1999年12月下旬の日常

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1999年12月21日(火)

 今日は新聞の全ページ広告の仕事がふたつ。うち一個はページの中が都合八つのフレームに分けてあって、うち埋まっているのは二箇所だけである。他のものはデザインがあがり次第随時送られてくるらしい。そして一番上に掲げられた文字は『謹賀新年』。……本格的に仕事納めが近いのである。

 懸案だった郵便物をどうにか用意し、既に郵便局は受付を終える時刻だったため、近場の宅配便事務所に持ち込む。漸く胸の支えがひとつ降りる。さあ次は……目の前が暗い。
 そのままバイトに向かう。漫画週刊誌もぼちぼち年内分の発売が終わる時期である。だからというわけではないだろうが結構忙しなかった。これが年末年始になると寒気がするぐらい暇になる。何度も言っていることだが、まるっきり暇な方が少々忙しないよりも遥かに疲れるものなのである。では今日はさほど疲れなかったのかというと……そういうこともないのだな。

 色々と書きたいこともあるけれど、急務が数点あるのでそちらを優先。久々に淡泊な日記ですがご勘弁を。普段は書きすぎだという気もする。


1999年12月22日(水)

 師走モード続行中。慌ただしいったらないわ本当に。しかし今日はどうしても欲しいソフトが発売するので、文字どおり一瞬の隙を狙って上野へ。『悠久幻想曲3 Perpetual Blue』(メディアワークス)を買う。私が無条件に「好き」と言い切ってしまうシリーズもののひとつで、怖ろしいことに過去の作品についても全てPS版、サターン版、更にはPS版を三本セットにしたやつまで発売日に購入するという入れ込みようである。この『Perpetual Blue』からサターン版がDC版に移行したが、当然買う。元々これだけのためにDC導入したようなものだし。データが届いた際にはPHSに連絡が入る筈だったがこの段階でまだ音沙汰無く、調子に乗ってPCソフト売場→バイト先と駆け回る。ギリギリまで逡巡していた『ロマンスは剣の輝きII』(Fairy Tale・15禁)は蓄積したポイントで購入したのでつまらなくてもさほど痛手じゃないぞ。バイト先でウロウロしていると漸く職場から入電。しかしあと三十分猶予があるようなのでのんびりとしてしまう。何故か河野美香『男が知りたい女のからだ』(講談社ブルーバックス)を買ってしまったのは歴然たる油断の証しと言えよう。最近「資料に使えそうだ!」と思うと何に使うかなど全く考えずに買ってしまう癖が付き始めている。いかん。
 空き時間に封筒や郵便物に貼るシールなんかを作ったりしながら(……余裕あるな)気づくと帰宅時間。そう言えば柴田さんのオフ会の前に名刺作ろうと思っていたのですが全然間に合いませんでした。今頃作っても年内にすら間に合いません。……それはともかく、帰途例によってバイト先に立ち寄り、漫画ばかり四冊購入。赤字がまた増える(ダブルミーニング)。
 両親は別々に忘年会に参加している為、私は一人行きつけのうどん屋で食事。いつもカレーうどんばかりでは芸がないので卵とじうどんを頼んだところ、数分後、おかみさんがそそくさと近づいてきたかと思うと、小声で囁いた。
「……カレーうどんなら早いんだけど……駄目?」
 結局いつも通りになった。貰ったミカンを提げて家に戻ると、あとはひたすら絵を描く。白状すると、トップページ用にクリスマスなイラストを用意しているのである。あれこれ忙しかったのと、タブレットの新調が遅くなったので随分ギリギリの状況で執筆している。そんな訳で日記の更新もサボってしまったのだった。実際大したネタもないし。

 25日、久しぶりにコミケに行くことにした。人に会うのが主な目的ではあるが。しかし結局カタログを入手する暇が無く、詳細が掴めないままなのが些か気懸かりではある。欲しいものについてはお会いする方のご厚意に甘えてしまったし。
 ……とにかく早く絵を仕上げるべ。


1999年12月23日(木)

 まだ絵を描いている。遂に明日はイブである。スリル満点。昼食は近くのラーメン屋。モヤシソバが絶品。間に仮眠を挟んで尚も絵を描き、軽く煮詰まったので息抜きに日記を書いている次第である。


1999年12月24日(金)

 ……間に合ったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!

 いきなりで申し訳ない。ともあれ、『更新されてますリンク』から、或いは日記への直行リンクからいらしている方は何も言わずにトップへ移動して下さい。オリジナルバージョンの公開は明晩やります。説明もあとまわし! ……兎に角寝る。じゃ。

 はい夜が明けました。全精力を注ぎ込んでしまったためばてばてです。でもちゃんと定時に目が醒めたあたりが何とも。
 月、火、水三日間の状況から推して結構仕事があるだろうと踏んでいたのに、今日に限って暇。疲れがピークに達していたから有り難いと言えばそうなのだけれど、今日はまともに働く覚悟で出勤してきたもので却って疲れが出る。ともあれ、次にかかるCGの下絵の準備(ああややこしい)を軽くしたあとバイト先へ。雑誌とヤングアダルトの新作を一冊買っただけ。それにしても何かの冗談かと思っていたのだが、どうやら本当に発売されるらしい『FINAL FANTASY VIII for Windows95 日本語版』。発売元はElectronic Arts Squareである。スクウェアがEAを買収したあたりから薄々感じていた流れではあるが、遂に日米合弁事業としてこの移植に踏み切った模様。如何せん当たり前に3Dレンダリングを使用しているから要求スペックも自ずと高まってしまっているが、私は常日頃から自分のPCが潜在能力を発揮できていないと思っていた口なので、個人的には望むところ。多分買う。
 ただ、私はプレイステーション版を開始三十分で放棄したきり一度も手をつけていないという奴でもあるのだが……

