第21話 1913年 『前途は、ぼちぼち』
中国上海
清国皇帝は、天子の威光を失い。
清露戦争で、とどめを刺される。
中国は、欧米列強に解体され、
搾取されるだけの植民地になろうとしていた。
アジアで独立している国は緩衝地帯のタイ王国を除くと日本だけ。
日本は、日露戦争の勝利で、不平等条約改正の糸口を掴み、
日露戦争後は、日英同盟で国際的地位を押し上げ、
泣きたくなるような労働条件で国家経済を成長させていく。
日本の発言力は、欧米諸国の中国進出を後押しすることで大きくなっていた。
赤レンガの住人
「バルカン半島で欧州列強がぶつかる」
「日英同盟だとイギリス側だよな」
「しかし、軍艦がないぞ。日本にドレッドノート型戦艦はない」
「建造は、始まったばかりだ」
「3年後だ。先は長いな」
「今ある中途半端な戦艦13隻では付け焼刃だ」
「ド級モドキ艦で誤魔化せるとは思えないな」
「大砲が当たったら、いきなり戦闘不能もありえるな」
「衝撃で装甲が割れたら、そのまま沈むぞ」
「英独混合の最新砲台は、50口径283mm連装3基で、それほど悪くないはず」
「たしかに砲の威力だけならドイツの最新鋭巡洋戦艦モルトケと同じだけどね」
「問題は、火砲じゃなくて防御力だろう」
「あちらこちらガタがきているぞ」
「作戦能力も怪しいものだ」
「それでも、機関を強化して補強している。何とかなるだろう」
「早く。扶桑型高速戦艦8隻の建造をして欲しいものだ」
「360mm連装砲4基で世界最強の新鋭戦艦か」
「この戦艦を建造すれば、日本海軍は一息つける」
「日露戦争で最大の戦果をあげた海軍なのに」
「だいたい、日本国民は、海軍に対して冷たすぎるよ」
「まったくだ。建造が決まった今でも、議会は、ごねているくらいだ」
「しかも、扶桑型戦艦建造の暁には、旧戦艦を河川砲艦として欧米列強に売却だと」
「泣きたくなる話しだ」
「事実。中国軍相手なら。十分だろう」
「そうだが・・・」
「記念艦にしたいという声もある」
「節操がないが鉄がないから無理だろう」
「鉄道省が鉄を使いすぎだ」
「だいたい電気溶接って何だ。鋲はどうした」
「戦艦を時化でバラバラにするつもりか」
「あれは、改装戦艦の上甲板の施設の一部だけだろう」
「雨漏りがするそうだぞ」
「戦艦で、実験することもなかろう」
「駆逐艦を改装する費用なんて出ないだろう」
「しかしなあ、いくら実験的な要素があっても主缶形式、主機形式はバラバラか」
「炭油混焼やら重油専焼やら」
「レプシロやらタービンやら全部バラバラで足並みが揃わないじゃないか」
「改装戦艦13隻は見かけはともかく、捨てだな、捨て」
「捨てね・・・」
「結局、新型戦艦は、重油専焼で良かったのか?」
「・・・本当は、ディーゼル電気推進が良かったがね」
「アメリカと同じ重油専焼電気推進で落ち着いたな」
「北樺太とカムチャッカの油田のおかげか」
「・・・何とか足りるだろう」
「政府も妥協したらしい」
「あいつら石炭だけじゃ飽き足らず、石油もか」
「石油の方が使いやすいからな」
「散々、ディーゼル機関だと騒いだくせに」
「商船隊で使うさ。実験代わりに散々作らされた」
05/30
第1次バルカン戦争終結 (バルカン同盟諸国 VS オスマン帝国)
06/29
第2次バルカン戦争勃発 (ブルガリア VS バルカン諸国)
長江 武漢の租界地
武漢の堤防にアメリカ商船が着き、自転車が降ろされる。
日本で購入した製品が中国で消費され。
中国の資源が日本へ送られる。
それで欧米諸国は莫大な収益を上げていた。
特に中国は軍閥がバラバラに独立。
中国の豪商と欧米人が一緒になって中国民衆を搾取。
世界中の植民地と、ほぼ同じで中国の植民地化に成功しつつあった。
武漢の租界地は、1万トン級の商船が横付けできた。
そして、欧米列強は停泊地を含めて要塞化していく。
