月夜裏 野々香 小説の部屋

  

仮想戦記 『日清不戦』

 

   

   

第06話 1898年 『造らなくちゃ』

 国家予算280,317,000。軍事費30,536,000。10.8パーセント

 八幡製鉄所完成。

 呉海軍工廠、横須賀海軍工廠、長崎海軍工廠が建設され、

 日本でも大型艦船の建造が可能になっていた。

 日本鉄道は、高低差の勾配とカーブを減らし、

 さらなる高速化を目指したため、トンネル建設が増えていた。

 

 

 ドイツ帝国は、1871年に統一したばかり、

 海運と海外進出で後れていた。

 それでも日本が羨望するほどの植民地を支配していた。

  1884年 ドイツ領南西アフリカ、カメルーン、トーゴ(トーゴラント)

  1885年 ドイツ領東アフリカ、

   ドイツ領カイザー・ヴィルヘルムスラント

     (パプアニューギニア北部地域、ビスマルク諸島、ソロモン諸島北部)

   ミクロネシア、マーシャル諸島、パラオ、マリアナ諸島、ナウル。

  1898年 膠州湾

  1899年 サモア

 ドイツ帝国は、日本が近代化し強国になれば、他の列強が相対的に弱体化すると考え、

 先行する欧米列強を牽制するため日本に協力していた。

 

 02/15

 ハバナ湾

 アメリカ海軍の戦艦メイン (ACR-1)が爆発し沈没(米西戦争の一因)

 

 03/06

 独清条約調印(ドイツ帝国が膠州湾を清より租借)

 ドイツ帝国はドイツ人宣教師二人が殺されたことで青島に足場を作り。

 欧米列強も、次々と圧力をかけていく。

 

 03/27 ロシア帝国が関東州を清から租借

 

 04/25 アメリカ・スペイン戦争

 

 05/01 アメリカ艦隊がマニラ湾でスペイン艦隊を撃滅。

 

 06/09 イギリスが九竜租借条約で99年間の租借権を得る。

 

 06/20 アメリカ軍がグアム島を占領。

 

 05/27 フランス共和国が広州湾を清より租借

 

 06/30 大隈重信を首班とする日本初の政党内閣が誕生。

 

 07/01 イギリスが威海衛を租借。

 

 09/19 ナイル河畔ファショダ村でイギリス軍とフランス軍が接触。

 

 12/01 淀橋浄水場

 関係者たち

 「ようやく出来たか」

 「まだ不足気味だな。もっと浄水施設を作らないと」

 「ほら言わんこっちゃない」

 「鉄道や軍艦なんぞ作っていたら、伝染病で日本人は病気になるぞ」

 「郊外に線路を広げろよ。東京の水質を保てる」

 「客足が減る」

 「言ってる場合か」

 「しかし、今年は忙しかったな」

 「ドイツ、イギリス、フランスが日本に発注してきた」

 「例のドイツ人が殺された事件が切っ掛けだろう」

 「租借地の足場作りで日本にいろんなモノを発注してくる」

 「日本はアジアの裏切り者か」

 「列強の宣教師を殺してはいけないということだ」

 

 

 12/10

  パリでアメリカ・スペイン講和条約調印。

  第2次キューバ独立戦争終結。キューバ独立。

  アメリカにフィリピン、プエルト・リコ、グアム島が割譲される。

 

 12/21

  アメリカ大統領マッキンレーは、フィリピン全土で軍政、友愛的同化を宣言。

  

 12/26

  ピエール・キュリー、マリー・キュリー夫妻がラジウムの発見を発表

 

 

