まだ、途中ですが、こんな感じの世界です
第42話 1934年 『ずるいよ』
インド洋上空。巨大な飛行船が浮いていた。
ドイツ東アフリカ領
ドイツ空軍所属 巡洋飛行船バーデン
全長248m、直径41.8m、
積載量84トン、乗員24名、
航続距離14000km、最大速度毎時135km
ダイムラーベンツエンジン900馬力×6基。最大1200馬力。
超ジェラルミンで硬式飛行船を造って
可能な限り大きな積載量をもたせていた。
ドイツ帝国でドイツ空軍とドイツ海軍が飛行船の運用で対立。
その結果、どちらかが、艦長か、副長をすることになった。
そして、今回は、海軍側指揮官、空軍側副官で、
慣熟飛行を兼ねながらの訓練飛行だった。
「・・7時方向に蒸気を発見」
水平線の向こうから煙突らしい突起と、
それらしい煙煤が見えた。
「・・・位置は・・・・南緯9度04分、東経65.55分です」
「よし、船影と方向を確認次第。通信を送って。2時方向に退避だ」
ルックナー中将が、ため息混じりに呟く。
巡洋飛行船の役割は、艦船の所在地を味方に通報することだった。
そして、目的を達成するとさっさと、
その海域から離脱する。
民間船を何度も利用し、
Uボートが、目視距離にまで接近できるかを確認する。
この時期、ドイツ海軍は、1763トン級XB型Uボート60隻保有、
大半を海外に配備していた。
「・・・・この飛行船で生き残って本国に戻っても良い顔されませんね。ルックナー卿」
フェリクス・フォン・ルックナー中将・伯爵(53)
帆船ゼーアドラー号の通商破壊作戦。
船舶、約30000トンを拿捕・撃沈。
海の悪魔とも、皇帝陛下の海賊たちとも呼ばれた男だった。
「敵影を見つけたら通報して逃げろか・・・」
「我々の人生そのものを否定するような戦略だな」
「哀愁を感じるね。リヒトホーフェン卿」
マンフレート・フォン・リヒトホーフェン小将・男爵(42)
第一次世界大戦、
赤い戦闘機に乗ってレッドバロンと呼ばれたエースパイロット。
大戦末期不時着して負傷したものの生還。
軍務についていながら階級でなく、爵位で呼び合う2人だった。
平時は、そういうものだろうか。
「もう少し、直接的な戦果の見える配属先を希望したいですな」
「皇帝が我々を戦死させたくないと思ったとして」
「それをひっくり返すのは、至難の業だよ」
「それにドイツ帝国経済は落ち込んでいる」
「植民地を踏み台にしなければ、どうにもならない」
「金のかかる戦争は無いと思うね」
「大恐慌では辛いですね」
「日本とソビエト。揚子江だけは景気が良いようだがね」
「まだ欧州は戦争から立ち直っていないというのに・・・」
「こんな大きな飛行船を建造しているのだから」
「それほど悲観したものではなかろう」
「しかし、水素は、不安が残りますね」
「規制されてなくてもヘリウムは、水素の12倍以上の価格だよ」
「・・・燃えなければ、済むことですけどね」
「60隻以上の飛行船が毎日、行き来しているのに水素が原因で落ちていない」
「落ちたのはイギリスとアメリカの飛行船だな」
「それだって、嵐が原因だな」
「見よう見まねで建造したところで、上手くいかないでしょう」
「しかし、リヒトホーフェン卿」
「日本に飛行船を売却は考えものだよ」
「リースとは根本的に違う」
「山東半島の維持のためでは?」
「租借地ですが領土にする予定ですし。日本との関係は、重要では?」
「それに揚子江経済圏の収益は大きいですし」
「青島に製鉄所を作ったからな」
「不安なので? ルックナー卿」
「米英仏が共同で揚子江に製鉄所を建設しているからね」
「ドイツの製鉄所は負けませんよ」
「負けなくても利潤で怪しくなるだろう」
「確かに、日本と揚子江の製鉄所に生産されると青島は不利かもしれませんね」
「しかし、扶桑型は、たいした戦艦だよ」
「我が国の新型戦艦より劣るが、ほぼ同列の技術によって成り立っている」
「ドナウ海軍のような低い次元ではない」
「今後は、国際連盟で10000トン以上の軍艦の輸出は、禁止されるのでは?」
「国際連盟次第だがね」
「しかし、日本から買えないと、揚子江で使える河川砲艦も10000トン以下になるな」
