月夜裏 野々香 小説の部屋

  

仮想戦記 『日清不戦』

 

まだ途中ですが、こんな感じの世界です

 

第29話 1921年 『人種差別かよ』

 ロシア革命によって、ソビエト連邦の誕生。

 

 中国大陸

 毛沢東、陳広博らは、

 中国各地の共産主義グループの代表を上海に集結させ

 中国共産党を結成する。

 北中国、段祺瑞(だんきずい)大統領(北洋軍閥)

 南中国、孫文大統領(西南軍閥)

 北中国政府と南中国政府は、共に中国の共産化に反発。

 政府軍を繰り出して共産主義者を鎮圧していく。

 しかし、中国政府の腐敗と欧米列強の抑圧と差別意識、

 何より初期の中国資本主義は、何重も搾取し、

 劣悪な環境で虐げ、闇に葬っていく社会だった。、

 中国民衆は、共産主義に希望を見出し、集まり始めていた。

 「・・・おい、ワン・タオ。仕事を見つけたある。炭鉱ある」

 「ワン・チェか・・・・また、炭鉱あるか」

 「しょうがないある」

 「この辺で仕事と言えば、炭鉱ある」

 「早く行かないと、食いっぱぐれるある」

 銃声が聞こえる、武装蜂起とすぐわかる。

 「またやっているある」

 「あいつら、どうやって、飯をたべるある」

 「ドサクサにまぎれて、豪農か、豪商を襲っているある」

 「最近は、かなり酷いある」

 「女子供、一族全滅ある」

 「はあ・・・・・」

 「おまえも入るあるか」

 「どっちに?」

 「ん・・・警備隊の方は、武器があるから強そうある」

 「でも群集側の方が数が多い・・・おい、置いていくなある」

 ワン・タオとワンチェは、今日も炭鉱に行く。

 中国人は、ちょっとした経験、意識、切っ掛けで体制側、反体制側。

 そして、列強側に転がる要素がある。

 しかし、大多数は、危険を冒すより、

 汗を流して日銭を稼ぎながら毎日を送る方を選択する。

 彼らに北中国や南中国の愛国心はなく、

 大統領が誰であれ生活に関係がなかった。

 物覚え付いた時には働かされており、

 教育も受けていない。

 そして、ほとんどの中国人は、共産主義がどういうものかわからず。

 列強の目的や争いの原因さえ理解していなかった。

 しかし、理解していた事もあった。

 働かなければ、その日、食べていけないことだった。

 それも、賃金はなく、食事だけだった。

 無論、逃げ道もある、

 路地裏には、アヘン漬けの漢民族が横たわっている。

 仲間になるのは難しくなかった、

 まだ、そこまでは、絶望していだけとも言える。

  

  

 中国人と欧米列強を結び付けていたのがキリスト教の伝道所だった。

 そこがカトリックであれ、プロテスタントであれ、

 中国人の信者が集まれば、献金が集まる。

 そして、信者教育という形で中国人の教化が始まる。

 出来の良い者。

 出来の悪い者。

 教える側の不正・腐敗・不信など。

 様々あれど、10人に1人は使い物になり、

 100人に一人は役に立った。

 中には、天才的な才能を発揮する者も現われ、

 事務処理など全て任される中国人も増えていく。

 そういった中国人は列強の機関や民間企業に雇われて、

 列強の代弁者となり、列強と中国民衆の間を結びつける。

 そして、曲がりなりにも列強と中国の関係を強化し。

 宗主国と植民地の人間関係を断ち難いものにしていく。

  

  

 共産主義では、キリスト教の伝道所と少し似た方針で、

 より大規模に安易な方法が取られた。

 とにかく、資本家に搾取されていることを強調し、

 群集に集うことを呼びかけ突撃させる。

 政府軍や列強軍が撃って来れば、しめたものであり、

 仲間の死の復讐心を煽り、民衆の怒りを高めていく。

 そこで、群集心理を誘導し、

 共産主義教育を施し、

 希望を与えながら闘争と憎しみを浸透させていく。

 感情的にも、知的にも、誘導された群集は、次第に増えていた。

  

 キリスト教と共産主義は、中身は、非なるものでも形は似ていた。

 折半案として解放神学も構築されていく、

 しかし、聖書の骨子から外れているのか、

 共産主勢力に利用されるだけで主流になれない。

 そして、マルクスの序章の様に

 地から赤い妖怪のごとくうごめいて湧き起こり、

 凶暴な共産主義が中国全土へ浸透していく。

 揚子江経済圏の人種差別、貧富の差と南北中国の不正と腐敗。

 口先だけのキリスト教は、共産主義を温床の様に育て、

 抑圧すれば抑圧するほど。鎮圧すれば鎮圧するほど。

 共産主義の波は、中国民衆に広がっていく。

 反キリストと偽預言者によって導かれた中国民衆は、共産主義が馴染んだのか、

 次第に凶悪になっていく。

  

  

