月夜裏 野々香 小説の部屋

  

仮想戦記 『日清不戦』

 

第14話 1906年 『・・・日露戦争じゃ』

  

 01/02

 モスクワで武装蜂起。

 軍隊によって鎮圧。

 ラスプーチンがロマノフ王朝に接近。

 

 

 2月3日

 日露戦争

 朝鮮半島南岸の日本軍領をロシア朝鮮族軍が攻撃したことから始まる。

 ロシアは、このことで戦争になると考えておらず。

 朝鮮人自治軍が半島南岸の返還を求めて武力攻撃を行った場合、

 日本が、どういう対応をするか、判断しようとしただけだった。

 適当に圧力をかけて日本が退けば良し、

 退かなくても日本は、いくつかの譲歩をすると見込んでいた。

 日本が譲歩すれば欧米列強の圧力を排し、

 極東で主導権を取る事ができ、清国に食い込む思惑もあった。

 大国ロシアの小国日本へ、ちょっとした嫌がらせだった。

 巨済島、南海島、麗水半島、高興半島。

 この時期、日本の要塞旅団が一個ずつ配備され、

 要塞化が進んでいた。

 そこにロシア朝鮮族軍が武器を渡され、進撃してくる

 日本軍は、十分に引き付けて砲撃し、

 機銃掃射を浴びせた。

 ロシア朝鮮族軍は、ズタズタになって、崩壊。

  

 高興半島 要塞

 「・・・師団長。ロシア艦隊です」

 「どうやら、半島南岸を封鎖するようだな」

 「いよいよ。ロシアと戦争になりましたね」

 「・・・しかし、どういうつもりだ」

 「本気で戦争するつもりなら封鎖などしないで」

 「太平洋に出て日本商船を沈めればいいのに」

 「さあ・・・」

 「攻めてきた敵軍も朝鮮人兵士ばかりのようですし」

 「わかりませんね」

 「とにかく、本国任せだな」

 「そうですね」

 「・・・師団長」

 海軍士官が立っていた。

 「お客さんか・・・なんだ」

 「ロシア海軍は機雷を敷設しています」

 「司令からも緊急に救援を要請していただきたい」

 師団長といわれた男はドイツ製の望遠鏡を覗き込む。

 「・・・わかった」

 ロシア帝国は、釜山港に海軍基地を建設。

 ロシア太平洋艦隊は、戦艦7隻、装甲巡洋艦4隻を配備。

 その艦隊が巨済沖を遊弋していた。

 戦艦

  レトヴィザン、ツェザレウイッチ、ペトロパブロフスク、ポルタワ、

  セヴアストーポリ、ペレスウェート、ポビエダ、

 

 装甲巡洋艦

  ロシア、グロモボイ、リューリク、バーヤン、

 

 巡洋艦

  アスコリド、パルラーダ、ディアーナ、

  ワリヤーグ、ノーウィック、ボヤーソン

 

 敷設艦(アムール、エニセイ)

 砲艦7隻、駆逐艦24隻

 

 

     

  三笠型戦艦            出雲型装甲巡洋艦

 

 巨済島沖海戦

 日本政府は、半島南岸要塞がロシア朝鮮軍の攻撃に晒され、

 ロシア艦隊によって封鎖されていると通報を受ける、

 政府は直ちに天皇に上奏、

 「半島南部の巨済島がロシア軍に攻撃され、ロシア艦隊に包囲されています」

 「そうか・・・」

 「兼ねてから打ち合わせ通り、開戦されますか?」

 「・・・そうしてくれ」

 艦隊出撃の令が下る。

 日本艦隊が呉を出航する。

 戦艦6隻 (三笠、初瀬、敷島、朝日、八島、富士)

 装甲巡洋艦8隻 (出雲、八雲、磐手、浅間、常盤、吾妻、日進、春日)

 巡洋艦 千歳、高砂、笠置、吉野 

 巡洋艦 浪速、明石、高千穂、新高 

 巡洋艦 厳島、橋立、松島

 巡洋艦 和泉、須磨、秋津州、千代田

 巡洋艦 扶桑、

 通報艦 龍田、千早、宮古

 砲艦 平遠、磐城、鳥海、愛宕、筑紫、摩耶、宇治、

 海防艦 海門、

 砲艦、大島、赤城、

 水雷母艦、豊橋、春日丸、日光丸、

 仮装巡洋艦、台中丸、台南丸、香港丸、日本丸

 工作艦、三池丸、江都丸

 病院船、神戸丸

 給水運搬船、山口丸、太郎丸

 給炭用運送船、福岡丸、彦山丸、有明丸

 特別運送船、金州丸、仁州丸、武州丸、武陽丸、天津丸、報国丸

 駆逐艦19隻、

  (白雲、朝潮、霞、暁) (雷、朧、電、曙)

