月夜裏 野々香 小説の部屋

  

仮想戦記 『日清不戦』

 

第46話 1938年 『水は低きとこへ流れ』

 華南合衆国 ポーヤン湖

 南北170km、東西の平均幅20.4km、面積4600ku(干満有り)。

 平均深度5.1m、最大深度23.7m、

 長江に注ぐ最大の淡水湖で250種の野鳥。120種の魚類が生息。

 欧米諸国人の入植も多い。

 江西省は、タングステンや銅が採掘され、

 列強にとっても重要な拠点だった。

 租界地には、インド人、黒人、フィリピン人が住み、

 中国系を追いやって生存圏、既得圏を確保していた。

 そこにポーランド人、セルビア人、ユダヤ人など、

 東欧諸国の白人系も増える。

 ポーランド系の西洋風の町並みが作られる。

 なにしろ、中国大陸で一番多い白人がポーランド人1900万人であり、

 欧州のポーランド人よりも多い。

 ドイツ人とロシア人に挟まれていないためか、表情が明るく、

 自己資産が増え、自由を満喫してるのか躍動的に見える。

 揚子江でポーランド自衛軍と言えばインド軍に次ぐ勢力であり。

 兵装だけなら最強になりつつあった。

 揚子江自由経済圏は、イギリスの策謀とアメリカの後ろ盾なのか、英語が強かった。

 もっとも、地域色もある。

 この辺は、ポーランド語、英語、カン方言の三つが強い。

 そして、周辺は、インド人、黒人、フィリピン人、イタリア人の町が点々とあった。

 ゴチャゴチャとしているのだが

 混沌とした社会が好みであれば好きになるだろう。

 「ヨシカ!」

 『嘉子(よしこ)なのに・・・』

 ポーランド語は、女性の末尾が “あ” で終わるルールらしい。

 「なに? クリスティナ」

 「サッカーの応援に行くわよ」

 「サッカー?」

 「“揚子江の夜明け” の撮影は?」

 「今日は、雲が多いから中止よ」

 「雲ね〜 で、何でサッカーなの」

 「華南サッカー杯に決まっているでしょう」

 「サッカー。ね〜」

 「ヨシカ〜 日本人は、スウェーデンに3対2で勝ったのに、のりが悪いわ」

 「そうなの?」

 「もう〜 華南合衆国でポーランド人チームが勝って、42年のワールドカップに出るのよ」

 「華南合衆国って、そういう大会に出られるんだっけ?」

 「ワールドカップの出場枠を取ったのよ」

 「華南サッカー協会と華北サッカー協会は、ポーランド人が牛耳ることになったの・・・・」

 「へぇ〜」

 「今に見てなさい。ジャーマンを踏み躙ってやるわ」

 嘉子は、ほくそ笑んだ。

 揚子江は、むき出しの民族主義がぶつかり合うところでもあった。

 「わかったわ。その代わり帰りは、ロシア料理ね」

 「えぇ〜 しょうがないわね」

  ※「揚子江の夜明け」

   貧しいマッチ売りの娘チャン・ツィイー(14歳)が

   ポーランド人将校の落としたハーモニカを拾って渡した事から始まる物語。

   次々と殺害されていく要人。

   裏切り者を解き明かす証拠が少女に委ねられる。

   立ちはだかる言葉、人種、文化の壁。

   大人たちの無理解と貧困層に対する差別。

   “助けてくれた少尉の御礼をしたかっただけなのに・・・”

   共産勢力の暗躍で、

   イギリス砲艦部隊と華南合衆国軍が刻々と軍事衝突に向かい、

   幼い少女が内戦を食い止める。

   サスペンス・ストーリー

   華南合衆国陸軍・イギリス河川砲艦部隊全面協力

   

  