 アメリカ合衆国

 1921年5月

 連邦議会は、最初の移民割当法とよばれる、

 おもに南・東ヨーロッパからの移民を規制する暫定移民法案を可決。

 これは、ドイツ帝国が抱え込んだ不良民族(ドイツから見て)の

 アメリカ移民を制限することで、ドイツ帝国の弱体化を画策していた。

 もちろん、オーストリア・ハンガリー帝国からの難民受け入れも拒否。

 アメリカ国内の治安の安定と同時に

 南欧州と東欧州に対する有利な交渉を狙ったものと推測される。

 さらに3年後の24年5月、

 それらの地域からの移民をさらに厳しく制限する

 恒久的な移民割当法が制定(7月施行)。

 これによって27年以降、

 アメリカへの年間移民総数は15万人までになる。

 日本人移民も、日米紳士協約(1907〜08)が破棄され、全面的に移民禁止。

 排日移民法ともよばれ、日本の反米感情が高まった。

 もっとも、日本政府の移民政策は、北東シベリアなど北方に集中し、

 海外移民は、民間任せで意欲的なものでなかった。

  

 政府主導の海外事業は、フィンランドに対し進められ、

 大規模な国家予算に引き摺られるように

 スバールバル諸島とヤンマイエン島への移民も進んでいく。

 数人の男たちが凍土を掘って地質を確認していた。

 「・・・・こんな、食料も、生産されもしない場所に移民してどうするんだよ」

 「石炭が出るだろう」

 「それに欧州向けの余剰製品はここか、フィンランドに一旦、集められる」

 「その気になれば、アメリカ東海岸にも輸出できる」

 「ぅぅぅ・・・さむ〜」

 「北緯4度だから、アイオン湾より北だな」

 「揚子江の代わりが、ここかよ」

 「なんか不動産詐欺じゃないのか」

 「不公平は今に始まったことじゃないよ」

 「白人には頭にくることばかりだ」

 「凍土ばかりだな」

 「ヤンマイエン島は、もう少し暖かくて良いそうだ」

 「南にあって、火山島だからだよ」

 「海が凍らないのは、北大西洋海流の影響アリかな」

 「火山島なら温泉が出るかも知れんな・・・」

 「ここも投資さえしっかりすれば軌道に乗るんだがな」

 「その投資がないから苦労するんだ」

 「アメリカが移民法で日本人を制限したのも日本への送金を嫌ってのことだ」

 「んん、むかつく連中だぜ、揚子江で贔屓してやる」

 「贔屓されているのは、こっちだろう」

 「エコノミックアニマル扱いだ」

 「資源を買うために働いて」

 「加工するために働いて」

 「輸出するために働いて」

 「家族を養うために働いて」

 「国を守るために働いて」

 「最低でも5倍は余計に働かないと列強と並べず」

 「6倍働いてようやく、贅沢が出来るということさ」

 「贅沢する暇があればだがね」

 「死ぬまで働けってことか」

 「しかし、軍隊なのか土建屋なのかわからんな」

 「世界最強の土建師団だよ」

 「俺たちの前に道はなく、俺たちの後ろに道が出来るんだ」

 「トンネルじゃなくて道だったか?」

 「・・・トンネル」

 「・・・ふっ」

 「くそ〜 揚子江を保障しているんだから」

 「こんな寒い島じゃなくて、コンゴをよこせ」

 「コンゴは暑そうだな」

 「少なくとも、凍土じゃない」

 「鎖国しなければ良かったんだ」

 「そうすれば、今頃、東南アジア」

 「上手くいけば、オーストラリアやニュージーランドだって」

 「かもな」

 「しかし、択捉島の住人が羨ましそうにしてたよな」

 「ここに投資される予算は大きいからな」

 「少なくとも、民間を引っ張ってこれるまで投資は続くだろう」

 「領土が広ければ良いというものでもないだろうに」

 「搾取すればなんとかなる」

 「日本が搾取するなら・・・白熊とペンギンだな」

 「・・・・・・・」

 突然、地響きが近付く。

 コブシ大の雹が降り始め、男たちは、逃げ出していく。

  

  

 

