2001年4月上旬の日常

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2001年4月1日(日)
http://www7a.biglobe.ne.jp/~tuckf/Diary/20010401~.htm#Day01

 あ、年度が変わってしまった。夏までに予定していた作業、10%も終わってないぞ。どうする。

 昨日悪天候にもかかわらずゴルフに出かけていた親父が余分に買ってきた佐野ラーメンを手土産に、三月いっぱい「店主の体調不良」を理由に休業していた行き付けの蕎麦屋を訪れてみる。先日話を聞いた限りではまだ営業を再開しているとは思えず、駄目で元々のつもりで出かけたのだが、案の定店はまだシャッターを下ろしたままだった。貼り紙も三月の時のものがそのまま残っている。母が携帯電話で店に電話し、住居の方にいるのを出てきて貰い、手土産だけ渡してちょっと状況を聞いた。どうも父の友人が数年前に患ったのと同じ病気だったようで、大事に至る前に発覚・手術となり、現在は一応元気なのだそうだ。ただ、父の友人がそうだったように暫くは安静を要する類の病で、やはり当分は店を開けられないらしい。ちゃんと治してまた美味しい蕎麦を食べさせてください、と言い置いて立ち去る。ちょっとインターバルが長引きそうだが、ま、我慢するとしよう。健康が何より。

 『鬼作』(elf・Windows対応ゲーム・18禁)、裏の結末と全凌辱シーンを見届ける。このゲームには最後に100点満点での評価が行われるのだが、まだ最高点に達していない。或いは最高点でクリアするとまた別の展開が待ち受けているのかも知れないのでそちらサイドの最終的な評価はまだ保留とするが、取り敢えず裏の結末については――焦点が曖昧で今一つ、という感じ。味わいはあるのだがあの苦労に報いるほどのものか、という気がするのだ。考えようによっては、焼きが廻った、という表明とも捉えられるのだがそれは流石に意地が悪すぎるか。

 本当なら今日こそ『ジャーロNo.3』散発レビューに着手したかったところだが、こないだから全然進んでいないのでもーちょっと延ばす。というか、いまいちモチベーションが向上しません。

 ……最近、特に今年に入ってから、ネット回りで結婚という文字を屡々目にする。らじさんおめでとーございます。
 (実際はめでたくない場合もあるがそれは脇に置く)


2001年4月2日(月)
http://www7a.biglobe.ne.jp/~tuckf/Diary/20010401~.htm#Day02

 昨日は二度騙されました。それというのも、4月1日がエイプリルフールだという基礎知識をすっっかり失念しくさっていた所為なのだが。深川が騙されたのはこちらこちら。らじさんからは直後に連絡を戴き恐縮すること頻り……いやだって、本当に最近思わぬところでそういう話を聞くものだから。あと別のところで同じ嘘を、こちらはあからさまな状況で聞いた所為で逆に信じ込んでしまう土壌が出来ていた、というのもある。などと言い訳したところで間抜けさ加減が糊塗されるわけでもなく。

 だからいい加減作業に戻れよ、と自らの所業を嘆きつつ、『鬼作』(elf・Windows対応ゲーム・18禁)評価100点達成。あるミニゲームで腱鞘炎の一歩手前まで追い込まれたが、よくよく調べてみた結果、完全攻略のためには回避するべきだったと判明し、半泣きの状態で攻略を達成した。悔しいので、100点を達成したスケジュール表を作成して掲載する。どうやっても100点が取れない、深川が一体何をそんなにムキになっていたのか知りたい、という方は御覧下さい。

 本日のお買い物
1,城平 京/水野英多『小説 スパイラル〜推理の絆〜 ソードマスターの犯罪』(ENIX・COMIC NOVELS)
2,山田風太郎『山田風太郎ミステリー傑作選(1)本格編 眼中の悪魔』(以上、光文社文庫)
3,太田忠司『ミステリなふたり』(幻冬舎)
4,『snatch ORIGINAL FILM SOUNDTRACK』(Universal SOUNDTRACKS・CD)
5,椎名林檎『真夜中は純潔』(Virgin/東芝EMI・CD)
6,『LOCK, STOCK & TWO SMOKING BARRELS』(Sony Pictures Entertainment・DVD Video)