 揚子江では黒人も生き生きとしていた。

 人種差別は、不公平でも、不利とはいえない程度になっている。

 教会音楽のゴスペル。

 2ビートの即興ブルース。

 器楽演奏のジャズ。

 4ビートの躍動的なスウィング。

 彼らは、中国古楽器も習うよりも慣れろ。

 なんと、天性のリズム感で使いこなし、

 独自の音楽体系チャイナ・ジャズ、チャイナ・スウィングにしてしまう。

 日本人が真面目に練習、模倣して、二流扱いなのに大きな違いといえる。

 ポーランド民俗音楽も広がっているが、

 刺激の強さで黒人音楽が圧倒していた。

 他の民族もスウィングを取り込み始める。

 北アメリカから追い立てられてきた黒人たちも、

 ほかの流れ民族も、

 中国人労働者を踏み台にし、

 独自の世界観で文化芸術を昇華させていた。

 中国富裕層も負けじと、

 温故知新で中国伝統文化を掘り起こして先鋭化させる。

 反目、競合、融合しながら、

 揚子江文化圏は、もっとも刺激の強い世界になっていく。

 この中国大陸で、

 もっとも不利なのは、99.99パーセントの中国貧民層だった。

 列強側の人間の多くは仕事があり。

 住む場所があり、収入があった。

 アメリカ本国の白人が失業で喘ぎ苦しんでいる状況で、

 揚子江経済圏は、黒人がビフテキを食べることもできた。

 中国人富裕層が増えて行くにつれ、貧富の差は広がり。

 反動で共産主義勢力も大きくなってく、

 資本主義勢力と共産主義勢力が中国大陸でぶつかる。

 揚子江経済圏、低度の低い巨大生産地から、

 所得拡大で大消費市場になろうとし、

 人種・民族・宗教・文化・言語・思想を背景に、

 欲望、希望、失望、絶望が渦を巻きながら揚子江で衝突し、

 混ざり、融合していくにつれ、世界的な文化圏に変貌していた。  

  

 

 最大の恩恵を受けていたのが、一番近い工業国の日本。

 そして、本国の産業を移植している山東半島ドイツ領。

 少しずつ工業化を拡大している聖ロシア。

 欧米諸国も、輸入調整で自国商品を送り込もうとする。

 しかし、揚子江自由経済圏は、利益率の良い日本製品に軍配が上がり、

 インド・中国大陸鉄道に載せられ、

 インド市場にまで日本製品が流れていく。

 そして、中国の安価な製品が全世界に広がっていく。

 3.5円ショップ(日)。 1ドルショップ(米)。

 2.5マルクショップ(独)。 20ペンスショップ(英)が世界中に広がる。

 保護貿易したくても列強の資本家は、政府の言い分より利益重視らしく。

 切り崩されていく。

  

  

 崇明島

 揚子江自由経済機構 (列強搾取クラブ)

