月夜裏 野々香 小説の部屋

  

仮想戦記 『日清不戦』

 

   

第11話 1903年 『何が民需主導じゃ』

 国家予算500,317,000。

 軍事費150,536,000。30.0パーセント

 旅順艦隊 「ツェザレウィッチ」

 排水量13000トン、(全長119m×幅23m)、

 出力16500馬力、速力18.5ノット、(航続距離10ノット×5500浬)。

 主砲305mm連装砲塔2基、副砲152mm連装砲塔6基、

 他75mm単装砲20基、47mm単装砲20基。

 381mm水雷水上発射管2門・同水中発射管2門、

 装甲喫水線部分254mm、上甲板63mm、下甲板38mm、

 砲塔254mm、指令塔254mm。

 

 清国海軍が13000トン級戦艦2隻(北遠、東遠)を購入

  

 日本は、装甲巡洋艦(春日、日進)2隻を建造

 排水量(常)10000トン ベルビール罐・石炭焚ボイラー×12基 石炭2000t

 (全長130m×全幅21m×吃水7.3m)。クリッパー型艦首

 主機:直立型往復動蒸気機関(4気筒3段膨張式)×2基、2軸推進

 出力:14500hp  武装45口径203mm連装砲2基、40口径152mm単装砲16基、

 最大速力20.75ノット、(航続距離10ノット×10000浬)

 乗員定数:600名

  

 日本は、戦艦(富士、八島、敷島、初瀬、朝日、三笠)6隻を建造。

 排水量(常)15200トン。(全長134m×全幅23m×吃水8.31m)

 最大速力18ノット (航続距離10ノット×7000浬)

 ボイラー×ベルビール罐・石炭焚×25基

 燃料搭載量 石炭 1725t  

 主機 直立型往復動蒸気機関(3気筒3段膨張式)×2基、

 15000hp、2軸推進

 40口径305mm連装砲2基、40口径152mm単装砲20基、

  乗員定数860名

  

 日本は、鉱山開発、炭鉱開発。

 鉄道建設、製鉄所、発電所、

 港湾設備、造船所、工場を建設していた。

 土木建設機械、農業機械、

 工作機械を輸入または生産した結果、

 国内産業は大きく伸びていく。

 国家予算は、1893年度で8千458万1000円。

 10年後、1903年、5億0031万7000円に達していた。

 10年間の平均成長率は、16.9パーセントで国家予算が5.91倍となり。

 世界的にも日本の急成長は、驚異的だった。

 

