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絵画は平面作品と言われます。眼に映るものは絵肌の表面の図柄や模様です。何度も重ね書きすることによって表層が盛り上がりますが、 その下に隠れ
てしまった絵の具はもはや意味をなしません。しかし制作の過程で自然にできた盛り上がりは、画家が心血を注いで腕を 振り、作品を仕上げた証でも ありますから、その意味で高く評価されます。それをいちいち削り取って平坦に均していたのでは、筆を運ぶ勢いが途切れ、絵の迫力が失われるので、
それはできない相談なのです。こうした盛り上がりは素直に観客に受け入れられ、 高く評価されます。
絵肌を工夫し、意図的な凹凸をつけることにより、絵に素晴らしい効果を与える手法がときに用いられます。 複雑な図柄を筆先だけで 表現しようとすると、大層な手間がかかる場合があり、それを解決する手法としてときに、このやり方が重宝されます。しかしこれを
やりこなすには高度のテクニックが要求され、また余ほど描き慣れた対象でなければ、失敗することが多いようです。つまり一種の 名人芸なのです。 だから一般の人は、表層の図柄だけで表現することに徹したほうが安全だと思います。
半立体的な作品と称されるジャンルがあります。それは 特殊な材料を使って、画面を構成する主役達を立体的に盛り上げることで、 迫力をつけようとするものですが、厚塗りとはやや意味が異なるようで、一つの独立した芸術分野だと思います。
しかし普通の平面作品では、盛り上げはあまり極端に走らないほうが良いと思います。私はある地方公募展で面白い光景に出遭いました。 絵を勉強中のある主婦が、ある抽象画の大作の前に佇み、その場にいた先生格らしい人に素朴な質問をしました。キャンバス上に
ピザパイほどに極端に盛り上がった絵の具の大きな塊を指差し、どうしてそれほどの厚塗りの必要があるのかと。先生格が即座に 答えて いわく。 この塊の底のほうから凄いエネルギーが発散されており、私はそれを感じます。それがこの絵の迫力なのですと。先生格氏の言わんとするところは私には見当がつきましたが、主婦の方は納得したようには見えませんでした。
このような超厚塗りにするには当然、高価な絵の具を大量に消費します。だからそれに見合う効果を引き出せるかどうかが問題です。ささやかな趣味として絵を描いている人達にこの方法はあまりお奨めできません。むしろ普通の塗り方で、厚塗りと見まがうような表現法の探求に挑戦してみてはいかがでしょうか。これこそ価値のある課題だと思います。
2007/4/1
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