 「世界中の低レベル産業が軒並みやられるぞ」

 「迷惑な話しだ」

 「喜んでいるのは、輸入業者と大多数の一般消費者か」

 「国粋主義者も拝金主義の誘惑には勝てんよ」

 「中国人の賃金。個人所得。購買力が上がらない限り」

 「揚子江のデタラメな輸出攻勢は止まらないな」

 「単純に儲かっているのは確かなんだがね」

 「列強が安い商品を買って、高い商品が中国で売れているのだから」

 「土台を崩されているんだよ」

 「日本が賃金格差を利用して利益を上げたのが、そのままやられている」

 「人権無しの労力と資源が中国大陸にセットになっているからね」

 「使いたくなるだろう」

 「誰でも中国で作って海外に輸出すれば良いと考える。当たり前だよ」

 「レベルの高い工業機械は売ってないだろうな」

 「規制している・・・・」

 「しかし、いつまでも規制続けられるかわからんぞ」

 「タオルや服を作らせるより」

 「扇風機を作って輸出した方が儲かるに決まっている」

 「それに揚子江の就役者が中国民族資本と組めば、独自開発でやれるし」

 「ポーランド人は、その気になっているよ」

 「あいつら〜」

 「誰が連れてきたんだ?」

 「「「・・・・・・・・・」」」

 「“元”の為替を上げるか?」

 「・・・高い商品を買わせられる国民が納得するかな」

 「「「・・・・・・・・・」」」

 「そうだ。アメリカは、自動車を輸出したいのに困るよ」

 「・・・・・・・・・・」

 「日本が買ってくれない代わりに、中国市場に流しているんだぞ」

 「その代わり、日本の自動車輸出を制限していますよ」

 「ふん! 外を走っているのは電気自動車ばかりだ」

 「崇明は、島ですから」

 「橋を作れ」

 「そ、そりゃあ。予算さえいただければ」

 「・・・・・」 憮然

 「それに “元” が強くなって、中国資本が海外に向かうのも面白くないな」

 「そうそう、大恐慌で資本家は、国すら売りかねない状況だ」

 「まさか、自覚がないだけでしょう」

 「自覚ね。見境なく利益を追えばそうなるね」

 「中国は、御しがたいほど強大になるぞ」

 「南北に分かれていて良かったね」

 「中国が西太后以外の支配者だったら、日本は属国化されてたよ」

 「そして、中国は、アメリカと太平洋で雌雄を決していたな」

 「それでも良かったがね」

 「少なくとも軍事力という需要がある」

 「「「「「・・・・・・・」」」」」

 「と、とにかく」

 「中国人の賃金を上げるのは、共産主義に対する抑止になる」

 「資本家は、賃金格差を利用して利益を上げているんだぞ」

 「それに華北・華南が国力を付けすぎると権益を脅かされて困るだろう」

 「いや、ポーランド資本が自前で自動車を生産する前に。自動車を売りたい」

 「ユダヤ資本も中国を狙っているのでは?」

 「ユダヤ資本は、そうだが」

 「ユダヤ人はパレスチナだな。中国は踏み台だよ」

 「そういえば、ユダヤ人はフランス領シリアの租借地を買ったんだっけ」

 「日本の軍艦を買うとか、買わないとか」

 「・・・・・・・」

 「まさか中東パレスチナ狙いじゃないでしょうな?」

 「ま、まさか。いくらなんでもユダヤ人がイギリス軍と事を構えたりはしないでしょう」

 「お金は、アメリカから出ているのでは?」

 「アメリカは、個人の資本をどうにかできる制度はありませんよ。」

 『『『『嘘つけ!』』』』

  

   

 ベルバーム社

 社長がイライラと行き来していた。

 ここに来て、アメリカの緊縮財政は困っていた。

 アメリカの失業者は、1400万。

 GNP成長率は、マイナス4.4パーセントも落ち、

 ベルバーム社の利益も少し減っている。

 アメリカ産業の人間と言うわけではないが

 ・・・戦争したくなる・・・

 もちろん、政府が国の借金を増やしたくなくて、

 緊縮財政をしたくなるのもわからないわけではない。

 「社長。23人を解雇しました」

 「・・・戦争にでもならないと。彼らを呼び戻せんな」

 「戦争ですか?」

 「どこか、アメリカに宣戦布告してくれないかな・・・」

 「そういう国は、ないと思いますが」

 「日本以外ならどこと戦争しても良いのだが・・・・」

 「他の列強も “自国以外と” そう思っていると思いますよ。きっと」

 「・・・そうだろうな」

 「・・・・・・」

 「どうする・・・」

 「商品や製品を生産しても売れ行きが落ちている・・・」

 「非生産品で何か需要はないか?」

 「非生産品ですか?」

 「非生産品は、価値があるものなんですか?」

 「生産過剰で不況が起こるのなら、非生産市場もありだろう」

 「しかし、1400万人分の雇用は世界大戦ぐらいだ」

 「失業者に聞いてみるか」

 「戦争して職を得るか。戦争せず無職を続けるか」

  

  

 3月18日 メキシコ。

 国内の外国資本の石油資源をすべて国有化を宣言。

 アメリカ政府がメキシコに対し、外資資本の返還の最後通牒を通達。

 メキシコがアメリカの横暴を国際連盟に提訴。

 アメリカ艦隊とメキシコ艦隊がメキシコ湾で睨み合う。

 ルーズベルト大統領が常備軍事力整備計画を発表する。

  

  

 ジュネーブ国連総会

 メキシコが、国内の外資資本を購入すると伝え。国有化を要求。

 金に困っている欧州諸国は、渋々。

 戦争需要に賭けているアメリカは、拒否。

 スイス ジュネーブ

 カフェテラスで数人の男たちが会食していた。

     