 昼と夕方に簡単な作業があっただけで、結局一日手持ち無沙汰だった。そんな訳で、手慰みに封筒などに貼るためのシールの図案をIllustratorで作って出力してみたりする。右半分に寂しい空白が出来てしまうため、何かイラストを挿入するつもりで枠を作ってみたのだが、取り敢えず挿入するものがない……でふと魔が差して、仕事用に受け取っているデータの中からファイト・クラブの石鹸の写真を当てて加工する、という真似をしてしまう。図柄は面白いのだが、流石に使えないような気がする。

 帰途、ばたばたと買い物して廻る。バイト先で漫画とまたしてもヤングアダルト物、そして上野にて『シェンムー 第一章 横須賀』(SEGA)『恋姫』(elf・18禁)
 ひとつ、腹立たしいことがあった。『シェンムー』は29日が正規の発売日で、今日はあくまでも予約者を対象にした先行販売の筈だったのだが、私が行った店では結局フリー販売をしていた。何か込み入った事情があったのかも知れないが、どうも不誠実なものを感じて仕方がない。

 仕上げなければいけないCGはまだあるのだが、その前に溜まってしまったゲームに一通り手をつけていこうと思う。先ずはうん十億という大金を注ぎ込んだという触れ込みの『シェンムー』である……まだ出だしなのでシナリオとしてどうこう言える段階ではないが、映像は大作の名に恥じぬ出来。操作に馴染むのに時間を食いそうだが、遊びづらいという程でもない。何れにしてもまだまだ先は長そうだし、取り敢えずお終いまで遊んでみようという気にはさせてくれるので良し。判断は保留。
 次に、お気に入りの『悠久幻想曲』シリーズ最新作『Perpetual Blue』DC版を起動してみる……オープニングでいきなり不快指数が上昇する。音のテンションが低い。オープニングムービー部分の音声がやたら小さく、かと思うと本編では標準のテンションになる。確かシリーズの前作・前々作もそうだったよね。いい加減反省しなさい。本編に突入するも、脳内を?マークが飛び交う。骨子は同じなのだが、移動場面やシミュレーション場面に3DCGを採用し、コントローラーで主人公を動かすことでイベントを実行する方式に変わっている(以前は2D、移動はコマンド選択方式だった)。どの場所に行けば誰に会えるのかどんな訓練が出来るのか、それを把握するだけでも往生しそう。戦闘場面でも3DCGで魔法や物理攻撃が展開するのだが、何となくFFVIIを想起させてしまうのが悲しい。でも好きだから遊ぶ。

 この一二週間ほどのあいだに、ミステリ絡みの掲示板で「筆禍」とも言うべきトラブルが相次いでいる。改めて、言葉というものは扱いが難しいと思う。構図から被害者・加害者を設定せざるを得ない状況ばかりなのだが、殆どはどちらの言い分も解るし、思いがけない騒動となってしまったが故の心痛も、よく理解できる。インターネットというメディアは、様々に異なった環境にいる人々がほぼ同一のフィールド上で自由に意見を述べあうことが出来る、という意味で極めて価値のあるものだとは思うのだが、反面、そこにあって発言する者は、自分の言葉で誰かが傷ついたり誰かを傷付ける契機になってしまうことを常に考慮に容れておかねばならない、ということなのだろうか。けれど、そうした自らに課すべき軛の重みは、インターネットというメディアが求める本来の理想とは微妙に相容れないものであるようにも思う……
 少しずつバランスを取らなくてはならないのだろう。それも、誰かがやってくれることを期待するのではなく、発言者たる己が進んで始めなければならない。たとえ閉鎖的で一種自慰的であっても、ここには既にひとつの社会が形成されつつあるのだ。ハーレムにもそこ独自の法規が存在するように、少しずつでもルールを生成していかなければならない。
 ……いわずもがな、ですか? まあ、たまには顧みてみるのもいいでしょう、ということで。

 実はもう一個、深川の興味の範疇で問題が発生している……ただ、そのことは深川は随分以前に、というかそのソフトを遊んだ段階で気づいたことで、何故今更取り沙汰して騒がなければならないのかよく解らない。だいいち、引用許と引用者が同一人物だという可能性はどうして考えないんでしょう? 私は真っ先にそう捉えて、普通に看過してしまったのだが……好意的に過ぎる見方だとは思うけれど。それ以上に、どうも彼等の言うパクリというものの基準は前世紀以下の代物であるように思えるのだが……或いはそれすら自覚的に、閉じた場所で悪意ある言葉をばらまいているのか? ならば無視すればいいことで、そもそも問題にする必要もないのだけれど……何れにしても取り沙汰するのが遅すぎる、という感想しか抱かないのである。――この一文、多分殆どの方には何のことだか解らないでしょうね。御免なさいね、変なこと書いて。ちょっと言いたかったんだよう。

 ――危うく忘れるところだった。『妄想』にクリスマスCGオリジナル版を掲載しました。ただし、オリジナル版は異常にデカいです。御覧になる場合は要注意のこと。

 …………………………………………『恋姫』、動かない…………Direct Soundが作動しないなどとほざいてやがる(当然、他のソフトでは動いてる)……どうしてくれよう……どうしてほしい……?