  (薄雲、東雲、漣) (速鳥 春雨 村雨 朝霧)

  (陽炎 叢雲 夕霧 不知火)

 水雷艇27隻

   (43号艇 第42号艇 第40号艇 第41号艇)

   (第69号艇 第67号艇 第68号艇 第70号艇)

   (第62号艇 第63号艇 第65号艇)

   (第73号艇 第72号艇 第74号艇 第75号艇)

   (白鷹 第71号艇 第39号艇 第66号艇)

   (千島 隼 真鶴 鵲)(蒼鷹、鴿、雁、燕)

 

 ロシア太平洋艦隊

 戦艦7隻

   レトヴィザン、ツェザレウイッチ、ペトロパブロフスク、

   ポルタワ、セヴアストーポリ、ペレスウェート、ポビエダ、

 

 装甲巡洋艦4隻

   ロシア、グロモボイ、リューリク、バーヤン、

 

 巡洋艦7隻

  アスコリド、パルラーダ、ディアーナ、ワリヤーグ

  ノーウィック、ボヤーソン、ボガチール)

 

 敷設艦2隻(アムール、エニセイ)

 砲艦7隻、駆逐艦24隻、水雷艇10隻

 

 ロシア艦隊は、巨済島の日本の要塞砲と撃ち合うつもりはなく

 遠巻きに包囲。

 機雷を敷設していた。

  

 夜間

 玄界灘の波は、僅かに時化ていた。

 暗い中、灯を頼りに駆逐艦と水雷艇が進んでいた。

 300トン級の駆逐艦はともかく、

 100トン以下の水雷艇は、艦首から波をかぶり、

 そのたびに操舵を調整しなければならなかった。

 「前方の艦だけは、見失うな」

 「はっ!」

 海水の飛沫が目に当たって、痛く、腫れ上がる。

 それでも我慢し、前方を走る艦の灯に集中する。

 巨済島の要塞部隊は、無線で日本艦隊の接近を知ると、

 灯台の明かりをロシア艦隊に向けて照射する。

 ロシア艦隊が闇夜に浮かび上がる。

 「全速! 全速前進!」

 日本の駆逐艦19隻と水雷艇27隻。11隊が4波に分かれて突入。

 最初から体当たり。

 ロシア艦隊は、闇夜に突然出現した駆逐艦と魚雷艇に抗する術が無かった。

 日本の水兵は、体当たりの直前、浮き輪を持って脱出する。

 2月の玄界灘は、冷たく海流も速い。

 巨済島に辿り着けるか。

 海流の流れる方向で待ち構えている日本の船に救出されるかは、運次第。

 艦首に仕掛けられた爆弾が体当たりで爆発し、

 ロシア太平洋艦隊は燃え盛りながら傾いていく。

 

 夜明け前、

 日本の主力艦隊が接近し、ロシア艦隊に砲撃を加える。

 ロシア艦隊の生き残りは、なんとか撃ち返すものの、

 傾いた状態では命中させにくかった。

 釜山から残存ロシア艦隊が出撃し、

 ウラジオストック艦隊、

 巡洋艦3隻、砲艦7隻、駆逐艦24隻、水雷艇10隻が参戦する。

 日露両艦隊は、海戦らしく、

 本格的な砲撃と雷撃を始める。

三笠

 三笠 艦橋

 「・・・当たらんな」

 東郷長官が呟く。

 「訓練不足ですから・・・」

 「落ち着いて撃たせろ、砲撃の手順違いで自爆は嫌だからな」

 「夜間攻撃で駆逐艦と水雷艇が衝突がなかっただけでも奇跡です」

 「出来たてほやほやの軍艦か」

 「しかし、これほど酷いとは、まともに撃ち合わなくて良かったです」

 「砲撃の衝撃で装甲が割れたら事だな」

 「泳いでいる水兵に感謝しなくては」

 「何人生き残るかな」

 「遺族には、十分な補償をしますよ」

 ロシア艦隊は、主力が大破し、

 組織的な反撃が出来ず大混乱に陥っていた。

 日本艦隊はロシア艦隊の釜山港への脱出を押さえ込むように砲撃。

 日露艦隊の相対距離が接近すると命中する砲弾が増え始める。

 戦意を喪失したロシア戦艦が次々と降伏する。

 日本艦隊は、大破したロシア艦隊を接収していく。

 