「もう構わないでしょう」
「揚子江沿いの要塞も装甲列車も警備軍も中国軍を圧倒していますから」
「日本人は、儲かるだろうな」
「揚子江に住む人間は、家にタイプ38。ポケットにナンブだそうだ」
「日本に近いですからね」
「それだけじゃないさ。中国人が多すぎて、たくさん弾が欲しい」
「それで、日本の小銃か、フェデロフ自動小銃になってしまう」
「揚子江でモーゼルを製造しても売りにくいということだな」
「ワルサーは、売れているらしいがね」
「東洋の小ドイツ帝国ですか」
「ふっ」
「艦長。本国から入電です」
兵士が電文をルックナー伯爵に手渡す。
「どうやら、エチオピアに行くことになりそうだ」
「エチオピアですか?」
「エチオピア側とは話しがついている。ただの示威行動だよ」
「陸地を飛ぶんですか?」
「対空砲火、一発でやられますよ」
「それも狙いかもしれないな・・・・口実になる」
「・・・・・・・・」
1931年に来日したエチオピア皇帝の親族
リジ・アラヤ・アベバ公が日本人の花嫁を求めた。
条件は19〜21才、美人で英会話が出来ること。
申込者は20人に達し。
黒田子爵家の二女、黒田雅子嬢(当時23歳)が候補者と決定。
この時、エチオピアに野心を持つイタリアが干渉。
当事国の日本は、遠い欧州とアフリカの事だからと無策を決め込んだ。
しかし、東地中海での制海権に興味を持ったブルガリア王国と
トリエステ港の帰属問題でドナウ連邦がイタリアに反発。
列強の多くは大恐慌と合わせ、
エチオピアの地下資源を火山層が多くて採掘費用がかさむと判断。
静観を決めていた。
しかし、ここで、イタリアがエチオピアを取るくらいなら、
ドイツ帝国が・・・
という兆候を見せるとイギリス、フランスが騒ぎ始める。
これは、不味いと、
イタリアが退いて、
エチオピアの公爵家と日本の子爵家の婚儀があっさりと済んでしまう。
日本政府は、一連の国際問題で、なんら口を挟まなかった。
しかし、不思議と収まるところに収まる。
そして、日本・エチオピアの関係は親密になっていく。
エチオピア帝国は、紀元前1000年に興ったサバ王国が始まり。
2世紀にソロモン王朝がアクスム王国を興して、現在に至るという。
天皇家より古い血筋だった。
そして、勢力的に小さいコプト教は、
ギリシャ正教、カトリック教と比肩し得る古いキリスト教の宗派だった。
もっとも古いから良いと限らなかったものの、
しかし、初期のイエスキリスト教に近い系列は、ステータスがあった。
ドイツの干渉は日本にとってプラスに働くが当然、思惑があった。
ドイツ植民地で唯一黒字決算の
“東洋の小ドイツ帝国をよろしくね”
というサインも含んでいた。
欧米列強も中国大陸を踏み台に経済再建をしているため。
日本との関係を強化する方針を採っていく。
それは、日本がエチオピアと友好関係を結んでも構わない収益で、
ファシズムに酔うイタリアも揚子江を失うより退いてしまう。
そのおかげでか、日本資本の海外進出は、思いのほか進んでいた。
インド・中国鉄道が完成。
イギリスは、インド・ビルマ・中国に至るアジア大陸鉄道路線を支配。
南部14式自動拳銃 (8mm×22)
ドイツ製のルガーをモデルにしただけあって、
可もなく不可もなくだった。
日本陸軍は、26万程度、
海軍をあわせても30万弱の生産でしかなく、
士官用で生産しても、たかが知れている。
しかし、ここで揚子江からの引き合いが多く、
生産が間に合わなくなる。
そこで、南部は、民間護身用向け拳銃を開発する。
コンセプトは、二つ、
訓練されていない民間人をして命中させられることであり、
もう一つは生産性だった。
威力が小さい方が命中しやすいのは道理であり、
ライフル弾と生産調整がしやすくするため、
ライフル弾を半分にしたものとなった。
日本国防省は、南部自動拳銃が行き渡っていたため干渉しなかった。
6.5mm×25で作られた自動拳銃は、軽量であり、
南部自動拳銃と同じ堅実なつくりを改良し、
生産性を高められていた。
結果的に護身用の域を僅かに超えて命中しやすく、
さらに小型であることで、隠しやすく、