 「メキシコの預金が増えているが、アメリカは本気で戦争するつもりなのか?」

 「ふっ 預金が増えるのは助かるがね・・・」

 「一回りしてきたが、アメリカ国民の戦意は、低そうだったぞ」

 「だよな〜 庶民にすれば、住む場所と職場と食べ物があれば良いのだから」

 「殺し合いがしたいわけではないよ」

 「しかし、軍隊で雇用があるのなら働くだろう」

 「生活の糧を得るために人殺しか。人の業だな」

 「国家の業では?」

 「いや、人の業だろう」

 「預金が増えるのなら、どっちでも良いがね」

 「メキシコの工廠は軌道に乗っているのか?」

 「フェデロフM1916と弾薬。あと手榴弾も量産していたぞ」

 「それじゃ 勝てないだろう」

 「そうだよな」

 「せめて迫撃砲くらい生産しないとな」

 「ところで、今回は、メキシコに同情したいね」

 「確かにな・・・」

 「アメリカの国力ならすぐに終わる戦争だ」

 「戦争需要として足りないね」

 「ルーズベルトも、それくらい、わかっているんじゃないか」

 「わかっていても、他に失業者を減らせる需要がないのさ」

 「日本が工作機械を買い取っているだろう」

 「そういえば、日本とドイツにヘリウムを売ってたな」

 「ヒンデンブルグ号の事故も大事にならずに済んだ」

 「日独英仏の軍事的脅威で軍事費の増大を狙っているんじゃないか」

 「それで少しは失業者を減らせる」

 「どうかな」

 「どこの国も軍事費をケチってるからな」

 「比較的余裕のある日本でさえ、正面戦力据え置きだろう」

 「じゃ アメリカ人の揚子江移民か」

 「消極的だが人口が減れば、個人資産が増える手法はありだな」

 「欧州は、それで、個人資産を拡大して世界恐慌から抜け出そうとしている」

 「日本が人口を沿線に集約させて生産性を高めているのと逆だな」

 「欧州の経済回復は、欧州統合の追い風にならないか」

 「どうかな」

 「フランスは、北アフリカに集中している」

 「イギリスは連邦保護政策」

 「ドイツ、ドナウ、イタリア、ルーマニア、ブルガリアは、やや前向き」

 「クーデンホーフ伯は、ドイツ帝国、ドナウ連邦、イタリアと」

 「北欧を核に欧州統合をしたがっているようだが」

 「欧州統合は、欧州のバルカン化だよ」

 「しかし、ある意味、脅威だな」

 「アメリカを超える勢力になる」

 「欧州統合の方が利益率が良いと思うがね」

 「ロスチャイルドは統合でロックフェラーと張り合いで儲けたいようだ」

 「欧州統合で戦争がなくなると困らないか?」

 「銀行は、引受人無しの預金が減るがね」

 「戦争が起こると引受人無しの預金が増える」

 「銀行は儲かるね」

 「大恐慌でそこまで追い詰められているのか」

 「資本家は金を庶民から吸い上げ過ぎた」

 「欧州の生産力が需要を上回って過剰でも庶民には金がない」

 「お金持ちが金をバラまけるような需要と資本の再配分が求められるよ」

 「国家の結束が弱いところは危ないな」

 「ドイツ人は旧同盟諸国の経済・産業・金融のニカワ役を勤めている」

 「しかし、上手いとは言えないね」

 「イギリスとフランスが入ると、欧州統合は勢いが付いてしまうよ」

 「統合だとドイツ人が中核、主役になってしまうな」

 「フランスは入りたくないような。入れたくないような」

 「ははは・・・」

 「だからフランスは北アフリカか・・・」