 イギリス

 各国の戦艦が並び、

 戦艦(加賀、土佐)がイギリス、プリマスに入港していた。

 日本人は、戦艦を見て畏敬を持つ者もいれば、

 これがいくらで、その金があれば、どのくらいのトンネルが掘れるか、

 簡単に概算する者もいる。

 しかし、イギリス人の多くは、畏敬のまなざしで

 日本戦艦(加賀、土佐)を羨望するしかなかった。

 隣に並んでいる巨大な巡洋戦艦フッドは、出来立てほやほや、

 見掛けだけ勝っていた。

 しかし、扶桑型と、まともに撃ち合えばフッドは負ける。

 日本の高速戦艦は、そういう艦種だった。

 高速戦艦 土佐

 「・・・・副長。でかいな、フッド」

 「全幅32mで同じですが、全長が262mで22mも長いですからね」

 「強そうに見えるな」

 「訓練費用がたくさんあって強いと思いますよ・・・」

 「42口径381mm。射程34500m、初速884m/sが、8門か・・・・」

 「威力で負けています」

 「こっちは、アメリカの戦艦と同じ50口径356mm砲だ」

 「仰角45度なら射程37000m、初速820m/sが8門」

 「それほど負けているわけではないな」

 「カタログはともかく。当たりますかね」

 「日本は、当たりやすいように50口径にして」

 「弱装で撃ち出すから当たらんと困るな」

 「巨済島コンプレックスですか?」

 「海戦はあったが巨済島沖海戦の主役は」

 「水雷戦隊の特攻で勝ったようなものだ」

 「戦艦の砲撃は酷いものだった」

 「それにバルチック艦隊の時は、訓練して待ったはずが」

 「結局、旅順港の閉塞作戦だった」

 「閉塞作戦は、鉄道省と陸軍の罠では?」

 「“海軍に大砲を撃たせて勝たせると、予算を取られかねなかった”」

 「と、鉄道省の大官僚が言ったそうです」

 「ったく、勝てば良いというものではあるまい」

 「美徳や美談が感じられん」

 「いま思えば鉄道省と陸軍に上手いこと、やられていますね」

 「ったくだ・・・」

 「楽が出来たのは事実だが出世できんね」

 「おかげで予算が取れないのでは話しになりませんよ」

 「しかも、予算欲しさに大砲ぶっぱなしても助けてやらんとか」

 「政府にクギ刺されてるしな」

 そう、日露戦争中の血の代価が日本の国防省の発言力であり、

 陸海軍の予算額を決定付けていた。

 拠点防衛と拠点攻撃に終始した陸軍。

 最小限の人的損失で勝ってしまった海軍の発言力は低かった。

 「そろそろ、スバールバル諸島とヤンマイエン島に回りますか?」

 「そうだな、そろそろ行くか。居心地が良かったんだがな」

 「連中、建造費を予算に換算して」

 「何キロ掘れるとか、発電所が建設できるとか、言いますからね」

 「最初は喜んでくれるぞ」

 「少なくとも北太平洋の新領土では」

 「北大西洋の新領土だとどうかな?」

 「意外と安心するかもしれませんね」

 「北大西洋で孤立してますから」

 「そうあってくれれば嬉しいがね」

 そう、軍艦が、その真価と価値を発揮するのは、

 海外と僻地の領土だった。

  

  

 

 パリ

 セーヌ川両岸に建つ日本・中国料理店

 北側の“サクラ・ボタン”

 南側の“ボタン・サクラ”

 料理が美味しいのか、

 ミステリアスな日本人と中国人のカップルに惹かれたのか、

 両岸に店があるためか、

 中立の為か、盛況だった。

 ドイツ北側の “サクラ・ボタン” 

 に2人の男が席に座って北京ダックと寿司を食していた。

    