弾数を多く携帯できる特典が追加された。
94式自動拳銃(6.5mm×25)の大人しさは、
アメリカのコルト・ガバメント1911 (11.43mm×23)、
ドイツのワルサーPPK、イタリアのベレッタ1934、(9mm×19)、
ロシアのトカレフ(1936) 7.62mm×25 と比較するとわかりやすく、
当たっても “痛てぇ!!” であり、
“脅迫用?” だった。
しかし、素人ばかりで試射させて調整したことから命中率だけは良く。
そして、当たり所が悪くなければ死なない事が逆に幸いする。
体を貫通できず、
体内に残ってしまうので、ある意味、怖く。
相手が、まともな武器を持たない植民地人だと、
非常に有効な武器になった。
女でも子供でも簡単に使える、
これが、女子供用の護身銃で当たり、揚子江に流れていく、
94式自動拳銃(6.5mm×25)は、人を殺しにくいことが逆に好まれた。
日本の国防省は、第一次世界大戦の戦訓を受け、
総合火力で劣勢であると歩兵支援火器を充実させようとしていた。
6.5mm機関砲。
50mm擲弾筒。
50mm迫撃砲。
装甲歩兵車を増強する。
そして、目玉は、やはり戦車だった。
大戦の借金の一部で、
イギリスから貰った2ポンド(50口径40mm)砲が大量にあった。
今後、役に立たなくなりそうだと予測しながらも2ポンド砲で戦車を開発する。
イギリスも大戦で余った大砲を日本に払い下げ、
新型砲の開発をしやすくなっていた。
ディーゼル200馬力。
50口径40mm砲、6.5mm機銃2で、
15トン級戦車の開発する。
赤レンガの住人たち
「・・・戦車も揚子江用なのか?」 (嫌味)
「・・・・うん」
だった。
そして、戦闘機と爆撃機
日本で生産していたエンジンは水冷でユモ型であり。
空冷ならジュピター型。ダブルワスプ型だった。
この時期、
先鋭的なフランスのドボワチーヌ500を参考に新型機の開発を進めることになった。
水冷ユモ880馬力、12.7mm2丁、時速500km。
そして、爆撃機も水冷ユモ880馬力、12.7mm2丁、時速400kmで開発。
どちらも “思いやり予算” との兼ね合いになるため、
単発機のみの開発をしていた。
国際連盟
スイス、ジュネーブ会議
日本が建造した扶桑型オランダ戦艦が優秀過ぎたことから、
今後、輸出艦艇をトン数制限する条約が検討される。
ここで資源さえ売れば、戦艦を建造できる国が反発。
議会は騒然となった。
カフェテラスで数人の男たちがコーヒーか、紅茶を飲んでいた。
「ったく。大恐慌だというのに、なにを考えているんだ。あのバカどもが・・・」
「安全保障上の問題ですからね」
「戦艦を自前で建造できない国の安全保障など、知ったことか」
物は言いようだ。
昔は、日本も建造する力がなかった。
そして、経済的な問題でもある。
列強と呼ばれる国で資源を欲しているのは日本であり。
資源さえ入るなら安全保障上の危惧があっても
戦艦を建造し、輸出して良いと考えていた。
利敵行為というなかれ、
近代文明を維持するため資源が必要で
“背に腹は代えられまい”
という問題だった。
ところが、ほかの列強は違う。
対扶桑型戦艦は、2隻か、4隻しか、保有していない。
欧米列強は、近代文明を維持するための資源を自前で持っており、
大恐慌で戦艦建造に躊躇しているだけ。
特にオランダ連邦が資源を投売りしてからは、
日本向けの資源価格が暴落。
ブロック経済をやろうにも
揚子江を経由されては処置無しの状態だった。
「潜水艦を除く。12000トン以下では?」
「・・・・・まあ、妥当な線ではあるな」
列強といえど、全ての資源を持っているわけではなかった。
というわけで、列強は大国らしい独善的な振る舞いを見せ、後進国と歩み寄る。
そして、脅迫に近い凄みで、後進国を各個撃破。
納得 (無理強い) させていく。
国際連盟で、軍艦のトン数輸出規制が決まると。
オランダ海軍から日本の軍艦の評判を聞いたのか、
制限内で巡洋艦を建造しようとする資源大国が日本へ軍艦建造を発注しようとする。
が、ここで列強も一計を案じる。
前ド級戦艦や装甲巡洋艦は処分され、
揚子江で河川砲艦か、要塞砲台で据え付けられていた。