 「だが、オランダ連邦の様に割り切れていない」

 「アフリカはフランス人の美意識に合わないと思うよ」

 「しかし、不安定な独裁国家が増えないと預金が増えないな」

 「ロマノフ王朝が生き残ったのは惜しいね」

 「日本人め、余計なことを・・・」

 「しかし、最近は、日本人の預金も増えているようだが戦争でもするのか」

 「まさか、国力が大きくなっているだけだよ」

 「日本資本も欧米進出でスイス銀行に預け始めている」

 「額が随分大きくなっていないか」

 「確か日本の国家予算が80億円だから・・・23億ドルくらいか・・・」

 「一人当たりの国民総生産はともかく」

 「資産そのものは、まだ、程度低いな」

 「ロスチャイルドやロックフェラーの方が大きい」

 「だが日本の財政も個人所得も伸びて成長率も高い」

 「預金増加は期待できるね」

 「しかし、日本との為替相場、そろそろ限界になってないか」

 「まだ関税で対処できるレベルだろう」

 「アメリカがフランス狙いというのは?」

 「んん・・・自由の女神を貰っているからな・・・」

 「フランスもすぐに負けそうだし」

 「確かに移民する時あれを見て、アメリカと感じるからな」

 「対米戦争抑止なら、費用対効果で優れている」

 「となると・・・」

 「アメリカの国力と対抗できそうなのは、ドイツとイギリスが組まないと無理だな」

 「んん・・・ないな・・・」

 「ロックフェラーも、ロスチャイルドも、揚子江で組んでる」

 「それだけ利益が大きいということだ」

 「じゃ このまま、恐慌続きか・・・」

 「日本と揚子江の隆盛は、続きそうだな」

 「日本の国債。買うのも悪くないな」

 「あまり発行してないぞ」

 「意気地ねぇな」

 「揚子江に手を出さなければ、いくらでも儲かるというのに」

 「無理に財政投資しなくても民間が勝手にやっているのさ」

 「バーター貿易で弾みがついて、円が強くなっている」

 「バーターじゃな。付け入れないよ」

  

  

 この頃、三井、三菱、住友、伊藤忠、丸紅も総合商社の概念を確立。

 ベルバーム(鈴木商店)社が行っていた三国間貿易を模倣し、

 海外へ進出していく。

 30000トン級客船「カシハラ丸」が太平洋外周航海が出航する。

 日本人やアメリカ人が豊かなだけでなく。

 聖ロシア帝国、オランダ連邦、山東ドイツ領、揚子江自由経済圏など、

 富裕層が急増したためだった。

 需要さえあれば、供給が起こる。

 安い賃金で建造できる日本客船は、アメリカと建造期間とほとんど変わらず、

 収益率で有利だった。

 そして、太平洋外周航海は人気のある旅行だった。

 豪勢なラウンジでは、著名な指揮者による演奏会が行われ。

 著名人が歩いていたりする。

 日本人だけでなく。

 アメリカ人、ロシア人、中国人、オランダ人、ドイツ人など国際色豊かであり、

 偏見がなければ、飽きない。

 3ヶ国語、4ヶ国語話さなければならず、乗務員の人種も多様になっていた。

 子供たちが宝探しゲームをしていた。

 メモが船内に隠されており、

 次のメモが隠されている場所のヒントが書かれていた。

 それは、ドイツ語、日本語、英語、中国語、ポーランド語であったりする。

 当然、一人では、わからないため、

 多人種、他民族でグループが自然と作られ、

 子供たちが船内を走り回る。

 景品は、玩具、ぬいぐるみなど、飽きさせないものだ。

  