 1は城平氏原作による漫画シリーズ、自らのノベライズ。と言っても本編の筋を知らないと読み解けない、という種類の作品ではなく、つまりは城平氏待望の第二単行本、と捉えていい……だろう。多分。
 2と3は3月新刊の補遺。
 4及び6は、『snatch』及びガイ・リッチー監督に惚れ込んでしまったという証明。サウンドトラックは当初国内盤を買うつもりだったが、行き付けの店に在庫が無く、かつ国内盤と輸入盤の差はジャケットデザインぐらいのものだと教えて貰ったので、妥協して輸入盤を購入。サウンドトラック特有の素っ気ないリーフレットが寂しいが、まあ国内盤も解説が添付されているだけらしいのでよしとする。肝心の中身は、UKミュージックごたまぜ状態。恐らく冒頭の一曲のみがオリジナルで、あとは新旧・ジャンルを問わず映像と内容に合わせて選ばれた楽曲が、ほぼ劇中で使用されているのと同じ順序で収録されている。間に数秒ずつ挟まれた台詞と相俟って、異様な格好良さを示している。バラバラ無節操、ある種の不格好も極まればスタイリッシュに変貌する、という好例(無論、それ以前にセンスは必須だろうけれど)。6は、どうやら『snatch』封切りを見据えてだろう、1月に発売していたリッチー監督の第一作。見るのが楽しみだー。
 さて、5である。「一生ついていく会」メンバーとしては遅ればせながらの購入だが、要は正確な発売日を知らなかったことと、発売以降今日までレコード屋を訪ねる機会がなかったからに過ぎない。昨年までのバンドスタイルから一度離れ、全曲異なったアーティストによる編曲・演奏を後ろにしかし常と変わらぬ林檎節を聴かせる。一曲目・表題作が東京スカパラダイスオーケストラの編曲・演奏(但し演奏者としてのクレジットでは上に新がついている)による、ホーンセクションが弾けるロックンロール。二曲目は従来作の『シドと白昼夢』を服部隆之がビッグ・バンド・ジャズの様式でアレンジしたもの。一曲目といい二曲目といい、明らかに最近の私の好みに近い路線に来ているのが妙に嬉しい。三曲目は森俊之編曲の新曲『愛妻家の朝食』、cobaのアコーディオンを前面にフィーチャーしている。いずれも異なった趣向とは言え従来の林檎の味は損なわれていない。やっぱりいいぞ。こうでなくては。

 ……スケジュール作成で消耗しました。今日は、漸く始まったプロジェクトの自分担当分原稿だけ書き上げたら、潰れます……。


2001年4月3日(火)
http://www7a.biglobe.ne.jp/~tuckf/Diary/20010401~.htm#Day03

 ちょっと寝る時間を削ると翌日すぐ響くのはどうしたらいいのやら。つまりは起きている時間を有効に使え、ということなんだろうけれど。

 今月から七月半ば頃まで自重生活に突入します。イベントが目白押しで非常に口惜しいのですが、殆どは見送る予定です。理由は二つ、六月中に仕上げなければいけない小説が長編が一本、短篇が最低二本(最低でだぞ)あり、そこに七月中にデザインまで完成させねばならない同人活動が含まれ最早悠長に遊んでいる余裕があまりないこと。それに加え、ここ暫く散財が激しく同人活動のための内職でどれだけ収入が見込めるかの判断も出来ない現状では、遊びのためにあまり多くの出費が出来ないこと。一回二〜三千円程度ならともかく五千〜七千円もかかるとなると。つまり、今回に限りMYSCONの参加も断念します……残念なんですが、非常に残念なんですが。その代わり、これを機にどなたかとはちょっと会えないかなーと思ってたりしますが。
 ……あ、映画だけは勘弁してください最近唯一「趣味」と言える趣味なんで。鑑賞券の横流しも時々してもらえるから金銭的負担も低いし。

 本日のお買い物
1,笠井 潔・編『八ヶ岳「雪密使」の謎』(原書房)
 だけ。あとはみんな定期購読。


2001年4月4日(水)
http://www7a.biglobe.ne.jp/~tuckf/Diary/20010401~.htm#Day04

 そして日記も時々淡泊になります。――それでも時々、と言わなければいけないのはいい加減己を理解し始めたからであって。淡泊なときは、散財具合を見て愉しんでくださいませ。というか、きっとここを見ている人って大半はそれを愉しんでいるんじゃないかと思う私。