 

 ロシア艦隊は、なぜ通商破壊作戦をせず。

 巨済島要塞を包囲して自らの位置を固定させてしまったのか、

 日本艦隊は、出来立てホヤホヤだった。

 予算不足で訓練もままならず。

 まともな命中弾を与えられず。

 最初から駆逐艦と水雷艇による体当たり狙いだった。

 この世にも稚拙な海軍戦略のロシア海軍と、

 稀なほどヘタレで幸運な日本海軍の海戦。

 この巨済島沖海戦の勝敗が日露戦争の行方を決め、

 日本民族の未来を決定してしまう。

 

 

 クレムリン宮殿

 日本大使は、半島南岸要塞への攻撃と、

 海上封鎖を理由にロシアに宣戦布告を伝える。

 ロシア帝国ニコライ二世皇帝は、既にロシア太平洋艦隊を失って絶句していた。

 日本艦隊主力は残存。

 ロシア太平洋艦隊は壊滅。

 その後、朝鮮ロシア軍は、正規軍を投入。

 巨済島、南海島、麗水半島、高興半島の要塞を攻撃。

 しかし、日本軍守備隊は、海上からの補給を受けて反撃する。

 日本軍は、樺太、カムチャッカ半島へと上陸し、

 ロシア帝国は、日本軍を撃退する戦力を持たなかった。

  

 

 世の中金だった。

 日本政府は、金がなければ戦争できないため、

 ただちに国債を発行する。

 そして、徴兵が始まると庶民は、平穏な職場から送り出され、

 田畑を耕す農民も減る、

 商人は、それまで得ていた集客が減り、

 仕入れも納品も苦しくなっていく。

 社会機能が削られ、

 社会資本が奪われ、

 物価が高騰していくことを実感する。

 そして、国内資本だけでは戦費を賄えず、

 欧米諸国に外債を求めた。

 

 

 バルト海でバルチック艦隊が編成されつつあった。

 巨済島沖海戦の勝利は、日本の国際的な地位を押し上げた。

 ロシアに朝鮮半島を占領されている状態でも

 日本の敗北が遠ざかったのか、

 日本の外債購入もぼちぼちだった。

 そして、ユダヤ系資本は、ユダヤ民族を虐げるロシア帝国に復讐しようと

 日本の国債を購入する。

 

 

 

 日本

 赤レンガの住人

 「半島南岸の要塞防衛は?」

 「いまのところ問題ないな」

 「樺太と。その対岸の間宮半島の占領は?」

 「反撃は弱かろう」

 「カムチャッカ半島の占領もだ」

 「あそこ、凍土だからな」

 「それでも戦わずに占領できる」

 「夏までに越冬の準備をして追加装備を送れるだろう」

 「ところで捕獲したロシア艦隊は」

 「戦艦7隻、装甲巡洋艦4隻とも駆逐艦と水雷艇の体当たりで大破して傾いている」

 「修理改装に時間がかかりそうだ」

 「沈まなくて良かったな」

 「というか、大砲が命中していないのが悲し過ぎる」

 「まぁ 事故がなく撃てて良かっただろう」

 「訓練すれば当たるようになるよ」

 「だと良いがね」

 「駆逐艦と水雷艇の乗員には済まないが」

 「勝つ目的なら、一番良い方法だった」

 「訓練不足が招いた結果だな」

 「シベリア鉄道に合わせて軍艦を建造したからだ」

 「大体、訓練不足だろう」

 「夜襲で味方同士の衝突がなかっただけでも奇跡だ」

 「しかし、ロシア艦隊は、何で封鎖なんかしたんだ」

 「太平洋に出て通商破壊をしていたら勝っていたのに」

 「さあ、天佑だろう」

 「そうだな。駆逐艦と水雷艇が全滅しただけで済んだ」

 「しかし、バルチック艦隊が来ると厄介だな」

 「それまで、捕獲したロシア艦隊を修理して就役できるだろう」

 「軍艦の建造がずれ込むな」

 「その前に艦隊運動の真似事ぐらい出来ないとな」

 「要塞建設で軍艦の建造が遅れていたからな」

 「ロシア戦艦を修理改装できれば戦費を浮かすことが出来る」

 「戦艦7隻だと戦力は倍増。一気に列強の仲間入りだな」

 「おかげで議会は軍縮に動いている」

 「バカな戦争しているんだぞ」

 「樺太とカムチャッカ半島を開発するのに予算がいるんだ」

 「台湾も予算が足りない」

 「・・・ったく」

 

