月夜裏 野々香 小説の部屋

  

仮想戦記 『日清不戦』

 

赤は、日本の領土。朝鮮半島も遼東半島も地歩は、僅か

 

第16話 1908年 『ホワイトフリート来襲』

 アメリカ・カナダ西海岸で、排日運動が起こる。 

 02/18

 移民に関する日米紳士協約締結

 日本は米国への新規移民を禁止することを約束

 

 06/30 シベリアでツングースカ大爆発

 

 

 日本の戦後は、借款の支払いと新統治領の開発に向けられていた。

 外積で莫大な借款を背負いながらも、賠償がなく。

 得たのは領土だけだった。

 軍事費は5パーセントにまで削減され、

 戦利品以外に新規装備は無し。

 それどころか、削減し、売却しなければならないほどだった。

 そして、新たな産業が新領土に求められて、投資が始まる。

 2億5000万以上の投資が北方領土に対し行われ、

 衣食住が整備され、小作人が引き寄せられていく。

 関係者たち

 「大地主と家主は、手足をもぎ取られるな」

 「資産の再分配が嫌なら」

 「資産を拡大して分与するかないよ」

 「東北から樺太にかけて200万の家屋を準備していくとなれば困るだろうね」

 「政府が新しい家主・地主になれば、一定の収入が得られるだろう」

 「しかし、この寒い場所に住むかな」

 「フィンランドの家を参考にしているから大丈夫だろう」

 「壁の厚みが20cmもあるぞ」

 「暖房で大変な思いをするよりは、壁の厚みを大きくした方がいいだろう」

 「まぁ そういう考えもあるがね」

 「海軍が戦艦を欲しがっているぞ」

 「戦艦1隻で家100000軒くらい建つよ」

 「水道光熱を準備すると3分の1くらいか」

 「真新しい場所に建てるなら、しがらみもないし、地代無しで建設費だけ」

 「石油も採れるし、意外と儲かるかもしれないな」

 

 

 旅順半島

 樺太(76400ku)島、間宮海峡対岸(5000ku)。

 カムチャッカ半島(370000ku) 北東シベリア(650000ku)

 初夏ともに開発と北方移民事業が行われる。

 軍事費に向けられていた資本が民間に戻され、

 徴兵された兵士に恩給代わりの土地が配分されてしまう。

 土地より金という者も少なくない。

 しかし、大規模な投資が行われると、移民も悪くないと移動し始める。

 「げっ 熊がいる」

 「北海道にもいるよ」

 「東北にもいる」

 「問題は、どうやって生活していくかってことだよ」

 「白樺で木炭でも作りますか」

 「何か・・・斬るのが惜しいな」

 「でも、南の端から北の端まで鉄道を通すそうですよ」

 新しい土地に計画都市が建設されていた。

 12m道路。区画が造成され整備されていく。

 「誰が住むんだろう」

 「石油が採れるらしいよ」

 「石油か・・・」

 「あと、いくつかの工場かな」

 「冬になると操業停止じゃな」

 「保温性を強くして燃料を使わないようにしないとな」

 

 

 10/01 フォード社 T型車の製造・販売を開始。

 

 10/05

  ブルガリアがオスマン帝国から独立宣言

 

 10/06

  オーストリア・ハンガリー帝国がボスニアとヘルツェゴヴィナを併合

 

 10/18〜25

 横浜港

 白色に塗られた大艦隊が日本に寄港する。

 日本側も艦隊を揃えて歓迎するがアメリカ戦艦部隊の方が優勢だった。

 アメリカ・ホワイトフリート艦隊

 第一群

  16000トン級コネチカット、カンザス、ミネソタ、バーモント、

  14948トン級ジョージア、ニュージャージー、ロードアイランド、ネブラスカ。

 

 第二群

  16000トン級ルイジアナ、

  14948トン級バージニア、

  13500トン級ミズーリ、オハイオ、

  12150トン級ウィスコンシン、イリノイ、

  11540 トン級キアサージ、ケンタッキー。

 

 日本艦隊

 第一戦隊戦艦

   15000トン級三笠、朝日、敷島、初瀬、富士、八島

 

 第二艦隊装甲巡洋艦

   10000トン級出雲、吾妻、浅間 、八雲、常磐、磐手、春日、日進

 

 