 同人誌の企画が漸く本格的に始まった。本格的な共同執筆というのはこれが初めてだが、妙な緊張感が楽しい。先日開始したのが短めの話で、私がずーっと設定を用意しているのが200枚以上の長篇となる予定。……そう、いい加減こっちも始めないとねえ。個人での長篇は、漸く頭の中でいい具合に煮詰まり始めました。また、ギリギリだなー……時間が。

 本日のお買い物
1,ボーヴォワール『決定版 第二の性(全三冊)』(新潮文庫)
2,森生まさみ『おまけの小林クン(6)』(白泉社・花とゆめコミックス)

 1は相変わらずの資料、というよりお勉強のための購入。親本が出たときから欲しかったのだ。

 今月第一の目玉は明日発売。没頭して全ての創作活動が止まるのではないかと危惧するほどの核弾頭。せめて、これが出る前にプロットなどの前準備は済ませたかったところだが……仕方ない。圧縮して堪能しよう。さて、私がこれほど楽しみにしているのは一体何でしょうか?

 あまりの衝撃に追加更新。
 今日放送の『明石屋マンション物語』特番、途中にあるカウントダウンのコーナーでゆず「ムーンライト」のパロディを、Don Doko Donの山口智充と雨あがり決死隊の宮迫博之の二人でやっていたのだが――巧い。山口が物真似はもとより歌唱力・ギター演奏技術においても秀でているのは知っていたが(それにしても普通のギターを腰より下に構えて弾くという技まで出来るとは思わなかった……もしかしたらギターだけは別録りにしていたかも知れないけど)、驚いたのは宮迫。音程も声質もマイルドで聴き心地が良く、山口のコーラスときっちり調和しているし、更に歌の後半で巫山戯ながらもきっちり歌として成り立たせている。何より、本家より巧いというのが凄い。この二人でまともにCD出しても、結構評価されると思う、マジで。いやー、びっくりした。


2001年4月5日(木)
http://www7a.biglobe.ne.jp/~tuckf/Diary/20010401~.htm#Day05

 本日のお買い物
1,八神 健『ななか6/17(1)』(秋田書店・少年チャンピオンコミックス)
2,犬上すくね『恋愛ディストーション(2)』(少年画報社・ヤングキングコミックス)
3,山田風太郎『人間臨終図鑑II』(徳間文庫)
4,『トゥルー・ラブストーリー3』(enterbrain・PS2対応ゲーム)

 というわけで正解は4のTLS3でした。私が第一作からほぼ例外的に「好き」と言い切ってしまっているシリーズの最新作だ。はっきり言って今年一番楽しみにしていたソフトと言ってもいい。
 で、早速遊んでみているわけだが……ちょっと、双子の姉と遭遇しやすすぎないか? なんか迷惑なくらい良く会うのだが? 加えて、攻略対象となるキャラクターと遭遇する確立が低い低い。お陰で前半ながら既に十回ぐらいリロードを繰り返している始末。選択肢が少なすぎるために計算が出来ないのも考えもの。スケジュール表に表示されるイベント発生予測もいまいち当てにならない。もともと確立変動に依存しているゲームだけに、こういう発生率という初歩的な問題でユーザーにストレスを溜め込ませるのは勘弁して欲しかった。とりわけ本編はシリーズで最長のゲーム期間になっているのだから、このプレイする上でのストレスという問題にはもっと神経質になっても良かったはずなんだが……?
 しかし個人的に一番困ったのが、姉の名前が私の従弟と同じ事だ。かなめ、(従弟の方は漢字の「要」)、ごく自然に愛称まで一緒とくる。10離れていてそれほど親しいわけでもないが、やはり気になって仕方がない。因みにこのキャラの声は……ピカチュウ。

 というわけで、当分このゲームで猿化する予定です。即ち余計に日記の分量は減る……のだろうか。感想だとか愚痴だとかでまただらだら長くなりそうな予感もある。


2001年4月6日(金)
http://www7a.biglobe.ne.jp/~tuckf/Diary/20010401~.htm#Day06

 本日のお買い物
1,トマス・ハリス『レッド・ドラゴン(上)(下)』(ハヤカワ文庫NV)
2, 〃 『羊たちの沈黙』(新潮文庫)
3,ガー・アンソニー・ヘイウッド『愚者の群れ』(ハヤカワ文庫HM)
4,桜野みねね/藤咲あゆな『小説 まもって守護月天!X いつの日か、あなたと。』(ENIX・COMIC NOVELS)