 

 麗水半島

 日露双方の砲弾が飛び交って、互いの陣地を吹き飛ばしていた。

 極東ロシア軍がロシア朝鮮軍を盾に突撃し、

 日本軍は機関銃と大砲で反撃する。

 38式小銃は、狙い撃つのに適していた。

 「戦況は?」

 「督戦部隊と朝鮮囚人部隊か」

 「ロシア軍が世界最強なのは確かだな」

 「まずいのか?」

 「平地だったら負けていたよ」

 「不満か?」

 「いや、命は大切だからね」

 「大砲をもっと撃った方が良いんじゃないのか」

 「わかっているさ」

 「しかし、命数もあるし、補給待ちもある」

 「ロシア艦隊から大砲を剥ぎ取って持ってくるから。待ってろ」

 「いいのか、使って」

 「こっちで使い潰して、日本製の大砲を載せるそうだ」

 「どうせ、捕獲したロシア艦艇は、修理改装ですぐ使えないらしい」

 「海軍もやるもんだ」

 「その代わり増援部隊が遅れるらしい」

 「おいおい」

 「北東シベリアに上陸するそうだ」

 「北東シベリアね・・・寒すぎるだろう」

 「だが一度占領してしまえば反撃もされない」

 「まあ、大砲やら銃弾やら撃ってこないだけましか」

 「凍死しなければな」

 「はぁ〜 やれやれ」

 

 

 

 海軍工廠でロシア艦艇が修理改装される。

 砲台が剥がされ、

 半島南岸要塞へと運ばれていく。

 「どうだね。ロシア艦は?」

 「あまりいい状態とは言えませんね」

 「アメリカ製レトヴィザンとフランス製ツェザレウイッチは良いようです」

 「ペトロパブロフスク、ポルタワと」

 「セヴアストーポリ、ペレスウェート、ポビエダは?」

 「装甲巡洋艦より良くて日本戦艦より劣るようです」

 「少しか。やはり国産戦艦の力はその程度か」

 「修理改装して使うとなると・・・」

 「一度、ばらしたほうが早いか?」

 「機関が、一度、海水に浸かったからね」

 「長く使おうと思えば、それくらいした方がいい」

 「沈まなかったのは、運が良かった」

 「そうだな・・・ 」

 「議会も、軍縮に動いている。元々、軍事目的の公債だったはずだが・・・・」

 「次期、主力艦の建造。凍結されていますからね」

 「やはり、丁寧にやってくれ。新造艦の建造は、ないな」

 「いまある艦隊でバルチック艦隊を?」

 「日本沿岸まで来た頃には、ヘトヘトになっているだけだ。負ける気はしないな」

 「ロシア艦隊が港に逃げ込むと。大変なことになるのでは」

 「何とかなるさ」

 「同型艦の資材を使って2隻は、なるべく早く就役させますよ」

 「そうしてくれ」

 

 ロシア帝国のちょっかい。

 過剰反応を示した日本の反撃で日露戦争が始まった。

 世界中が興味を持ち注目していた。

 巨済島沖海戦で日本の負けなしが決まっていた。

 世界最大最強のロシア陸軍も、海を隔てた要塞に向かっていけば損害も大きい。

 日本軍が大陸に向かっていく気が無ければ手も足も出なかった。

 

  

 パリの造兵廠

 武器弾薬を前に日本人とロシア人の代理人がフランス人と交渉していた。

 日本とロシアの代理人は互いに相手を無視。

 並んで武器弾薬購入のサインをすると本国に送る。

  

 

