2000年4月上旬の日常
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2000年4月1日(土)
年度が替わるその日に私はゲームに明け暮れていた――いやそれだけじゃない筈なんだけど他に何かしていた覚えもない。DASACONに参加する気力もないし某所の屋形船オフには予算の都合で参加できないしでこの二日ほどはぼーっと過ごすしかなそさう……って創作すればいいのか。焦りを感じつつゲームを始めると相変わらず猿になる私であった。取り敢えず全員脱がせた(と正直に書くと変態っぽい)。
処でこの『ELF ALL STARS 脱衣雀』、獲得したポイントで各種のデスクトップアクセサリーを購入できる仕組みになっており、全員脱がせたあとは(他の言い方はないのか?!)それがプレイの励みになるように、というクリエイター側の配慮が見受けられるのだが、二日ほど遊んでみてふと思い立ち、ちょっと小細工を弄してみた。ある程度の得点を稼いだ処でセーブし、そのあと任意の商品を作中のお店で購入する。セーブしたのと同じ場所で購入したソフトなり壁紙なりをインストールすることが出来るので、今し方手に入れたものをインストールする(二枚目のCD-ROMには一連のサービスデータのみが収められているらしく、ここでディスク入れ替えの指示が為される)。作業が終ったら、セーブを行わずにソフトを終了させる。で、確認すると……ちゃんと入手したデータはインストールされている。先程セーブしたデータを呼び出せば、ポイントも当然元のまま。
一旦購入したデータは「売り切れ」扱いとなり、その後入手は出来なくなるから、全ての商品を蕩尽するという目的の元遊び続ける、という考え方も出来るが、生憎こちらはそこまで付き合いのいい方ではないし、殆どのプレイヤーもそうだろう。長く遊ばせることが狙いなら、もう少し踏み込んで対策を立てるべきではなかっただろうか。例えば、全ての商品を購入したあとで隠し商品が登場するとか……そこまでしなくとも、ある程度店の棚を空にしないと登場しない商品の存在を匂わせるとか。仮にホントにそんなアイテムが存在しているのであれば、暗示していないのは拙い。暫く前に購入したMP3再生・変換ソフト『MusicMatch Jukebox 4』がバージョンアップした、という内容のメールが先日届いていた。このソフト、再生するときに相当リソースを消費しているらしく、BGMに利用すると否応なく作業に支障を来す。また、頻繁に上書き・保存を行っていると、その度に音飛びを起こしたり再生が止まったり、こちらに妙なストレスを生じさせて作業効率を落としBGMとしての役を為さない。そんなこんなで最近は利用していなかったし、メールが届いた当初も、パッチ程度では大して環境は改善されまいと思い、またその手間も厭ってアップグレードを行わなかったのだが、今日ふと気が向いて実行に移した。
だが、指定されたホームページをよく見ると、掲載されているのはどうも製品版とほぼ同等のデータらしい。元々あったソフトは一旦アンインストールし、その後ダウンロードした自己解凍式のプログラムを実行すること、とある。そのインストール作業中に二度キーコードを要求されるので、そこで登録ユーザーに送られたメールに記述されている二つのキーを入力することで初めて製品版として機能する方式のアップデートのようだった。どちらか一方でもキーコードを入力しないと、再生音質の低い体験版の状態で動作することになる、という仕組み。なかなか気合いの入ったアップデートの仕方と見え、好感と期待とを抱いて作業する。
試験的に動かしてみると、予想を遙かに上回る変更が加えられていた。先ずインターフェイスはそれまでのブラウンから、標準でエメラルドグリーンに変わっている。全体のデザインそのものに変わりはないものの、各種ウィンドウの表示の仕方に若干の融通が利くようになった。一番感心したのは、よく聴くMP3データを登録しておくウィンドウの表示速度が格段に速くなった点である。前のヴァージョンではMP3データ登録の読み込み方に問題があったようで、大量に登録するとその分だけ動作が重くなり、最後には起動時にライブラリを開こうとするとそれだけでえらい時間を食うようになっていた。それが今回のアップグレードでは目覚ましく改善され、アップグレード後も以前のライブラリをそのまま利用しているのだが、読み込みにストレスが全く感じられない。