 突然レクター博士の旧作を集めたのは無論映画『ハンニバル』に備えてのこと。これから三部作を読み始めるのだから、果たして今月中に片付くのかも謎だが。
 3は衝動買い。時々私立探偵小説が買いたくなるのだが、買ってみて三人称だとややがっくりくる。普段は別に一人称だろうが三人称だろうが拘らないが、衝動で買ったときぐらいストイックなほど好みを貫いてみたいのだった。4は、余所様の日記などでは4/2の1よりずっと沢山見かけられているらしいのに、何故か私のバイト先では入荷できなかったため、わざわざ秋葉原まで買い求めに行った次第。ついでに言うと、今日の1も上巻はあちこちで目撃するのに下巻は見当たらず、同じ大書店で購入しました。

 さて、もしかしたら期待している妙な人もいるかも知れないのでトゥルー・ラブストーリー3』(enterbrain・PS2対応ゲーム)簡単にレビュー。
 基本精神は旧作と変わらず、あくまでキャラクターとひたすら逢瀬を重ねて好感度を挙げ、思いを成就するというもの。というとありきたりに聞こえるが、この作品は恋愛物語のセオリーを踏襲しつつ自然さを失っていないから面白い。その意味では、「ときメモ」などより遙かに正しい恋愛シミュレーションである(そもそも「ときメモ」というのは恋愛ではなく自己育成のシミュレーションを単に女の子との恋愛で評価しているだけで、正しい意味での恋愛シミュレーションではない)。だからこそ今まで評価してきたのだ、が。
 今回の新作では、これまでの一ヶ月程度から一挙一年間にゲーム期間が延長されている。それだけに展開の間延びを当初から危惧していたが、その点は問題がない。寧ろ、遊ぶ日付を一週間区切りでプレイヤーが自由に選択できるようにしたため、考えようによっては自由度が上がったとも言える。だが、困りものなのは、恋愛感情が最高潮に達した段階でデートをすると、プレイヤーキャラが勝手に盛り上がって告白を決意してしまい、するとそのままゲームがエンディングに雪崩れ込んでしまうこと。お陰で、早いと夏休み以前にゲームを終えることも出来そうなのだが、反対にその後の季節に関する物語を愉しむためにわざわざ関係の進展を引き延ばさなければならない、という手間が生じてしまった。結局ひとまずはその面倒くささ故に早期攻略を心懸けてプレイしているのだが、このとき更に困るのが、勝手に主人公が先走ってしまうために、時としてこちらの意に反してエンディングでのおまけを収穫し損なってしまう場合がある点だ。
 このゲーム、クリアした段階で攻略対象キャラクターの主人公に対するポイントが最高値に達していると、必ずラストでちょっとした特典が用意されている。後日談で一個CGが余計に収穫できる、というのが旧作のパターンだったが、今回は音声によってある手紙を朗読する形のエピローグが発生する。初回のプレイでこの特性には気づいていたのだが、如何せん一度デートが成功するとすぐに突っ走ってしまうため、うっかりすると条件を満たし忘れたままエンディングに到達してしまうのだ。――無論、理解していれば意図的に避けて通ることも出来るが、そうすると状態としては既に他のイベントが発生しづらいほど状況が纏まっているのに結末を先送りにしている、という一番苛立たしい形になり、遊んでいてストレスが溜まることこの上ない。一応、主人公キャラの告白に際しても幾度か紆余曲折を経なければならないのだけれど、その間攻略対象キャラと普通に会うことが不可能になるため、エピローグを見るためにはポイント不足だと解っていても、その間に補完するという真似が出来ない。しかも、どうもポイントが最大でないと告白に際して対象キャラと遭遇するにも苦労が生じるシステムのようで(あくまでそうらしい、と感じただけだが)、この時のストレスはかなりしんどい。
 物語の期間を引き延ばした分、自由度は向上したがその代償に展開を間延びさせてしまった、というのが現時点での感想。その点を納得の上で遊ぶのなら、依然システム・デザイン共に完成度は高いけれど。