しかし、20000トン近いド級戦艦は改造しても揚子江で使い難い。
日本に河川砲艦を建造してもらって、
砲塔を載せ換える手もあった。
しかし、揚子江は要塞化が進み、
航空機の配備で大型砲艦を必要としなくなっていた。
それなら国際的に需要があるうちに売り、
新型戦艦の足しにする方が良かった。
輸出規制条約発効前、
邪魔な中古戦艦を売却 (押し付け? 押し売り?) してしまうのも一興。
資源国が戦艦購入のため、資源が売れば資源が高騰し、
日本が資源を高値で購入すればアメリカ、イギリスも懐が温まる。
条約で日本に新型戦艦を売らせないようにし、
自分の国の旧式戦艦を売り捌き、
新型戦艦建造の足しに・・・・・
と、我田引水な悪徳商法に日本政府は呆れ返る。
運輸省並みの姑息で、えげつない発想だった。
当然、使いやすい新型12000トン級巡洋艦と
旧式ド級戦艦の比較になってしまう。
寿命の長いのは圧倒的に新型巡洋艦に決まっている、
新型巡洋艦は、早くても3年先。
大砲の大きなド級戦艦は、すぐに手に入り魅力的だった。
もちろん、彼らの中で維持管理、運用に関する概念を持っている者は少数派。
一カ国が購入を決めると悲しい性か、自己満足か、対抗上か。
資源と交換にド級戦艦を購入し始める。
そして、資源の高騰は、日本を直撃。
アメリカは、旧式戦艦が売れたからと戦艦4隻の建造を決め。
イギリスとドイツは、渋々と2隻ずつの戦艦建造を決定する。
アメリカのド級戦艦8隻 (売却用) |
|||||
建造年度 |
排水量(t) |
武装 |
速度(kt) |
||
サウス・カロライナ | 1910 | 16000 | (305mm連装×4) |
18.5 | 河川砲艦に改造されて揚子江へ |
ミシガン | 1910 | 16000 | (305mm連装×4) |
18.5 | 河川砲艦に改造されて揚子江へ |
デラウェア | 1910 | 20000 | (305mm連装×5) |
21.0 | ドナウ連邦 |
ノース・ダコタ | 1910 | 20000 | (305mm連装×5) |
21.0 | ドナウ連邦 |
フロリダ | 1911 | 21000 | (305mm連装×5) |
20.7 | トルコ |
ユタ | 1911 | 21000 | (305mm連装×5) |
20.7 | トルコ |
ワイオミング | 1912 | 26000 | (305mm連装×6) |
20.5 | 聖ロシア帝国 |
アーカンソー | 1912 | 26000 | (305mm連装×6) |
20.5 | 聖ロシア帝国 |
イギリスのド級戦艦9隻 (売却用) |
|||||
建造年度 |
排水量(t) |
武装 |
速度(kt) |
||
セント・ビンセント | 1910 | 19000 | (305mm連装×5) | 21.5 | アルゼンチン |
バンガード | 1910 | 19000 | (305mm連装×5) | 21.5 | アルゼンチン |
コリンウッド | 1910 | 19000 | (305mm連装×5) | 21.5 | アルゼンチン |
ハーキュリーズ | 1911 | 20000 | (305mm連装×5) | 21.0 | アルゼンチン |
コンカラー | 1912 | 22000 | (343mm連装×5) | 21.5 | ブラジル |
モナーク | 1912 | 22000 | (343mm連装×5) | 21.5 | ブラジル |
サンダラー | 1912 | 22000 | (343mm連装×5) | 21.5 | ブラジル |
キング・ジョージ5世 | 1912 | 23000 | (343mm連装×5) | 21.0 | ブラジル |
センチュリオン | 1913 | 23000 | (343mm連装×5) | 21.0 | ブラジル |
ドイツのド級戦艦5隻 (売却用) |
|||||
建造年度 |
排水量(t) |
武装 |
速度(kt) |
||
ウエスト・ファーレン | 1910 | 18000 | (283mm連装×6) | 20.0 | 河川砲艦に改造して揚子江へ |
