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2010’05/29 「第5章 調査結果の記録等」とその解説 第5章 調査結果の記録等 この第5章は、火災調査活動をり災者や火災予防の目的のために、正確に保存するため の記録類であり、類似火災の防止等の火災予防やり災者等のために利用される。 第1節 調査書類の作成 (調査書類の作成及び管理) 第62条 署長は,管轄区域内で発生した火災について,本章の規定により調査書類を作成し,管理しなければならない。 (速報及び記録) 第63条 署長は,火災調査速報原票を作成し,調査システムにより部長に速報するものとする。 2 署長は,火災の調査出向状況並びに鑑識及び実験の実施状況を調査出向等状況記録票に記録するものとする。 第1節「調査書類の作成」は、火災調査全般における書類や写真、資料などの形態や保存など定めたものです。 第62条「調査書類の作成及び管理」は、火災調査では“管轄”主義を前提として、署長にすべてをゆだねている。 いかなる規模あるいは特異性があるであったも、その原因判定などの最終的判断とその書類の作成を管轄する署長として いる。このことは、本庁や方面本部には、最終的な「火災調査」の決定権を置いていないと言える。本庁、方面本部は、指導 助言、あるいは鑑識・鑑定等は可能であるが、「原因と損害」の決定は署長としている。 第63条「速報及び記録」は、火災の概要を早い段階で本庁等に速報して、情報の共有化を図るもので、火災調査は初動時 の対応が重要なことから、速報体制を敷いている。もちろん、「速報」を強いている以上は、その内容から直ちに行動に移行 できる義務が本庁(部長)に生じることとなる。火災現場等での活動内容を、記録することにしている。これは、現場等に携 わった職員を事後の裁判等を含めて、把握する必要があることによる。 (調査に必要な書類) 第64条 火災調査に必要な書類(以下「調査書類」という。)は次のとおりとする。 (1) 火災調査書 (2) 出火原因判定書 (3) 火災出場時における見分調書 (4) 現場(鑑識)見分調書 (5) 質問調書 (6) 火災原因の立証のために必要な資料 ア 鑑識・実験結果通知書 イ 鑑定書 ウ 調査員による実験結果報告書 エ 火災調査関係事項照会書に対する回答文書 オ 火災に関する照会依頼により収集した調査書類作成上必要な文書等 (7) 延焼状況等にかかわる調書 ア 延焼状況等調書 イ 出火建物・避難状況等調書) ウ 危険物施設等調書 (8) 損害調査にかかわる調書 ア 建物・収容物損害調査書 イ 建物以外の損害調査書 ウ 死傷者調査書 2 前項第2号から第7号までに掲げる調査書類で,記載事項が多い場合には,(別記様式)を使用するものとする。 3 調査書類には,調査の内容を明らかにするため,必要な写真及び図面を作成,添付するものとする。 なお,写真添付用紙は,前項の(別記様式)を用いるものとする。 4 写真映像原本の保存は,フィルムは陰画保存はさ)を用い,電磁的記録は,コンパクトディスクにより保存するものとする。 5 調査書類の記載要領等については別に定める。 (火災の程度,種別による作成基準) 第65条 調査書類は,次の各号に定める火災の程度及び種別に応じて作成するものとする。 (1) 建物のぼや火災,林野火災,車両火災及びその他の火災で,損害額が千円未満の火災 (2) 前号に掲げる火災以外の火災及び署長が必要と認める火災 2 前項の書類作成は,別表第1の基準によるものとする。 3 外国使節団の公館等の火災で調査権を行使することができない場合における書類は,火元の場所,その他判明している事項のみ記入して作成するものとする。 第64条「調査に必要な書類」は、全国消防長会で昭和57年に設置された「火災調査研究会」での答申を踏まえ、昭和59年 から「火災調査事務処理の統一化」が図られ、以後、消防大学校の標準教科書に入れられた「火災調査書類」がほぼ全て の消防本部の火災調査書の様式と書き方となっている。東京消防庁もこの全国統一様式に準拠している。 書類には、大きく次の5つの書式でできている。 「火災調査書」(火災全体の総括書で、これにより出火場所や責任者、建物状況、出火原因等がわかる。) 「出火原因判定書」(見分調書と質問調書からその内容を引用しつつ、原因の判定にいたる内容を記載したもの。) 「火災出場時における見分調書」(火災出場から鎮火までに消防活動時に見聞きした内容を記載したもの。) 「現場(鑑識)見分調書」(火災により、り災した箇所を、焼損、水損等について見分した内容を記載したもの) 「質問調書」(出火行為者、発見者、通報者、居住者、などから質問して、聞いた内容を記載したもの) この5つが火災原因としての主要な書類となる。{その他}として、火災原因の判定を補強するために実施された、立証の調査 などの「火災原因の立証のための資料」関係、建物火災で延焼していった関連事項を記載した「延焼状況等に係わる調書」 火災による死傷者に関する負傷などの内容や火災の損害の評価、算定に関わる「火災損害に関わる調書がある。 これらの書類は、現行A4版でパソコン処理による文書であり、写真もデジタルカメラによる電子資料となっている。そのため プリントアウトされた書類が原本として保管される。保管は、文書規程によりほ原則5年間となる。廃棄は、個人情報保護の 手続きに従って完全廃棄処分となる。 記載すべき内容などの書き方は、事務処理手引書により指示された書き方で記載するようになっている。 第65条「火災の程度、規模による作成基準」は、消防の行う火災調査活動は、行政事務として実施されるもので、おの ずから事務の簡素化、効率化の対象となるものであり、必要最小限度の「書類作成」を規定しているものである。例えば、 「公園の芝草が燃えたようなもの」は、実害も少ないことから、2〜3枚の形式的な書類作成だけとなる。できるだけ、少なく が原則である。裁判や他の機関からの照会を前提としてものではないので、「書類内容がやや不十分では」との意見が聞 かれることかもあるが、消防機関の行う火災調査業務としての範囲内の「書類」であるとの性格がある。 規程により定められている作成基準。
