月夜裏 野々香 小説の部屋

  

仮想戦記 『日清不戦』

 

第15話 1907年 『・・・バルチック艦隊来襲ぜよ』

 半島南岸の攻防戦。

 日露戦争、陸戦の多くは、ここで行われた。

 日本軍守備隊がロシア軍の大攻勢を撃退する。

 そして、負傷者や死傷者を船に乗せて本土に戻し、

 新兵と補給品を運び込む。

 この繰り返し。

 

 

 機関銃が日露両軍を塹壕に潜ませ、

 陣地で睨み合わせる。

 「ロシア軍め。懲りないな」 少尉

 「人的資源で朝鮮人を磨り潰しているようですね・・・」

 「一石二鳥の確信犯ですよ」 二等兵

 「意図的にか」

 「日本の砲弾と銃弾で、邪魔な朝鮮人が減れば、半島占領をスムーズに行えますからね」

 「はぁ〜!」

 少尉が塹壕から乗り出す

 「あ・・・」

 「この悪党が!」

 「戦争したいやつが、かかって来い!!」

 砲弾と銃声が聞こえ、

 あたり一帯に砲弾と銃撃が集まる

 「わっ!!」

 「少尉! やめてくださいよ」

 「指揮官は、意図的に狙われるんですから顔を出さないでください」

 「くそ、舐めやがって・・・」

 少尉が乗り出すと、

 「ロスケ野郎!・・・」

 砲弾と銃弾が襲ってくる。

 「わっ!!」

 「少尉!」

 「いい加減にしてください!」

 「当たったらどうするんですか」

 「は、はは、ははは」

 「・・・せめて、その帽子を取って頭を出してくださいよ」

  

  

 イギリスの港

 ドレッドノート型戦艦が建造された。

 305mm連装砲台5基。副砲を持たない戦艦だった。

 「下村少佐。感想は?」 イギリス士官

 「おめでとうございます」

 「イギリスの栄光と繁栄は永遠ですよ」 下村少佐

 「そうだと嬉しいがね」

 「何か、疑問でも」

 「いや」

 「イギリスの栄光もかげりが見え始めていると感じていたからな」

 「そうですか?」

 「この軍艦は、紛れも無く世界最強だが真似をして造れば済むことだ」

 「それより、植民地の維持のための負担は年々大きくなってきている」

 「そして、工業力でアメリカ、ドイツに負けつつある」

 「日本でも、建造できると?」

 「建造できるだろうな。鉄と石炭があれば」

 「・・・・・」

 「カムチャッカに鉄鉱石は?」

 「開拓は、これからです」

 「・・・日本には、ロシアとアメリカの戦力を削いでもらいたいものだ」

 「わかっています」

 

 

 フランス領の港

 バルチック艦隊、

 新型戦艦6隻、旧式戦艦3隻、

 装甲巡洋艦3隻、巡洋艦6隻、装甲海防艦3隻

 工作艦2隻、仮装巡洋艦6隻、

 駆逐艦9隻、水雷艇10隻、

 運送艦14隻。合計62隻

 

 戦艦8隻

  スワロフ、アレクサンドル3世、ボロジノ、

  スラヴァ、アリョール。オスラビア、

 

 旧式戦艦3隻

  ニコライ1世、シソイウェリキー、ナワーリン、

 

 装甲巡洋艦3隻

  ドンスコイ、ナヒーモフ、モノマーフ、

 

 巡洋艦6隻

  アウローラ、オレーグ、スウェトラーナ、

  アルマーズ、イズムルード、ジェムチューグ、

 

 工作艦2隻(カムチャッカ、クセーニヤ)

 仮想巡洋艦6隻

 駆逐艦9隻

 装甲海防艦3隻

  アプラクシン、セニャーウィン、ウシャーコフ

 運送艦14隻

 

 ロジェストウェンスキー中将は、艦隊乗員を鼓舞していた。

 「諸君!」

 「ロシア帝国の栄光は我々の勝利に結集している」

 「我が艦隊がロシア領の港に入港した暁には」

 「日本の海上交通路を破壊するであろう」

 「そして、海上輸送を失った日本は降伏するであろう」

 「極東におけるロシアの勝利は、確実なものとなる」

 「我々は、白人は神によって選ばれた民である」

 「諸君!」

 「神は、我々一人一人に求めている」

 「神とロシア帝国の栄光を証明せよと」

 「そして、我々ロシア帝国は、神に召される唯一の国である!」

 「既に我々は、日本人の卑劣な妨害を退け」

 「長い航路を越えてここまで来た」

 「既に勝利は、我が手にある」

 「信じて勝利を確信して欲しい」

 「我々は必ず勝利するだろう!!」

 歓声が上がる。

  