ラインラント | 1910 | 18000 | (283mm連装×6) | 20.0 | 河川砲艦に改造して揚子江へ |
ヘルゴラント | 1911 | 22000 | (305mm連装×6) | 21.0 | メキシコ |
オストフリースラント | 1911 | 22000 | (305mm連装×6) | 21.0 | メキシコ |
オルデンブルグ | 1912 | 22000 | (305mm連装×6) | 21.0 | メキシコ |
※副砲以下は、購入国の事情に合わせるので省きました。
聖ロシア帝国 ハルピニスク
ニコライ二世は、庭園でくつろいでいた。
政府任せで何もすることがない。
たまにロシア政府の要望で地方を謁見して回るだけでセリフも決まっている。
最初は、冗談かと思ったら本気だった。
日本の天皇は、良く我慢しているものだ。
それでも日本の運輸省が天皇の言うことを聞いても良い、
と思っているときは、ロシア皇帝より “権威” があるらしい。
アムール州・満州・朝鮮半島を束ねる巨大な帝国も、
ソビエト連邦という大国の前にあっては、少しばかり分が悪かった。
そして、南の華北連邦も聖ロシア帝国より大きい。
いまは、主権侵害されていて、経済的に支配されていても、
将来的は、強国になる可能性を秘めていた。
聖ロシア帝国は、いまのところ、日本、イギリス、アメリカと友好関係を保ち。
対ソ戦では、支援を受けられることになっている。
山東半島のドイツ領とも上手くいってる。
ソビエトは、話しによると6割の将校が粛清されているという。
これも、冗談だと思っていたが、
1割の将校が聖ロシアに亡命してくる。
ひょっとしたら本当だろうか。
わたしは、有能な皇帝でなかったかもしれない、
しかし、それでも、そういったことは出来ない。
事実なら攻め込む時期なのだろうが、
モスクワまで遠すぎる。
ロシア政府も、そう考えているのだろう。
何より武器が足りない。
それに逃げ込んできた将校の中に、
裏切り者がいないと断言できない。
そして、孫たちも可愛い。
ウラジーミル アンネローゼ
出来れば戦争は避けたいものだ。
生まれた子供は、ウラジーミルとアンネローゼ
妻アレクサンドラ皇后は、わたしとナガコ皇太子妃を疑っている、
しかし、血友病の自責の念と
民衆に対する恐怖からか何も言わない。
皇后は、ドイツ生まれのイギリス育ちで
日本よりイギリスやドイツ贔屓になりやすい。
それでも日本が命の恩人に変わりなかった。
臨時政府に捕らえられている時は、それなりの待遇だった。
しかし、ソビエトに捕まっていたらと思うと、ぞっとする。
数日前、ロシア皇帝の暗殺団が捕らえられたらしい。
ソビエトはロマノフ王朝が邪魔なようだ。
・・・・日本の客人が来た。
皇太子妃の身内で某公爵、囲碁の相手。
最初、チェスをしていたのだが最近は囲碁を覚えた。
こっちも、なかなか面白く、
横になると天井が碁盤に見える時がある。
いまでは、日本風庭園の庭石の一つを碁盤にしている。
碁石を持つ。
攻めるか、守るか、迷いながらも定石通り石を打っていく。
定石は、便利なものだ。
「・・・日本の12000トン級巡洋艦の建造は、進んでいるのかね」
「いえ、陛下。アメリカ、イギリス、ドイツにしてやられました」
「欧米列強の中古戦艦の一掃で」
「新型巡洋艦の建造はなくなり、資源も高騰中です」
「それは残念だったな」
「当てにしておったのだろう」
「ええ、財界は落ち込んでいますが浮きドックを建造し」
「メンテナンスで稼ごうかとも・・・・」
「ふっ 戦艦の維持費は大変なものだ。それが旧式であってもな」
「はい、旧式の方が、あれこれ、かかりそうです」
「それに戦艦だけでは・・・」
「艦隊を編成しないと潜水艦の餌食になるだけか・・・」
「はい」
「列強になれる国と、なれない国。これは、国民性に尽きるな」
「その代わり建設部門は、業績を上げているようです」
「そういえば、日本はトンネルを掘り始めたのだろう」
「ええ、ようやく。資源で目星がついたようで」
「資源が少ないと大変だな」