 船のラウンジ。

 中年の男と若い男がロッキングチェアでのんびり雑誌を読んでいた。

 「・・・先生。日本の相撲協会が外国人力士を入れるかで騒いでるそうですよ」

 「外国で興行もしているのだから」

 「そういうこともありだろう」

 「格式ばって格好つけてますけど」

 「先輩後輩とか面倒な力関係とか煩わしいですからね」

 「外国人は入りにくそうだな」

 「日本人も豊かになると変わるよ」

 「最近は、欲ボケが多いから」

 「力士たちも世俗的になってないか」

 「そういう気質は、万国共通ですね」

 「運輸省の利権体制が出来上がってから特に酷い」

 「そういえば、この前の酷かったな」

 「父親が死んで、母親が子供たちの相続分を売れないようにして」

 「半分以上取ったんですよね」

 「自分の血を分けた子供より。財産とはね」

 「よく殺されなかったな」

 「子供たちも呆れていた」

 「自立しているから適当にやっているらしいが」

 「母親は、寂しい人生を送りそうだな」

 「日本人の母親も浅ましくなったものだ」

 「ですが、最近の子供たちも冷たくなったですし」

 「財産に頼りたくもなるのでは?」

 「核家族増えてきたな」

 「アメリカの個人主義の浸透ですね」

 「それとソ連の共産主義ですかね」

 「欧米と違って、キリスト教の結び付きがないから崩れやすい」

 「家族主義の日本は、家族の絆が破壊されると、悪影響を受けるよ」

 「日本社会は、元々、忠孝の争いで苦しんできましたから」

 「忠ならざれば、孝ならず。孝ならざれば、忠ならず」

 「八割くらい、忠が勝っているような気がするがね」

 「国防省が、もう少し強ければ」

 「もう少し毅然とした国民になっていたんじゃないですか?」

 「んん・・・少しだけな。良し悪しあるだろう・・・」

 「ところで、さっき、出会ったロシア娘と会うのか?」

 「ええ、クリスマスイブにハルピニスクの白衛門の下で・・・」

 「映画みたいで、ロマンティックですよね」

 「ロシア人は、結婚を執着地点と考えないでステップと思っている」

 「気をつけた方が良いぞ」

 「わかってますって。ムフッ♪」

 「ったく・・・・離婚調停に俺を呼ぶなよ・・・・」

 「わかってますって。先生・・・」

 「おっ! イタリアがマッキMC72を日本に売るらしい」

 「なんだ。それは?」

 「エンジン2基で二重反転プロペラ。世界最速の709kmの水上機ですよ」

 「ほう〜 速いな」

 「んん・・・記事の憶測だと技術と武器弾薬の交換か・・・」

 「武器をスペインにでも送るのかな」

 「欧米諸国は、まだ大恐慌から抜けていないのか」

 「ええ、ベルバームがピーカートン社と提携」

 「警備会社のシェア拡大とリサイクル業にも進出・・・」

 「デュポン社との提携は、調整中・・・・・・」

 「ベルバームもアメリカに行って利益が落ちているみたいだな」

 「それでも、十分に元を取っているそうですよ」

 「それで大恐慌明けになれば買った株も膨らむか」

 「経済というのは、怖いな」

 「ええ」

 「“富豪の使命は、人類の進歩のために、その富を大衆の利益に帰することにある”」

 「という信念で工科大学・教育振興財団・国際平和基金に」

 「3億ドル以上の投資をする人間もいるんだがな」

 「カーネギーのような富豪は、日本人の精神で、まだまだですかね」

 「日本は、官僚主義で大富豪も少ないからな」

   

 

 船橋

 「・・・太平洋航路が豊かになると大西洋航路と繋げたくなるな」

 「ええ、アメリカもパナマ運河の拡張。本格的に考えているようです」

 「アメリカもテネシー川流域開発より」

 「パナマ運河拡張がよほど安定した収益が見込めるだろうに」

 「しかし、そうなると北大西洋の豪華客船と競争になってしまいますよ」

 「んん・・・向こうが収益が大きいからな」

 「太平洋のほうが広いですから」

 「もっと大型客船が建造されるかもしれませんね」

 「インド洋は、それほどでもなさそうだが」

 「ですが、イギリスが、オリエンタル鉄道とシルクロード鉄道を連結したり」

 「ケープタウンまで鉄道を引っ張ろうと計画したりですよ」

 「そういえば、アフリカは、イギリスがコンゴ領の施設権を買って、あとは建設だけだったな」

 「イギリス本国は、小さな島国なのにやることは大きいですね」

 「イギリスもドイツと和解か・・・・」

 「大恐慌で仕方なくと言う感じですかね」

 「ボスポラス海峡トンネルが完成したら、誰でも考えることだろう」

 「欧州−アフリカ−アジアの大陸鉄道を牛耳りたいと思うだろうな」

 「その収益がドイツとイギリスで折半ですか」

 「まあ、ほとんどの行程でそうなってしまうな」

 「さすが鉄道発祥の国。日本が鉄道の質で勝っても量で巻き返される」

 !?