  

 フランス領沖に停泊している。香椎

 「艦長・・・まだ動かないようですね」 副長

 「ああ、鹿島と香取の補給は?」 中村艦長

 「まだ・・・のようです」

 「バルチック艦隊も疲弊しているはずだ」

 「また大砲でも撃ちますか?」

 「そうだな。礼砲を撃ってやれ」

 香椎から砲声が轟いて、バルチック艦隊にまで聞こえる。

  

  

 バルチック艦隊の行き先は、旅順港とウラジオストックの二つ。

 呉

 「バルチック艦隊は、旅順港だろうな」

 「仁川も港湾設備を整えている節がありますが」

 「まだ、規模としては小さい」

 「仁川なら問題ないが」

 「旅順港とウラジオストックは大型の要塞砲が配備されている」

 「釜山はあまりに近すぎて無いと思うが」

 「旅順しかないだろう」

 「バルチック艦隊は、必ずそこに逃げ込む」

 「しかし、ウラジオストックに逃げ込まれたら」

 「いっそのこと、台湾沖で待ち伏せるか」

 「それだと、西側を通るか東側を通るかで、どうなるか、まったくわからん」

 「旅順ということで待ち伏せるべきだろう」

 「旅順というなら。策は・・・」

 バルチック艦隊は、日本側の不安を払拭するように旅順に向かっていく。

  

 香取

 「やはり、一番人気の旅順か・・・」 佐藤艦長

 「艦長。わたしの勝ちですね」 副長

 「俺も、そう思っていたがね」

 「掛け率20対1なら賭けたくもなる」

 「ロシア人の性格ですかね」

 「・・・いや、限界なんだろう」

 前方で砲声が聞こえた。

 僚艦の鹿島か、香椎だった。

 「この作戦が終われば、階級が上がりますかね?」

 「上がるだろうな」

 「東郷長官を除けば世界で一番有名な艦長達だ」

 「武装商船の艦長なんですけどね」

 「そうだな・・・その通りだ・・・・」

 「そろそろこっちも、ぶっ放すか」

 「了解です」

 香取から砲声が轟く。

 鹿島、香取、香椎の無線は、

 バルチック艦隊の位置と方向を毎時間のように日本側に伝える。

 最後の給炭を終えたバルチック艦隊が東シナ海を北上。

 旅順港に向かって行く。

 待ち伏せていた日本艦隊が、

 バルチック艦隊の前方を塞ごうとT字戦を仕掛ける。

 しかし、バルチック艦隊は、隊列を反転させ、

 ウラジオストック側に逃げ込もうとした。

 日本艦隊は、そうは、させじとロシア艦隊の頭を押さえ込もうとする。

 ここで問題だったのは、ロシア艦隊の燃料だった。

 戦闘速度でウラジオまで行けないロシア艦隊。

 選択の余地は無かった。

 それでも、一度、日本艦隊を錯誤させた事は大きく。

 もう、一度、反転し、旅順港に向かうバルチック艦隊に出し抜かれてしまう。

 そして、旅順要塞から撃ち出される援護射撃がバルチック艦隊の入港を支援した。

 日本艦隊は、バルチック艦隊を追撃し、旅順要塞と砲撃戦。

 バルチック艦隊が旅順港に入港していく・・・

 に続いて日本で修復されたばかりの

 ポビエダ、セヴアストーポリが港口に突入。

 そして、港口直上でポビエダとセヴアストーポリが艦底を爆破。

 日本の水兵が救命艇に乗ってポビエダとセヴアストーポリから脱出。

 ロシア軍地上部隊の機銃や小銃で日本軍水兵が掃討されていく。

 救命艇が被弾し、水兵は死傷者を出していく。

 ポビエダとセヴアストーポリは、

 港口にズブズブと沈んで旅順港を封鎖してしまう。

  

三笠

 戦艦 三笠

 日本艦隊は、閉塞戦艦2隻の乗員を救出する為。

 旅順要塞と砲撃戦を繰り広げる。

 「・・・もっと接近しろ」

 「要塞砲台を吹き飛ばせ!」

 要塞砲台から撃ち出された砲弾が日本艦隊の周りに落ち、

 水柱となって、艦体を洗っていく。

 そして、時折、要塞砲弾が命中し損傷していく、

 日本艦隊の砲弾は、港口近辺の高台にある要塞砲を狙う、

 しかし、ほとんど命中しない。

 

