月夜裏 野々香 小説の部屋

  

仮想戦記 『日清不戦』

 

   

第12話 1904年 『清露(露清)戦争だぎゃ』

 02/24 アメリカ合衆国がパナマ運河を起工(1914年完成)

 04/08 英仏協商が成立

  (イギリスのエジプト、フランスのモロッコの相互権益を承認)

 

 極東では、日本、ロシア、清国の海軍バランスが拮抗。

 この状況において得策なのは・・・

 ロシアは、清国と日本を戦争させることであり。

 清国は、ロシアと日本を戦争させることであり。

 当然、日本も、清国とロシアを戦争させて、清国とロシアの戦力を相殺。

 弱体化させることだった。

 次点は、二カ国で組み一カ国を攻撃すればよく。

 魏呉蜀三国時代の駆け引きになっていく。

 日清露3ヵ国の執権者も、その手に乗らない程度の知能があった。

 しかし、極東3国時代と言われる拮抗状態は長く続かない。

 ロシア帝国はシベリア鉄道を完成させ、

 義和団に殺されたロシア人高官を口実にし、

 清国に対し圧力をかけ始める。

 鉄道路線をチタから清国北東部の満州のチチハル、ハルピンを横断させ、

 最短距離でウラジオストックまで結ぶ。

 同時に清国北東部を支配下に組み込むと、

 帝国主義的な発想だった。

 

 もちろん、清国は、ロシアの提案を撥ね付ける。

 清国海軍は

 戦艦15000トン級4隻、

 12000トン級戦艦2隻、

 7000トン級戦艦2隻を有し、

 ロシアの圧力に屈することを拒ませた。

 そして、ロシア軍は、陸軍の優位性を認識しており、

 直ちに行動を起こした。

 口実は、義和団に殺されたロシア政府高官の不処分。

 中国東北部でのロシア正教宣教師の殺害。

 この時代、国際間で事実確認できれば、事の是非は、重要でない。

 ともかく、戦争は起きた。

 中国東北部に侵攻したロシア軍は、各地で旧式装備の清国軍を撃ち破っていく。

 そして、釜山沖

 玄界灘で砲声が轟いていた。

 ロシア戦艦部隊は、慌てて出撃する清国海軍に突進する。

 清国海軍艦隊は、分断され、統制がとれず、

 バラバラにされ、圧倒され、孤立していく。

 ロシア艦隊は、砲撃を続け、逃げ回る清国艦隊を追い掛け回し、

 各個に撃沈していく。

 結局、ロシア艦隊が撃沈したのは旧式化した低速の(定遠、鎮遠)だけだった。

 比較的新しい(華遠、清遠、北遠、東遠)(頤和、徳和)は、

 大破炎上しながら青島の膠州湾に逃げ込んでしまう。

  

  

 満州戦線

 ロシア軍は、各地で清国軍を撃破していた。

 日本は、このままだと困ると旧式化した武器弾薬を清国に売却。

 清国は、さらに日本の武器弾薬を要求。

 代償として、朝鮮に済州島と朝鮮半島の

 南岸一帯(巨済島、南海島、麗水半島、高興半島、完島)を

 日本領土として譲渡する。

 これら朝鮮半島南岸の島と半島を接収する日本戦艦部隊に対し、

 ロシア戦艦部隊は、清国海軍との海戦で損傷し、

 弾薬も消費しているため対決を避けてしまう。

 この事がロシア帝国は、日本の朝鮮半島南岸の接収と領有を容認した、

 と国際的に認知されてしまう。

 清国は、日本から武器弾薬を購入後も敗北を重ね、

 ついにハルピンから撤退。

 欧米諸国も用意した武器弾薬を清国に輸出し、

 清国から権益を得ようとする。

 清国は、ロシアという巨大熊にズタズタに切り裂かれ、

 日本と欧米諸国というハイエナやハゲワシに食い尽くされ、

 弱体化していく巨像だった。

 日本は、かろうじて台湾、澎湖島に対する優先権を得たものの、

 大陸からは、完全に弾き出されてしまう。

 列強各国は、清国東北部を南進するロシア軍に警告を与え、

 本格的に清国を支援し始める。

 ロシア軍は、朝鮮半島を南下。

 朝鮮人は、最初、清国軍に付いたものの、

 勝敗が決すると、掌を返したようにロシア帝国軍に付く。

 親露事大党は、親清事大党と中国人を血祭りに挙げ、

 ようやく巡ってきた資産の再分配を利用し、財産を没収していく。

 そして、ロシア人は、日本が占領した半島南岸に到達。

 日本にとって最悪の国際情勢になっていた。

  