その他、再生面に置いても改善が為されたようで、音楽CDをMP3に変換しながらデータ再生していても音飛びが起きなくなったし、もしかしたら再生能力そのものも見直されたのかも知れない。全体としてその名に恥じないアップグレードっぷりでした。唯一問題を挙げるならば、ダウンロードするデータの総量が大きすぎることであろう……私の環境(ケーブルTV回線)ではどうということもないが、アナログ回線を利用している向きなら恐らく躊躇いを感じるぐらいのサイズである。そのまま体験版としても利用できるので、MP3再生変換ソフトをお探しの方はどうぞお試しあれ、と……軽々しくは言えないぐらいに。……あれ、大して書くことないと思っていたんだけど。あそうそう、リンク集のあちこちに置かせて貰っている『ぎゃらりあなむぅ』のURLが今日付けで変更になるという話でしたが(場所はここ)、何やら新装が手間取っていたりすぐになくなる筈だった旧URLの方が依然閲覧可能らしかったりと問題有りのようなので今日は修復しません御了承を。因みに昨日触れた手を出しかかった本というのはU村さんのやつです。
エイプリル・フールだから月並みに嘘の一個でも書いておこうかと思ったが、それをやるなら昨日のうちでないとアンフェアだったんだな、と思い至り断念。大体土曜日で家族以外の誰とも顔を合わせていない掲示板に書き込みもしていないでは嘘の吐きようがないではないか。
2000年4月2日(日)
昨日付けの日記で『MusicMatch Jukebox 4』のヴァージョンアップを評価しましたが、あれ8割ぐらい撤回します。確かに昨日書いたような再生品質の向上なり、読み込みの高速化なりは十分に評価できるんですが、再生ソフトとしての使い勝手の悪さは相変わらず。再生するために複数のデータをソフトの再生専用ウィンドウに登録し、その再生順序を指定するところで「アルバム/トラック順」を指定してもアルバム順にもトラック順にも並べ直してくれない。「Auto DJ」という機能では一時登録したアーティスト名の情報が正確に反映されなかったり、またアーティスト名やキーワードなどを元にした曖昧な検索が出来ない(登録したアルバムタイトルやアーティスト名が一覧となって表示され、任意のものをチェックボックスにて指定して検索するという格好)。かと思えば、ライブラリウィンドウで検索を行うと、該当する楽曲を一曲ずつ表示していくという具合で不自由極まりない。他にもかなりのバグが残ったままになっていると思われ、とても誉められた出来ではないです。他にまともな再生ソフトを持っていない、手際が悪いのが解っていればそれなりに対応は出来る(苛々するけど)、それ以前に私はこれに金を払ったのだ、といった理由から私は当分これを使い続けますが、他人様には絶対お勧めできません。このソフト作った会社、デバッガーいないんじゃないのか?
しかし音源をハードディスク上に圧縮して置いておくと、かなり巫山戯た真似が出来ます。ここ一、二ヶ月で貯まったCDを手当たり次第MP3に変換しつつ、適当なところでAuto DJ機能を利用して10時間という長ーい楽曲リストを作成、それをランダムで再生させてます。夕方から聴き始め、夕食やトイレの時に一時停止させつつ0時35分現在71曲目/208曲。別に終いまで聴かなきゃ寝ない、と決めて始めた訳じゃないけど。上記の作業の傍ら書き物をしようと思ったのだが、猫の額ほどしかない空間にいい加減嫌気が差し、ざっと片付けることにする……も、積み上がったものを移動させる場所がなく、あんまり片付かない。諦めて書き物に執りかかろう、と思った今は……さっき時刻書いたから省略。自宅で書き物が進まない理由の一端は多分この辺にもある(他にもあるんだろうけど……内因的にも外因的にも)。ええい書くぞ。
と、アップロードしてから大事なことを思い出した。先般「いつ詳細を発表するのじゃ」と喚いていたエニックスのエンターテインメントホラー大賞、漸くここに公式発表が掲載された模様。直通はこっち(しかしhtmlの書類名から想像するに、そのうち別アドレスに移ってしまいそうな気がする)。応募するつもりのない方には取り敢えず無用の情報ではありますけど。先日着想したホラーは、間に合うならこちらに投じるつもりです。同時に抱く野望、小説部門・漫画部門に同時に投稿する。私の執筆ペースでは心許ないけどね。