1999年12月25日(土)

 やっぱり動きません『恋姫』。誰か助けて下さい。
 幾ら試行錯誤を重ねても状況が改善しないため、諦めて『悠久幻想曲3 Perpetual Blue』で誤魔化す。私は好きだ。だけどしんどい。シミュレーション部分の行動がコマンド式でなくなっただけでこうも面倒臭くなるとは。他のキャラと全く噛み合わない受け答えをする主人公も不思議だ。愛を以てしても誉められない点が多い。でも好き。理屈が一切無効化されてしまうため私は本作について語る資格も推薦する資格もない。一人楽しんでます。

 12時頃、『古畑任三郎』の再放送に若干の未練を残しながら家を出る。山手線を新橋で降り、横に這うガラス張りエレベーターのような「ゆりかもめ」に乗って東京ビッグサイトを訪れた。この段階で人に中たり、会場に足を踏み入れたところで酔う。当然迷う。
 企業ブース近くで in deepの掲示板によく見えているぐるぐるさんとお会いする。前もってお願いしていた、LeafのアレンジCDを受け取った。ついでに『Kanon』のテーマソングその他を収録したCDシングル(サイズはマキシなんだが)にプレミアムブックも確保して下さったので有り難く引き取らせていただいた。Leafは今回が最後の出店ということで、二日目限定で紙袋その他のグッズセットを販売しており、ぐるぐるさんも並ばれたそうなのだが、油断のために購入し損ない、頻りに悔しがっておられた。しかし話を伺うに、あれだけ煽っておいて充分な数を用意していなかったLeafの対応もちょっと拙いだろう、と思う。18禁ゲーム絡みの非常にディープな話をした。私のネット外での交友範囲にはこの手の話題を深く追求できる知り合いが少ないため、内心「この場で口にするのは拙いのでは」と思うような処まで語り合ってしまったり。因みにやっぱり今年度ベストは消極的にしか決められません。『こみパ』も『Kanon』も『加奈』もしっくり来ません。今年は突出したもののない一年でした、ということで。
 その後、ミステリ関連のサークルが軒を連ねる区画を訪れた。往路で気力の大半を使い切ってしまったため、実際に買い物をしたのは河内実加さんの『ものぐさ堂』と甲影会の二箇所だけという始末となったが、その割にお会いした方の多いこと。
 出掛けに電話を戴き、甲影会の区画前でたれきゅん嬢(……名前出してもいいんだっけ(笑)?)と落ち合う。ある疑問が解消する(笑)。立ち話をしていると、バイト先の店員さんとばったり会った。見ると目と鼻の先の区画に、私も店でちょくちょくお話ししている常連の方が店を出していた――そして見てはいけないものを見てしまう。詳しくは書きたくない。
 次いでこちらの素性を明かさないまま河内実加さんの『まんまあびわんこ』を購入した。そこで『YAKATA』のBGMを制作された南澤大介さんと立ち話。何度かメールをやり取りさせていただいており、その延長上で音楽のこととかあれこれ伺った。音楽の嗜好など近しいところがあるのである。南澤さんが製作されたCDまで頂戴してしまった。
 甲影会の前では更に多くの方とお会いした。どこまで名前を挙げてよいのか伺わなかったもので独断で大丈夫そうな方の名前だけ挙げると、『ミステリ系更新されてますリンク』『謎宮会』でお馴染みの高橋まきさん、かつてネタにさせていただいた(……あ、お断りするの忘れてた)日下三蔵さん、私がHPを立ち上げる以前にゲーム関係の話題を掲示板でさせていただいたこともある福井健太さんとか。流石にこれだけの面子が集まると私は聞くだけになってしまう。山風復刊の経緯をはじめ、ここでは書けないような話もお聞きする。
 立ち話ばかりしているうちに撤収の時刻となり、途中でお疲れの様子だった日下さんと別れ、東京駅までの直行バスに乗り込む。車内ではMYSCONやミステリ評論について興味深い意見をあれこれと伺う――語弊がないように付け加えておくと、私がこれらの話題を引き出したわけではないです。ひたすら耳を傾けるだけでした。そしてこっそりと肥やしにする。車中、ずっと立ちっぱなしだったつけが来たか、左足が攣りそうになる。どうにか東京駅まで持ちこたえはしたけど。
 数人の離脱者を出しつつ、八重洲の地下街にある奇妙な喫茶店で更にミステリ絡みの話をあれこれ。いよいよ公にはし辛い内容になってくる。しかし斎藤 栄や松本清張など、昨今あまり顧みられていない名作についての話など、まだまだ読み漏らしの多い私にとっては有益な御意見を伺うことが出来た。今日は親父の誕生日だとか色々な気懸かりもあって、喫茶店を出たところで皆さんと別れる。
 非常に愉しかったのだけれど、帰途は疲れで朦朧としていた。客をもてなしている親父の後ろで鍋をつついたあと、南澤さんから頂戴したCDを聴いたりしながら、ぶっ倒れる前に、と、この日記を認めている次第。あれに三日間ぶっ通しで参加する人もあるかと思うと……バイタリティの不足を痛感すること頻り。今日はゲームをちびちびやって適当に寝ます。ぐて。

 ……明日も行くかも、って言ったらどうする? どうもしない?