 「イギリスの新型戦艦の建造は?」

 「当面は、フッドで止めているが、ドイツは?」

 「ザクセン、ウェルテンベルグで、止めている」

 「フランスの件で妥協してもらえるのなら」

 「マッケンゼンの建造は、今のところ考えていない」

 「日本は戦艦建造はなさそうだ」

 「しかし、アメリカは、建造したがっている」

 「ここでイギリスとドイツが戦艦の建造だと、不味い」

 「わかっている」

 「通商の自由が保障されるなら必要な艦艇は巡洋艦になる」

 「我が国がドイツの通商を制約することはない」

 「しかし、大陸の方は?」

 「むろん、大陸での経済活動も両国にとって利益になるのなら阻害しない」

 「フランス側はわからんがね」

 「フランスとの関係修復では、コンゴ市場の国際化で妥協してもらっている」

 「時間はかかるがドイツ・フランスの関係は、いずれ修復するだろう」

 「結構だ。お互いにドーバーを挟んで近しい仲だ」

 「出来れば、今後ともイギリスと友好関係であり続けたい」

 イギリスとドイツは、ドーバーを挟んで対岸側であり、

 対岸まで40km。

 強力な要塞砲台と上陸用舟艇で上陸作戦が出来る距離だった。

 ドイツとイギリスは、いくつもの問題を総括的に処理していた。

 一番、悲惨なのは、犠牲にされたフランスであり。

 英独両国は弱みを抱えながら妥当な線で落ち着いていく。

 ドイツは、イギリスが海上通商において妨害しない限り。

 イギリス海軍に挑戦せず、最小限の海軍保有で済ませる。

 イギリスはドイツの海外通商を妨害せず。

 フランスとドイツの仲介を行うことで

 オーストリア帝国、トルコ帝国との交易も再開する。

 「ところで、ドイツは、揚子江にポーランド人、ベルギー人のコロニーを建設しているようだが」

 「・・・アメリカに移民を制限させられてね」

 「オーストリア・ハンガリー帝国も、それで、困っている」

 「イギリスも、揚子江でやっていることだろう」

 「インド人を揚子江に送るのと」

 「白人を揚子江に送るのを同列にされては困るよ・・・」

 「不都合でも?」

 「いや、不良民族をアメリカ大陸にやるのは悪くないがね」

 「合衆国を今以上に強大にすることもない」

 「南米や揚子江でも良いだろう」

 「ところで日本の弱体化は?」

 「国家予算の1割を北大西洋に向けたらしい」

 「豪勢なものだ」

 「予測より、随分、大きいな」

 「それでも国家基盤の弱い国だ」

 「今後、日本の予算編成は混乱するだろう」

 「・・・・お手並み拝見かな」

 「ところで、ハプスブルグ家は?」

 「正直。24パーセントのドイツ人で多民族国家の」

 「オーストリア・ハンガリー帝国を支えられるわけがない」

 「アメリカに移民できなくなったのは痛かろう」

 「ほう、アメリカの移民制限は、影響大か」

 「ハプスブルグ家も、ロマノフ家と同様、風前の灯だな」

 「戦争で負けなくても権威を失墜させている」

 「オーストリア・ハンガリー帝国は、ドイツ帝国よりガタガタだ」

 「不良民族の移民が進まない」

 「かといって強制移民は難しい」

 「それよりドイツは、極東ロシア帝国との交流が進んでいるようだな」

 「ニコライ二世は、以前より凡庸に大人しくなって、民衆を怖がっている」

 「民衆を恐れるのは、統治者に重要な資質だよ」

 「ニコライ二世が血の日曜日以前から」

 「その資質を持ち合わせていたら、ドイツは負たかもしれないな」

 「ほう、随分、謙虚じゃないか」

 「実を言うと我々ドイツ国民も戦意が低下していた」

 「あと100万人の戦死者を見込んで突撃されたら西部戦線は、完全に崩壊した」

 「我々もだ」

 「気が合いそうですな」

 「気が合う、ついでに聞きたいことが・・・・」

 「なんです?」

 「クーデンホーフ伯爵夫人が表舞台に頻繁に出ているようですが」

 「ドイツ側に意図があるのですか?」

 「いえ、45歳のおばさんですよ」

 「ハプスブルグ家の対日工作でしょう」

 「あまり気にすることもないと思いますが」

 「・・・封建的な帝国が日本を通じて何かすると?」

 「ふっ まさか、アドリア海にまで日本人は来ないでしょう」

 「彼女の子供たちは7人ですか」

 「それほど日本語に精通していませんよ」

 「・・・そうでしょうな」

 オーストリア・ハンガリー帝国は、時代遅れの封建的な世界だった。

 ドイツ系か、チェコ系の一部が行政を仕切り、

 近代的な科学技術と産業を支えているだけだった。

 

 

 

 赤レンガの住人たち

 「9000トン級巡洋艦が2500万として、1トン当たり2778円」

 「1500トン級駆逐艦が550万として、1トン当たり3667円か〜」

 「予算上は、トン数を大きくした方が割安だよな」

 「予算額も使える総トン数も決まっているし」

 「しかし、1トン当たりの金額は潜水艦が一番高いな」

 「・・・トン数を少なくして、燃料と弾薬を増やすか?」

 「訓練が出来る?」

 「いや、その分は抜かれているから・・・・」

 「しかし、せこいな〜」

 「くそぉ〜 政府め、増収分を全部持っていきやがって」

 「鉄道省の陰謀に決まっている」

 「いや、今度という今度は鉄道省も、むくれていたぞ」

 「だから、鉄道省が使いすぎなんだよ」

 「ロクに働かないで組織防衛とか」

 「派閥争いばかりで、私腹を肥やして根腐れしていく」

 「積極性がなくなって、踏ん反り返って仕事を待っているような、あの態度」

 「放漫財政やるとこうなるんだよ。バカが」

 「んん・・・まとめて作るしかない」

 「・・・・確かにそのほうが安く上がるがね」

 「あとは、建造期間を縮める」

 「・・・1年365日建造なら建造費も安く上げられるよな」

 「そりゃ 1トン当たりの金額も変わってくるが・・・・」

 「建造するのは、4000トン級か?」

 「予算と総トン数で割り出すとそうなるな」

 「酷い決め方だな」

 「普通は、戦略先行だぞ。想像力の欠片もない」

 「魚雷戦でやっていこうと思うなら、耐波性と航続力が必要になる」

 「潰しの利く2000トンから2500トン級をたくさん建造して突撃させるのが良いな」

 「それより、武器だろう、武器」

 「武器は、借金のカタにイギリスから貰った中型、小型砲があるじゃないか」

 「日露戦争時代の軍艦に無理やり載せているだけだろう」

 「もう限界だよ」

 「扶桑型に載せているのは?」

 「結局、駆逐艦にも載せるからって」

 「140mmと152mmの開発をやめて、50口径の120mmにしたんだろう」

 「50口径なんて重たすぎだよ」

 「破壊力も小さいし。4000トンなら140mm砲でも良かったよ」

 「イギリスから貰うか、同盟国だし」

 「あっただろう、カタログ」

 「50口径140mmMkIが初速850。射程が21397m」

 「45口径 152mm Mk XIIが初速853mで射程が19660m」

 「・・・4式50口径120mmが、初速840で射程が18500mか〜」

 「何で、アメリカに合わせて127mmにしなかったんだ?」

 「38口径で射程こそ15800で短いが命数は良いし威力もあるし、発射速度もある」

 「120mmの砲弾があったから」

 「炸薬が違うだろう」

 「それでも、造る側は楽なんだろう」

 「だいたい。巨済島沖海戦のコンプレックスが強すぎだよ」

 「砲弾が命中しないなんて、訓練では当たっているだろう。既成概念だよ」

 「訓練は悪くないね」

 「120mmをたくさん載せるか?」

 「魚雷をたくさん載せるんだろう」

 「やっぱり、魚雷艇に任せればよかったんだ」

 「駆逐艦も、戦艦と一緒に行動する」

 「戦艦は通商破壊だろう」

 「4000トン級じゃ付いていけない」

 「これから建造するのは、主力迎撃艦隊」

 「要塞配備の水雷戦隊はさらに別」

 「戦艦を通商破壊に使うのは勿体無いな」

 「戦艦は、頃合を見て、攻守に使えるさ。性能は悪くない」

 「それに綾波型が、4000トン級ならベーリング海の荒海でも多少は使える」

 「中型受信機も載せられる」

 「いざという時は艦隊決戦にも投入できるだろう」

 「違う艦種との艦隊運動はしてないよ」

 「訓練費がないから衝突しなきゃ良いけど」

 「ポナペやザンジバル沖で足並みが揃わず、ぶつかりそうになったし」

 「くそぉ〜 戦艦8隻以外は、中身ゼロじゃないか」

 「新規の艦隊編成で、海軍が怒ってスト起こさなきゃ良いけどね」

 「10000トン級は建造しないのか」

 「耐波性、汎用性、航洋性、武装のどれをとっても」

 「10000トン級が良いに決まっているよ」

 「建造できる数が減るだけだ」

 「政府のケチが・・・」

  