2000年4月3日(月)
仕事なーし。笑い事じゃない。ボーナスぐらいなくてもいいが取り敢えず仕事くれ。例によって水・木ぐらいに予定が詰まっているようだがそうじゃなきゃ困るのだって。
もしかしたらこのまま永遠に終らないのじゃないかと思われていた作業に漸く峠が見えてきた。本当はここを通過したら触りの文章もざっと固めるつもりだったが、課題が山積しているためそれどころではなさそう。出来るところまで書いたら当初の思惑通りに処理する。そしてそのあと、溜まりまくった小説のアイディアを片付けていくのじゃ。
集めている漫画の量が多いため、惰性で集めているようなものはさっさと完結してくれると有り難いと常々思っているが、ストーリーものではない一話読み切り形式で、しかもずっと好きで読んでいたような作品が終るとやはり寂しいものである。八木教広『エンジェル伝説』(集英社・ジャンプコミックス)も最新の15巻で完結となり、ちょっとネジが外れたような心地になっている。悪魔の顔に天使の心を持つ少年の話、というと浪花節めくが要はそのからくりを駆使したギャグマンガ。エピソード終了後、読み手の気持ちに痼りを残す話が少ないのがよかった。勿体ないと思う一方、まあ15巻も続いたんだからぼちぼち潮だったろうなとも思う。月刊ジャンプ連載だがあそこの定形から微妙にずれていたのも貴重な佳作。
……やっぱし、創作面で好調なときほど書くことがなくなるな。だって創作で使っているネタを日記に流すわけにはいかないでしょ。そういうことなので今夜はこの辺で。あー屋形船乗りたかったよ。
2000年4月4日(火)
目処が立ったかなーと思ったらいきなり登場人物同士が密に絡み始めて一層展開が複雑化し始める。実は、書いている私としてはこの現状が一番楽しい。書き手として本格原理主義者(未だに定義にあれこれ問題を孕んではいるが)として、プロットには人並み以上の拘りを持っているつもりだが、一皮剥けば元々シチュエイションを描くことに憧れて物書きを志していた人間だから、新しい状況が出てきて表現するものが増えるのは望むところなのである――が、今の処これは描くことよりも形を整えることが先決なのであって、どうせアイディアとして出てきてくれるのなら早いうちにまとめて出てきて欲しかったんだけど……仕事? やったよ。データ一個。
バイトの前に行きつけのCD屋を覗く。買い物のためではなくて、ちょっとした興味本位。探し回るまでもなく、目当てのものは未だに店の正面に恭しく飾られていた。しかし、陳列用のスタンドは四つあるのに肝心のディスクは一枚しか載っておらず、残りはCD売り上げランキングの面出しの棚に二枚飾られてあるきり。成る程、初回入荷数次第では発売初日でも亡くなった店があって不思議じゃない、椎名林檎。あちこちで売り切れていたーという悲鳴を見かけたもので、あるなら確保しておこうかとも思ったのだが……引取先が確定していない上そもそも手許が不如意なのでパスする。明日は秋葉原のソフトショップに、今度は予定に組み込み済みの買い物に行くのだが……さて、残っているかどうか。
日中、漠然と「あ、これ日記に使える」と思い、頭の中でざっと文章を組み立てて、メモに書き出さずそのまま脳髄の抽斗にストックしておく、ということをよくやる。大体、現実世界でもそうだが、もしかしてあとで必要になるかも、と考えざっと纏めて抽斗や押入に仕舞ったものは、漠然と捉えていた分だけ仕舞った場所そのものを忘れてしまうことが殆どではないだろうか。人の記憶というのもとどのつまりは似たようなものであって、だから……
2000年4月5日(水)
霧雨の濡れ方は緩慢でも着実で、傘を片手に近所まで自転車で行き来するそれだけで上着の胸許からズボンの膝下はずっしりと重みを増す。今朝も両親の車に同乗しての出勤となった。職場から秋葉原まで、自転車で行けない距離ではないけれど、雨の中では往復だけでも一時間ぐらい見る必要がある。まして今日は仕事が多いのが予め解っていたから、朝の段階で買い物に出るのは半ば諦めていた。
仕事は久々に充実した内容だった。直し分も含めて15段広告が三枚あり、他にも業界通信用の広告と英文誌用の広告を出力する。毎日これなら却って気楽なんですけどねえ。あると解っている仕事なら校正待ちの残業もさほど苦にはならない(とっとと連絡寄越せよ、とぐらいは思うけれど)。しかし人に届けるデータは完全な状態にしてくれといつもいつもいつもいつも愚痴っているんだけど……聞こえてないか。