 「んっ?・・・・んん・・・・船長。あの巡洋艦・・・・避けませんよ」

 「ふ・ゆ・つ・き・・・・・おい! 面舵だ」

 舵輪が回り始める。

 豪華客船ハシハラ丸と巡洋艦冬月が300メートルほど離れて擦れ違う。

 「冬月に通信を入れろ。右側通行を守れとな」

 「ったく。海軍は・・・・」

 「航海慣れしてないな。あれは」

 「出来立てほやほやの巡洋艦ですかね」

 「危ないな」

 「そういえば、哨戒艇を建造して定数割れで」

 「民間から船員を引き抜こうとして運輸省ともめたらしいですから」

 「ベテランの民間船乗りに戦闘訓練を叩き込むか」

 「新人に航海訓練と戦闘訓練の両方を叩き込むかだからな・・・」

 「慣熟航行中は、航路を外して欲しいですね」

 「戦争が起きなくて良かったですよ」

 「まったくだ」

  

  

 日本の某飛行場

 某国の戦闘機が並べられていた。

 グロスター社製 F5/34戦闘機

 スーパーマーリン スピットファイアMK1

 メッサーシュミット Bf109E

 「F5/34は、引っ込み脚が頂けませんが」

 「日本人好みの機体で悪くありませんね」

 「使えないか」

 「参考にはなりますよ」

 「どちらかというと。スピットファイアか、メッサーシュミットが良いようですが」

 「生憎、日本の工業規格は、980馬力のユモだそうだ」

 「1130馬力の栄もあるぞ」

 「参考にするのは構わんがね」

 「向こうは同じ水冷でも1000馬力から1100馬力だったな」

 「いまのところ100馬力ぐらいの差ですか。機体で何とかしろと」

 「次期主力戦闘機は、予算の都合で一機種だけだ」

 「一応、陸海軍航空部隊の性能要求書をまとめておいたがね」

 書類が手渡される

 「速度、上昇力、火力、格闘性能、防弾、航続力・・・の順・・・」

 「意見がかなり割れていたみたいですね」

 「結局、パイロットの意見を優先したよ」

 「何しろ、実戦経験がなくてな」

 「空母は?」

 「一応、大型空母で建造しているから」

 「折り畳みでも載せたい」

 「無理なら、95式を改造してでも載せるがね」

 「砕氷空母は離着艦に成功している」

 「新型は、艦載機でなくても良いと?」

 「載せられれば載せる」

 「駄目でも、改良して載せられれば、良いだろう」

 「どうせ、空母は1隻しか、建造しないのだから」

 「1隻で大丈夫なんですか?」

 「大丈夫だろう」

 「アメリカも、イギリスも、ドイツも、白い目でみられながら大型戦艦の建造だからな」

 「試験的に15000トン級から20000トン級の空母を建造するらしいがね」

 「日本は、大型戦艦の建造は?」

 「大型戦艦を建造したあと」

 「思いやり口座が減るのが怖くて見送り」

 「それで、後方で艦隊指揮も兼ねて、大型空母の建造」

 「小型空母や中型空母は?」

 「襲撃艦隊から引き抜ける護衛の綾波型は、4隻から8隻」

 「ということは、空母は、1隻から2隻だろう」

 「それなら艦載機の運用上から大型空母1隻になったよ」

 「予算の都合ですか?」

 「そういうこと」

 「わかりました。では、この優先順位で・・・」

 「頼むよ。今回は、陸海軍合わせて2400機だそうだ」

 「随分、気前よくなりましたね・・・運輸省も」

 「鉄道の収益が上がっているそうだ」

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 月夜裏 野々香です

 アメリカから黒人の多くが揚子江に追い出されて、

 アメリカ文化もなんとなく寂しいような。

 それでいて、ホッとする白人もいるのか。

 ここは正直に両方あるような気がします。

 もっとも、この当時、人口のほとんどが白人で、

 今でも7割以上が白人。

 人種のルツボといより、民族のルツボですかね。

 黒人もヒスパニックも少数派で教育も満足に受けられない。

 黒人は、いない方が良いという発想もありでしょうか。

 ところがアメリカに捨てられたはずの黒人。

 ドイツに捨てられたポーランド人がそれなりの生活。

 欧米諸国は大恐慌で “どうしよう” 状態です。

 揚子江の白人では、ポーランド人が識字率が高く、

 教養があるので、数に任せて主流派になっていきそうです。

 インド人は、ポーランド人より多く、数で圧倒的です。

 さらに英語が出来るのですが識字率が中国人より低いので苦戦です、

 イギリス・アメリカの後ろ盾がなければ難しいかもです。

 欧米列強が東欧人の地位を保証するのは、揚子江の維持と直結しているからです。

 そして、中国人傭兵部隊は、世界各地の植民地へ向かい、

 華僑は急速に拡大していきます。

   