 日本艦隊は、水柱に包まれながら、

 閉塞戦艦の救命艇から脱出した水兵を救出していく。

 日本艦隊にまで脱出できた乗員は、半分も満たなかった。

 しかし、閉塞の成功を確認し、

 日本艦隊は、監視船だけ残して消えていく。

 

 その後、日本艦隊は、上陸作戦部隊を乗せた船団と一緒に再度出撃。

 ロシア軍の多くは、朝鮮半島に配備され、

 海岸線に分散され過ぎていた。

 日本の上陸参戦部隊は、遼東半島の渤海側に回りこんで上陸する。

 遼東半島のロシア軍は少なく。

 日本軍を食い止める兵力は、

 旅順要塞にも、大連にも、南山要塞にもなかった。

 日本軍は、背後から南山要塞を攻撃、

 占領すると南山要塞を強化。

 そして、大連を占領。

 旅順要塞を包囲してしまう。

 満州・朝鮮半島のロシア軍は、慌てて遼東半島に軍団を向ける。

 しかし、日本軍は南山要塞を固めて防衛陣地を強化していた。

 ロシア軍は、南山要塞の日本軍を攻撃するが、

 日本軍は、頑強に抵抗し突破することが出来ない。

 そして、再建された第2太平洋(バルチック)艦隊は、旅順港の港口に蓋をされ、

 閉じ込められ、身動きが取れず、無力化されていた。

 ロシア海軍史上、最も誉れ高いバルチック艦隊の乗員は英雄的な大航海を終え、

 長官を含め、死んだように眠っていた。

  

 

 大連港の遼東軍司令部

 「参謀総長。旅順要塞は、南山要塞の数倍上の規模だと思われます」 参謀

 「占領してわずか数年で、これだけの要塞を建設してしまうとは」 参謀総長

 「お金持ちですね」

 「そうだな」

 「しかし、慌てることも無い。食料が無くなれば降伏する」

 「それまで、南山要塞が持てば、でしょうか」

 「海軍さんが、大連湾と金州湾から支援砲撃をしてくれるはず」

 「簡単に突破できんだろう」

 「突撃命令は出ないのですか?」

 「305mm砲をぶっ放しているだけでいい」

 「敵の口減らしすれば、食料が増えて」

 「その分、長く篭城される。攻城戦の定石じゃ」

 「篭城戦でゆっくりですか?」

 「海軍さんのおかげで、楽が出来ましたね」

 「ふっ いきなり、戦艦2隻を使って港口を閉塞するとは・・・」

 「予定されていたとはいえ、戦艦2隻の乗員には申し訳ないことをした」

 「乗員は、3分の1しか生き残っていないそうだ」

 「お国のためでしょう」

 「だが、これで海軍に予算が流れるだろうな」

 「・・・軍事費が削減されるのは、本当ですか?」

 「・・・たぶんな」

 「・・・・・・・」

 「心配するな」

 「俺らの給与と退職金くらいは出るやろう」

 「階級が上がった分くらいはな」

 参謀は憮然としたまま

  

 06/15

 オランダで第2回万国ハーグ平和会議が開催。

 日露戦争が議題として浮かぶが物別れとなる。 

 朝鮮人三人がロシアの侵略を訴えようと図る、

 しかし、大韓帝国は、ロシアに併合されていると拒否(ハーグ密使事件)

 このことが切っ掛けになって、朝鮮王族は廃位させられ、

 ロシア帝国による朝鮮弾圧が激化していく。

  

 

 帝国議会

 三人の議員がラウンジでくつろいでいた。

 「予算比は良いとして国防省が納得するかだな」 議員A

 「連中はバランス感覚に乏しいからな」 議員B

 「どこの部署でもそうだ」

 「予算の食い合いだよ」 議員C

 「偏った予算比は、国を滅ぼしかねないぞ」

 「少なくとも公共投資なら少しぐらい間違っていても国民生活は潤う」

 「あまり予算を当てにされても困るがね」

 「短期的な集中投資で持続的なものじゃない」

 「短期集中で事業を軌道に乗せられないボケナスは無用だ」

 「後は、自力でやってもらう」

 「鉄道や通信を除けばな」

 「鉄道と通信は、短期集中で足りないだろう」

 「・・・ところで、イギリスのドレッドノート型戦艦が厄介だと聞いたが」

 「海軍の言い分だ」

 「まあ、その通りだがね」

 「主砲4門がいきなり主砲10門なら、同時に3隻を相手に出来る」

 「本当に?」

 「投射確率とか言ってたな」

 「一度に撃ちだせる弾数が多いと、それだけ命中しやすいそうだ」

 「各国でドレッドノート型が建造されたら」

 「せっかく、ロシア戦艦を手に入れても、なんにもならんだろう」

 「与えられた軍事費で何とかできないのなら、無能とでも言ってやるか」

 「軍政を問われるのでは?」

 「それでも、押し切る」

 「「「ははは」」」

  

