月夜裏 野々香 小説の部屋

  

仮想戦記 『日清不戦』

 

   

  

 国境線は、こんな感じ。ちゃっかり、ブルガリアが得している気が・・・

ドイツ系が同盟全域に広がってニカワ役になっています。

少しでも想像力が湧いてくれれば良いのですが・・・・・

下手すぎて駄目?

 

1908年

日露戦争で日本が勝ち取った世界です。

因みにアイオン湾は北極海側で少し凹でいるところです。

もう下手すぎて、恥です。脳内で善処してください。

共産革命後、聖ロシア帝国 (アムール州・満州・朝鮮)3州を確保しています。

日本に押さえられる場所こそありますが、極東の雄とも言える勢力圏です。

1904年の露清戦争から18年。

気候が良いのか、ロシア化はそれなりに進んでいて、

今後、台風の目になりそうです。

相変わらず画像処理が駄目駄目です。

 

第30話 1922年 『ちょっと落ち着いたかな』

 ソビエト政府にとって、

 軍事的脅威が欧州側のドイツ帝国なら、

 政治的な脅威は極東の聖ロシア帝国だった。

 ソビエトは、農民、労働者、兵士の代表で体制を構築しつつ、

 失地を回復しながら、その勢力を極東へと伸ばしていた。

 しかし、列強の干渉戦争を経験していないロシア人の結束力は、少しばかり問題があった。

  

 一方、聖ロシア帝国は、アムール州・満州・朝鮮で地歩を固めつつあった。

 体制的に共産主義国家と帝国の違いがあっても、

 双方で似たようなことが起きていた。

 ガソリンを撒いて火を付けて凍土を融かし、

 ツルハシやスコップで掘っていく作業は時間がかかる。

 そこで、使われるのは被支配民族。

 朝鮮人、漢民族、満州民族、回族、モンゴル人・・・

 彼らは、消耗品だった。

 寒さをギリギリ凌ぐ衣服、土木用具。

 そして、冷たい粗末な食事と寒い寝床だけしか与えられない。

  

 聖ロシア帝国軍。

 別名、白衛軍とも呼ばれたが元々は極東ロシア軍を主力にした部隊だった。

 そこに欧州ロシアからの亡命貴族軍と合流したコサックの部隊が加わる。

 対峙するソビエト側についた将兵たちは、赤衛軍と呼ばれていた。

   

 そのどちらにも監視部隊がつき、

 被支配者に血も涙もない扱いをする。

 逆らえば、即、死があるのみ、

 被支配民族である彼らが働くこと以外にできることは限られる。

 寝ること。食べる事。

 少しの時間、用を足すこと・・・・・

 多くの場合、反抗するだけの力は残されておらず。

 毎日、人が苦界の中で、絶望し力尽きていく。

 凍死していく者から衣服を剥ぎ取り、

 仲間同士で奪い合い、傷つけ合って死んでいく。

 死に掛けた者の手から半分凍った新芽を奪って口に頬張る。

 人の良い善行を見せるより。

 仲間内で早々に止めを刺し、長生きする。

 二つのロシアは、被支配民族を酷使、防衛線を構築。

 資源の開発を進めていく。

    

 ロシア人は、正直だった。

 王道楽土、五族協和、八紘一宇のような奇麗事は、

 一言も言わない純粋な支配者だった。

 看守に徹し、言動に矛盾する内容はない。

 支配される側は、一点の矛盾も曇りもない支配者・看守に命乞いをしながら生きていく。

 ほかに生きる道は残されていない。

 因みに実務レベルの下級看守は、両方の言葉がわかる同族、同胞達だった。

  

 ロシア人から注目されている被支配者は、日本人に似た朝鮮民族だった。

 そして、世界各国は、日本と日本人を研究するため、

 一番、似ている朝鮮人の研究する。

 多くは、中央アジアに強制移住させられ、

 世界大戦と重なり弾除け代わりに虐殺され。

 スペイン風邪の審判で犠牲者を出し、

 さらに共産革命と重なり、ドサクサにまぎれ・・・

  