 05/09 アメリカがパナマ運河建設予定地を接収。

  

 大臣宅

 「だから言わんこっちゃなかろうが」

 「しぇからしか。わかっちょるけん。だまっとれ」

 「清国は、お終いじゃ」

 「それもわかっちょる」

 「一緒に戦えば、良かったんじゃ このままじゃ ジリ貧じゃ」

 「予算の増額が認められたけん。それで黙っとけ」

 「国体の一大事に黙っとけるか」

 「じゃなにか・・・」

 「もういっぺん、天皇を拉致して維新をしろってか」

 「・・・と、とにかく、なんとかせんか」

 「このままじゃと、日本は、ロシアの植民地じゃ 良くて属国やぞ」

 「じゃから、軍事費を増やしとろうが」

 「朝鮮半島は、ロシアに占領される」

 「半島の南岸一帯は日本の領土として国際的にも認知されとる」

 「あんな、さきっちょで日本が守れるか」

 「要塞化するわい」

 「海軍のお金が減るやないか」

 「半島南岸を取られるよりましやろう」

 「だから、半島そのものを取って置けばよかったんじゃ」

 「宣戦布告は、大義名分がいるんじゃ」

 「そんなもの何とでもつければいいわい」

 「無茶言うなや!」

 

 日本の師団と工兵旅団が、

 巨済島、南海島、麗水半島、高興半島に上陸。

 コンクリートと掘塁で最新の要塞が建設されていた。

 そして、この要塞が軍艦建造費を著しく削いでいく。

 追い立てられた朝鮮人とロシア軍が対岸に集結する。

 日露軍が歴史上始めて国境を接し、

 正面から向かい合うことになった。

 「朝鮮人が南岸の日本領側に非難させてほしいと」

 「日本に火病はいらん断れ」

 「話しに聞くと清国人と清国事大党は、ほとんど殺されたとか」

 「封建社会は権力が変わるたびに資財を再配分するしかないからね」

 「日本でも明治維新で、廃藩置県とか、あっただろう」

 「あの国は儒教が強いから憎しみも大きく残忍になりやすいだろうな」

 「あまり居たくないですな」

 「ロシア軍か、強そうだな」

 「コンクリートと鉄が足りんな」

 「どうせ。大砲の砲撃を受ければ、ズタズタにされるぞ」

 「コンクリートは掘塁の下だよ。それにこっちの大砲も向こうに向けている」

 ロシア側の軍使が来る。

 「」

 「」

 「・・・師団長。ロシア側の軍使が日本軍は、不法占拠をしていると」

 「清国と正当な交渉で手に入れたものだと伝えろ」

 「」

 「」

 「開戦後の清国の譲渡など認めない。との事ですが」

 「日本が、この地を占領するとき、ロシア艦隊が何もしなかった」

 「それは、認めたということだ。大砲も撃たず、警告もしていない」

 「」

 「」

 「引き揚げました」

 「ふっ 本国にもっと鉄とコンクリートを寄こせと伝えろ」

 「これじゃ 護れんとな」

 「財界が煩いそうですが」

 「財界か・・・」

 「軍艦を作りたいだけじゃないのか」

 「対岸を失うと博多が占領されるぞ」

 「確かに」

  

 10/01

 ロシアは、中国東北部満州と朝鮮併合を宣言。

 結局、日本とロシア帝国の間で妥協がなされ、

 日本は、中国東北部満州と朝鮮併合を承認、

 ロシア帝国は、日本の朝鮮半島南岸の領有承認する動きを見せる。

 しかし、戦争は続いていることから表面化せず。

 日露境界線は形だけ睨み合っていた。

 

 10/03 モロッコ分割に関して仏西協定が成立

 

 10/27 ニューヨーク市地下鉄開業

 

 11/13 カール・マルクスとフリードリヒ・エンゲルスが共産党宣言

 

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風とライオン

1904年のモロッコが舞台です。

 

 

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第11話 1903年 『何が民需主導じゃ』

第12話 1904年 『清露戦争だぎゃ』

第13話 1905年 『おまえ! 世界地図見てから、云え』

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 各国軍艦状況