1999年12月26日(日)

 私信。昨日冗談半分でご提供いただいたアイディア、頭の中で肥大しつつあります。マジで書くつもりになってます私。流石に仰言られていたのよりは多少穏当になりますが、ちゃんと○○○探偵という設定で動かせそうです。ちゃんと必然的な状況も組みあがりつつあります。取り敢えず四、五本ぐらいの連作短編という構想。最初の一編だけでも書き上がったらお送りします。つーか、書かないと落ち着きません。しかし誰が読むんでしょう、というか何処に持っていけば出してくれるんでしょうあんな話。やっぱり○ァミ○文庫ですか? ス○ーカ○とか電○では駄目でしょうかねー。

 ……はっきりと一人にしか通用しないネタで申し訳ない。お問い合わせいただければお教えするかも知れませんが保証の限りではありません。それ以前にマニアックすぎてごく一部の人間にしか受けないだろうな、という気もする。

 昨晩はいつもより早めに就寝し、壊れたように熟睡した。まだ重石のような疲労が躰のそこここにまとわりついているようで厭わしい。勢いに乗じての有明再訪を目論んでいたが、体力的に無理がありそうなので断念した。……それでも買い物には出掛ける。坂東眞砂子『山妣(上)(下)』(新潮文庫)などをバイト先で購入したあと、秋葉原でCDを探す。照準はPat Methenyである。何枚かお薦めを伺ってあったのでそれらから探してみるが、Pat Metheny Group『Still Life(Talking)』(Geffen/MCA Victor)しか置いてなかった。この続編に当たる『Letter from Home』も、矢野顕子が参加しているというソロワーク『Secret Story』もない。では、と反対にメセニーが参加しメセニー楽曲のカバーも収録している矢野顕子のアルバム『Welcome Back』の在庫を訊ねるも、なし。最低二枚は買っていく覚悟だったが『Still Life』のみで我慢した。ここ暫く拘って聴いていたJaco Pastriusとは趣を違える、技術の高さがあまり表面化せず、透明感のある心地よいサウンド(この方向性が矢野顕子のそれと共鳴したのかも知れない)。RTF時代のChick Coreaという、「完璧主義・技巧的サウンド」の極にあるようなアーティストからジャズを知った所為で、どーも痺れるぐらいの技巧を求めてしまう嫌いが私にはあるのだが、独特の距離感を保ったこういうサウンドは無意識に聴くぐらいでいいのだろう。そして気づいたときにじっくりと聴き込んでみて、震えるぐらいで。
 昨日戴いた南澤大介さんのCDも、『Still Life』と交互に繰り返し聴いている状況である。はっきり言って、いい。ギターを軸に最小限の編成で、けれど薄っぺらではないクリスマスソングの集大成。ホームページを拝見してもデータが記載されていないので、収録された音源は過去のものであるにしても、アルバムとして公表されているものではないらしい。勿体ないぞ。南澤さんのヴォーカルもいいのだけれど、一曲のみ参加された女性ヴォーカルは最近滅多に聴けないほど巧い。記載されたデータやHPからは素性を推し量れないのですが、一体どういう方なのでしょう――というのは別途お訊ねすればいいことか。しかしとても嬉しい頂き物でした。それがためにまだLeafのアレンジCDも『Kanon』のシングルも封を切っていなかったりする。

 休息モードで『悠久幻想曲3 Perpetual Blue』を続ける……最大の問題は、一月分進めるだけでも半日かかってしまうという、展開のとろさだろう。前作はメッセージスキップを併用することで一回り三・四時間程度という手軽さがひとつの魅力だった筈なのだが、今回は何せ一日分のスケジュールを終えるだけでも一苦労である。加えてイベント等も任意で発生するものは殆どなく、大抵はいきなり、何の予兆もなしに始まる。親しくなったキャラクターの物語が優先的に進むのは今まで通りにしても、他の部分の融通が利かなくなった分、どうしても面倒臭い、という気持ちが湧く。元々システムよりも世界観とサービス精神が好きでファンをやっているので、一通りは遊び尽くすつもりなのだが、これではどうしたって未体験の方に勧められる出来ではない。3Dマップの採用やイベントの進行等々、どうも素人考えで改悪してしまったように見えて仕方がないのだが……うーむ。本当に好きなシリーズだけに、部外者ながら考え込んでしまうのであった。

 そういえば、トップページのカウンターが知らないあいだに4000を越えているではないか。結構こまめにいらして下さる方もあると解ったので、最近はトップのカウンターに殆ど執着していなかったのだった。ともあれ、改めて感謝いたします。


1999年12月27日(月)

 仕事も残り二日である。大きな波は先週で打ち止めだったようだが、今日辺りの仕事は年末年始を挟む性質のものがいつ来るか解らない、という状況で暇ながらに落ち着かない。
 合間を縫ってelfのサポートセンターに問い合わせるが、解決策は見出せない――大体が、サポートセンターと言っても全てのケースに対応できるわけではなく、先ずはこちらの環境設定からひとつずつ原因を手繰っていくだけなのだ。加えて問題が発生しているのは自宅のPCであり(ついでに言うと、職場に置いてあるノートパソコンでは動作した)、まさか職場から設定の確認など出来よう筈もない。一応修羅場は潜ってきたという自負のある私のこと、無論環境設定のミスなどは点検済なのだが先方にそれが解るわけもなく、論旨は平行線を辿り、埒が開かないので帰宅後もう一度連絡することにして一旦受話器を置いた。
 仕事のデータは五月雨式に来る。午後になると呆れるような話も聞かされた。苛々しながら一日を過ごす。頼むから作業データの予備ぐらい取っておけと言うに。

 買い物は『怪 第七号』(角川書店)と漫画や雑誌ぐらい。仕事の隙を見てまたCDを探し回ったが職場付近の店でも発見できず、昔馴染みの店に矢野顕子『Welcome Back』だけ注文した。ついでに一月末頃発売予定の椎名林檎のマキシシングル二枚を予約する。この半年で、チェックするアーティストの数が激増したような気がする。懐が寒い。