 注目すべきは、朝鮮の古い封建的な儒教制度の移り変わりだった、

 既存の両班、権威主義と年功序列主義が有名無実となり消えたこと。

 元々、力の信望者である彼らは、権力、策謀、暴力が支配する社会を作っていく。

 清露戦争後、

 若者や目聡い者は、死に物狂いでロシア語を学び、ロシア人に取り入り。

 通訳者は、ロシア人に取り入ることで出世し、

 ロシア人の虎の威を借りはじめる。

 それまでの権力者である両班(ヤンバン)を無視するようになり、

 礼儀が失われていく、

 ロシア人も朝鮮半島の支配体制を強めていくため、

 ロシア語を覚えた者は、利便性があった。

 通訳者は命拾いするだけでなく、

 権力を得て、うまい汁を吸う事が出来た。

 露朝関係は、妓生外交から通訳政治、通訳外交、通訳内政となっていく。

 そして、一部の特権階級を除き、

 朝鮮人は中央アジアへと追いやられていく、

 多くの朝鮮人は生き残るため、ロシア人になることを選択。

 その後、大戦で弾除けで虐殺され、

 共産革命のドサクサで逆襲する。

 中央アジアの小さな村のいくつかで、集団行方不明が起こり、

 朝鮮民族は、何食わぬ顔で自分たちの村にしてしまう。

 その後、帰還兵が次々に抹殺され、

 朝鮮人がソビエトに税金を納めるようになると、

 自然な形でソビエト共産主義連邦に組み込まれていく。

 そして、ソビエト中枢にも朝鮮人が入り込んでいく。

 スターリンが、自分の独裁を守る道具。

 出来立てほやほやのソビエト連邦を守る道具として利用できる群集である。

 と少し思ったとしても不思議ではなく、

 政府の犬であればグルジア人でも、

 朝鮮人でも利用する。

 二つの民族の違いは、グルジア人の大部分は、ロシア語を覚えようともしなかったことと、

 朝鮮人には、その選択すらも与えられなかったこと、だろうか。

 そして、スターリンがソビエトの書記長に納まり、

 数人の朝鮮人がソビエトの中枢に組み込まれる。

 グルジア人も、朝鮮人も、心の底では、ロシア人を憎んでいた。

 しかし、ロシア人に対する恐怖心と憎しみのはけ口は、対外的なものになっていく。

 彼らが用いた方法は、自分たちがやられた方法だった。

 他国に帝国の属国、異民族を侵略させて弱体化させる。

 その後、侵略者と一緒に不穏分子も一緒に駆逐。

 同時に少数民族も完全に支配にするという手法だった。

 これは、多民族国家が連邦を維持する優れた方法といえる。

 少数民族は、異民族に侵略され、(見殺し)。

 その後、本国救出軍に侵略者から助けられ、(一緒に磨り潰し)。

 生き残った僅かな少数民族は、

 冷酷で偉大なロシア人に畏怖しながら組み込まれていく。(完全支配)

 スターリンを警戒していたのは、レーニンだった。

 彼が、もう少し長生きしていたら、

 もっと穏健な人物がソビエトの主導者になったはずだった。

 しかし、ロシアの主導者はスターリンとなる。

  

  

 聖ロシア帝国 ハルピン。

 ニコライ二世は、憂鬱な日常に少しばかり興醒めする。

 ロシア人が極寒の大地で精神を正常に保つため

 ウォッカが必要不可欠なものだ。

 それは、このハルピンでも同じだった。

 しかし、シベリアより暖かくマシな気がする。

 ハルピン?