読書は停滞しっぱなしだが(『憑き者』細々と注文は付けたくなるけど非常にレベルの高い作品集です――が、そんなわけで進んでません……御免なさい>O様)、創作は絶好調。毎回絶好調と言っている割に一向に終る様子を見せないのは、これも何度も言っているように絶好調だから話が膨らみすぎている訳で……みっともないから止める。ああ小説書きたいお絵かきもしたい。同時進行にすると全てがスローペースになると思って避けているんだが、我慢の限界が近づきつつある。多分お絵かきは近日中に再開するだろう。夕方、校正済のデータが届くまで暇が出来たので傘を差してバイト先まで。『小説現代五月増刊号メフィスト』を筆頭に倉阪鬼一郎『ブラッド』(集英社)、山田風太郎/高木彬光『悪霊の群』(出版芸術社)、梅村 崇『ファイヤーエムブレム -トラキア776- 上巻 亡国の王子』(エニックス・GAME NOVELS)、『TVシリーズシナリオ集 ブギーポップは笑わないI』(メディアワークス・電撃文庫)、それに漫画雑誌と単行本各一。全部予定通りの買い物のつもりだったが、帰宅後予定表を調べたところうち三冊も記入を怠っていたことに愕然とする。赤字激増。今月やばすぎます。恐怖の会出たかったのにぃ。
『メフィスト』は律儀に購入し続けながらも、掲載小説で読みたいものは大半単行本化すれば間違いなく買うであろうものばかりのため、最近は専ら漫画を読むのみとなっている。今回は、ふくやまけいこ氏が京極作品の挿絵のみならず単独で作品を上梓されていたので真っ先に読んでしまう。いかにも、といったレトロな雰囲気のあるほのぼのホラー(なんのこっちゃ)。唯一無二のタッチは健在である。しかしメジャーにならないよなこの人も。今回のメフィストには、執筆の苦悩をリアルタイムで拝見してきた西澤保彦氏の『神余響子的憂鬱』が掲載されているので、取り敢えずこれだけでも最低限読もうかな。
倉阪鬼一郎『ブラッド』は実は買うかどうか迷った。近日三省堂神田本店(……だったよなぁ……)で刊行記念サイン会が催されるらしいので、買うのはその絡みにしようかと思ったのである。でも倉阪さんの新刊は全て確保してもらうよう頼んである手前、棚に出してしまうのも気が退けたので取り敢えず買っておく。先に読む権利と共に母に売りつけようと目論んだのだが乗らなかった。ち。ち。ち。何れにせよサイン会は見に行くだけでも行こうかなと。
梅村崇『ファイヤーエムブレム〜』は一目瞭然、有名ゲーム作品のノベライズだが、何を隠そう私はこのシリーズのソフトを一本たりとも所有していない、というかそもそもこのソフトが対応するハード自体持っていない。なのに買ったのは単純に梅村さんの文章が読んでみたかったから。『ブラッド』とともに、出来うる限り早く手をつけたいものだが……すっかりギアが読書モードに入りづらくなってるからなぁ……。
ここに来て昨日書き忘れた話題を思い出す。昨日の朝、話題の『∀ガンダム』のノベライズが発売されていることに気づいた。『ガンダム』は初代と『Z』辺りを漠然と眺めていたのを最後にすっかり遠離ってしまい、ノベライズなど見向きもしなかったのが、今回目に留めてしまったのは、ハルキノベルズという珍しいレーベルから発売されていたこと、それ以上に、手掛けたのがあの福井晴敏であること。『亡国のイージス』で急激に頭角を現した福井晴敏氏の、あろうことか大藪春彦賞受賞後第一作が『∀ガンダム』である。福井氏もまたガンダム世代であること、そもそも『ガンダム』がその完成された世界観故に支持されて続けてきたことを思えば意外でも何でもないが、敢えて今これを最新作に持ってきたという事実に酷く興味を覚え、また『亡国のイージス』を買い逃した苦い経験も手伝って、咄嗟に手を伸ばしかけるが、朝の段階ではその値段の高さ(税込みで確か1200円)に気後れして購入を取りやめた。けれど時間が経つにつれて未練も募り、夕方バイト先を再訪したときに買うことを決意したものの、入荷数が少なかったこともあって既に売り切れていた。……そう言えば今日は確認することも忘れていたけれど、ちゃんと再入荷したんだろうか?水曜日は『明石家マンション物語』がないというだけでとても暇。その代わりに小田和正数年ぶりのテレビ出演を見ている私であった。顔と声が合わない歌手の代表格。あと山下達郎とか財津和夫とか……あああ、小田和正がギターを弾いている?! 後ろで坂崎幸之助も弾いているっ??!!(それは当然) く、楠瀬誠志郎までコーラスに加わっているっ??!!!(これは初めて気づいた)