 欧米列強のアジア諸国への圧力は、日ごと強まっていた。

 赤レンガの住人たち

 高級官僚になると、いろいろ、うまみがあるのか、

 ご贈答品があったりする。

 机の上に名産品が並べられ、包みが開けられていた。

 「ようやく、軍艦建造か・・・」

 「本当に建造できるのか?」

 「時化で沈んだら、いい笑いものだぞ」

 「ははは・・・俺らの進退にも繋がりそうだな」

 「笑い事か!」

 「鉄で作っているんだからな」

 「沈んだら進退どころか、腹切りモノだぞ」

 「まったくだ」

 「日本官僚は、賞罰の罰が大きく。賞が少ない」

 「民間と違って、うまみがないな」

 「そうそう、何もしないで無難で事なかれで生きたくなる」

 「そうもいかないだろう」

 「いまは、余裕のない時代だ」

 「ニッケル鋼からクルップ鋼に装甲を切り替えて建造するそうだ」

 「設計図は、イギリスとドイツから入手したものを改良して、新しく作り直した」

 「製造中の装甲板が割れているそうじゃないか」

 「本当に大丈夫なのか?」

 「今は、安定しているそうだ。粘度は、あるらしい」

 「動かせるだろうな」

 「というより、浮くだろうな」

 「「「・・・・」」」

 「八幡製鉄所が完成したからって、すぐに軍艦が造れるとは限らないだろう」

 「商船で何度か建造したし、既存の艦の改装は成功してるよ」

 「松島、厳島、橋立の改装は怪しかった」

 「もう、誤魔化せんだろう。錆だらけですぐ沈むぞ」

 「それでも、ないよりましだ」

 「32cm砲を40口径15cm砲8門装備に換装」

 「吉野と松島、厳島、橋立の4隻で戦隊を組ませているよ」

 「・・・だがな〜」

 「商船は立派に動いているだろう」

 「もう20隻は建造している。覚悟を決めろや」

 「砲弾を受ける前なら何とでもいえるさ」

 「商船と違って浮力で余裕がないんだからな」

 「もっと鉄材があれば、失敗を恐れず建造できるのにな」

 「発電所、製鉄所、海軍工廠を建設しても石炭と鉄鉱石を輸入に頼らないと駄目というのが辛い」

 「それと、装甲に稀少金属を混ぜながら新型装甲を開発するそうだ」

 「当然、日本に希少金属はない」

 「だけど、ドイツとの取引は助かるね」

 「ドイツは、日本が強いと列強に対し相対的に優位になるのだろう」

 「しかし、稀少金属もないのに個艦優劣を願ってか」

 「材料は買うしかないね」

 「取り敢えず、4000トン級巡洋艦、10000トン級装甲巡洋艦を建造する」

 「そして、本命の15000トン級戦艦」

 「一気に海軍国か、財界と鉄道省と陸軍局は抑えられたのか」

 「ああ、なんとか、15000トン級戦艦6隻、10000トン級装甲巡洋艦6隻」

 「4000トン級巡洋艦10隻、駆逐艦40隻を整備できそうだ」

 「・・・野麦峠の悲哀が聞こえてくるね」

 「笹薮(ささやぶ)に捨てられた赤子の鳴き声も」

 「ふっ イギリスの産業革命も似たようなものだろう」

 「この際、人権は後回しだよ」

 「貧富の格差を広げて、女工を踏み躙って成り立つ近代化か」

 「弱い者を踏み躙りながら近代化して、何が得られるかな」

 「資本だよ。それと国の誉れ、何事も人身御供と生贄は必要だよ」

 「邪馬台国の時代からそうだった」

 「最近は人権を叫ぶ輩が煩くてな」

 「奇麗事か」

 「東北と北海道の予算が増えて、労働力を吸収しているから良くなっている方だ」

 「それで、軍の予算が減らされてたら面白くないよ」

 「ロシア、アメリカ、イギリスの支配が日本に近付いているのが怖いな」

 「狙いは中国だと思うが日本も射程に入っている」

 「アメリカで南北戦争がなかったら日本はやられていたな」

 「まったくだ」

  

  

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第05話 1897年 『神も仏も助けてくれない』

第06話 1898年 『造らなくちゃ』

第07話 1899年 『一度傾いた振り子は、簡単にもどらんぎゃ』

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