「余計に働けば、済むことですから」
「それでも中国大陸利権のお礼が出雲では割にあわないだろう」
「白人世界との力の差でしょう」
「しかし、良い面もあります」
「列強が中国大陸に肩入れするほど、日本への発注が増えるのですから」
「しかし、揚子江の工業化して」
「山東半島のドイツ領は工業化が進みつつある」
「ライバルが増えそうですね」
「大丈夫なのかね」
「日本は、東アジア唯一の工業国ではなくなるのだよ」
「時代の流れでしょう」
「不利になるとわかっても抗し難い運命なら受け入れるべきでしょう」
「そういうものかな」
「日本より資源と生産性に勝る工業地帯が近くに作られる」
「日本人は、いまより、もっと働かないと生きていけないことになりそうです」
「そう、出来そうなのかね」
「資源開発に成功すれば」
「我が国にも資源はあるよ」
「権限がなくて保障は出来ないがね」
「当てにしています・・・」
「ところで、来る途中に感じたのですが」
「最近は、白人至上主義も弱まっているようです」
「皇太子妃が日本人でロマノフ王朝に日本人の血が流れ」
「日本の皇族にもロマノフの血が流れる」
「民族は違うが漢民族、満州族とも同じ黄色人種」
「少しは、気が引けて手加減するらしい」
「人間扱いしていただけて光栄です。陛下」
「そう嫌味に蔑むな」
「日本人は身内だと思っている」
「最近は、欧州貴族と日本華族の婚姻も増えているようだし」
「日本人への人種差別は、今後、減っていくはずだよ」
「おかげで有色人や黄色人の裏切り者扱いですがね」
「日本人がいなければ」
「もっと、たくさんの有色人種が虐殺されていても、おかしくないのだ」
「白人が、有色人種を人間と認めたのは、日本人がいてこそだ」
「随分と持ち上げてくださいますね」
「ふっ 白人同士で殺し合ったのに比べれば」
「裏切りぐらい、許容範囲というものだよ」
「それに日本の場合、正当防衛とか、緊急避難と思えるね」
「ご理解いただけて恐縮です。陛下」
「帝国主義の世界だ」
「国際的にも理解されているだろう」
「そういえば、戦争もロシア人の被害が一番多かったそうですね」
「酷いものだった」
「前線に食料が行き渡らない」
「それでも兵士は戦わなければならない」
「・・・・・」
「そのくせ、丸々と太ったねずみが戦場に増える・・・・」
「・・・・・」
「ねずみに食べられるくらいならと」
「一部の兵士が思ったところで責めることはできないだろうな」
「・・・・・」
「戦争など。するものではない」
「肝に銘じます。陛下」
「いや、どういう理由であれ」
「君ら日本人に止められシベリアに出兵しなくて良かったよ」
「今は、そう思っている」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
月夜裏 野々香です。
少しドイツ領山東半島の説明を・・・・
1897年11月1日に山東省で、
スタイル派のドイツ宣教師2名が殺害される。
白人宣教師を殺すと天罰が下るのだろうか。
1905年、露清戦争で清国が敗北。
“あの時、殺害された宣教師2人”
に対する言い掛かりで、ドイツ軍が膠州湾を占拠。
山東半島ドイツ領
租借地7,100ku。
その後、ドイツは、あれこれと難癖を付け、
租借地は、45000kuまで拡大。(九州:36730ku)
山東半島の収益と戦略的価値の高さは、
他の殖民地、西南アフリカ、東アフリカ、ニューギニア北東部を圧倒。
青島は、ドイツからの投資が進み
“小ベルリン” とか “東洋のベルリン” と呼ばれるようになり。
いまでは、租借地であるにもかかわらず。
山東半島は “小ドイツ帝国” と呼ばれ、
ドイツ帝国の直轄地になっていた。
世界大戦後も、
山東ドイツ領への投資は続き、国家然となっていた。
そして、工業化も少しずつ進み、
東アジアにおける小ドイツ帝国のような勢力になろうとしていた。
んんん・・・・・下手すぎます。脳内で処理してください。
因みに華北連邦(ダイダイ色)。華南合衆国(黄色)。
聖ロシア帝国(薄青灰色?)。日本(赤)、
ドイツ租借地(濃青)。香港・マカオ(黒点)です。