2000年4月6日(木)
……なんかもう、今日はとっても疲れた。昨日の直しを始め、作業量そのものは昨日と大差なかったのだけど、15段広告が多く、ファイルの処理の仕方が良くないため些細な処理に時間を費やし、結局自由行動に割くような暇はなかった。創作も手付かず。幸いなのは、仕事中の読み込み時間は今の私にとって唯一確実に設けられる読書時間であり、それが今日は特に多かったため、一冊本を読み終えられたこと。なんだか凄く久しぶりに読み終えたという気がするその本は――倉阪鬼一郎『ブラッド』(集英社)。奇跡の購入翌日読破。冒頭だけちょっと摘み読みして、目にフォークが突き刺さった段階で早くも勢いが付いてしまい、その後普段なら創作に費やす時間も擲って夕方には読了する。展開の原型そのものは氏の短編などに以前から散見するものだが、ガジェットの扱いと構成の堅牢さから、私が読んだなかでは一番の成功作と思った。特定の主人公を設けず、ひたすら人間を蝕んでいく「何者か」の脅威を綴っているのだが、それがなまじありふれた狂気のように見えるだけに他の諸作以上に迫るものを覚えた。「蚕食」という言葉がやけに目に付いたのだけれど、括りを読んで納得する。――いや、「蚕食」という語は以前から倉阪氏の作品によく見かけていたので、或いは穿ちすぎた感想なのかも知れないが。ともあれ、堪能いたしました。堪能する余り、帰途花見の宴席のど真ん中をバイクで走っていたとき、そのまま輪の中に突っ込んでやろうかと思ったぐらいで。
今日のお買い物は、昨日触れた福井晴敏『∀ガンダム(上)』(ハルキ・ノベルス)に茅田砂胡『レディ・ガンナーの冒険』(角川スニーカー文庫)、あとは定期購読の雑誌に漫画が数点。漫画の中では上遠野浩平・高野真之『ブギーポップ・デュアル 負け犬たちのサーカス(1)』(メディアワークス・電撃コミックス)が予想外に上出来でした。小説として評価の高い作品のコミック化にはあまり期待しないのが常だったんですが、本編はオリジナルのシナリオを採用しており(原作と主人公もキャラクターも被っていない――はず)、しかし画風は緒方剛志のイメージを踏襲して原作の雰囲気を損なっていない。また、演出に安定感があるのも良し。緒方剛志は『Doll』を読む限りコミック演出の技量には大いに疑問があったので、この漫画家の起用は正解だったかも知れない。今後の展開が非常に楽しみです。
……疲れたから適当にして寝ます。今日は創作が手につかなかったよう。
2000年4月7日(金)
一転して暇。一昨日扱ったデータのうちひとつの写真を変更し、タイトルロゴに細い縁取りを施しただけで事実上午前の仕事は終わり。昨日から隙を見て行っていたバックアップ作業の残りを粗方片付けると、数日ぶりのまともなお買い物に出掛ける。本当はバイト先以外に二箇所ほど寄りたかったのだが、一方は明日廻しにする。何はともあれバイト先で定期購読誌二冊――ぼかさなきゃいけない理由もないのでずばり書くと『Tech-Win』(ASCII)と『SINRA』(新潮社)――後者は主に母が読んでいる――、それとまたしてもリニューアル版竹本 泉『うさぎパラダイス』(ノアール出版)、以上三冊を買う。『うさぎパラダイス』の第一話こそ竹本 泉の最高傑作であるとわたしは信じているが、それにしてもオリジナルから五年でリニューアルするとは(あとがきによると予定では昨年にも刊行される筈だったようだ)。どうせリニューアルするなら『魔法使いさんおしずかに』の方を先にして貰えないものだろうか。いいけどね好きだから。
そして次に向かったのは秋葉原の某ソフト屋。珍しく発売前後に買いに行けなかった『彼氏彼女の事情 Op.5』のDVDをとっとと確保し、階下でまたぞろジャズのCDを見繕おうとする、も、メセニー絡みは粗方揃ってしまったし、ジャコ晩年の作品に手を出す度胸は未だない、かといって興味のある綾戸智恵の最新作やロイ・ヘインズの「Question and Answer」を含むトリオアルバムはまだ発売されていない、ということでこれといって欲しいものがない。早めに戻って昼食までの時間は創作に当てるつもりだったのだけれどあれこれ悩んでいるうちに帰路にかかる時間を上乗せすると昼食時になってしまうという頃合いになってしまった。やや焦りつつも、この辺なら多分大丈夫だろうと一枚のディスクをポイントのみで購入し、帰途に就いた。