 予算が悲喜交々に振り分けられ、

 区画整理が強行され、鉄道が建設され、道路が舗装されていく。

 この時代、公益性が残っていたのか、

 利権好きな議員がたまたま、いなかったのか、

 大規模な土地ころがしは起きなかった。

 それでも計画的な囲い込み政策が行われ、

 離農者が都市に入って産業を支えることになる。

 日本鉄道が小回りが利かない広軌(1676mm)を採用しているため、

 無理やり山を刳り貫いていく。

 国防も兼ねているといえば聞こえが良いが

 国鉄の赤字は膨れ上がっていた。

 しかし、大戦後の民需転換への成功が功を奏し。

 トンネル完成で都市間の連結が進むと乗客が増加。

 赤字が徐々に減っていく。

 さらに鉄道の電化に備え、水力発電所・火力発電所が建設され、

 電力供給が増えて、産業も大きくなっていく。

 これらの設備投資の多くは、良くも、悪くも、

 軍事費をケチったことで可能になっていた。

 もちろん、日本国民が平和主義者だからというわけでなく。

 体制に事勿れ、利権に従っただけ、

 我が身かわいさで生活を豊かにしたかっただけといえる。

 そして、必要なら戦争も辞さないという気構えがあり、

 今のところ軍拡も必要ないと思われていた。

 下関海峡(500m)トンネル完成が大々的に宣伝される、

 これも鉄道省のプロパガンダに過ぎなかった。

 引き続き、

 パラムシル海峡(3.5km)トンネル、

 明石海峡(5km)トンネル、

 間宮海峡(8km)トンネル、

 浦賀水道(8.6km)トンネル、

 三河湾海峡(9.6km)トンネル、

 鳴門海峡(10km)トンネル、

 友が島海峡(12km)トンネル、

 千島海峡(12km)トンネル、

 豊後水道(16km)トンネル、

 野付海峡(17km)トンネル、

 伊良子海峡(21km)トンネル、

 津軽海峡(25km)トンネル、

 宗谷海峡(45km)トンネルの

 建設計画が進められたが予算会得のためだった。

 さらに半島南岸連結列車の総延長245km。

 扶桑鉄道(北東シベリア・カムチャッカ)2500km。

 スバールバル諸島1000km、

 南極鉄道(機密)など、景気の良い計画が加わる。

 しかし、人口が多く、採算が良く、大都市間を繋ぐ、

 即効性の強いトンネル建設が先になった。

 「欧米諸国は、車社会に移行しているというのに・・・」

 知っている者は、少数派だった。

 世界最高の日本鉄道という銘打たれた垂幕は事実であり、

 鉄道の運行や技術は、列強でも突出していた。

 路線沿いには舗装された道があった。

 どちらかというと路線を建設する時、

 都合が良いため建設したものだった。

 「軍事費に回すより、健全だよ」

 そう、アメリカが車社会に移行していると知っている者たちさえ、

 軍事費に予算を回すより、鉄道を敷く方が健全と思っていたりする。

 なにしろ自動車社会は、ガソリンなっての社会であり、

 一定水準以上の社会整備を必要とする。

 日本では、政府誘導官民一体の公共投資が進んでいく。

 日本財政投資は、自立し利権が続くまでエンドレスで持続的なものだった。

 特定の企業融資による寡頭化、

 放漫財政による無駄と無気力化、

 傲慢の増長など、

 数々の非難を浴びながらも

 後進国の近代化は、政府主導の公共投資に頼らざるを得ないと証明する。

 しかし、膨大な浪費の後、インフラ整備が軌道に乗った場合は違ってくる。

 日本政府は、赤字から黒字に向かいつつある鉄道の民営化を検討しつつあった。

 明治以来、政府は、官営企業を特権的な民間に払い下げて来たのであり、

 同じことを繰り返しているのである、

 これで癒着するなという方が無理だったりする。

 そして、日本は、どのような経済政策を執っても

 基礎になるべき石炭、石油、鉄鉱石が足りない。

 日本人は、余計に働かなければならない宿命であり、

 当然、働けど働けど、我が暮らし楽にならざり・・・・・・

 日本産業が育った後も、

 政官財が一貫して行ったのは日本の産業を興し、

 海外の安いところから “買う” だった。

 そして、物を作り、高く買ってくれる海外に “売る” だった。

 大戦のおかげで日本経済は好景気であり、

 交戦国の窮状、困窮に付けこみ、

 列強カルテルを切り崩し、収支を増大させていた。

 