2001年4月7日(土)
http://www7a.biglobe.ne.jp/~tuckf/Diary/20010401~.htm#Day07

 昨日書き忘れていたことがひとつ。……モラトリアムが延長されてしまった。

 さて、最早深川の週末恒例、今年七本目、述べ九度目の映画鑑賞。こうも毎週見ているといい加減「絶対に見たい!」と思う作品がなくなってくる。キリギリ迄迷うために、二番目ぐらいに見たい映画をリストアップし、それらについて第一回・第二回上映の時刻を調べておく。新聞では比較的大きい劇場や、注目度の高い映画の開演時間についてしか記載していない場合が多々あり、今回のお目当てもひとつしか掲載されていない。三つあげたうちのひとつは、劇場鑑賞券が余計にあるから機会があればという程度の執着しかなかったので調査せず、残り二本について調べる。一本は新聞に書いてあり10:45初演。もう一本はネットで公開劇場を調べ、そのうち銀座界隈にあるものを見つけて電話で直接確認した。
「第一回は何時からでしょうか」「9:45からです」「……第二回は?」「11:55です」
 第二回で先日の『snatch』と同じ時刻。どんくらい腹が空くかあなたは御存知だろうか。休日、しかも目覚まし時計(母)が父と取引先の人々と共に珍しく温泉に一泊旅行に出かけている最中では、初演に間に合う時間帯に起きられる保証もない。しゃーない、10時30分頃に銀座まで出て、その時の気分で決めよう、と布団に入ってしまったのだが、目が醒めたのは、7時30分。……何かの思し召しと捉え、9:45初演作品を見に行く。ザ・セル』(ギャガ・ヒューマックス配給)。真上の劇場で『ハンニバル』の初日が10時半頃から始まるようで、そちらの券売所に長蛇の列が続いている脇をすり抜け、悠々と支払いを済ませて上へ。因みに『ハンニバル』は、予習が終わってから見に来ます。
ザ・セル』(ギャガ・ヒューマックス配給):シカゴ郊外にある研究所では、他に類を見ない実験的な治療が行われていた。強度の自閉症により自らの躰を随意にすることも叶わなくなった少年の精神世界に、女性心理学者・キャサリン・ディーン(ジェニファー・ロペス)が少年の脳と自身の脳を電子的にリンクすることで侵入し、内側から診療するのである。アクセス自体は成功しているのだが、いざという段に少年の裡に潜む魔物が顔を表して失敗、という繰り返しが18ヶ月に渉って続き、少年の父母もキャサリン自身も、精神的に限界が近付いていた。一方、世間では女性を水死させた上で首輪を嵌め、漂白して一定期間保存・凌辱したのちに川に捨てるという猟奇殺人が相次いでいた。折しも発見された遺体からアルビノ(色素欠乏)の犬の体毛が発見され、ペットブリーダーから辿ったところカール・スターガー(ヴィンセント・ドノフリオ)という男が該当する犬を飼っていることが判明、FBI捜査官ピーター・ノバック(ヴィンス・ヴォーン)以下捜査陣はスターガーの自宅に踏み込むが、そこで見つけたのはアルビノの犬と、“ウィーランの障害”と呼ばれるウィルス性の分裂症を発症し昏睡したスターガーの姿だけだった――現在行方を眩ませている女性の姿は、何処にも見当たらない。調査の結果、スターガーは誘拐した女性を特注の水槽に監禁、40時間に渉ってじわじわと水を満たして溺れ死なせ、その様を眺めることで快感を覚えていたと判明する。つまり、こうしている間にも、誘拐された女性の身に死の危機が迫っている。苦慮の挙句、ピーターらはキャサリンたち研究所のメンバーに、昏睡したスターガーの精神世界に侵入し、女性の閉じこめられた場所を聞き出すよう依頼する。事情が事情だけにやむなく引き受けたキャサリンであったが、スターガーの精神世界は凡そ彼女の想像を遙かに凌駕するものだった――
 説明するとSF仕立てのサイコ・サスペンスといった風情だが、どうもそちらの興趣が存分に満たされる作品ではない。一番肝要となる謎の部分にしても、中盤で訪れるキャサリンの危機の脱し方にしても、クライマックスでの解決にしても、基本は凡庸で格別取り立てるほどの要素はない。寧ろ、この部分だけについて語るなら平均よりやや下回る出来で、『セブン』に『羊たちの沈黙』と並び称せる程の完成度ではない。本編の着眼は、猟奇殺人鬼の精神世界を具体的な映像として描いたこと、そのガジェットを東洋的かつ豪奢なイメージで鮮烈に圧倒的に摘出してみせたことに尽きるだろう。物理法則も現実のしがらみも機能しえない、その持ち主が絶対者として君臨する精神世界を、水を基調にした内臓的・器官的な手触りすら感じさせるほど巧みに表現しており、この部分だけでも一見の価値はある、と言いたい。砂漠地帯にある研究所に犯人の潜伏場所のロング・ショットやセットの配置も、そうした精神世界と対比を為して異様に美しい。CMなどの映像作品で名を挙げたというターセム監督にとって、この辺こそ面目躍如だったろう。また、音楽・音響効果もその狂的世界を存分に助けており、そうした面での完成度が完璧にシナリオの不備を補っている――と見るかは人によるだろう。率直に言って、わたしはやはりもっと強固なシナリオが必要だった、と感じた。確かに、こうした映像面のインスピレーションを喚起したという意味では過不足のない整ったシナリオではあるのだが、『羊たちの沈黙』の系譜を標榜するのであればそうしたサイコ・スリラーの側面から更なる捻りなり逆転なりを添えて、映像面を強烈に後押しするものを用意して欲しかった。特に、精神世界の絢爛さにかすみがちではあったが、スターガーの実際の現実生活――自らの背中に多数のフックを埋め込み、それによって吊されながら被害者の死に様をビデオで鑑賞しつつ自慰に耽る――の表現は、他のシリアル・キラーものと較べても強烈であり、その追跡の過程がきっちり描かれていたなら、純粋なサイコ・サスペンスとしても一級品と呼べたのではなかろうか。映像作品としては(好き嫌いが著しく別れるだろうけれど)一級、物語としては脆弱、というのが、私の印象だった。或いは、江戸川乱歩や横溝正史の諸作のように、その様式美を楽しめる向きにはお薦めしたい。――つまりは、何だかんだ言いながら充分愉しんだんだけどね。我ながら節操がない。