んで買ったのは、John Coltrane『A Love Supreme』(impulse!/Universal Victor)――原題で解らなくても『至上の愛』という邦題ならば聞き覚えがあるという向きは多いでしょう。そう、とうとうわたしは古典、スタンダードに手を出し始めてしまったのである。コルトレーンはマイルス・デイヴィスとのコラボレーション(というかサポートだな)が多く、最近二人が関与した演奏ばかりを集めた六枚組のディスクも発売されたがそちらはいちまんごせんいぇんと非現実的な価格なのでパス、マイルス・デイヴィスのリーダーアルバムは「Solar」の含まれたものなら、と思ったのだが探している時間がなかった。コルトレーンは最近になってデジタル・リマスタリングを施しての復刻版が一斉発売されており、その一番分かり易いところにあったという理由から『至上の愛』をチョイスしたわけである。
いや、流石にスタンダードと呼ばれるだけのことはある。トリオ・カルテット編成のアルバムも結構聴いてきたが、最近のものや名演と呼ばれるものと較べても圧倒的なプレイ。35分程度と短めだがコルトレーンのテナーサックスは無論他の何れのパートも濃密で油断のない演奏を繰り広げ、高い緊張感と相俟って聴く方もかなりのエネルギーを消耗する。それが無上の快感ですらあるのだから怖ろしい。個人的にしくじったかな、と思ったのは、結局コルトレーンはこれが最高傑作といわれていること。そうと解っていれば一旦避けて別のものから聴いたのだけど。上から斜面をじわじわ転がり墜ちていくのは悲しい。
それにしてもすっかり歯止めが利かなくなってしまったジャズ狂い。パット・メセニーらが絶賛するという新人ギタリストのアルバムも欲しいし、こうなったらコルトレーン&マイルスは確実に押さえたい。幸い(と言っていいのか)両者とも没しているので、今後音源が劇的に増えることはないだろうし。昨晩、某氏のHPにチャットが出来たことを知り、その時は軽く足跡を残したのみで退出したのだが、今夜は思わず会話に耽ってしまう。拙いことにみんな昔見たものが結構重なっていたから話が転がる転がる。取り敢えずU村さんは濃いということが判明したところでかなり遅い時間になっていたため、私は日記を認めるため退出させていただく。なお、書かないでねと書かれたら書きたくなるのが人情というものです>U村様。
ほらそんなことやってるから創作が全然進んでないやないか。
2000年4月8日(土)
久しぶりに三省堂神田本店を訪れる。何も考えずに二階に上がるが、暫く来ない間に棚の配置が変わっていて戸惑う。前に来たときは……いつだったか忘れたが、まだ推理・SFのコーナーはエスカレーターを上がってすぐ正面にあったように記憶していたのだが、いまは二階から一階へ下りエスカレーターで降りた真っ正面。しかしすぐに降りるのも芸がないので新書コーナーの新刊平台で講談社ノベルスの新刊を一通り眺める。バイト先で買う予定なのでここでは買わない。殊能将之『美濃牛』は噂に違わぬ厚さ、そしてメフィスト賞受賞作も聞きしに勝る薄さ。篠田真由美『仮面の島』は題名からノンシリーズか新シリーズだと独り合点していたのだが、ちゃんと建築探偵シリーズだった。なにゆえ島。このシリーズも私は第一作以降読まずに揃えているだけなので、或いは必然的推移があって「島」になったのかも知れないけど。まあ、はじめから購入予定には入れていたので問題はない(わけでもないが)。
一階に戻り、推理・SFのコーナーを物色する。暫く大書店を訪れていなかった所為か、めぼしい本ばかりで困る。本題は来週金曜に行われるサイン会の整理券を入手することなので倉阪さんの『ブラッド』は外せないのだが、他にも情報を全く把握していなかったディクスン・カーの新刊が三冊ぐらいあったり、樋口有介の新刊『刺青白書』というのが樋口作品で唯一集めている柚木草平シリーズだと知ったり、また早川からは個人的に惹かれるテーマの『セメント・ガーデン』なる新刊が出ていたり。新潮選書のミステリー辞典もちゃんと面出しで置いてあるのを見て改めて欲しくなったり。しかし欲しいものを全部レジに運ぶとカウンターが五桁を刻むこと確実だったため、『ブラッド』を入れて二冊ぐらいで済ませようと思案に耽ること凡そ三十分、結局手にしたのは『ブラッド』だけであった。根性なしと呼ぶなかれ今月は本当にやばいんだってば。