 戦後、各国とも建艦構想を練り始めていた。

 ドイツは、マッケンジー型高速戦艦、

 イギリスは、フッド型巡洋戦艦。

 アメリカは、レキシントン型巡洋戦艦、

 世界大戦でイギリス海軍とドイツ海軍が海軍戦力を潰し合い戦争が終わる。

 しかし、ドイツとイギリスは戦争で貧困層は増え、

 下手すれば共産革命であり、

 財政的に建艦は不可能だった。

 イギリスとドイツは建造競争で煽り合うより建艦停止で静観する。

 幸いにも植民地の列強共有市場が進んでいるのか

 軍事的な緊張は低下しており。 

 しかし、国力で余裕があるのは民意の強いアメリカだけ。

 アメリカは、いつの間にか、

 世界最大の戦艦部隊を保有していた。

 一般のアメリカ国民は、日本の扶桑型の真価がわからない、

 いまさら、レキシントン建造は、ないだろうと冷めてしまう。

 仮に建造できたとしても財政上、2隻から4隻が限度であり、

 扶桑型8隻に対応できなかった。

 そして、禁酒法で不評を買っている大統領も

 レキシントン型巡洋戦艦の建造を強行したがらず。

 結果的に日米英独とも主力艦の建造を見送り、

 国際連盟が機能しているのか、

 自然軍縮と呼ばれた期間が始まる。

 おかげで軍関係・軍事研究者の

 “日本の扶桑型高速戦艦8隻は世界最強”

 と言う名を欲しいままにする。

 

 

  

 オランダ アムステルダム

 大戦で中立国ながら大損したのは、オランダだった。

 大戦後も、困窮を極め経済再建ができず。

 それでも、インドネシアという大きな植民地を持ち、

 回復は、時間の問題といえる。

 このオランダにベルギー人が流れ込んでいた。

 半分はオランダ側、半分はフランス側。

 どちらにしても生活苦になることは、わかりきっていた。

 オランダ経済は、大陸封鎖でヘロヘロ。

 そして、フランスはズタズタ。

 ついでにイギリスは、ボロボロだった。

 大戦で発行された国債や借款は、どうしようもないほど大きく。

 アムステルダム港 波止場

 「カステル。やっぱり、インドネシアに行くのか?」

 「カーマン。おまえも行かないか?」

 「インドネシアか・・・・」

 「オランダは、もう駄目だ」

 「インドネシアを搾取して」

 「いつまでもオランダを本国にしているようでは先がない・・・・」

 「んん・・・」

 「まるで年金暮らしを当てにしているような爺だ」

 「だからって、インドネシアをオランダの本国にするのは、一般受けしないぞ」

 「オランダの人口は750万」

 「その上、ベルギー人まで流れ込んでいる」

 「オランダを本当の大国にするには」

 「オランダ人と首都をインドネシアに移すしかない」

 「しかしな〜」

 「オランダ人の半分がインドネシアに移民すれば」

 「あとは自動的にインドネシアも、オランダも再建するさ」

 「インドネシア人の方が圧倒的に多いんだぞ」

 「その差を減らしたいのさ」

 「食料を買い占めてインドネシア人を餓死させなくても」

 「オランダ人が行った方が人口も増える」

 「・・・・・・・・・」

 「オランダは、イギリスとドイツに挟まれ、フランスはセーヌ川の向こう側だ」

 「インドネシアを保険代わりに使っていても駄目だ」

 「いまのうちにオランダをインドネシアの欧州の出店にしないと」

 「今度、戦争が起こったら、オランダはお終いだな」

 「・・・・・・・・・」

 「ロシアも、アジアの白人国家として根付いている」

 「オランダ人だって、やろうと思えば、やれるさ」

 「それにインドネシアが本国なら、攻撃してくる国はほとんどない」

 「守れるだけのものがあればな」

 「インドネシアには、チューリップ畑も、風車も、水上バスもないぜ」

 「資源は腐るほどある、造れば良いさ」

 「あとは、核になる民族とアメリカ憲法のようなものが必要になるだろう」

 「人は、自由に惹かれて集まる」

 「歴史は?」

 「これから創れば良いだろう」

 歴史が変わるのは、最初、1人の発想と意思からだろうか、

 賛同する者が現れるかも重要だった。

 歴史を振り返れば必然に見えても、

 当時の大衆の多くが必ずしも賛成しない。

 ベルギーが地図上から消えてしまったことで、

 オランダ人の意識と国策を変えた観もある。

 そして、オランダは歴史の主役になり、

 歴史を動かすだけの要因を持っていた。

 しかし、それに気付き、そうすることが出来るか、

 そうしようという人間が現れない限り無理なことだった。

 「・・・・わかったよ。インドネシアに行ってみるか」

 そして、現れた。

 

 そして、北太平洋の最果て (むしろ北極海) に地歩を構築し、

 気を良くした日本資本が

 困窮・窮乏するアムステルダムに進出する。

 オランダであれば同盟国イギリスと事を構えず、

 ドイツと取引しやすかった。

  

  