 本日のお買い物
1,Bela Fleck & Flecktones『OUTBOUND』(SME Records・CD)
 今年度グラミー賞・ベスト・コンテンポラリー・ジャズ・アルバム部門受賞作。の割にはあまりにてきとーな扱いだったのは、やはり日本で本格的に紹介されるのは本作が初めてだったかららしい。世界市場でもあまり聞かない、バンジョーを専門とするベラ・フレックによるグループがSMEに移籍して最初に発表したアルバム。まださわりしか聴いていないが、凡そバンジョーという言葉からイメージされる曲調ではなく、また類似のものも思い出せない独自の世界を感じる。チェックするミュージシャンがまた一人増えてしまったかも。


2001年4月8日(日)
http://www7a.biglobe.ne.jp/~tuckf/Diary/20010401~.htm#Day08

 だらだらだらだらトゥルー・ラブストーリー3』(enterbrain・PS2対応ゲーム)三昧。イベントが起きてもCGがないとか、感情が盛り上がった状態で延々引っ張るとデートにも誘わないうちに主人公が告白を決意してしまい、以後お目当てのキャラのイベント自体発生しなくなる、などなどの自由度の低さがあり、時々非常にストレスを感じさせるが、攻略を意識しすぎずちんたらやっていると楽しいのである。

 昨晩テレビ放映された『スピード』で、解説をミル姉がやっていた、とあとで知ってひたすら歯噛みする。ちくしょー。

『笑う犬の冒険』特番にて小室哲哉出演。だが「コントに挑戦」というより、当人のキャラクターを地のまま応用されたつまりはゲスト出演としか見えない。間の取り方も演技も要領を得ず、それを内村らがいじっていたから辛うじて面白かったのであって。ゲストとしては小室よりも、恐ろしく内村と呼吸のあった内山理名の方が面白かった(『バスストップ』にて内村の妹役で共演)。いや比較でどうこうという表現は正しくない。巧いよこの子。梅宮辰夫は飛び道具だから論外。


2001年4月9日(月)
http://www7a.biglobe.ne.jp/~tuckf/Diary/20010401~.htm#Day09

 本日のお買い物
1,倉阪鬼一郎『四重奏 Quartet』
2,古処誠二『未完成』
3,清涼院流水『秘密屋 白』
4, 〃 『秘密屋 赤』
5,二階堂黎人『悪魔のラビリンス』(講談社ノベルス)
6,秋月りす『かしましハウス(6)』(竹書房・BAMBOO COMICS)
7,『メフィスト 小説現代5月号増刊』(講談社)