 ハルピニスクとでも改称しようかとも思ったが人任せ。

 血の日曜日事件をやらかしたニコライ二世も

 表面的には人当たりの良い人間だった。

 デモを報告した臣下、

 現場を見ず想像力のなかった皇帝。

 いくつかの組み合わせが悪かった。

 それでも、専制君主制は、統治者が全能でなければならず。

 人が良いだけでは話しにならないのだった。

 成功も、失敗も、全ての責任が皇帝に帰結する。

  

 

  聖ロシア帝国は、専制君主ではなかった。

 ニコライ二世は、議会に多くを任せていた。

 内政の全ての責任を負うのは、議会。

 何より、息子アレクセイ・ロマノフ皇子18歳が血友病と公開され、

 最新の医療技術を受けられたことも嬉しい。

 輸血が必要なのだが日本人は進んでというより、

 喜んで輸血をしてくれる。

 君臨すれど統治せず。

 イザやってみると、これほど楽なことはない。

 支配欲は満たされないものの、

 傍観者の様に帝国の行く末を見守ることが出来た。

 元々、ロシア皇帝の職務は、皇帝であり法王でもある。

 ロシア正教はロシア皇帝を聖俗とも

 最高権威最高権力者であるとする。

 それがイギリス風君主制議会政治に修正させられる。

 いまさらながら、

 イギリスのウィンザー王朝(旧ハノーヴァー王朝)は

 楽をしていたことがわかる。

 その代わり、不正腐敗、政治的な失態は、全て議会とロシア人自身の責任とする。

 自ら自身を傀儡にしてしまうのは、一種の賭けといえた。

 そして、皇位すらも議会と人民に任せなければならない。

 大陸の王国で

 “王でなくなる”

 は、死と直結している場合が多く、血生臭い。

 それを良しとするか、

 忌むべきとするかは、人による。

 ロシア公国をロシア帝国にした原動力の発露は、ロシア皇帝にあった。

 しかし、栄誉と死が直結する皇帝職では、民衆の怒りと蜂起が恐ろしい。

  

     

ロシア皇帝              昭和天皇

 

 そして、聖ロシア帝国議会は、貴族院と平民院で構成される。

 その気になると数の多い平民から宰相を出すことが出来るが、まとまりがなく。

 なんとなく、ラスプーチンを殺害したフェリックス・ユスポフ公爵がロシア宰相に選択される。

 長女オリガと結婚したドミトリ・ロマノフ大公が良かった気もするが、なにも言うまい、

 という気分になっていた。

 妻アレクサンドラ皇后は、ドイツのヘッセン大公家出身で、

 イギリス育ちの高慢ちきな面が強かった。

 しかし、ラスプーチン殺害とロシア民衆の怒りに触れ、

 怖かったのだろう、大人しい。

  

 ニコライ二世は、皇太子時代の1891年5月11日、日本で襲撃されている。

 もう、マカーキ(猿)と会うまい。

 もう行くことはないと思っていた日本。

 それでも、日本全体の評価は、悪くなかった。

 一度は、日本と敵国となり戦って憎いと思った。

 しかし、先に手を出したのはロシア帝国であり、

 ただの牽制球のつもりだった。

 政治的な妥協で済まそうと思っていた。

 それが思わぬ反撃を受けた。

 その後、日本は、正面から戦おうとせず、勝利を収める。

 ロシアも、満州・朝鮮と艦隊・極地地方の交換なら悪くなかろうというもの、

 世界大戦で日本は、友邦国として武器弾薬など助けてもらっていた。

 そして、皇女二人の保護。

 赤軍からロシア皇帝一家の救出。

 二度目の訪問は、いたるところで日本国民総出の大歓迎を受けた。

 日本文化も悪くなく、温泉も楽しい。

 そして、日本は、驚くべき進歩を見せていた。

 大陸でも珍しい広軌(1676mm)軌道で、

 弾丸列車と呼ばれる電気機関車が走る。

 海底トンネルを170kmで飛ぶように滑走。

 意表を突かれる。

 側近に鉄道の事を聞くが

 世界で日本の鉄道技術に追随している列強はないという。

 本当だろうか?