 イギリス ポーツマス港

 日本政府がイギリスで購入した大型高速貨物船3隻が並んでいた。

 岩村、中村、佐藤の3人の大佐が鹿島の船橋でくつろいでいた。

 鹿島(岩村)、6000トン、17ノット、120mm3門

 香椎(中村)、5500トン、16ノット、120mm3門

 香取(佐藤)、5400トン、15ノット、120mm3門

 「中村。大砲は?」 岩村

 「備え付けは終わった」 中村

 「バルチック艦隊がどう出るか」 岩村

 鹿島の船橋から港湾を見るとロシア人らしい人影が集まっているのがわかる。

 イギリスの憲兵も少なからずいる。

 「バルチック艦隊が反応してくれるのなら良いさ。それが目的だからね」 中村

 「一番困るのが無視だよ」 佐藤

 「早めに出なければ、ロシアが困るだろうな」

 「日本は、捕獲したロシア戦艦を修理して就役させてしまうからね」

 「ロシアは捕獲艦艇再就役の前にウラジオストックに入港させることが出来れば、通商破壊で戦局を取り戻せるわけだ」 佐藤

 「既に決着が付いて日本艦隊が待ち構えているところにノコノコ出て行くというのは・・・・どう思う? 岩村」 中村

 「ロシア人に見張られているということは、その気が十分にあるということじゃないか」 岩村

 「バルチック艦隊が出てくれば楽しめるな」 中村

 「そうだな」 佐藤

 欧州派遣艦隊の艦長3人は、堤防で監視しているロシアの諜報員を見下ろしていた。

 「見え見えだな」 中村

 「イギリス人の話しだと見えている連中と隠れている連中の二つのグループがあるらしい」 佐藤

 「ほう・・・」 岩村

 

 バルチック艦隊、

 新型戦艦6隻、旧式戦艦3隻、装甲巡洋艦3隻、巡洋艦6隻、装甲海防艦3隻

       工作艦2隻、仮装巡洋艦6隻、駆逐艦9隻、水雷艇10隻、運送艦14隻。合計62隻

 戦艦8隻(スワロフ、アレクサンドル3世、ボロジノ、スラヴァ、アリョール)、(オスラビア)、

 旧式戦艦3隻(ニコライ1世、シソイウェリキー、ナワーリン)

 装甲巡洋艦3隻(ドンスコイ、ナヒーモフ、モノマーフ)

 巡洋艦6隻(アウローラ、オレーグ、スウェトラーナ、アルマーズ、イズムルード、ジェムチューグ)

 工作艦2隻(カムチャッカ、クセーニヤ)

 仮想巡洋艦6隻

 駆逐艦9隻

 装甲海防艦3隻(アプラクシン、セニャーウィン、ウシャーコフ)

 運送艦14隻

 

 バルチック艦隊の出撃に合わせて3隻の武装商船も出航する。

 鹿島(岩村)、6000トン、17ノット、120mm3門

 香椎(中村)、5500トン、16ノット、120mm3門

 香取(佐藤)、5400トン、15ノット、120mm3門

 武装商船は大きく装甲も無く、速度が速いだけ。

 甲板に置かれた大砲も120mmを3門だけだった。

 

  

 鹿島、香椎、香取。

 3隻の指揮は、独立しており、バラバラだった。

 バルチック艦隊を疲弊・疲労させるのが目的であり、

 たとえ、1隻になっても継続する。

 3隻は、バルチック艦隊の前方、後方、平行を航行し、勝手に動いた。

 

 香取

 「艦長・・・バルチック艦隊が増速した模様です」 副長

 「では、こっちも速度を上げろ」 岩村艦長

 遠くで砲声が聞こえる

 「・・・鹿島が撃ったのか」

 「・・・そのようです」

 「良く眼を凝らせ。装甲巡洋艦が来たら、すぐに逃げるぞ」

 「はい。了解です」

 「こっちも、撃ってみるか・・・・砲雷長。空砲を撃て」

 香取が撃つ、礼砲と同じ空砲だった。

 

 