 帰宅後、再度elfに連絡。PCを前にあれこれ点検するが、設定面ではやはり問題が見出せなかった。ただ、話をしているうちに思い出したのだが、『Refrain Blue』で遊んでいた時期から『恋姫』を購入する迄に、私がPCに導入したものと言えば――MP3しかない。聞けば、サポート宛の問い合わせでも同様のトラブルは報告が入っており、そうした人々の大半がMP3ソフトを導入しているらしい。ただ、elfゲームソフト(尚、電話中に確認した結果、『同級生』も動かなくなっていることが判明。多分他にも影響出てると思う)とMP3ソフトで一体何が衝突しているのかとか、因果関係はまだelfの方でも明確に出来ていないらしく、後ほどまた詳しい連絡をして戴くことにして電話を切る。ともあれ……まだ当分は遊べないだろう、ということだ。……しくしくしくしく。

 芦辺 拓『探偵宣言』(講談社ノベルス)やぁぁぁぁぁぁぁっと読了。こうも時間がかかったのは詰まらないからではなく、ずっと別のことに意識の比重が傾いていたから。舞台設定こそ現代なのに、どの作品も古式ゆかしい「探偵小説」の匂いが漂っている。それを古くさいと捉えるか懐かしいと捉えるか、或いはだからこそ斬新と捉えるか必要と捉えるかは個人の信念に拠るだろう。バラバラな各編を歪な扇に纏める要として宛われた末尾の一編は、個人的に「らしい」と思わされた。以前私の幾つかの作品について意見を聞かせていただいたときにも思ったことだが、芦辺さんには解体分析の業とでも呼ぶべきものがある。特に古い作品には文章上の粗も目立つが、芦辺 拓という人の方向性を自分のそれと重ねて測れるという意味で絶好の作品集だろう。


1999年12月28日(火)

 仕事納めの日。しかし例によって来るんだか来ないんだか定かにならない仕事に悩まされる。昨日は名刺のデータを弄ったりして遊んでいたがどうにも気持ちが落ち着かないもので今日はそれすら気が向かない。隙を見て銀行−本屋二件をハシゴにして、エリザベス・フェラーズ『細工は流々』(創元推理文庫)などを仕入れた。溜めてばかりいないでいい加減消化していかなければいけない、と思いつつ。結局、昼頃に出力したデータが私の仕事納めだったらしい。

 夕方、バイトを控えて待機しているとelfのサポート担当者から電話が入った。原因だけは解ったのだ。Winampこの日に購入した『MP3 JUKEBOX』というソフトは、ソフト本体のエンコーダーによる出力の他に、支持者の多いこのフリーソフトを登録することで、再生操作を行った際に自動的にこちらを立ち上げるように設定できる。この『MP3 JUKEBOX』というソフト、データ変換は早いのだが再生ソフトとして使うにはとろく、不満が多かったということもあり、先日このWinampを日本語環境に変えるプラグインと共に導入したのである。だが、このWinamp、インストールしたときにDirectX絡みで何処かの拡張子.iniファイルを書き換えているようで、Windowsを起動した段階でDirectXのMP3に関連するリソースを占有するようにシステムを調整してしまうらしい(やや憶測)。最近のelf作品はこのMP3に関わるリソースを利用しているようで、そこで詰まってしまう訳である。更に問題なのは、Winampをアンインストールしてもこの設定は修復されないらしいということ。単純に考えれば、その設定を書き直せば正常に動作する筈なのだけれど……一体何処で設定を直せばいいのか、全く解らない。elfでもまだ解決策を発見していないようで、「御自身の出来る範囲で設定を書き直してみてくれますか」と言われた。然る後に連絡して欲しい、と……しょうがないから明日以降、色々弄ってみることにした。……はあ。

 ……他にも何かした筈なんだが全く記憶が残ってない。あ、バイトも今日が仕事納めでした。


1999年12月29日(水)

 途中ですが業務連絡。この度、システムがご臨終召されました。あまりにもお間抜けな展開の果てに泡食ってシステムを再インストールしたため、バックアップをかなり取り損ねていたことに気づいたときには、全てが手遅れでした。特にメールソフトのバックアップを取っておらず(ホームページ用のデータとか今まで書いた小説だ画像だといった大物は予め退避してあったため無事でしたが)、アドレス帳がくたばってしまいました。殆どの設定は再現できる筈なのですが、この年の瀬も押し詰まった時期のあまりにもあまりにもな展開に呆然としており、設定し直す気力が現在御座いません。というわけで、最近深川に重要な連絡をした覚えのある方、或いは別に意味はないが送っておこうと思った方、メール下さい。何故かというと、設定が少し楽になるから。とりわけ芦辺組の皆さんとかからは切実に連絡して貰いたいです。本当に重要な設定データなどは保管してあるのですが、もしかしたらHoopsの設定が見付からないかも知れないので……何卒宜しくお願いいたします……また、当然の如くPostPetも一緒に消滅してしまったので、新たに「さむさむII世」という相方を作るつもりですが、30日の日中以降になりますので、それ以前にペットを送らないで下さい。なかなか戻りません。はあ……疲れたからゲームでもして心を休めるさ。この激動の二日間の詳細は寝て起きてから書きます……ああ、元日のトップページ更新、この調子では出来そうにないかも……