 鉄道発祥の国のイギリス。

 鉄鋼王国ドイツ。

 世界でもっとも豊かなアメリカの鉄道技術も抜いているのだろうか。

 にわかに信じられないが、

 気候は暖かく、山は多く、緑も多く、海に囲まれた綺麗な国だ。

 若きし頃に来たことが思い出されるが、

 妻アレクサンドラ皇后は、ムッとしている。

 長年の経験から日本の粗探しをしていることがわかる。

  

 日本人との付き合いは、意外と面白く新鮮に思える。

 ニコライ二世は、権力を捨て権威だけとなり、

 やはり同じような立場の日本の大正天皇と親しくなったりする。

 性質的に似ていたかも知れず。

 権威のみならず権力まで持っていたら

 自分と同じ道を辿ったかもしれない隣国の天皇は病床にあった。

 周りが無理やりそうさせた節もあるが陰の薄い天皇だった。

 裕仁(ひろひと)摂政21歳は可もなく、不可もないと評価できた。

 トップが並みなら立憲君主制は、なんら支障はない。

 そして、恩もあり。

 病弱なアレクセイ皇子を見舞うような素振りを見せれば、やはり心も動く。

 日本滞在で日ロ関係の有用性が認識できる。

 随行している政府役人たちも同感のようだ。

 ソビエト共産主義連邦がアムール州の向こう側にまで来ている。

 日本との関係は、重要に思えた。

 むろん、日本との友好関係を阻害するつもりはなく。

 ロシア政府が日本と非友好的な態度を執ろうとするなら、

 駄々くらいこねても良いだろう。

 気になる日米関係は、今のところ悪くないようだ。

 今後は、露日米関係と揚子江経済圏と

 南北中国を絡めて極東アジア情勢が形成されていく。

 日本が揚子江経済圏の利権を欧米諸国にまかせっきりなら、

 欧米列強と衝突する可能性は低い。

 そして、東京湾に浮かぶ、日本の扶桑型戦艦。

 呆れるほど優れた戦艦に見える。

 海軍後進国のロシア皇帝でさえ日本戦艦の強靭さは見当が付く。

 それらしい補助艦艇が見ないのが気になったが些細なことだ。

 日露通商協定は、同盟に至らなかった、

 しかし、同盟に準じた条約になった。

 イギリスも極東の一国家となった聖ロシアに対し、友好的な態度だ。

  

  

 

 極寒地方。

 寒過ぎて、だるまの様に着膨れするしかなかった。

 死なない為に服を着るという感覚は、日本で味わえない。

 いや、無音とダイヤモンドダストが支配する。

 ここは紛れもなく日本の国土だった。

 それをオーロラが否定している気にもなる。

 

 なぜ、こんな場所にいるのだろうと思うが、日本政府の命令。

 金にもなる、老後は、安泰の公務員。

 とはいえ、寒すぎる。

 こんなところと思うが

 油田、炭鉱、鉱山、希少金属、宝石の類があるらしい・・・・

 ここの凍土は地下150mぐらいらしい。

 いったい、上は、なにを考えてやがる!!

 ・・・凍っているから浸水の心配はない? 

 南でも意図的に凍らせてトンネルを掘る技術を検討している?

 ・・・・殺したくなった・・・・

 ・・・・どこかの会社が、新型掘削機を持ってくる。

 トン当たりの値段は戦艦の10倍・・・・・

 バカか! キサマ!! 

 100倍でもいいから、もっとマシなものをもってこい!!

 と言いたい。

 以前のものよりもマシだが、それでも・・・・・

 どうやら質より数で勝負するらしい。

  

 ここで生活する方法は、家屋の外に出る前に体操し、体を温めること。

 サウナを使う方法もある、

 運動すれば体が温まる。

 当然だが、これでも足りない。

 そして、着膨れするほど着込んで外に出ると、一瞬で気持ちが萎える。

 一日分で配給されているポケットのウォッカは心強い。

 飲まなきゃやってられないというより、

 飲まなきゃ 風邪か肺炎になりそうだ。

 何とか、外に出るが外気に直接触れている肌が痛く、凍り始めている。

 吐く息が瞬時に凍って舞い散る。

 “人殺し”

 と思うのだが作業が進むと誇らしく感じる。

 初めの一歩が信じられなければ成し得ない偉業だろうか。

 しかし、内地で地図を見ながら見当を付けているやつに、

 一度こっちに来て見ろと言いたくなる。

 それでも、涼しい声で計算通りと言われたら、

 我慢できるだろうか?