 オーストリア・ハンガリー帝国

 大戦前、全人口5000万のうち2300万がスラブ民族だった。

 そして、そこにセルビア人400万(100万はブルガリア)と

 モンテネグロ人100万が加わる。

 モンテネグロとセルビアの大半を制圧した帝国は、

 民族運動によって疲弊していくことになる。

 これは、開戦前から恐れられていた。

 ドイツ人とハンガリー人の人口が相対的に減少すれば

 帝国の支配体制が揺るがされる。

 そして、戦争で支配階級の若者が相対的に多く死んでしまうと、

 民族独立を掲げる者が現れ、

 当然の様に暴動とストが増加していく。

 「・・・・・勝てば良いというものではないぞ」

 「負けるよりは、良いかと」

 「だが、どうしたら良い?」

 「このままでは、ハプスブルク家がロマノフ王朝の様になるぞ」

 「ハプスブルク皇帝の世が、この城だけに閉じ込められてしまう」

 「連邦制に移行して大幅な自治を承認するしか、ないと思われます」

 「ドイツ人の反対はないだろうか?」

 「そういう段階でないと、認識しているようです」

 オーストラリア・ハンガリー帝国は、

 帝政を維持するだけで余力を使い果たして低迷、停滞していく。

  

  

 オスマントルコ帝国

 オスマントルコ帝国は、既に弱体化しつつあった。

 イギリス・フランスの支援を受けたアラブ諸族の反乱で勢力圏の多くを失っていた。

 カスピ海に至るコーカサス域を占領したものの、

 南部域はアラブ諸族の独立運動にあって大きく北側へ後退。

 それでも、肥沃な三日月地帯の一部を保持することに成功していた。

 しかし、こちらも、国内の民族運動を押さえ込むため

 勢力が削がれていた。

 そして、欧米諸国に対し科学技術全般で遅れていた。

 もう一つ、科学技術で遅れいたはずの日本が、

 僅かな期間で欧米諸国に追いついていること。

 これらの内容は欧州に近い感性を持つ、

 トルコ人に決断を迫らされる。

 “トルコは、近代化すべきと”

 

 

 日本 鉄道沿いの飛行場

 イギリス機とドイツ機が借金返済の一部で滑走路に並んでいた。

 どれも大戦中に主力として戦っていた機体だった。

 イギリス機

 ソッピーズ パップ  登場年月日 1916/09/01

 出力 80 hp 最高速度 176 kph 失速速度 64 kph

 重量 555 kg 武装 ヴィッカース×1 弾数 500

 翼長 8.08 m 全長 5.88 m 飛行時間 3.0 h

 

 ソッピーズ スナイプ  登場年月日 1918/09/01

 出力 230 hp 最高速度 194 kph 失速速度 64 kph

 重量 884 kg 武装 ヴィッカース×2 弾数 500,500

 翼長 9.14 m 全長 6.04 m 飛行時間 3.0 h

 

 ソッピーズ トライプレーン3葉 登場年月日 1917/02/15

 出力 130 hp 最高速度 185 kph 失速速度 64 kph

 重量 697 kg 武装 ヴィッカース×1 弾数 500

 翼長 8.08 m 全長 5.73 m 飛行時間 2.5 h

 

 S.E.5a  登場年月日 1917/06/15

 出力 200 hp 最高速度 213 kph 失速速度 64 kph

 重量 928 kg 武装 ヴィッカース×1 ルイス×1  弾数 500,400

 翼長 8.08 m 全長 6.37 m 飛行時間 2.3 h

 

 ドイツ

 フォッカー D7 登場年月日 1918/05/01

 出力 175 hp 最高速度 201 kph 失速速度 64 kph

 重量 958 kg 武装 スパンダウ×2 弾数 500,500

 翼長 8.38 m 全長 6.93 m 飛行時間 2.0 h

 

 技術者とパイロット

 「どうかね。イギリスとドイツの戦闘機は?」

 「そう・・・で・・・すね」

 「戦うならフォッカー D.7が良いかもしれません」

 「S.E.5aでも我慢しますよ」

 「航空機が今後、どういう風に戦局に関わってくるか重要でね」

 「戦法は戦績の良かったドイツ式で良いと思うが」

 「技術開発は、今後、日進月歩になるよ」

 「日進月歩できそうな予算があれば良いですけどね」

 「何のために駅沿いに飛行場が建設されていると思う」

 「鉄道省が運輸省として海運も、航空も」

 「陸海空を全て取り仕切る気でいる」

 「呆れたな」

 「今度ばかりは、陸軍も面白くないようだが」

 「大型貨客機開発に関心を示した」

 「んん・・・・戦闘機じゃないのか? 爆撃機とか?」

 「いや、運輸省が大型貨客機を開発するためさ」

 「何のために駅沿いや港湾近くに飛行場があると思っているんだ」

 「かぁ〜 やってくれるぜ。戦闘機の開発は?」

 「技術提供だけはしてくれるそうだ」

 「あいつら・・・国防をなんと心得ているんだ?」

 「二の次ぎ、三の次ぎだな」

 「樺太州、北海州、東北州、関東州」

 「中京州、西南州と沖縄から敷島州(台湾)」

 「そして、千島から扶桑にまで航空路線を作れば利益になるのだろう」

 「太平洋路線や上海まで乗り入れるつもりだろうな」

 「鉄道が最近、叩かれ気味だから」

 「運輸省に名前を変えて、うまいこと逃げようとしているんだな」

 「土地収得が強引だからな」

 「まあ、飛行場が広々と使えるのは、良いかもしれないな」

 「連中は、6発機まで考えて飛行場を建設しているからな」

 「くぅ〜 お金持ちは違うぜ」

 「予算は大丈夫だろうな」

 「航空戦力廃止とか、ならないだろうな」

 「ならないだろう。砕氷空母は、実用で使っているし」

 「その気になれば、割の良い運輸省規格の部品で戦闘機を作るさ」

 「の、乗るのは良いけど、あまり戦いたくないな。それ・・・・・」

 「乗れるだけましなのさ」

 「軍事費だけでは、とてもじゃないが飛行場建設費を捻り出せんよ」

 「くぅ〜 ヨーロッパでは、軍が独立していたぞ」

 「国内で石炭か、鉄鉱石のどちらかを掘り当ててくれたら」

 「軍も独立できるだろうよ。石油でも良いがね」

 そして、イギリスやドイツから仕入れた機体で

 国防省空軍局が創設される。

 訳知りの関係者からは、

 運輸省系空軍局と悪口を言われるが組織自体は、作られていた。

  