 呉海軍工廠

 修理改装中

  ツェザレウィッチ、レトヴィザン

  ペレスウェート、オスラビア

  ペトロパブロフスク、ポルタワの6隻。

 装甲巡洋艦

  ロシア、グロモボイ、リューリク、バーヤン、

 「随分な改修じゃないか」 工場長

 「ドレッドノート型のせいだよ」 少佐

 「いまさらか、余計に期間が必要だぞ」

 「かまわんよ。どうせ、予算の削減は確実だ」

 「新造艦はなしか」

 「ああ、勝ち過ぎた」

 「これで頼むよ」

 「ひょっとして、閉じ込めたバルチック艦隊もか?」

 「せっかく、修理改装した戦艦を2隻とも沈めやがって」

 「それは “悪かったな” これで、いいだろう」

 「ふん! 取ってつけたようなことを言いやがって」

 「しょうがないだろう」

 「鉄がほかに取られるんだ」

 「捕獲したロシア艦も使わないと、どうにもならんよ」

 「みみっちいこと言いやがって」

 「日本は、みみっちぃ国なんだ」

 

 

 旅順要塞

 ステッセル中将とレイス大佐

 「日本軍は?」 ステッセル中将

 「包囲だけです」

 「時折、重砲を撃ってきますが、被害はそれだけです」 レイス大佐

 「食料が尽きるまで待つつもりだな」

 「バルチック艦隊が来たことで食料の配分も増えたわけだ」

 「日本軍に良いようにやられているな」

 「ロジェストウェンスキー中将は英雄です、責められませんね」

 「その通りだよ」

 「残念ながら閉じ込められただけだ」

 「不運の海将ですね」

 「南山要塞正面は、第三軍司令官のカウリバルス大将だったかな」

 「彼が南山要塞を突破してくれること祈るしかないな」

 「アレクセーエフ総督は、こちらに陸軍主力を送るように連絡をしていたはずですが」

 「総督か・・・」

 「逃げ出そうとして失敗したから、今度は助けろか。いい気なものだ」

 「ロジェストウェンスキー中将の慰労に旅順に来たと思ったら港口閉塞」

 「日本軍の上陸作戦で南山要塞陥落」

 「展開が早くて、アレクセーエフ総督は逃げ出せずですからね」

 「総督が旅順の将兵で攻撃しろといわないだけ、ましかな」

 「確かに」

  

  