欧米列強のトラの威を借りたインド人、黒人、フィリピン人が
土方作業の中国人を監督し、
大規模な土木造成が行われていた。
長江流域の要塞都市群は、欧米諸国のアジアの拠点となり。
年毎、インド人、黒人、フィリピン人が急増し、英語圏が作られる。
そこにドイツ人、イタリア人、オランダ人が後塵で入り込んでいく。
欧米資本家に対し、
暴動を起こす中国民衆が中国人(山賊)傭兵によって鎮圧されていく。
それが難しいほど、民衆が膨れ上がっても、
インド兵が後に控えていた。
長江の港街
高台のテラスハウス
アメリカ商人と日本商人がテーブルを挟んで昼食を取っていた。
「サトウ。石炭が出そうな土地があるんだが中国人の墓になっているらしい」
「何とか買い取る算段をしているが、もうしばらく時間が必要だな」
「他の石炭、鉄鉱石の採掘は?」
「タングステン、アンチモン、亜鉛、ニッケル」
「モリブデン、鉛、水銀が採掘されそうだがルートの確立が遅れている」
「それも欲しいですな」
「日本が戦艦を建造するのに?」
「ごく一部ですよ」
「それより危急且つ重要な事柄があるので」
「それは海底トンネルですか?」
「日本は、本州、九州、四国、北海道、樺太の5つの島で構成されています」
「それらを鉄道で連結したいと思うのは道理では?」
「実に偉大な民族だ」
「信じられんね」
「そう思っていただければ嬉しいですね」
サトウは、ほくそえむ。
海底トンネルは予算会得の口実。
鉄道省・陸軍のセクト主義のごり押しにすぎなかった。
そして、欧米列強に対し、
日本は大陸に野心がないと伝えるのに便利だった。
「日本は地震が多いのに?」
「まったくです」
「地震だけでなく。台風に津波。コレラに結核による死亡者も多い」
「それだけ天災を受けながら日本が列強に並んでいる・・・」
「実に素晴らしい」
「我々、白人が長い航海をして、会いに来たのは日本人なのかもしれないな」
「それほど立派ではない。遡れば功罪がある」
「どの世界でも功罪がある、この国では西太后・・・」
「いまは、袁世凱かな」
「袁世凱より、孫文の方がいいと?」
「どちらでも良いよ」
「どっちも我々から武器を買わなければ立ちいかない」
「それぞれの国の祖先が積み重ねた結果だ」
「日本が、いま列強なのは、過去の功罪の積み重ねの結果だよ」
「つまり、功が多いわけだ」
「それがアメリカの自信ですか?」
「アメリカの歴史も突付けば、問題ありだな」
「フリーダム政策は功の方でしょう」
「ウィルソンのおかげで国民生活の向上が進んでいるのは確かだがね」
「ここまでは、なかなか届いていないようだ」
サトウはテーブルに並べられた食事と
テラスの調度品を見て冗談と受けとめるかで悩む。
07/12
中華民国 袁世凱の専制に反対して革命が起こる。
北京 各国の公館
日本人は、大陸に直接干渉しないことで、
列強会議の末席を許されていた。
「混乱は、まだ続きそうだな」
「続けさせているのさ」
「隣家の夫婦喧嘩、親子喧嘩、混乱は刺激になって面白いだろう」
「あはは・・・」
「ワインを傾けて、月明かりで隣家の修羅場を覗き込む」
「自分は、最高に幸せだと思える瞬間じゃないか」
「あはは・・・」
「彼らが自滅すれば、懐に転がるモノも大きくなるし」
「そうそう、我々は、良い隣人として微笑ましく」
「仲良くしないと駄目だよと言いながら・・・」
「武器とアヘンを渡すんだ」
「最高だな」
白人たちは恍惚としていた。
08/10 第2次バルカン戦争終結
09/01 袁世凱が南京を占領して第2革命は失敗する。
クレムリン宮殿は巨大な建物だった。
ロシア皇帝の家族
ニコライ二世45歳。アレクサンドラ皇后41歳。
アレクセイ皇太子7歳。
オリガ皇女18歳。タチアナ皇女16歳。
マリア皇女14歳。アナスタシア皇女12歳
庭園で・・・
ニコライ二世、ミハイル大公(弟)、リヴォフ公爵