 ……さて、この日私がしていたことを順を追って語るとしよう。
 今日から冬休みに入ったのだが、父親はゴルフ、母は職場兼旧住居に蓄積したゴミを処分するということで、私までいつも通りの時刻に叩き起こされた。朝食を取り身支度を整えると、上野−秋葉原といういつもの買い物ルートを辿る。今日はここでも怒り混じりに触れた、遅れに遅れまくったソフト――『GREEN 秋空のスクリーン』(Jellyfish)が漸く発売する日だったのである。念のためにいつも行く店で予約しておいたのだが、先に陳列台を覗くとそんな必要もなかったと気が抜けるぐらいの本数が積み上げられている。ただ、予約してあるからには当然レジの方に私の分が確保されている筈なので、レジに立つ店員に予約伝票を手渡す。この店では暫く前から予約伝票を、恐らくは店内のデータベースとの兼ね合いなのだろう、PCに接続したプリンターから打ち出す方式を採っている。商品番号や価格の記述が一般のレシートと似たものになっているため、商品名がカタカナとアルファベットで記述されているなど、元々見やすいものではない。……にしても、だ。こちらは先ず伝票を手渡したというのに、「商品名は何でしょう?」と訊ね(書いてあると言うに)、「連絡は差し上げましたでしょうか?」と問い(……今日発売日と書いてあるだろうが)、あまつさえ商品の所在が解らず、「……すぐ目の前にあるでしょう」と言っているのに「これですか!」と手を掛けたのは似ても似つかない、Adobeのパブリッシングソフトのセットだ(大体そのソフトはいつもレジの後ろに置いてあるじゃねえか! 何故そんなものを伝票切って貰ってまでして予約注文するって言うんだよ!?)。レジの前で頭を抱え込んだ。初めて他人に向かって本気で「あんたらの眼は節穴か」と叫びたくなった一瞬であった。どあほ。
 次いで秋葉原へ。まだ見に行く予定の店は開いていないので、別のソフト売場などを冷やかして歩く。さっき買ったソフトがこっちでは300円ぐらい安価でポスター付きだとか、気づかない方が幸せだったことを幾つか目の当たりにしてしまう。いやまあ、ポスターなんか貰ったところで部屋の肥やしになるだけなんだが。しかし膝丈の陳列台に140cmぐらいに達するまで積み上げてあるのは結構壮観だった。しかも2かける3の六列。本当に売れるのかは謎。既に発売に至るまでの過程で反感買いすぎているからね。
 10時半になるとかなりの店がシャッターを上げる。ソフト全般を取り扱う店舗を訪れる。ゲームにしてもCDにしてもそうだが、1月1日発売と広告を打つ商品というのが毎年必ず何本か出てくる。平日発売であれば入荷はその日の朝か早くとも前日ぐらいだろうとは思うが、どこもかしこも休業に突入するこの年の瀬のこと、ましてや大晦日や元日に通常の入荷や出荷が行われる筈はない。莫迦正直に当日になるまで陳列を控える、ということも考えられないではないが、確認するだけならタダなのだから、そう思ってDVD売場へ向かうと、案の定あるじゃないですか2000/1/1発売『彼氏彼女の事情 Op.2』(スターチャイルド・DVDソフト)。そこで買っても良かったのだが、別の用事もあるので更に上階にあるアニメ・コミック関連商品売場へ向かう。だが肝心の捜し物は見付からず、彷徨いているうちに思わず『マスターキートン File01』(Vap・DVDソフト)を衝動買いしてしまう。予定は知りつつ買うつもりなど毛頭なかったのだが、各巻にテレビ未放映の新作が一話ずつ入っており、しかも第一巻には原作で私が一番好きなエピソードのひとつ『砂漠のカーリマン』が収録されているとあっては。一本でも買ってしまうと全巻揃えずにいられなくなるのが私の病気なのだが、流石に毎月6090円(税込)が三本出るというのは些かしんどい……のんびり行こう。更に階下の洋楽CD売場でPat Metheny GroupのCDを注文する。更に大手の店で探してもいいのだが面倒臭いしここで買えばポイントが貯まるし。
 最後に書泉ブックタワーを訪れた。ここでも買いたいものは各種あったが予定していたものは発見できず、講談社の手塚治虫全集から『ふしぎ冒険記』『北へ。White Illumination 公式ガイドブック』(ASPECT)という意味不明の組み合わせを購入したのみ。撮影所の機材や現場の空気を知るのに適当な資料を探しに来たのだが、ニーズがない所為か、そうした刊行物自体が少ないらしい。それともこのチェーンで、そうした専門色の濃い品揃えを望む方が間違っていたのか。