 バルチック艦隊が旅順港の閉塞で無力化。

 国際的にも、日露戦争の帰趨が見えていた。

 アメリカは、日本とロシアに講和斡旋を打診する。

 ホワイトハウス

 「・・・意外な結末でしょうか」

 「このままだと」

 「ロシア戦艦は、全て日本海軍の物になってしまうではないか」

 「・・・結局、日本海軍の戦闘能力は、未知数のままですね」

 「作戦能力の高さ。柔軟な戦略を持っているのは確かだな」

 「その割には、軍事予算の削減で泣いているとの報告ですが」

 「少ない軍事費の枠内で合理的に戦ったわけか」

 「そんなところでしょう」

 「ずる賢さが、わかっても駄目だ」

 「海戦とは、互いの砲撃と恐怖に耐え」

 「血の対価を払って、損傷を修復しつつ機動し」

 「勝利を掴み取るものだ」

 「そうでなくては、日本人の強さが推し量れないではないか」

 「要塞攻防戦はどうです?」

 「作戦能力が高く」

 「兵士は頑強で強靭さがあるのは確かだ」

 「しかし、それも平地戦で確認しなくてはな」

 「弱い部分を付くのは戦略的に正しいとしても力量が掴めない」

 「ですがロシアも、ここまででしょう」

 「問題は、日本が軍事費を大幅に削減していることだ」

 「大統領制でもないのに、それだけの力があるとは、たいした政治力だな」

 「民需で利権体制が作られているのでしょう」

 「報告では、海軍に予算を取られたくない鉄道省と陸軍の画策だとか」

 「日本の陸軍は?」

 「26万にまで将兵を削減するようです」

 「ほう。アメリカは5万6000だ」

 「軍事的な負担で言うと、アメリカの方が少ない」

 「移民の増加と合わせれば国力増強で、アメリカが有利だ」

 「日本に艦隊を訪問させ、日本の軍事的緊張を煽り」

 「軍事費を増やさせて、疲弊させても良いかもしれません」

 「んん。それも良いだろう」

 「日本がロシアの復讐に怯え」

 「アメリカの影響力増大に抗して、軍事費増大なら」

 「日本の疲弊も早かろう」

 「日露戦争は軍事的に日本の勝ちといえます」

 「バカな将校ほど、総当りで兵隊を無駄に磨り潰しますから」

 「勲章と階級の為、兵隊を磨り潰しても戦果を上げる将校は多いからな」

 「日本は貧しく、それも、許されなかったのでしょう」

   北東シベリア。

 日本軍は、氷を押し破ってベーリング海峡のロシア側に上陸する

 「越冬準備だ。急いで基地の建設をするぞ」

 「はい」

 商船からボートが降ろされていた。

 荷揚げが進み。建築資材の組み立てが始まる。

 越冬に失敗すれば凍死が待っていた。

 

 

 アメリカ ポーツマス 

 小村全権大使とウィッテ全権大使

 互いに外交戦を繰り広げながら自国の国益を通そうとする。

 ロシア側の言い分

 朝鮮人の独立武装集団が朝鮮半島南岸の日本軍を攻撃。

 ロシア艦隊を日本要塞を支援するために半島南岸に遊弋していた。

 日本艦隊が卑劣で一方的な奇襲攻撃を行った。

 

 日本側

 朝鮮人の武装は、ロシア軍の装備しているものと同じであり、

 日本に対する軍事攻撃であると反論。

 互いに相手を非難するが、講和条件に達していない。

 

 日本は、財政的に余裕があった。

 しかし、北東シベリアに上陸、占領しても占領と維持にかかる負担は大きく。

 開発に必要な予算は、さらに膨大で大きかった。

 日露両国とも、これ以上の戦果は、期待できず、

 戦いたくなかったといえる。

 ロシアは、満州と朝鮮半島に確固とした基盤を構築しており。

 戦争をやめて開発するのが好ましかった、

 しかし、このままでは、日本に敗北したとしか、

 国際的に思われなかったため、戦いは継続していた。

  

 

 旅順要塞は徐々に食糧備蓄を消耗していた。

 しかし、満州ロシア軍の南山要塞突破の報は届いてこない。

 日本軍は、北東シベリアに上陸し、兵站が心細いのか。

 旅順港閉塞の成功で余裕があるのか。

 日本軍は、無駄な突撃を行わず、

 包囲だけ。

 地下道を掘り進み、

 旅順要塞の側壁の爆破を繰り返した。

 側壁の爆破と同時に305mm砲弾が撃ち込まれ、

 保塁ごと吹き飛ばした。

 旅順要塞は保塁を失って弱体化いく。

  

 

 日本軍が守備する南山要塞に配置された305mm要塞砲の射程は長く。

 ロシア軍は、要塞に辿り着く前に指揮系統を失ってしまうほど砲撃される。

 地下道を掘る距離も長過ぎるため

 ロシア軍は、日本軍が使っているような地下道を掘る戦法が使えなかった。

 

 

 

 旅順要塞 司令部

 深夜、305mm砲弾が司令部を直撃。

 破砕し瓦礫となった司令部からロシア軍将校たちが飛び出した。

 アレクセーエフ総督。総司令官ステッセル中将。

 要塞司令官スミルノフ中将。第四シベリア狙撃師団長フォーク少将。

 第七シベリア狙撃師団長コンドラチェンコ少将。

 東正面指揮官ゴルバトフスキー少将。ステッセル付参謀長レイス大佐。

 ロジェストウェンスキー中将。ニコライ・ネボガトフ少将、

 名だるロシア軍将校は、灰黄色の埃を被って咳をしていた。

 全員が砲撃している方向を睨み付けた。

 そこにロシア軍士官が日本側の伝令書を届けに来る。

 “降伏して艦隊を引き渡せば”

 “日本の主要9都市にロシア正教の教会を一つずつ建設する”

 “将兵の生命は保障する”

 “亡命の意思があれば尊重する”

 というものだった。

 