「やはり、日本に皇族を訪問させた方が良いのか」 ニコライ二世
来年、ロシア議会のゼムストヴォ全ロシア連合議長に選出されるリヴォフ侯爵に尋ねた。
「日本は、相当な予算をかけて、ロシア正教の教会を建築しています」
「それもかなり見事な出来だと報告を受けています」 リヴォフ公爵
「ふぅ〜 気が進まんな」 ニコライ二世
過去、日本で襲撃された皇帝は乗り気でなかった。
ロシア帝国は、専制の国だった。
ロシア帝国議会(ドゥーマ)でさえ、
皇帝に助言が出来る諮問機関でしかなく。
いかなる勢力も皇帝ニコライ二世に対立するものはない。
とはいえ、命令ばかりで人間関係は成り立たない。
皇帝を守る利権構造が作られていたのだった。
もっとも、その利権構造、少々、危機的状況ではあったが・・・
「皇帝。わたしが代理で行きましょうか?」 ミハイル大公
「・・・・・・・」 ニコライ二世は、逡巡する
満州・朝鮮半島を弟ミハイル大公の基盤にするのを躊躇った。
日本は、ロシア帝国から領土を掠め取った国だ。
満州・朝鮮域はロシア人の移民が急速に進んでいる。
極東ロシアは、欧州ロシアに近い潜在力が期待されていた。
ミハイル大公と日本が結びつき、
満州・朝鮮を基盤にしてしまうことを恐れ。
単純な政治力学で気が進まないという発想になる。
少し厳しいくらいが帝政を確固としたモノにできて良いのだ。
「ドミートリー大公(従弟)とオリガを日本に訪問させよう」 ニコライ二世
「御意」 ミハイル大公
「・・・皇帝。ラスプーチンのことですが?」 リヴォフ公爵
「あの男の事は詮無い事だ。関わるな」 ニコライ二世。苦々しく呟く。
一人息子、アレクセイ皇太子が血友病であることは、皇族の秘密だった。
ラスプーチンの言動は、ニコライ二世によって保障されていた。
一人息子の病状が休まるならと・・・・・
世界最大のロシア帝国は、ニコライ二世のために存在している。
10/10 臨時大総統であった袁世凱が正式に大総統に就任
南極大陸
1911/12/14
ノルウェーの探検家アムンゼンが南極点に一番乗りを果たした。
そして、34日後、翌年1912/01/17
イギリスの探検家スコットは、学術調査にかまけながらに南極点に到達する。
その後、遭難していたところを日本の南極探検隊に救出される。
日本の南極探検は地道。
というより領土拡大を目的とした基地建設だった。
アムンゼンが探検。
スコットが学術調査。
白瀬が基地建設。
3者の性格の違いは、歴然としていた。
日本の南極基地は、徐々に南極点方向に及び。
二年後、1913/12/11。
白瀬南極探検隊が南極点に到達。
無事に基地へと帰還することが出来た。
もっとも、派手な先陣競争もなく、第3位
歴史に残すためより南極大陸に越冬している面子のためと言えた。
某大臣宅
「約束が違うじゃ なかか」
「だから造ると言っとろう」
「遅いわい!」
「じゃから実験用の商船に不具合があったからやろうが」
「それが終われば、造るわい」
「か、海軍をなんだと思っとうとか」
「じゃから、もうちっとまてや」
「あんなボロ舟で戦が出来るか!」
「じゃから。戦争にならんようにしとうわい!」
「こんっ! あんなバテレン連中が信じられるか!」
「じゃから新型機関が採用に決まったんやないか」
「ウソば、こけ! また時間稼ぎしょうだけじゃ」
「そ、そげんことは、なか」
「き、きしゃん。い、いま、どもった。やろう」
「どもっとらんわい。しぇからしか!」
「う、うそば、いえ。いま目が泳いだろうが」
「しぇからしか! そげんこつなか」
「ほんとうやろうな?」
「ほんとうじゃ」
「・・・本当は、金がないんやろう」
「そげんこつなか」
「・・・鉄道省に流用なんかしとらんやろうな」
「そげんこつなか・・・」
「ほんとうやろうな」
「ほんとうじゃ」
「」
「」