 日本は、わずか数年で大型戦艦を並べて建造できる軍需工場群を整備。

 というより、並べて建造した方が効率よく、割安で建造できた。

 購入すれば戦艦1隻880万円を国産700万円で建造。

 民間需要で養われたコストダウン意識と管理が効果を発揮する。

 それでも、日本は、列強から後進国と思われがちであり。

 列強と同等の戦艦を日本が建造できると信じられず。

 日本戦艦、戦力二分の一理論がまかり通る。

 それは、ある側面で事実であり。ある側面で事実といえない。

 日本製のクルップ鋼の強度は、ドイツ、イギリス、アメリカより脆弱だった。

 日本の110mm装甲が、イギリス・ヴィーカース社の100mm装甲と同程度。

 単純に同トン数で、1対1だと、日本が負け。

 しかし、2対1なら日本が勝てる公算だった。

 不利でも、深刻といえない。

 日本は、戦艦6隻、装甲巡洋艦8隻を国産で6・8艦隊を就役させる。

 アジア極東情勢は中露海軍から日中露の三つ巴に移っていく。

 しかし、極東の3大海軍国の国情は、それぞれ違う。

 ロシア帝国にとって極東は、海軍力を分散しなければならない僻地であり。

 清国は人口、資源、国土で有利にもかかわらず、

 産業を育てられず、戦艦を高額で購入しなければならず。

 日本は、人口、資源、国土で不利にもかかわらず、産業を育て上げてしまう。

 そして、国産で戦艦を建造した日本にキャスティングボートが移っていく。

 清国は日本に対し予防戦争ができなかった。

 これは、尊大な中華思想のおかげであり、

 北狄(ほくてき)のロシア太平洋艦隊の増強にあった。

 この時期を極東三竦みとか、極東三国時代と呼ばれる。

 もっとも、日清露海軍の実力と実体は問題ありで、

 ローカルパワーとみられていた。

 これは大航海時代から世代を経て蓄積された技能と、

 航海技術で劣っていたからであり、

 帆船時代からの海戦史に名前が出てこなかったことで明らかと言える。

 そして、シベリア鉄道の完成で、

 極東三国時代、日清露三竦み状態は、終わろうとしていた。

  

  

 某大臣宅

 「・・・・ロシアがシベリア鉄道を建設するぞ」

 「日本も、それに合わせて戦艦を建造したんだ」

 「多少、遅れ気味だったがな」

 「訓練に必要な時間が足りんぞ。装甲も弱い」

 「予想より鉄道族が粘ったせいだ」

 「すぐ戦争には、ならんよ」

 「戦艦だけなら、日本が6隻、中国が6隻、ロシアが7隻だ」

 「3勢力は拮抗しているといって良い」

 「拮抗なんかしとらんわい!」

 「・・・・・・」

 「中国は資源があっても国産する技術がなか」

 「日本は技術があっても建造するだけの資源がなか」

 「ロシアは資源もあれば技術もある。そういうことやろう」

 「まあ、そうだがね」

 「しかも、日本の工作機械は全部、外国製だ」

 「鉄道省は、沈んでしまう軍艦に国防を任せられんというとる」

 「陸軍も鉄道と要塞に予算を注ぎ込みたいと騒いでいる」

 「まさか賛成したんじゃないやろうな」

 「海軍は、産業として独立して拡大傾向にあるし」

 「現状の員数分で増強する分なら確実に認めさせる」

 「戦艦6隻、装甲巡洋艦8隻、その他60隻分の員数は、とりあえずだ」

 「あとは、軍事費の余剰分。どっちに予算折衝を振り分けるかになる」

 「陸軍とか」

 「ああ」

 「陸軍は鉄道省とつるんどる。いやな連中だ」

 「世俗化した軍人ばかりだな」

 「国防をないがしろにしやがって、後で高くつくぞ」

 「そうだろうが」

 「植民地にされた後で、泣いても知らんぞ」

 「しばらく、忍従するしかなかろう」

 「・・・・・」

  

  

 12/31 ロシアが日本に対し、露清交戦の場合、好意的中立を要請

 

 赤レンガの住人たち

 「ロシアは、本気で清国と事を構えるつもりか」

 「わからんな。そう思わせて、という事もある」

 「清国にも同じ事を言っているだろう」

 「日本の鉄道網は知られている」

 「日本本土を占領できないと諦めたのではないか」

 「わかるものか、日本海軍を全滅させればロシアの勝ちだ」

 「鉄道省は、そんな簡単なこともわからないのだ」

 「目先の利権に目が眩んで日本が海運によって支えられていることも忘れてしまう」

 「利権構造が一度つくられると良識なんか、どうでも良くなってくる」

 「例え、間違っていても自分で自分を納得させて滅びの美学でまっしぐらだ」

 「一部の利権者に日本が滅ぼされるのは、困るな」

 「拝金主義者の国賊どもが」

  

  

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 月夜裏 野々香です

 この年、ライト兄弟の飛んだ年です。

 以前は気球を使っていたのですが、いよいよ。

 時代は、動きつつある。

 と、いうところです。

ザフライヤー

スプリングフィールド M1903

 

 

誤字脱字・感想があれば掲示板へ 

第10話 1902年 『戦艦を建造したいんだよ。戦艦を』

第11話 1903年 『何が民需主導じゃ』

第12話 1904年 『清露戦争だぎゃ』

海軍力

 

 各国軍艦状況