艦の喪失によって、日本とNERVは、レリエル系で大幅に後退。
関係諸国と大幅に妥協を強いられて、新たにレリエル系パイロットの4人が招集されていた。
レリアース2番艦 ハーモニックステスト。
レリアース2番艦 | ハーモニックス率 | シンクロ率 | ||
山岸マユミ | 32 | 50 | ||
エリオ・ホーネット少佐 | 24 | 46 | ||
アーク・ヴィクトリア少佐 | 18 | 37 | ||
ニール・ジョンズ・レキシントン | 20 | 44 | ||
加賀ワカツキ | 21 | 40 | ||
発令所
「・・・天城(赤木)博士。やはり、エヴァ系とは、少しばかり、感覚が違いますね」
「インターフェース抜きでシンクロというのは」
「探査用で、戦闘用じゃないもの」
「ハーモニックス率とシンクロ率も、変動が小さいようです」
「肉親が、コアに入っていないもの。変わりにレリエル種子を投与されて、バウンドインパクトで再構築」
「それで、ようやく、ハーモニックス率とシンクロ率を引き出せるの」
「間接的な方法ではない。自分自身そのものがレリエルの分身でもある」
「少し怖いですね」
「生身でATフィールドが使えるものね」
「でも、非人類と言うわけでもない」
「レリエルの種子を持ったリリン系人類と言うところね」
「シュルツ艦といい。仕事が増えましたね」
「本当・・・刺激があるわね」
肉親を介在させず。直接シンクロだった。
改造された種子をさらに調整したため、シンクロ率は、それほど高くない。
そのため、未夜の影響を受けなかったともいえる。
国に囲われていた者もいれば、隠れていた者もいる。
他にも隠れている人間がいてもおかしくないのだが、
エヴァ抜きで微弱でもATフィールドが使え。
レリアース艦とシンクロできるのであれば、用は足りる。
パイロットは、虚数空間航行に必要なパーツ。
レリアース艦の主役は、トリニティであるとも囁かれている。
東京は、戦後再建で、むかしの勢いを取り戻しつつあった。
シュルツ艦が東京湾に浮かぶ
冬月副司令、青木シゲルは、落胆している。
「冬月副司令。どうやら、コンピュータの解析は、駄目のようです」
「艦そのものの自爆を防いでもコンピューターは、自己判断で完全消去。優秀なコンピュータだな」
「モノは、残っていますが残念です。トリニティに近い性能のようですが、これでは・・・・」
「トリニティ並みか・・・・」
「宇宙の情報も、ですからね」
「エヴァ技術に裏打ちされた技術の方が上らしいが、蓄積されていた情報がご破算」
「しかし、この宇宙戦艦は、エヴァ技術に頼らずに恒星間宇宙航行能力を持っている」
「空間転移航法は、結局判明できずです」
「推論の域を出ませんが。反重力装置は、何とかなりそうです」
「地球圏に存在しない材質があるようだが」
「エヴァ技術を流用すれば、7G級戦艦を建造できるらしい」
「つまり、4G級シュルツ艦より、強力な戦艦を建造できるということだな」
「ですが、エヴァを技術を活用できる者は、限られています」
「シンクロできない人間が搭乗しても、4G級です」
「それでも、太陽系内での宇宙航行は、より安全になりそうだ」
「ガミラスは、なぜリリス系の技術を流用しなかったのでしょうか」
「南極の開発ができないわけではないのに・・・」
「他恒星のリリスだからね。地球のリリスと違う価値観かもしれないな」
「艦内で1G。艦外で1G。推進で2G。推進ロケットと合わせて、加速、機動とも数段向上します」
「遠心力を利用した人工重力から解放されるわけだな」
「地球の外周にも、同様にガミラスの転移衛星が存在するのでしょうか?」
「可能性はなくもないだろう」
「しかし、山岸マユミの報告にあったラミエル、ハイエルと地球は、天体の座標軸も含め微妙な違いがある」
「リリスだけの違いだけもないようだ」
「ですが、最悪の場合も考慮すべきかと・・・」
「・・・予算次第だな」
HONなびランキング に参加しています。よろしくです。
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月夜裏 野々香です。
この物語は、山岸マユミ物語(中編)の後です。
少しばかり、時間的な矛盾があるような気もしますが、気にしないでください (笑)
名探偵コ○ンでも、やっていることですし・・・
この手の世界では、良くあるということで・・・・
しかし、何とか、合流できて、メデタシメデタシ。
某アニメの宇宙戦艦に似ているので、シュルツ艦のままです。
アスカは、やり手のようです。
“富める者は、ますます富み。貧しき者は、ますます貧しくなる”
イルカの鳴き声は、かなり怪しいです。脳内で修正してください。
平行次元世界に存在したガミラス。
この世界にも存在しているかどうか・・・・・・・・・
第64話 『虚空潜航艦レリアース』 |
山岸マユミ物語 第12話 『帰 還』 |
第65話 『シュルツ艦』 |
第66話 『望んだ夢』 |
登場人物 | |||