 バルチック艦隊の乗員は日本艦隊が撃つ空砲を別の受け取り方をする。

 夜になるとロシア艦隊に聞こえるように大砲を撃った。

 世界中で注目されている小艦隊の仕事は、夜間に空砲を撃ち脅かすだけ。

 バルチック艦隊から装甲巡洋艦や巡洋艦が近付くと逃げるだけの単調な航海。

 それだけでもバルチック艦隊は眠れない。

 さらに給炭中は最悪。

 ロシア・バルチック艦隊の水兵は、暴発寸前。

 わずか3隻の武装商船がバルチック艦隊を恐慌に追い込んでいく。

 バルチック艦隊は、イギリスの漁船や商船を撃沈する失態を犯してしまう。

 ロシア艦隊は、日本海軍の小艦隊のせいにする、

 しかし、日本政府は、ただの空砲。礼砲だと繰り返すばかり。

 これは、乗艦しているイギリス武官も確認して保証していた。

 さらにバルチック艦隊が停泊できたのもフランス領だけ。

 それもイギリスに遠慮してか、わずかな休息しか与えられず。

 日本の仮装巡洋艦、鹿島、香椎、香取は、イギリスの港で大歓迎される。

 十分な休息と補給を受けられ、英雄として扱われる。

 日本の追跡艦隊は、わずか3隻でバルチック艦隊を翻弄して人気があるのか、

 寄港地で礼儀正しかったとか、好感持てたとか、高い評価を受ける。

  

  

 バルチック艦隊

 砲声が前後、右舷から聞こえる。

 ロジェストウェンスキー中将は、憮然としていた。

 「提督」

 「・・・なんだ」

 「少し、休まれては・・・」

 「・・・砲声で・・・・良く眠れんのだ」

 「どうせ攻撃してくることなど無いと思いますが」

 「わかっておる・・・日本側の給炭を狙って沈めてやりたいな」

 「イギリスの港で補給を受けていますから。困難かと」

 「港に入ったら張り込むのは?」

 「日本の仮装巡洋艦は閉じこもったまま。我々は疲弊したまま残されます」

 「それに1隻が給炭で港に入っても、2隻は違います」

 「その点は、無線を取りながら、上手く連携しているようです」

 「・・・わかっている、しかし、そういう誘惑に駆られる」

 艦内から叫び声が上がる。

 日本艦隊の砲声にキレたロシア水兵が罵り、叫び暴れ、

 甲板に出て自殺しようと泣き叫び、仲間に取り押さえられる。

 「・・・先が思いやられるな」

 「乗員をなだめてきますよ」

 「そうか、頼む・・・明日の昼食時。わたしも乗員を慰労して回ろう」

 貴族の海軍中将は、叫び出したいのを押し殺し、ため息をついた。

  