 旅順要塞降伏によって日露戦争が終わった、といえる。

 日本軍は開城させられた旅順要塞を接収し、

 バルチック艦隊も捕獲する。

 そして、アメリカのポーツマスで日露講和条約が締結。

 日本は、ロシア占領地を日本領にすることが認められ、

 ロシアは、半島南岸を除く朝鮮半島と

 中国東北部のロシア占有を認められる。

 そして、捕獲されたロシア艦隊の日本の保有が決まる。

 互いに賠償金の放棄と捕虜交換が決まり、

 日本側に多少の不満があったが講和条約調印。

 ロシアの南進は、山海関で停止する確約もなされた。

  

 

 うぅぅ・・・下手です。雰囲気だけです。

  

 日露戦争が終決すると、清国艦隊の処遇が話し合われる。

 (華遠、清遠、北遠、東遠)(頤和、徳和)

 日米欧露の話し合いで朽ちるままにされることが決まる。

 

 

 旅順港口からポビエダとセヴアストーポリが引き揚げられる。

 そして、ロシア教会建設と交換で得た。

  ボロディノ、アレクサンドル3世、アリヨール、スワロフ、スラヴァ、

  オスラビア、

  ウェリーキー、ナワーリン、ニコライ一世を日本本土に回航する。 

 呉軍港に並べられた日露戦艦群は、修理改装待ちしていた。

  

 海軍工廠

 2人の男が改造される軍艦を見上げていた。

 「旧式戦艦のウェリーキー、ナワーリン、ニコライ一世と」

 「装甲海防艦のアプラクシン、セニャーウイン、ウシャーコフは」

 「河川砲艦に改装するのか?」 工場長

 「ああ、イギリスに売却が決まっている」 少佐

 「長江を完全に支配できるでしょうね」

 新聞に書かれている内容だった。

 「たぶん、そうなるだろうな」

 「海軍も随分、気前がいいじゃないか」

 「聞いた話しだと」

 「工作船も建造してイギリスに売却するかもしれないそうだ」

 「イギリスから設計図が来ている」

 「ほう、イギリスが日本に船を発注するのか」

 「中国で使うと決めたら、日本に発注した方が安上がりだからな」

 「なるほど・・・」

 「イギリスの中国支配は万全になっていくな」

 「インド人を大量に中国に送り込んで植民地化していくはずだ」

 「そして、中国人をインドにってね」

 「日本に、その片棒を担げと」

 「日英同盟は強化されて相互保障になる」

 「そうなれば、資源の心配は要らないだろう」

 「なるほど」

 「カムチャッカと北東シベリアの凍土の開発。現時点では困難だからな」

  

  

 赤レンガの住人

 日本海軍は旧式化した軍艦を修理改装して河川砲艦として売却。

 そして、その収益で艦隊再編を進めていく。

 「くそったれが!」

 「戦争で勝って、こんな、みみっちいこと、せないかんのか!」 海軍中佐

 海軍将校が遠くで騒いでいた。

 「また騒いでいるな。あの中佐」

 「気持ちはわからんでもないがね」

 「どうせ役に立たん軍艦を改装して売っても悪く無いだろう」

 「しかし、9000トン級河川砲艦3隻に5000トン級河川砲艦3隻か」

 「中国、いや長江は広いな」

 「かなりの内陸までいけるらしい。それと工場船も建造して欲しいらしい」

 「土地があるんなら地上に建設すればいいだろう」

 「工場を建設するための工場船だろう」

 「なるほど。それで、国内の収益が上がれば助かるな」

 「日本は、外債の大きさからして危機的状況なんだが」

 「ああ、北シベリア域の開発予算も見込めると政府は喜んでいる」

 「アメリカも中国に取り付きたいらしい」

 「山東半島のドイツと連合して黄河流域に取り付こうとしている」

 「福建省は、山が多くないか」

 「それでも中国に取り付きたいのだろう。政府は、どうするのかな」

 「さあ、戦争は、コリゴリじゃないのか」

 「アメリカに河川砲艦や消耗品を売って借款減らしをする方を選ぶだろうよ」

 「問題は、各国で建造されているドレッドノート型戦艦だ」

 「あれか・・・」

 「修理改装では、どうにもならないというのが結論だがな」

 「たしかにそうだが・・・・・」

  

 

 12/16 アメリカのホワイト・フリートが、世界一周航海に出発。

 

 

 

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第14話 1906年 『・・・日露戦争じゃ』

第15話 1907年 『・・・バルチック艦隊来襲ぜよ』

第16話 1908年 『ホワイトフリート来襲』

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