 ・・・・・たぶん、計算通りなのだろう。

 トンネルの果ては、肉眼で見えない。

   

   

 某中央アジア 朝鮮人村

 「・・・いつの間にか、できた朝鮮人村だ」

 「以前、住んでいた者達は行方不明だそうだ」

 「・・・だいたい、見当が付くがね」

 恐々と監視軍を見詰める韓国人の村人、

 うんざりとするほど殺した側と殺された側・・・

 アメリカ、イギリス、フランスの研究チームが

 ソビエト政府から許可を貰ってきていた。

 国交もないのに入国できるのか?

 といわれれば監視付きなら出来るといえた。

 ソビエト政府も、聖ロシア政府も、

 借款の問題で対外的に妥協したいと思っている。

 両国とも支払った方が国際的なイニシアチブで有利になる。

 だからといって、支払いたいわけでもない。

 というわけで政治的な妥協をかなりする。

 アメリカも、イギリスも、フランスも、

 朝鮮民族に何の関心もなかった。

 関心があるのは、日本民族であり、

 民族的に最も近い朝鮮民族を調べれば、日本民族がわかるかもしれない。

 そういう、観点だ。

 当然の様にロシア人の日本・朝鮮民族研究員も同行している。

 

突然、

 自分は、日本人だと叫びながら朝鮮人が一人走ってくる。

 警護兵数人が、その朝鮮人を止める。

 朝鮮人は、必死、

 しかし、力の差は、どうしようもないことを知らされる。

 そして、外国人も傍観者でしかなく、誰も助けようとしない。

 朝鮮人は、悔しげに泡を吹きながら叫び倒れ、痙攣を起こし。

 駆け寄った妻と子供らしい者が泣き喚きながら

 夫?  父親?  らしい男を叩く。

 彼が日本人か、朝鮮人かは、この際どうでも良かった。

 ここでは、研究材料にしかならない。

 火病(鬱火病)とも呼ばれる症状を

 各国の研究員が興味を持って突き詰めていく。

 それぞれの解釈で、

 文化病、民族病、言語病、または、唐辛子病・・・は、日本民族にない。

 火病は抑鬱した感情を発散せず。

 抑制した中で起こる神経性的な火(鬱火)で、

 その全ての症状を指した。

 喜(喜び)、思(思慮)、憂(憂い)、

 悲(悲しみ)、恐(恐れ)、驚(驚き)の感情でも起こりえる。

 もっとも発症しやすいのが(怒り)だった。

 強いストレスを適切に解消できず、

 胸が重苦しくなる症状。 

 最終的には、口から泡を吹き、

 絶叫・悶絶・顔面紅潮・嘔吐・七転八倒などの症状に至る。

 数人の男たちがロシア兵に監視されながら、

 朝鮮村を闊歩する。

 「この火病は、日本民族と朝鮮民族の違いであって」

 「日本民族、そのものの調査にならないのではないか?」

 「では、火病がなければ、朝鮮人は日本人ということかね」

 「「「「・・・・」」」」

 「・・・神に選ばれた白人に並ぼうとする、日本民族を研究せねばなるまい」

 「並んでいるとは信じられんね」

 「白人国家同士が殺し合い弱体化しただけだ」

 当たっているとも、当たっていないとも、いえる、

 日本以外に日本の様に振舞える有色人種の国がなかった。

 「「「「・・・・」」」」

 「身体的に日本人と朝鮮人は非常に近い」

 「しかし、精神的に著しい違いを見せている」

 「それは以前からロシアで研究されていた」

 「日本・朝鮮比較論文を読めば確認できる」

 「しかし、戦争中とはいえ、解剖して調べなくてもわかるだろう」

 誰かが、パラパラと書類をめくる。

 「解剖した方が、はっきりするじゃないか」

 「まあな」

 「中国の重圧というのは、歴史的にありえるよ」

 「半島にも、大陸にも行った、中国大陸から受ける重圧は本物だ」

 「言語は?」

 「朝鮮語は、六つほど方言があって相互理解が困難なほどらしい」

 「済州島の方言は、消えているよ」

 「相互理解が困難といっても外国で生まれた子供同士だろう」