 アメリカ ホワイトハウス

 世界地図を見詰める二人の男。

 「日本は、予想以上に勝ち過ぎた」

 「ですが、地政学上、日本の敗北は決定的ですが」

 「ロシアの朝鮮半島支配は決定的だ」

 「ロシア帝国は、満州と半島を近代化すれば巻き返せる」

 「はい」

 「朝鮮半島の日本の南岸要塞は、落ちないのか」

 「南岸要塞は、海上から補給を受けられます」

 「ロシア軍といえど、わずかな海峡と地峡しかないので攻めきれないかと」

 「ロシア人の被害の方が多いか」

 「いえ、一番多いのは武器を持たされてロシア軍から攻め立てられている朝鮮人でしょう」

 「宣教師の話しですと、悲劇とか惨劇だと」

 「巨済島沖海戦か。人類史を変えてしまうほどの海戦だったな」

 「白人の絶対性は消えてしまいました」

 「しかし、日本は、ほとんど、お金を使わずに戦っている」

 「大陸に上陸していないためでしょう」

 「戦場も、半島南岸要塞群に限定されていますし」

 「海戦も一度でケリが付きましたから」

 「上手いこと、やっているわけか」

 「借款分は、樺太やカムチャッカ半島の占領で消費されているほどです」

 「んん・・ロシアが朝鮮半島、中国東北部を近代化させ、海軍を再建するまで何年かかるだろうか」

 「バルチック艦隊しだいです」

 「バルチック艦隊が敗北した場合。ロシアの近代化は、制度上、困難なので30年以上は必要かと」

 「・・・そうか、それまで日本が東アジアの雄になるな」

 「それと、日本は、軍事費の削減に向かっているようです」

 「公共投資、設備投資で基礎体力をつけているわけか、我が国と同じだな」

 「そのようです」

 「しかし、鉄と石炭が無ければ、第一級の近代国家になりえません」

 「日本は、樺太とカムチャッカ半島を占領した」

 「北東シベリアにも上陸部隊を派遣している」

 「バルチック艦隊が負ければ、これらの地を開拓して鉄と石炭を手に入れるやも知れない」

 「凍土の占領と維持、開発。困難だと思われますが」

 「だが、出来ないわけではない」

 「それにアラスカは、ゴールドラッシュだ。対岸も同じかもしれない」

 「可能性はあるかもしれません」

 「日本製の戦艦と装甲巡洋艦がどの程度なのか、はっきりしないな」

 「しかし、ロシア太平洋艦隊を殲滅したのは事実だ」

 「巨済島沖海戦で日本海軍が駆逐艦と水雷艇をロシア艦に体当たりさせたのは、戦艦が出来たばかりで訓練不足があるようです」

 「日本の戦艦と装甲巡洋艦は、砲撃戦に耐えられないような重大な欠陥がある、というのが、各国の見解と評価です」

 「しかし、無茶な作戦だ。体当たりした兵士の半分が溺死とはね」

 「合理的ですが」

 「だが、どこの海軍でも、そんな作戦を兵士に強要できまい」

 「確かに。ロシア艦隊が海上封鎖をしたのが原因です」

 「同レベルの艦隊が敵国にあるというのに、一つの海域に艦隊を集めて固定させてしまうなどバカな話しだ」

 「艦隊は位置を知られるべきではないのだ」

 「政略的な判断だと思いますが」

 「政略的に正しい判断だというのは、わかるよ」

 「わたしの得意分野だ。嫌がらせをしたつもりが小国が、本気になったということだ」

 「日本人の性質を見誤ったのでしょう」

 「それとロシア皇帝は、日本が半島支配で出遅れて牙がないと思ったのでは?」

 「それでも、艦隊を固定させたりはせんよ。1隻で十分なのだ」

 「今後の外交は?」

 「パナマ運河が完成しない限り。東アジアでは何もできんだろう」

 「パナマで都合よく反乱が起きましたからね」

 「ははは」

 「・・・・・」

 「そうだな・・・十分な金を払ったつもりだがね」

 「本当は、コロンビアと条約を結ぶほうが問題がありましたからね」

 「確かに、コロンビアは、それなりに大きな国だからね」

 「今後の外交は、どうされます」

 「変わらんよ。日露講和促進だ。これで次期選挙でも票が入る」

 「日本に味方するので」

 「そうだな。中国北東部と半島を支配しているロシアか」

 「成り上がりの黄色人の日本か」

 「どちらかと、将来、太平洋で対峙するのは間違いないが・・・・」

 「日本に味方にして、ロシアを押さえ込むべきだろうな」

 「では、そのように」

  

 日本の樺太・間宮占領、カムチャッカ半島占領、北東シベリアへの上陸。

 日本国債の売れ行きが加速する。

 しかし、ロシアは、まだ負けているわけではなかった。

 中国東北部の潜在能力は大きく。

 朝鮮半島支配は日本への楔だった。

 日本は、決定的に不利だった情勢を少しばかり時間稼ぎしただけといえる。

 それでも、ロシア帝国の圧力を受けていた世界の小国は、喜び。

 有色人は日本人の勝利に喝采する。

  

 赤レンガの住人

 「・・・やはり、予算は削られるそうだ」

 「うがぁ〜 戦争中に軍事費を削るバカがどこにいる」

 「日本の敗北は、無いというのが議会の言い分らしい」

 「それなら経済再建をすべきだとね」

 「占領地の確実な確保が次の戦争抑止に繋がるそうだ」

 「・・・・・・・」

 「軍隊だけで占領するよりも」

 「町を建設して軍隊を配備するほうが負担は少ない。誰でもわかることだ」

 「そういうのはバルチック艦隊を殲滅してからだろう」

 「それに大陸反攻も検討すべきじゃないか」

 「大陸の平原でロシア軍と対決するなど、愚かしいだけだ」

 「山海関で清国軍と合流して北上すればよかろう」

 「ロシアは、100万の軍団を集結させている」

 「そんなことが出来る分けなかろう。逆に清国が完全に滅んでしまう」

 「100万といっても、中国東北部と半島に分散配備されている」

 「上陸されないように戦力も割かれているはず」

 「しかしな・・・・・金が無いぞ」

 「・・・・・・」

 

 

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 月夜裏 野々香です

 軍事費を可能な限り、抑えて、民需主導の日本です。

 それでも、この頃、作られた船が ↓ ですから、かなり背伸びをしています。

日本で最初に作られた北海鱈釣漁船

大鵬丸

   日清不戦では、とりあえず、時代を早めずに、数を増やしていることにします。

 

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第13話 1905年 『おまえ!世界地図見てから、云え』

第14話 1906年 『・・・日露戦争じゃ』

第15話 1907年 『・・・バルチック艦隊来襲ぜよ』

海軍力

 

 各国軍艦状況