それと揚子江に帯状に広がっているのが揚子江自由経済圏です。
もちろん、揚子江水系全域と黄河流域にも列強の利権が広がっていますが、
確実に確保されているのは、こんなところです。
細い線はインド・ビルマ・中国大陸鉄道です。
南京−遼東半島−聖ロシア帝国−日本へと連結される予定です。
あと、海南島が黄色ですが、全島が租界地の様になってます。
収入がそれほどでもないので、なんとなくという感じです。
この時期、ドイツ帝国は、6隻の軍用飛行船を就役させようとしてました。
大恐慌中ででも民間60隻なら、
軍用で6隻くらいは何とかなるのではという発想です。
日本に飛行船を2隻売却するのも、
ドイツの軍民に利益が転化されるのが大きいからです。
戦争に負けていれば10万人程度の軍隊を維持すれば良かったのですが、
負けなかったので100万人以上の軍隊を維持しなければならず。
低額の軍事費。生産性の高い90万人(民間)。
天文学的な賠償金。植民地なしの組み合わせと。
高額の軍事費。生産性の低い90万人(軍人)。賠償金無し。
植民地ありの組み合わせ。
どちらが良いか・・・・・
軍備は、国家財政を圧迫させてしまいます。
軍用飛行船は、ドイツ帝国の大公国の名前をつけました。
バーデン (東アフリカ)
メクレンブルク (南西アフリカ)
ヘッセン (太平洋)
オルデンブルク (東アフリカ)
ザクセン (南西アフリカ)
メクレンブルク (太平洋)
まだ半分しか就役していません。
配備されるのは、いずれも海外領土で
簡単に外洋に出られる場所ばかりです。
今度は、内陸に飛行船基地があるので、
イギリスも艦砲射撃で要塞ごと、
どうにかできるような相手ではなくなりました。
ドイツ帝国(4王国+6大公国+5公国+7侯国+2直轄領+3都市)の連邦国家でした。
しかし、行政上、いよいよ限界となって、
占領地も、対等の自治権を認めて連邦が拡大されました。
ここに。占領地の行政区画を解体しながら縮小、組み込んでいきます。
ドイツ帝国が占領地の政治体制を名目上、1大公国18侯国に区分けする。
これは、ドイツ帝国の連邦国という位置づけを押し付けるためだった。
名実共に共和制になると民衆の反発が強くなるという恐れがあったため。
ロシア側占領地は、北部(ロシア)、中部(ベラルーシ)、南部(ウクライナ)で3分割。
ドイツ帝国の直轄地として、もうしばらく残される事になる。
南西アフリカ、
東アフリカ、
山東半島(小ドイツ帝国)、
ニューギニア北東部・ビスマルクも徐々に植民地から、
イギリス型の自治国へと向かう体制になり始めていく。
というわけで、
ドイツ帝国は(4王国+7大公国+5公国+25侯国+5直轄領+3都市)の
連邦国家となっていきます。
ドイツ帝国 |
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4王国 |
6大公国 |
5公国 |
7侯国 |
プロイセン |
バーデン |
ブラウンシュバイク |
リッペ |
バイエルン |
メクレンブルク・シュヴェリン |
ザクセン・マイニンゲン |
ヴァルデック |
ヴュルテンベルク |
ヘッセン |
アンハルト |
シュワルツブルク・ ルードルシュタット |
ザクセン |
オルデンブルク |
ザクセン・コーブルク・ウント・ゴータ |
シュワルツブルク・ ゾンデルスハウゼン |
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ザクセン・ヴァイマル・アイゼナッハ |
ザクセン・アルテンブルク |
ロイス(弟系) |
直轄領 |
メクレンブルク・シュトレリッツ |
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シャウムブルク・リッペ |
エルザス・ロートリンゲン |
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ロイス(兄系 |
シュトラスブルク |
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都市国家 |