 多い……。

 ……で済まそうかとも思ったが、ちょっと付け加える。
 気に入ったCDはCD-Rで複製して、職場に置くようにしている。いちいち持ち運びして、通勤途中などに破損させるのが怖いからだ。
 しかし、そういう予防策を取り始めたのは比較的最近なので、ジャズに凝り始めた当初のパット・メセニーやジャコ・パストリアスのお気に入りは一枚も取り置きしていない。職場で不意に『Secret Story』や『Word of Mouth』が聴きたくなっても手許にはないわけである。他の人はそーいう焦燥に駆られるという実感はないかも知れないが、取り敢えず私はある。そんなわけで、職場用の予備CDを作成する傍ら――その状況では危険があるためPCを利用する作業は無論、外付けのCD−Rドライブが机の上を占有するため手書きの作業もやりづらい、という言い訳をこさえてせっせとゲームの続きに励むのであった。馬鹿か私は。

 つまり、トゥルー・ラブストーリー3』(enterbrain・PS2対応ゲーム)継続中なのであった。漸く発見できなかった隠しキャラの一人を捕捉し追い掛けているところ。しかし、実質シナリオを追い掛けるだけの展開だと醍醐味が薄れます。「やる気」ポイントという、ただ追い掛けるだけのAVGにシミュレーションの空気を導入するシステムも、この状況では役に立っていないし。そもそも、キャラクターの出現に必要なフラグがいったい何処で立っていたのかが解りづらいのもいただけない。相変わらず名前だけは出てくるが依然顔の見えないキャラもいる。旧作以来のファンとしてどーにも首を傾げたくなる所以。まあ、いっそ素直すぎるほどのテキストも、イラストのもつ淡い雰囲気も気に入っているから私は構わないのだが、他のユーザーは構うかもしれんよ、という程度。ともあれ、おぢさんはこの作品には非常に評価が緩いのです。


2001年4月10日(火)
http://www7a.biglobe.ne.jp/~tuckf/Diary/20010401~.htm#Day10

 誰か俺を止めろ。

 ……いや、細々とだが、一応作業も進めてはいる。一日おきに交互に執筆している企画は、その性格故に非常にタイトに進行しているし。なに、いざとなったらこの企画だけでも同人誌として――は寒すぎるな、流石に。ちょっとね、内容的に。
 で、トゥルー・ラブストーリー3』(enterbrain・PS2対応ゲーム)、先刻にようやっと隠しキャラ未発見のうち一名を捕捉、残るは一人。だが、昨日攻略した隠しキャラにしてもそうだが、出没条件が理解しにくい。隠しキャラたる所以かも知れないが、何気ない日常から少しずつ近しくなる姿を描くというこのシリーズ本来の味を損ねる隠し方ではなかろうか。見つけてからも、選択肢のちょっとした間違いがその後のストーリー展開を止め、再挑戦しようにもイベントの発生がランダムに近い(旧シリーズではこれこそ作品の楽しさを裏打ちしていたのだけれど)ために、同じイベントに辿り着きにくい。シナリオを堪能させるにもシミュレーションの複雑さを感じさせるにも中途半端なのだ。旧作とて完成しているとは言い難くもそれなりにポリシーを感じさせたのだけれど、今回は更に完成度が下がった印象。『悠久幻想曲』といい、この手の第三作はやはり作りづらいのかも知れない。

 本日のお買い物
1,内田康夫『鯨の哭く海』(祥伝社)
 実はファンクラブに入っている。最初の記憶は裏切れない、という感覚に近い。だが、このところ新刊で買ってもなかなか読めず、時々会報で散見する著者や代弁者としての浅見光彦の言動を見るにつけ、段々私の嗜好とは食い違いを生じてきているな、という印象がある。こと、社会的問題に対する見解が極端に違っている場合が増えてきた。他の作家の場合、ただ自身の見解が違っているだけならそれが即作品に反映されるわけではなく、だから作品は本人と切り離して評価できたりもするのだが、内田氏の場合は作者個人の意見がそのまま作品で語られている場合が殆どであり、こうも食い違いが増えるといよいよ作品を読むのが億劫になってくるのだ。――まあ、そうは言っても読んでいるときにこうも細かいことは考えないし、考えずに済む作品が多いのも内田氏の作品に於ける美点のひとつであったりもするのだが。で、結局これはいつ読むんだろうね。因みに今月角川エンタテインメントで出た『はちまん』はハードカバーが積読の中に未だ混入したままです。


「若おやじの日々」への感想はこちらからお寄せ下さい。深川が空を飛びます(飛ばねえって)
ゲームやりたい本読みたい尚かつ映画も見たい(病気)。

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