・・・・・・・・・・・・
第二次バルカン戦争が終わった。
西洋諸国がオスマントルコ帝国を押し返し、
南東欧の争奪戦争後
この地域で有力国家となったセルビアは、オーストリア帝国と反目する。
一触即発といった状況に、ヨーロッパの火薬庫とも表現されていた。
ここは、オーストリア帝国対岸のベネチアの酒場。
海の向こうは係争中のトリエステ港。
日本政府の視察・諜報 & 鈴木商店の営業で来た商人がいた。
欧州で戦争になれば日本も影響を受ける。
可能であれば戦争は望んでいなかった。
日本は、同盟国のイギリスの保障と中国の需要が日本経済を引き上げていた。
日本経済は緩やかに上昇し成長し、借款も返済している。
当然、イギリスが負けると、日本は国際的な保証人を失う。
戦争は、不確定要素が大き過ぎて避けたい。
というのが日本政府の希望だった。
「どうだい、潮。調子は?」 イタリア商人
「少し・・・二日酔いだ」 潮
「飲めば直るさ」
「日本でも、そうだ」
「そうだろう。太陽が東から昇り、西に沈むのと同じくらい正しいんだ」
潮は苦笑する。
この男もたぶん、セルビアに対する諜報のアルバイトをしている。
「この地域は、戦後なのに、いまだに落ち着きがないようだが」
「国境定まらずだな」
「大国もバルカン半島地域に野心を燃やしている」
「戦争しても人が死ぬだけだがね」
「国は血を流してもエゴを押し通し」
「人の欲望は血を流しても得たいものなんだろうな」
「イタリア人も?」
「いや、我々は、ローマ帝国以前から」
「もっとも古い時代から戦い続けてきた」
「我々は、戦うことより楽しむ方が良いと思っている」
「戦争など成熟されていない野蛮な国民が望むことだ」
「そういう国民が、隣国であると嬉しいですな」
「我が国は戦争資源がなく、戦うことさえ目算が立ちませんよ」
「お互いに・・・」
大臣宅
大臣が二人の男と迎え合わせに座っていた。
「海軍の大規模な増強は、こちらの計画を著しく阻害している」
「日露戦争で得られた軍艦も既に旧式化している。既に議決も済んだ」
「何も議決で決まったことにケチをつけるつもりは、ない」
「しかし、海軍力を増強して、もたらせるものは、国際的な緊張でしかない」
「それに海軍が国民の利益に付与するかどうか、いささか疑わしい」
「一方、日本国内での投資は、国内の産業に帰一する」
「国民生活にも波及しやすい」
「いや、制海権というものは、そちらでも認識していることであろう」
「まあ、そうだがね」
「そうであろう」
「現状でもドレッドノートに準ずる戦艦が13隻保有されている」
「防御力と運用上で問題があるのは認識している」
「しかし、攻撃力は、遜色ないものと信じている」
「もう少し遅らせたところで、支障はないと思うが」
「現場での意見は、そうでもないようだ」
「私自身、機関室に入って確認したこともあるし」
「直接、水兵と話したこともある」
「同情すべきという、段階ではない」
「わかりました」
「しかし、沈めば消えてしまう軍艦にそれほど肩入れする必要があるか」
「いま、一度、考慮していただきたい」
「現在、西太平洋域で敵対する海軍は、存在しない」
「そして、欧米諸国との関係は、すこぶる良いと思われる・・・」
「よろしいか」
「・・・新技術の導入で足踏みしているのは、事実」
「成熟された段階に達するまでは・・・少し、余裕があるかも知れぬ」
「そうそう」
「沖縄のお菓子を持ってきたのを忘れておった」 箱を出す
「・・・気を使わんでも良い。菓子だけをいただこう・・・菓子だけだ」
客が帰った後。
大臣は、引き出しから銃を取り出す。
苦々しげに半時ほど弄び、引き出しに戻した。
八幡製鉄所
日本、イギリス、ドイツ、アメリカの装甲版との比較がされていた。
日本の装甲版は、明らかに劣勢だった。
装甲版が破壊されるまで圧力をかける実験だった。
ガンッ!