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ハンブルク |
+ |
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+ |
リューベック |
ルクセンブルク大公国 |
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フランドル(ベルギー) |
ブレーメン |
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ワロニー(ベルギー) |
ノールバドカレー(フランス) | |||
ビカルディ(フランス) | |||
アルデンヌ(フランス) | |||
マゾフシェ(ポーランド) | |||
ウッチ(ポーランド) | |||
クヤヴィ・ポモージェ(ポーランド) | |||
シフィェンティクシシュ(ポーランド) | |||
エストラント(エストニア) | |||
リーフラント(エストニア) | |||
島礁(エストニア) | |||
サルドゥス(ラトビア) | |||
リガス(ラトビア) | |||
レゼクネス(ラトビア) | |||
ケルメス(リトアニア) | |||
ザラス(リトアニア) | |||
トラク(リトアニア) | |||
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第一次世界大戦、ドイツ海軍の最終型潜水艦です。
1918年型(UE2型)
排水量水上1163t、水中1468t。(全長82m×全幅7.4m)
最大速度 (水上14.7kt、水中8kt)
水中航続距離64.8km(35海里)/4.5kt
水上航続距離25715km(13000海里)/8kt
乗組員40人
兵装50cm魚雷発射管×4、
15cm砲×2、魚雷×14、機雷敷設筒×2、機雷×42
その後、ドイツ海軍は、戦後軍縮。
そして、大恐慌にもかかわらず。
予算に相応する不断の努力と開発で・・・・・
なんと・・・・
次期主力潜水艦が、
第二次世界大戦中のドイツ海軍の(XB)型から始まります。
1927年型 (XB型)
排水量水上1763t、水中2177t
(全長89.8m×全幅9.2m) 最大速度 (水上16.5kt、水中7kt)
水中航続距離176km(95海里)/4kt
水上航続距離34200km(18500海里)/10kt
乗組員52名
兵装53cm魚雷発射管×2、機雷敷設筒×30、
20mm機関砲×1、37mm対空砲、
105mm砲、魚雷×15、機雷×66
因みにドイツは負けていないので、
アメリカ、イギリス、日本に潜水艦技術がほとんど導入されず。
軒並み戦力減でしょうか、
潜水艦に対する恐怖と認識の低い、
日本は、10パーセント減ほど・・・かな
まさにドイツの技術は、世界一ィイイイイイ!!
です。
でも、戦後軍縮と大恐慌で、60隻くらいの配備です。
因みにこれから計画している1936年型 (XI型)
水上排水量3140t 水中排水量3930t
(全長115m×全幅9.5m) 喫水6.2m 速度(水上23.0kt/水中7.0kt)
水中航続距離50海里/3.0kt
水上航続距離20600海里/6.0kt 乗員110名
兵装:53cm魚雷発射管×6(魚雷×12)、
12.7cm連装砲×2、37mm機関砲×2、20mm機銃×2
そして、戦時急造艦というのが別にあって、
戦争になると建造しやすい1700トン級潜水艦(XX1型)になりそうです。
東アフリカには、ダイヤ、石炭、鉄鉱石。
南西アフリカには、ダイヤモンド、ウラン、銅、亜鉛、スズが採掘されています。
ドイツ帝国が資本投下を継続できれば、近代化し、
アフリカに近代国家が誕生する可能性もあるようです。
大恐慌なので、まだ無理ですが。
1934年に実際に行われた飛行機レースを映像化
第42話 1934年 『ずるいよ』 |
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