日清不戦 1938年頃です。少し加筆・変えるかもしれませんが、こんな感じです。
  国内総生産 国民 属民族 国家予算 軍事費 船舶  
  GDP(億$) (万人)   (億$) (億$) 万トン  
日本 3878.5 8500 8 23 0.7 850  
アメリカ 8003.0 13000 1000 56 2 1187  
ソビエト 3452.2 15000   36 3    
ドイツ 3303.6 8000 6000 30 2 700  
イギリス 2841.7 4700 44000 33 2 1500  
フランス 1856.3 4000 5000 20 2    
ドナウ連邦 1548.6 3000 1500 14 1    
イタリア 1408.3 4300 850 16 0.9    
オランダ 1775.6 1000 6000 14 0.8    
聖ロシア 1534.1 3000 1000 15 2    
華北連邦 2575.7 23000 3000 2 0.04    
華南合衆国 2867.3 22000 3000 3 0.06    
(インド) (2003.5) (32000) 2000 1      
トルコ 904.6 1800 400 10 0.8    
               

 

 史実と違って、どこもかしこも軍事費をケチってます。

 それでも国家予算比でいうと、ソビエトとイタリアは、がんばっています。

 トルコは、バクー油田のおかげで、なかなか豊かなようです。

 華北連邦と華南合衆国。

 人口が占める大きさと揚子江自由経済圏のおかげか、

 すさまじい勢いを見せています。

 国家予算が少なめなのは、

 ほとんどが列強搾取クラブに流れているということです。

 いったい、いくら流れているのか・・・・・・

 本当は、属民族と国民が逆なんですけど、

 一応、独立勢力ということで・・・・

 インドは、イギリス領なので、(カッコ)扱いですが、

 さすがに規模が大きいです。

 ドナウ連邦は、ドイツ系、ハンガリー系、オーストリア系、チェコスロバキア系を主流、

 それ以外を非主流にしました。

 あと軍事費が大きくても

 兵器武器弾薬を製造できないとかなり目減りです。

 一人当たりのGDPも貧富の差や属民族の人口比。

 地域別の物価指数も微妙にあるので、

 一概に国力を反映できませんが雰囲気です。

 

 日本は、なんと堂々、第二位です。

 軍事費をケチりにケチって、日本国民を過労死させるまで酷使。

 さらに中国大陸を列強の好きにさせた甲斐がありました。

 帝国主義世界ですから、こんなものでしょう。

 ソビエトは、共産主義思想に人種差別などないということで丸抱えです。

 インド・中国鉄道は、イギリス側がシルクロード鉄道という言葉を使い始めます。

 少しばかり行程が違うようですが、

 イギリス−欧州−トルコ−中東−インド−中国−聖ロシア−日本

 鉄道でつなげる戦略があるようです。

 あとイギリスの船舶総トン数が史実より小さいのは、第一次世界大戦の影響です。

 やられ過ぎですね。

 日本企業は、基本的に欧米企業の中国進出を助けることで

 大きくなったきた経緯があります。

 アメリカ大陸に乗り込んだベルバーム社は、アメリカの大財閥。

 ロックフェラー(石油)、

 デュポン(弾薬・化学)、

 メロン(不動産・銀行・アルミ)、

 モルガン(金融・鉄道)と微妙な関係です。

 

 ドイツ帝国は、史実と違って、ハインケル社と仲が良いのですが、

 メッサーシュミット社と普通に競り合って負けてしまいました。

 史実と違って、この時期、日本は、欧米と良い関係なので、

 最新鋭の戦闘機でなければ、お金次第で入手可能です。

 

 

 

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