今度はバイクを上野広小路の噴水脇に停めて(※駐車違反なんだが)、まず某電化製品店でソフトを見て回る。琴線に触れるものがなかったのでそのまま退出し、懸案だった桜写真の撮影のため上野公園へ侵入する……人人人人人人人人人人人人人人人人人人ヒヒと人人人人人人人人人人人人人人人人比人人ヒヒとヒヒと人人人人人人人ヒヒと人人人人人人人ヒヒ人とと人人人タイプミスあるけどもういいや兎に角人だらけ。つい先日まで広小路口から中の噴水辺りまで散策路の半分を階段状にする工事をしていた筈なのだが、案の定花見の時期に入る前に完成させていたらしく綺麗に舗装されていた――と思うが人集りで足元なんか見ていられない。だらだら坂を登り切って茶屋あたりから奥の噴水までに立ち並ぶ桜は可憐に華やかだったがカメラを取り出してもどうしても人の頭が入るし「空き缶はくずかごに」云々という横断幕が絵としてどうにも鬱陶しい。もう少し進んで撮影しようかとも考えたが、いい加減人に中たって気分が悪くなってきた。立ち止まっている私自身通行人に邪魔扱いされていたし、暫く考えたあと踵を返す。人いきれで公園全体の気温が二、三度ぐらい上がっているように感じた。軽く汗ばむ。桜並木は先述の工事よりも前に一度レイアウトを変えており、通路の左右に花壇と植木を配し、その更に脇に細い道を設けている。真っ昼間から宴席を開く人々は専らその脇道に陣取り通行人と明確に住み分けているのだが、その所為で宴席にいる人々は通行人である私の眼からは宛らパンダのように映った。彼等からすれば通行人の方が一種の見せ物でもあるのだろう。珍妙な構図を楽しみつつ公園を去った。ネット上の喧嘩や論争に決着がないのは、当事者同士の感情は無論のこと、ギャラリーの視線という議論の成否を判定するのに一番有力な判断基準が当事者に見えにくいことに一因があるように思う。客観的には既に一方に軍配が上がっておりその一方も自らの勝利を確信しているのだが、対する一方だけが己の敗北を自覚せず堂々巡りの議論をふっかけ続ける。一方は自らの確実な敗北どころか自身の誤謬を自覚する機会も与えられない(得ようともしない)から、もう一方が何度同じ論理を用いても納得せず、結果として本来(客観的に)勝利していた一方が辟易の末に場を退くこととなり、見方によっては本来敗北していた方が勝利したように見えてしまう。この構図を打ち消すためには、一方は最早相手を納得させる術がないまま同じ議論を繰り返し、いつ新たなギャラリーが訪れても一方の非を理解できるような状況を作り続けて、「当事者以外が一方の勝利を確信している」という場の空気を醸成し続けるほかない。しかし大抵の人はそんな労力を費やすことを厭うのか普通だろう。結果として本来勝者でなかった一方を増長させ、歪な論理は果てしなく加速する羽目になる。
結局の処、議論している当事者双方に、相手の論旨を理解し擦り寄る意志と覚悟があれば問題は生じない筈なんだが……その欠落を自覚していないから紛糾するんだよなあ……。相手に擦り寄る意志も相手の論旨を理解するための覚悟も知性もないと思ったらその時点で退くことでしか余計な悶着を避ける手だてがない。しかしこの時第三者が忠告しても肝心の相手がその誤解すら理解できなかったりするから……そのうちに議論の焦点そのものが曖昧になってしまい、お山の大将を生むか一見虐めにも等しい個人対集団の不毛な議論が重ねられる。
こうした悪循環を断つには、議論にギャラリーの意志や意向が反映されるシステムを用意するか、或いは常に公平を保ちうるジャッジが必要なのだろう。つまり、絶対的な第三者が裁定する必要がある、と思うのだが、何れも現実には用意することなど無理だろうし、仮に用意できるにしても全ての議論に適用することは不可能。さて、一体何処に決定的な解決策があるのでしょう。どなたか終えて下さい。
……いや、そもそも議論というのは本来当事者同士が意見交換を行い、自らの論旨に非があるとすればそれを相手の意見を参考に改訂する、或いは相手の求める結論に至らせる上で障害となる誤謬を指摘し改訂を求める、そうしてより高次の結論を模索するものであって、別にどちらが勝者か敗者かを決めるものではないのだから、そもそもジャッジメントが必要になっている段階で既に論争ではないんだよなあ……あれ、もしかして原因はここか?