 鉄道省が運輸省に改変。

 鉄道省が海運、航空をまとめて、

 さらに強大な組織になって、物流や人の流れを統制。

 官僚や財界も駅を核にした都市計画が造られ、

 区画整理がされていく、

  

  

 揚子江

 洞庭湖(トンティン湖)面積2820kuもの巨大な淡水湖。

 景勝地でもあり。

 新規参入のノルウェー、スウェーデン、フィンランドも入り込んみ、

 欧米諸国の租界地が広がっていく。

 中州は洪水が怖いものの、

 防衛という観点で優れていた。

 造成し、飛行場が建設され、

 中国人の武装蜂起を事前に監視するため、

 時折、偵察機が飛び立つ。

 偵察機が情報通りの場所に武装した群集を確認。

 そして、湖上を回遊するイギリス河川砲艦(リバー・ブルー)に通信が入ると。

 誘導に従い283mm連装2基が主砲塔を動かし、

 仰角を上げていく。

 そして、砲撃。

 通信内容が正しければ、至近弾間違いなしだった。

 偵察機からの通信が入ると、

 さらに3斉射が撃ち出され、終わる。

 長距離砲の良いところは、

 砲撃しても目視で相手の被害がわかりにくいことだった。

 わかるのは、通信機から送られてくる観測結果だけ。

 扇動する者達が怖気づいて、民衆がバラバラになって逃げた、らしい。

 「・・・艦長。これで中国人の武装蜂起は雲散霧消です」

 「まったく。日本人も便利な河川砲艦を造ったものだ」

 「これだけ、揚子江に近いのに」

 「直接日本人が大陸に入ってこないのは不思議ですね」

 「代わりに、北大西洋の島をやらないと、いけなくなった」

 「やっぱり、揚子江の利権の代わりだったんですか」

 「ああ、大戦中も、列強が揚子江を中立地帯にしたくなるほど有望な植民地だ」

 「日本が新型戦艦で反発されては困る」

 「仕方無しに北大西洋側の土地だよ」

 「日本人は、喜んでいないようですが」

 「欧州に住めば、欧州人のステータスがあるさ」

 「日本人が欧州人になるんですか?」

 「そう思わせとくさ。肌の色は変わらんよ」

 「肌の色はともかく、この艦は立派な河川砲艦ですよ」

 「そうだろうな」

 「イギリスの技師が設計段階で」

 「加工が難しそうな構造をワザと組み込んだそうだ」

 「しかし、設計通りに造ったそうだ」

 「では、日本の造艦技術は、イギリスと同じレベルと?」

 「部分的にはな、一部突出。総合で、やや劣っている、らしい」

 「それでも、イタリアやフランスに勝っているようだ」

 「たいしたものです」

 「そうだな・・・砲撃は、もう、良いのだろうか?」

 副長が通信士に問い合わせる。

 「・・・艦長、ピンポイントでリーダー・グループに至近弾です」

 「今回は、これで十分だそうです」

 「共産主義かぶれが・・・」

 「これから、うるさくなりそうですね」

 「ああ、共産周思想などと理論建てているが飾りに過ぎん」

 「人間の妬み、やっかみを利用して民衆を扇動」

 「権力を手に入れようとしているだけだ」

 「鎮圧できれば良いのですが中国人は、多すぎますから」

 「揚子江を核にインド人、黒人、フィリピン人、ベトナム人が住んでいる」

 「それも相当な数だ」

 「彼らは、自衛のためだけでも揚子江流域を守ろうとするだろう」

 「揚子江両岸の装甲列車もそれなりに強力だ」

 「何より、河川砲艦が睨みを利かせている間は、大丈夫だろう」

 「そういえば、欧州の移民も増えましたね」

 「東欧や南欧の連中だろう」

 「アメリカに入国を制限され」

 「南米、アフリカ、揚子江に移民する者が増えているらしい」

 「国際中立地域は、ある意味、魅力がある」

  

  

 揚子江の某工場。

 ここに机が並べられて、工芸品や民芸品が流れ作業で作られていた。

 揚子江、国際株式市場でも成長株の企業の一つだった。

 人手こそいるが賃金は、桁違いに少なく済んだ。

 各国からの企業、個人の出資者は多く。

 裕福な中国人も、目聡く株を購入していた。

 そして、この収入の保障が河川砲艦や揚子江の装甲列車であり。

 洋館と異民族の居住区が居並ぶ。

 揚子江が国際中立市場としての証だった。

 別の工場で生活用品も生産され

 北中国、南中国へも流れていく。

 また船に積み込まれ、海外へと送られていく。

 そして、北中国、南中国から揚子江へ資源が送られていく。

  

  

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第28話 1920年 『国際連盟』

第29話 1921年 『人種差別かよ』

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