 戦艦ネブラスカ

 艦橋

 アメリカ海軍将校が双眼鏡を向けている。

 随伴停泊している日本艦隊でなく。

 視線は、東京湾の設備だった。

 「路線をクレーンまで直接乗り付けているのか、かなり多いな・・・」

 「長官、かなり新しいクレーンですね」 副官

 「副長。荷受、荷揚げに所要する日数とトン数を概算で計算しておいてくれ」

 「はい」

 「日本の高速機関車は、アメリカと同レベルか、それを超えているそうだ」

 「1676mm広軌に切り替えからでしょう」

 「単純に工場が港に近ければ、世界に輸出入することも容易だ」

 「日本は、資源が少なく不利かと」

 「国内に売るモノがないのに、近代化のために買い続けなければならない」

 「日本は近代化を望むほど、ハングリーな状態に置かれるというわけだ」

 「我々の労働者にできるかもしれませんね」

 「日英同盟が邪魔だな」

 「日英同盟ですか」

 「厳密に日本製戦艦の力量は分からず終いですからね」

 「戦力2分の1は止めて欲しいものだ」

 「せいぜい、5パーセント引きくらいだろう」

 「日本の10000トン級とアメリカの9500トン級が互角ですか」

 「そんなもんだ・・・」

 「日本戦艦の数が少ないようだが」

 「確か予算と鉄が足りないので捕獲戦艦を改装しているのでしょう」

 「今後は、ドレットノート型が主力になる、日本は対応できないか」

 「対応したくないのが本音でしょう」

 「予算を公共投資に投資」

 「輸出で外貨を稼いで借款を減らさないと大変ですからね」

 「ふっ そうだったな」

 「ロシアの圧力も、これからですから、日本も今後は、調整が困難でしょう」

 「だが日本は、アメリカの中国進出を支援するといっている」

 「悪くない傾向だ」

 「その方が資源を手に入れやすいからでしょう」

 「だろうな」

 「しかし、この港湾設備を見ると・・・」

 「日本は、白人の国家に並ぶ国になるでしょうね」

 「ロシアに勝ったのは大きいからな」

 

 

 装甲巡洋艦 浅間は、ホワイトフリートを監視していた。

 艦橋

 艦長と副長が双眼鏡を覗く、

 「アメリカは16000トンから11000トン級戦艦16隻ですね」

 「16000トン級コネチカット型は、全長139m、全幅23.3mか」

 「三笠型6隻は、134m全幅23m」

 「わずかに負けたな」 艦長

 「16000トン級コネチカット型5隻」

 「15000トン級バージニア型5隻は強敵です」

 「流石、アメリカ」

 「捕獲艦の改装中に来るとは間が悪いですね」 副長

 「過渡期の戦艦を改装するなど馬鹿なことをする」

 「溶かして、新造艦を建造すべきだ」

 「日本戦艦の質的劣勢を考えれば、同格といえるのでしょうか?」

 「レトヴィザンと同格艦は、メイン型3隻だろうな」

 「技術的に日本は劣勢だ」

 「しかし、アメリカより、イギリスの方が優秀で戦艦を40隻以上保有している」

 「ですがボロジノ型5隻は、アメリカ製のレトヴィザンでなく」

 「フランス製のツェザレウイッチ型を模倣していますが」

 「たぶん、政略的な理由だろう」

 「なるほど・・・」

 「ロシアは貴族社会。アメリカよりフランスに近いですか」

 「そんなところだろう」

 「しかし、ドレッドノート型戦艦の建造は深刻ですね」

 「ドレッドノート型に対抗しての改装だ」

 「貧乏な国の。というのが主語に無いようですが」

 「貧乏な国は、相対的なものだ、どうにでも解釈できる」

 「しかし、軍事費の削減は酷すぎる」

 「財閥系子弟と軍属系子弟の婚姻が増えているのが原因では?」

 「んん・・・軍人のくせに。たらし込まれやがって、情けない」

 「武士は食わねど、何とかなんですがね」

 「・・・侍気質がいなくなったな」

 「もっと、愛国心教育をすべきでは」

 「財閥系が新聞社を抑えている」

 「“政府からお金をもらっている人間が保身から、愛国心を叫んでいる”」

 「と騒いでいるな・・・」

 「我々のことでしょうか」

 「ほかに、いるか?」

 「連中、金に目が眩むと、ろくなこと言いませんね」

 「まったくだ。我々はともかく、命を懸けて死んでいった兵士を愚弄している・・・」

 「とはいえ、旅順降伏を促した文書は、財界の人間が考えたものらしい」

 「あれがなければ、講和の時期は、あと3ヶ月、伸びていたそうだ」

 「というわけで軍事費削減ですか?」

 「戦争が終わったいま、それを覆す適当な理由は無いな」

 「上層部は、予算獲得のため、なにやら動いているようだ」

 「しかし、陸軍は鉄道省と組んで甘みがあるが、海軍はな・・・・」

 「外患より、内憂ですか?」

 「財閥系は軍部を押さえ込もうとしている」

 「しかし、まだ内憂までには至らないだろうな」

 「ロシアの太平洋艦隊が再建するのは20年も先だ」

 「アメリカの方が脅威ですがね」

 「パナマ運河が完成するのは10年後ぐらいだろう」

 

 

 10/24

  日本統治下の台湾で縦貫線基隆・高雄間が全線開通

 

 11/14

  清国で光緒帝が崩御、

  翌日には最高権力者であった西太后も崩御

 

 11/30

   高平・ルート協定締結

   日米両国の太平洋・清の領土保全・機会均等

 

 12/02

   愛新覚羅溥儀が清の皇帝に即位

 

 

 

 

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 月夜裏 野々香です。

 台湾投資は、史実の朝鮮・台湾投資。

 樺太・カムチャッカ・北東シベリア投資は、

 史実の満州投資と同じくらいです。

 とんでもない浪費になるか、実を結ぶか・・・

 

 

ルガー P08 4インチ ヘビーウェイト

1908年、ドイツ陸軍制式ピストルとして、P08型が採用される。

1909年より1918年の第一次大戦終結まで

DWM社において90万丁が生産された。

 

 

 

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第15話 1907年 『・・・バルチック艦隊来襲ぜよ』

第16話 1908年 『ホワイトフリート来襲』

第17話 1909年 『貧乏だから仕方がないだろう』

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