 帰宅後、ちょっとだけ『GREEN』を動かしてみて(……やっぱり、待ち時間に見合う出来ではなさそうな……)、そのあとWindowsシステムとの格闘を再開した。Winampが一体どの辺りのファイルを書き換えているのかを探ろうとするのだが、そもそもWinamp導入以前の状況を記憶していないのだから埒が開かない。仕方なく最後の足掻きを試みた。Windowsの上書き。だが、これでも改善した様子はない。もしかしたら何か手続が間違っていたのかも知れないと思い、もう一度やってみるが今度はインストーラーが巧く動いていない模様……そこで漸く意を決し、システムの入ったハードディスクをそっくり初期化して、全てのソフトをインストールし直すことにした。最近起動も遅くなりつつあったことだし、丁度いい頃合いだろう、と思い、手続途中だったインストールを終わらせる。
 これが、拙かったのだ。既にインストーラーはHD内の、Windowsの起動に必要なファイルを書き換えてしまったあとだったらしく、バックアップを取るために再起動しようにも、システムの所在自体が認識できない状態になっていたのだ。……今までに受け取った数多のメールデータ、アドレス帳など一切合切がパー。小説やCG、ホームページのデータなど、創作廻りのデータは作業前にパックアップを取ってあったため、簡単に復元できるのが不幸中の幸いだった……結局は己の油断が招いたことと、メールのことはすっぱりと諦めて、ハードディスクをすっからかんにする完全な再インストール作業に取りかかった。
 ……インストーラーが動かない。メモリ不足でインストーラーが動かない?! いや、確かにインストーラーはDOSベースで動かすので、幾らメモリを積もうと使える容量は限られているのだが、Windowsのインストーラーだぞ?! OSのインストールだぞ?! 個人設定でメモリの占有率が変わる通常作業ではなく、CD-ROMから真っ新の状態で起動する作業なんだぞ?! それで何故メモリ不足で動かなくなる?!
 こうなると個人の工夫でどうにかするよりはシステムCDの供給元に問い合わせてみるほうがいいだろう、と判断し、久々にPCの発売元であるGatewayのカスタマーサポートに電話してみた。出ない。何度か掛けているうちに一応繋がり、待機状態になったものの、何十分待っても出ない。そろそろ食事が出来たと母に言われ、受話器を肩で頭の脇に押さえつつ、焦り苛立ちながら別の解決策はないかと手段を講じてみる。マニュアルには、完全なインストール作業をする際にブート用のフロッピーディスクとWindows98のCD-ROMをドライブに挿入しておくように、と書いてある……ふと気づいて、CD-ROMを抜き、ブートディスクのみで電源を入れてみた。
 動いた。……どうやら、CD-ROMを同時に挿入してある場合、BIOSの設定でCD-ROMから優先的にブートファイルを読み込んでいたのが原因だったらしい。恐らく、CD-ROMに書き込まれた設定では、DOSレベルで作業をするにはデータサイズが大きすぎるのだろう……結局は、マニュアルの記述ミスである。頭の方には「正確を期しておりますが」云々と書いているのに、ねえ。
 あとの作業は概ね順調だった。Windowsのほうで変なディスプレイドライバを選択してしまったらしくいきなり16色表示でスタートしたり、フォーマットの時に何か手違いを犯したのか僅か7.8MBのローカルディスクが設置されてしまったりとちまちましたミスやエラーが残ったが、流石に一からインストールし直しただけあって起動も早くなり、午前二時頃には概ね復旧を終えた……当然メールのログなんか残っていないから、厳密には復旧できたとは言えないのだけれど。
 一度真っ新にしたから、MP3再生関連で動作不良を起こしていた『恋姫』(elf・18禁)も当然動く。なんかelfというよりF&Cのゲームを遊んでいるような錯覚を起こすが、まあ元が古いゲームだと解っているので、許せないこともない(何故それを今頃移植するのか、という疑問は当然浮上してきたけれど)。ともあれ、少しだけ話を進めたあと、疲れ切って泥のように眠りに就いた。はあ……疲れたっす。


1999年12月30日(木)

 自堕落にゲームをし続けた一日。折角普通に出来るようになったんだし、ねえ。だから暫定レビュー二連発。『北へ。』や『悠久幻想曲3』(これ、バグ多すぎです……)と取っ替え引っ替えやっているので、当然完璧には終わってません。……そろそろ真面目にレビュー書かないとねー。

 『恋姫』(elf・18禁)
 ……古いゲームだ。明確な物語がなく、多分好感度とか何とかが結末や分岐に影響しているのだろうが、この選択肢を選べばこういう方向に話が展開する、というのが見えてこず、その上各イベントはコマンド虱潰しでないと終了できないため、マルチエンディングタイプのゲームとしては致命的に飽きが来る。ただまあ、深いことを考えずに気楽に遊ぶ分には悪くない出来と言えよう。良くも悪くも優等生的なのである。あと、台詞に挟まれる汗マークやハートマークの類、キャラクターの造形や会話のパターンが、elf作品と言うよりF&Cとのハイブリッドのように見えて仕方がなかった。五つほどエンディングを見たのだが、例によってまだ大きな展開が隠れているらしい。それを見ないことには最終的な評価は下せないのだが……既にそこまで続ける気があまり起こらない。そこが最大の欠点かも知れない。オリジナル版をやっていないので判断に困っているのですが、これってベタ移植なんでしょうか。だとしたら、このルーティンワークを何故放置したのでしょうか。懐かしんで欲しいからか?