 「土台が朝鮮語なら方言の違いがあってもニュアンスでわかるだろう」

 「ん・・南北に長い日本でもいえるな」

 「どうかな、アメリカ英語も、わからないことが、あるがね」

 「しかし、起伏の強い言語だからといって」

 「それを火病のせいにして良いのだろうか?」

 「「「「・・・・」」」」

 「問題は、もし、中央アジアで朝鮮語が消えていった場合だ」

 「朝鮮人から火病が消え、日本人の様になるかどうか」

 「いや、ロシア語になれば、ロシア人のようになるのではないか」

 「どうかな・・・民族語を捨てない少数民族は多い」

 「外国語習得率は良いようだがね」

 「両班(ヤンバン)制度は、まだ残っているのか?」

 「老人や貴族(両班)は、尊敬されているよ」

 「しかし、どうも行き過ぎという気もするがね」

 「親が自分の子供を平伏させて喜ぶ気になれないね」

 「自分の子供が誰かを平伏するのも見たくない」

 「もちろん、わたしも誰かに平伏したいという気はないね」

 「そして、誰かに平伏して欲しいとも思わない」

 「ロシア人が、そう思うくらいなのだから行き過ぎた儒教だろうな」

 「ソビエトに残っている我々は、資本家に支配されるものではない」

 「少なくとも、まっとうな資本家なら」

 「人を平伏させる分の賃金は、ケチって労力にまわしてもらうね」

 「・・・やっぱり日本に行ってみないと、わからないか」

 「行って、わからないから、朝鮮人と比較しているんだろう」

 「日本人は、アジア諸国や朝鮮民族よりも欧州諸国と比べた方が近いね」

 「・・・確かにイギリスの様でもあり、ドイツの様でもあり」

 「朝鮮民族は、中国の隷属が長過ぎた」

 「民族的な自立は中国を俳さない限りない」

 「しかし、我々、ロシア人が半島を占領した時」

 「朝鮮人は清国人を虐殺していたぞ」

 「古い支配者に殉じず、新しい支配者のために働く」

 「それが生き残る道だったのだろう」

 「なるほど」

  

  

 ロシア貴族アレクセイ・コルサフスキー侯爵は、

 在日大使として日本各地を検分する。

 アインシュタインの来日。

 彼は、日本人を評価して

 自己主張が弱いことを指して 「非個性」

 国家と集団に対する信任度の強さ 「共同体と国家に対する誇り」

 さらに個人主義に対する 「家族主義・集団主義の有用性」

 環境に対して 「自然との調和」 などを上げる。

 キリスト教に彩られた白人世界は、自然宗教的な日本人が見えなくもない。

 良いところもあれば悪いところもある。

 それ以前になにが良くて、なにが悪いのかを考えるべきだろうか。

 ロシア人は、雪と極寒の中にあり、

 閉ざされた時間の中で埋没するように生きてきた。

 また、その歴史的経験から

 権力、権威、情熱、優しさ、結果を志向する。

 逆に日本人は、天災と閉塞的な文化の影響なのか、

 礼節、気配り、努力、経過を大切にしている。

 価値観の相違は、その時々の運不運にもなる、

 今のロシア民族と日本民族の価値観の差は、結果となり、いまを作る。

 ロシア民族と日本民族を比べ、

 性質の違いがあっても劣るものではない。

 そして、日本民族との友好関係は、ロシア民族にとり、聖ロシア帝国にとり、

 有益になるだろうと結論付けられた。

   

  

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白牡丹

   

 

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第29話 1921年 『人種差別かよ』

第30話 1922年 『ちょっと落ち着いたかな』

第31話 1923年 『関東大震災と・・・』

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