2000年4月9日(日)
浅草まで、両親に車で送ってもらう。先日亡くなったバイト先の社長を送る会に出席するためだった。が、参加しているうちに少し白けてしまったので途中で退出させてもらう。社長の昔からの知己と、私ぐらいの若い知り合いまでが同席したのだが、それぞれにスタンスが異なるためどうも混じりあわない。食事も出席者一人一人に椅子が宛われ、順次出されるのだが、こういう風に「食え」と強制されるような雰囲気そのものが私は嫌いだったりする。挨拶も、食事が始まる前に御偉方がまず済ませ、あとは食事の途中に順繰りにスピーチを行うのだが、どう見てもスピーチ担当者と交差しない層は耳を傾ける気配がない。
故人を悼む気持ちは強くあるのだけれど、こういう場所で悼むふりをするのは私の主義じゃない。否定はしないけれど馴染めない。そういうわけで、ちょっと早めに席を外させて貰った。
そのあと某書店に寄って散策。珍しく海外作品を衝動買い――多分昨日の鬱屈が残っていたに違いない。クレイグ・ホールデン『夜が終わる場所』(扶桑社ミステリー)。表紙の雰囲気と粗筋に惹かれたのだった。折角の衝動買いだから、どこかで評判を目にしないうちに読んでしまいたいところだけど……
2000年4月10日(月)
昨日は取り乱してしまって申し訳ありませんでした。どうも前々から私は「糾弾する側の無知と不見識」に怒りを覚える方が多く、特に好きな作品を安易に貶されて箍が外れてしまったようです。そののち色々と状況に変化があり、私の気持ちも落ち着きましたので、一旦当該文章のみ削除いたしました。文章を推敲した上再度アップするか、或いはこのまま忘却の海の彼方に押し流してしまうかはまた今後の展開を見極めた上で判断したいと思いますが、そこで語ったあることについては、今後私自ら語ることはありませんので、昨日の段階で問題の文章を御覧になった方も、その内容について、出来れば一度忘れて下さい。勝手な申し出で恐縮ですが、私自身の信念の問題でもありますので何卒御了承下さいませ。今日はいつも通りのテンポで参ります。
多少溜まっていた仕事を手早く片付けて、先日からの懸案であった桜の撮影を漸く敢行する。ガソリンスタンド、バイト先を経由して上野へ。生憎の曇り空ではあったが、もう多分今年は今日をおいて他に花盛りの桜を撮す機会は得られないだろうと思った。事実、枝の先に開く花びらに葉の緑が混じり始めており、陽当たりのいい樹は梢の所々が遠目にも解るほど瑞々しい緑に変じている。それでも枝の低い木が密に立ち並ぶ一画はまだ桜色の霞がかかっており、見目麗しい。葉桜もファインダに捉えつつ、なるべく絵になるアングルを選んで撮影した。
でもこの写真は横断幕が邪魔で肝心の用途に使えません。ので公開。
平日とは言えまだ花期だからだろうか、人の姿も常と較べると多い。それ故の弊害もあちらこちらに窺える。桜並木が酒臭いとか記念撮影している人々に気遣って歩かなきゃいけないとか桜の低い枝を引っ張っているかと思ったら端っこを手折っている娘集団がいたりとか(桜は基本的に切ってはいけません。特に公園の花は摘むと歴とした犯罪です)。工事で敷いたばかりの足許も、零した酒や吐瀉物といった宴の残滓に無惨な様相を呈している。――まあ、変に取り繕っているよりこの方が人間的で、嫌いではないのだけれどちょっと情けない気分になる。
そのあと、ことのついでとヨドバシカメラのゲーム売場を覗く。パソコンでなくてコンシューマーのほう。未だにPS2のソフトを持っていないので、魅力的なものがあれば無理をしてでも買うつもりだったが……やっぱりそのまま帰る。ちょっと興味深い情報としては、『センチメンタルグラフィティ2』(NECインターチャネル・DCソフト)が4/27から7月頃に延期になったということ……解る人だけそれなりの反応をして下さい。私は却って買ってみようかという気になった何故か。仕事は実は午前中で終わっていたとのちに判明する。何たるどんでん返し。
今日のお買い物。殊能将之『美濃牛』、古処誠二『UNKNOWN』、篠田真由美『仮面の島 建築探偵桜井京介の事件簿』(以上、講談社ノベルス)、そしてトマス・ハリス『ハンニバル(上)(下)』(新潮文庫)。待望の作品が二冊、しかも両方とも重厚。嬉しいんだか悲しいんだか。そもそもトマス・ハリスは小説で読んだことがないのだが(映画『羊たちの沈黙』は好きだったんだが)。『ハンニバル』刊行前にレクター博士シリーズの既刊三冊(『レッド・ドラゴン』上下と『羊たちの沈黙』)を用意するなり読むなりしておくつもりが余裕がないためそのままだ。どうしよう。今から用意すべか。
そして半年ぐらいに一度の恒例で、カバー用の紙を大量に戴いていく。未読本と既読本を見分けるために、買った本は一括してカバーを掛けるようにしているのだが、幾ら多めに貰っても絶対に年に二、三度は補充しているのであった。帰宅後、重要なメールを書いているうちに時間が瞬く間に過ぎてしまう。結局今日も殆ど創作していないぜへい。取り敢えず桜の写真をPCに取り込む前に、心和む写真を撮っておいた。これ。
ちなみに以前の写真はここにあります。どうぞ比較検討……する必要はない。グレードアップしてるわどう見たって。因みに寝るときはパソコンの廻りに移します。毎日寝る前に一仕事。ところで今朝、都内で震度3を記録する結構大きな地震がありましたが、何故か私の部屋に積み上げられた本の山はひとつとして崩れていませんでした。不思議だ。その前の晩は何もなかった筈なのに崩れていたのだが(おい)。