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テレビ放送がアナログからデジタルへ切り替わることが現在大きな社会的課題となっています。アナログとは情報を電波の振幅など、量的な変動で伝える方式で、デジタルは1(イチ)0(ゼロ)の2値の信号で伝え、中間値を取らない方式です。現代の電子機器はテレビだけでなく、すべてがアナログからデジタルに移行しつつあり、その代表がコンピュータです。パソコンが好きな私はデジタルの良さに魅せられたデジタル支持者の一人です。
よくイベントや商店の広告で、現地までの案内図が示されることがありますが、その書き方に2通りあります。道路のくねくねとした曲がりや長さをそのとおりに、交差点では曲がる角度をあるがままに、いわゆる写実的に示すタイプの案内図(右図参照)と、交差点とそれらを結ぶ直線だけで構成し、角度や距離のことは関知しない、いわゆる道順だけを示すタイプの案内図(左図参照)とがあります。前者は距離とか方向角度など量的要素が重視されますので、アナログ的と言えます。後者は直進か、右折か左折かの一連の3者択一(または2者択一)の配列がすべてで、距離とか方向には関知しません。だからデジタル的とも言えます。
私は案内図に関しては無条件にアナログ支持者です。現在地から目的地までの地形を写実的に捉え、行き先の方角を頭に描いてから出かけます。特に初めて訪れる場所では絶対それを実行します。このやり方では曲がり角を一つくらい間違えたとしても、最終的には行き先の付近には到達できるという確信があるからです。
デジタル案内図では距離や角度など、大切な情報が捨て去られています。だからたとえば、最初に曲がる交差点を一つ間違えると、とんでもない方向に進んでしまう危険があります。なぜそのようにわざわざ解りにくく、大きな間違いを起こしやすくするのか理解に苦しみます。
しかし街なかの例ではデジタル案内図のほうが大勢を占めています。ナゼなのかは解りません。おそらく後者の方がわかりやすく覚えやすいとするデジタル人間が大勢居て、彼らの強い支持があるからかもしれません。私は学校で円周率は3.14であると学びました。今は3.1415926まで覚えております。しかし今日の学校では円周率を3 と教えていると聞いて唖然としました。端数や中間値が極端に嫌いなオールデジタル人間化をここで推進していたのです。
私のデジタルはコンピュータやその他情報機器に関わるときだけにしております。人間の細胞も遺伝子レベルではデジタルかも知れません。しかしそれらを総合した人間の精神構造はあくまでもアナログです。感性も感情も感動もすべてがアナログです。世の中はyesかnoの2者択一で割り切ることのできないことばかりです。アナログを忘れた人間社会が到来したらどうなるのか、そら恐ろしさを感じます。
具象画はアナログ人間のアナログ的産物です。微妙な中間色や色合いの変化を問題にし、曲線の曲がり方や長さに拘ります。人の心のときめきや潤いを微妙に表現する人物画や風景画を大切にしていきたいと思っています。
2009/7/1
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