 『GREEN 〜秋空のスクリーン』(Jellyfish・18禁)
 制作スタッフにとっての前作『LOVE ESCALATOR』から……一体何年振りなのやら。まだ一人分のシナリオを半分も見ていない、という段階だが、取り敢えず言えるのは、前作からの反省の色が見えないな、ということ。ゲームらしい選択肢が登場するまで数十分かかる上、飽きる。キャラクターの造形が前作に似ており、加えて脇役の大半が変に俗物で(独特の符丁を駆使したり、下世話な蘊蓄や信念をやたらと演説ぶってみたり)主要キャラ以外は殆どがアホに見えるように描かれているのが苛立たしい。
 漸く肝心のゲーム的展開(主人公による映画作りの始まり)に差し掛かったと思うと、そこでの選択肢について翌日すぐに是非を問われてしまって、気が抜けた。しかも、三択が三つあるのだが、その翌日の展開で三つとも正解がひとつずつしかないことがあからさまに解ってしまう。ゲームとして先が長いのに、いきなり先を想像させるようなシナリオを挟む辺り、ゲームを全体で考えていないとしか思えないのだけれど。
 そのあとも、それなりにゲームっぽい展開は続くのだが、ここからもシナリオ展開としては些か平板であり、時々(本当に時々)挟まれる選択肢で辛うじて興味が繋がれているという感じ。しかも選択による分岐の総数があまりないので、『ラブエス』同様の「流されている」感が相変わらず拭われていないのである。どうもゲーム全体としての組み立てが、やはり反省不足ではないか、と思う。「プレイヤーの行動に対して何らかのレスポンス(成功、失敗、その他の判定)があり、それらの過程と付随するエンディングのバラエティーを楽しむ」というのをゲーム本来の姿とする私の捉え方からすると、ゲーム作品としては失敗作に近い。
 しかし、制作スタッフの以前よりの発言などと照らし合わせると、彼等が評価して欲しいのはシナリオとアニメーションなどの演出らしいので、ゲームとして失格、と言われても痛痒も覚えないかも知れない。では、そうした「表現作品」として本編が上質かと問われると……首を傾げてしまう。作中で「台詞の自然さ」や「言葉の演出」について熱心に語っているにもかかわらず肝心のキャラクターの台詞が地に着いていない、また台詞同士の兼ね合いがやたらぎこちない部分がある、場面転換の合間に挿入されるフェイドアウトなどの演出が一本調子、そして前述したとおり物語としての波がなく展開に平板な印象が否めない、何より挿入できる数の限られているアニメーション部分の演出が充分な効果を齎しておらず、どうも無駄が多いのだ。更に言うと、まだ二つぐらいしか見ていないHシーンなのだが、これが最近の18禁ソフトにありがちな「存在意義の認められない」Hシーンであるというのが最大の問題ではないか、と。
 ――とまあ、かなりきつい論調になったが、別にまるっきりの不出来というわけではない。話途中での暫定的な評価だが、佳作程度の出来ではあると思う。ただ、当初打たれていた発売予定日が今年の2月、次が7月、そして昨日になってやっと発売――そこまで延期延期を繰り返し、徹底的に練り込んだであろうその結論がこれ、と言われると……物足りない、というより、かなり不甲斐ない。仮に2月にこのレベルで発売されていたのなら、充分に称賛に値しる、と考えたかも知れないけれど。同じだけの時間を費やせば、これよりも遥かにいいものを作れるだろう脚本家も演出家も恐らく世間には沢山ある。もっと深淵で独創性に溢れた物語を作れる作家だって無論だ。某所の掲示板を見ると、エンディングまでやって感動したとか涙したとかいう意見をよく見るが(尤も、ああした掲示板に出没する人間は幇間的になるかフレーマーになるかのどっちかしかないんだけど)、ただ感動したいのなら小説を読んだ方が遥かにリーズナブルだし、優れたアニメーション演出を堪能したいなら、今実際に見ているところだが『彼氏彼女の事情』とか、それこそゲーム作中に掲げられた名画の数々を見た方が早い。ゲームとして愉しませたいのなら、やはり選択肢とそれに対する反応、展開においてプレイヤーを魅了させなくては無意味だ。つまりは……やっぱり長いこと待たされるほどの価値のある作品ではなかったね、ということ。出てから存在を知った人なら或いは虚心に楽しめるかも知れないけれど……それでも積極的に推す気にはなりません。はっきり言って退屈なのです。
 待たせるだけ待たせてこの体たらく。さて、次回作――というより『LOVE ESCALATOR』Windows版ですか、果たしてちゃんと出せるのやら――否、出させてくれる会社や流通が存在するのやら。

 昨日書き忘れたが、『マスターキートン』DVDはシステム復旧作業の暇を見て鑑賞していた。「砂漠のカーリマン」は原作中でも一番好きなエピソードであるとは昨日分の日記にも記したけれど、原作に忠実な作りでこちらにも好感が持てました。しかも脚本は、某鉄人掲示板で一時話題になった金春智子である。成る程、やはりあちらの世界では現役であったか。しかし、何年かに一度の刊行でもいいから、光文社文庫の書き下ろしシリーズ、再開して貰えないかなー……

 ――尚、午前0時前にいきなり気が向いたりしない限り、これが年内最後の更新となります。1000年代最後だとか、そういった感慨は皆無なのですが、ともあれ来る年も何卒御贔屓に願います。


1999年12月31日(金)

 結局年内に更新しようと思ってしまった。まあ、ここまで来たら何をするでもないし、書くべきことも何もないから。昼間、親父と共に行きつけの蕎麦屋まで行って、年越しそばを受け取った。ついでに昼飯も食う。毎年ここでは二・三家族分買って、余所に届けるのである。親父は私を家の前で降ろすと、親類の家に向かった。私はたらたらとDVDを眺めながら、今年最後の更新にするつもりだった日記を認める。
 六時近くなって、年内最後の買い物に出掛けた。昨日の夕刻、矢野顕子のCDが入荷したという連絡を受けていたので、それを引き取りがてらバイト先にも顔を出そうという魂胆。矢野顕子『Welcome Back』(MIDI)のついでに、ずーっと前から棚に残っていたPat Metheny Group『Imagenary Day(特別限定盤)』(wea japan)も買ってしまう。まあ最後だし。バイト先で社長に挨拶がてら、宇月原晴明『信長あるいは戴冠せるアンドロギュヌス』(新潮社・第11回日本ファンタジーノベル大賞受賞作)貴志祐介『ISOLA 十三番目の人格』(角川書店)も買ってしまう……ま、最後だし。
 で今、矢野顕子『Welcome Back』を聴いている最中。それにしてもクレジットを見て仰天したのは、冒頭に収録されたパット・メセニー楽曲のカバーである「"It's For You"」のドラム担当があのPeter Erskinなのである……と、あの、と言ってもここを御覧になっている方の多くは解らないと思うが、あのJaco Pastriusのビッグ・バンドにも参加し、何よりJacoと同時期の(つまり最盛期の)Weather Reportにも参加していたドラマーである。最近はあまり言及しなかったが私が依然ちょくちょくと聴き続けているJacoの名サポーターなのだ。……まあ、実際に音楽を聴いているときに、そのアーティストの名声を気に懸けている、というか気に懸けさせられるうちはまだまだなのだが。矢野顕子をも愛聴していると言いながら、Epicレーベル移籍後からのファンだったため、様々な事情から手を出せずにいたこのアルバム。その不明を恥じます。いや、Jazz・Fusion系に傾倒しつつある今だからこそ、こうしたシンプルな四人編成を中心にしたアルバムに惹かれるのかも知れないけれど。

 さー、今度こそ最後の更新、……だと思う。じゃね。


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