という衝撃音とともに装甲版が割れる。
「やっぱり、負けているな」 技術者A
「はぁ〜 差が縮まらないな」 技術者B
「だいたい。この数値に達するまで駄目は、酷な気もするが」 技術者C
忌々しげに数値を睨みつける。
「陸軍と鉄道省の横槍に決まっている」
「連中が鉄を欲しがっているんだ」
「戦艦の様に硬度、強度、粘度に、こだわっていないから」
「戦艦を後回しにしたいらしい」 技術者A
「連中は、汚すぎるよ」
「いつも定時過ぎると酒を持ち込んできやがる」 技術者C
「俺らの仕事が遅れれば、それだけ、長く鉄を流用できるからに決まっているだろう」
「鉄道会社から酒代が出ているという話しだ」
「酔い潰させるだけで評価されるらしい」 技術者B
「こっちの技術だけは、散々、利用するくせに」
「同じ会社で派閥を作りやがって」 技術者C
「お金持ちは強いよな」
「賄賂だったら訴えてやるところだ」 技術者A
「いくらなんでも、そこまで露骨じゃないさ」
「たいした額じゃなかったね」
「子供がお年玉を貰ったときは、いい加減に怒ったがね」 技術者B
「先に空母か、巡洋艦を建造するという話しもあるな」 技術者C
「そうだな・・・もう少しなんだがな」 技術者A
装甲の破断面を見比べながら呟く。
飛行場
離陸していく飛行機。
「民間の連絡機は、離陸を遅らせるのか?」
「ええ、エンジンの調整で戸惑っているようです」
「軍民併設か。わずらわしいな」
「ですが、鉄道省の資金は大きいですよ」
「鉄道と飛行場が直接結ばれて、どっちも大きく出来ますからね」
「連中が飛行機に関心を持つと思わなかったがね」
「関心は持っていないと思いますよ」
「鉄道と飛行場を併設させるということで、路線と旅客を延ばす気ですから」
「海軍に鉄をとられたくないということでしょう」
「港湾にも乗り入れていますが」
「船客と物資の搬入を有利に取り込みたいだけでしょう」
「まだ、飛行機屋と組んだ方が鉄を取られなくて良いということか」
「好都合だが海軍には同情するね」
「同情だけなら海軍でしょう。見るも涙、語るも涙ですよ」
「元々、撃ち合って勝ったというより、虚を突いて・・・だからね」
「海軍に予算は降りているらしい」
「しかし、あれこれ難癖付けられて、建造は進んでいないようです」
「ははは」
「そういえば、ステンレス製の駆逐艦も検討させるとか」
「錆びなくて、耐久年数が長いだろうとか」
「まさか、塩分に弱そうだし、高すぎるだろう」
「だから、鉄道省と陸軍の難癖です」
「駆逐艦も造らせたくないんですかね」
「ははは・・・」
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第21話 1913年 『前途は、ぼちぼち』 |
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