作成されていたことから、弁護士が正規な手続きや署名のない「現場質問調書」により判定された原因判定は、無効であ る、と申し述べた案件があったが、当庁規程基準に基づき作成された書類であることには変わりないことから、有効である とされた。このように、刑事訴訟法等の厳格な手続きを前提としているものではなく、年間6千件以上の火災を行政上の立 場で作成される書類であり、その範囲で利用されうるものである。 (調査書類等の報告) 第66条 署長は,前条の規定により作成した書類の写し及びその他必要な調査関係書類のすべて並びに火災情報を火災覚知の月の翌月の末日までに部長に報告しなければならない。 なお,期限内処理が困難と予想される場合は,主管課にその理由を報告するものとする) 2 前項に規定する火災情報については,調査システムにより報告するものとする。 (マイクロフィルム化の手続き等) 第67条 署長は,別に定めるところにより,マイクロフィルム化するため調査書類の原本を部長に移管するものとする。 2 部長は,前項により移管された調査書類の原本を,マイクロフィルムとして集中管理するものとする。 3 第62条の規定は,前項によりマイクロフィルムとして集中管理された調査書類には適用しない。ただし,部長が指定した調査書類及び写真の陰画又は電磁的記録は,署長の管理のもとに保存するものとする。 4 署長は,第2項の規定によるマイクロフィルムについて,抄本作成等の必要が生じた場合は,部長に対し火災調査書抄本作成申請書により申請するものとする。 第66条「調査書類等の報告」は、火災調査書類を火災があった月の翌月の末日を期限としている。つまり、5月10日なら6月 30日となる。5月31日の火災は、6月30日に書類提出となる。最小30日から最大61日の巾がある。これは、火災の電子情 報の入力も同様である。このため、12月31日の火災が1月31日までは入力されないし、12月の火災が「事後聞知火災」とし て通報される火災が1月になって覚知されると、これらの書類作成は2月末まで待つことになり、それらを出力して、エラーチェ ック等の修正を加えて、確定するには、3月となる。結果、前年の火災統計は、3月末となってしまう。 しかし、火災の現場見分調書、質問調書、損害等調書などを一つひとつ正確に作成事務処理には結構な日数がかかり、その 上で原因判定書を作成して、一連の火災調査書類を完結するには、最小30日には事案により大変厳しいものがある。 第67条「マイクロフィルム化の手続き等」は、東京消防庁管内の「火災の歴史」を留める必要があることから、実施されている。 マイクロフィルムによる火災調査書類の保存は、ある程度の規模以上のものとしている。とは言え、ほとんどの主な火災は該当 することから、昭和23年の東京消防庁開庁からの火災に関する資料が保存されている。消防にとっても「基本」である。 第2節 照会等の対応 (照会等の対応) 第68条 署長は,裁判所,捜査機関等から調査結果の内容について照会又は情報の開示請求(以下「照会等」という。)があった場合は,職員に照会等報告書を作成させるとともに,調査書類の抄本を送付し,又は内容について回答することができる。 (照会等対応の原則) 第69条 前条の照会等の対応は,個人情報及び犯罪に関する情報等の保護に留意し,主管課と協議して別に定めるところにより対応するものとする。ただし,警視庁管内の警察署からの照会に関しては,原則として,主管課との協議を必要としない。 (証人,参考人としての出廷等) 第70条 職員は,自己の担当した調査に関して捜査機関から参考人として出頭を要請され,又は裁判所から証人等として呼び出し若しくは召喚を受けた場合は,部長(主管課経由)にその事案概要を報告しなければならない。 2 前項により出頭した結果についても同様とする。 第68条「照会等の対応」は、火災調査書類が捜査機関やり災者への救済のための提供など、多方面に利用されている実態か ら設けられている条文であり、消防法第34条の立入検査権を行使すると法第4条第4項の守秘義務が求められることから、規 程により、照会等の対応して、回答することを是認している。 第69条「照会等対応の原則」は、個人情報保護の観点から、本庁と協議しつつ回答することにしている。なお、管内の警察署か らの照会は、署判断で迅速な実施対応となっている。 第70条「証人、参考人としての出廷等」は、民事裁判ばかりでなく、最近は刑事裁判でも火災調査の判定等にけかかわる専門 的で第三者的立場として、出廷を求められることが多いことから、これらの手続き的な内容である。そして、証人として出廷する 際の対応要領や心構えなど必要な支援を提供し、公務員として火災に係った事実関係について、適正で正確公平な証言を促 すこととしている。 第3節 立入検査証 (立入検査証の貸与,管理等) 第71条 火災予防施行規程第2条の規定による証票(以下「立入検査証」という。)の貸与,管理等については,次によるものとする。 (1) 立入検査証は,調査員に貸与するものとする。 (2) 立入検査証の管理,取扱いについては,東京消防庁査察規程第19条,第20条,第21条の規定を準用するものとする。 (亡失した場合の措置) 第72条 立入検査証を紛失又は盗難等の事故により亡失した場合の措置は,査察規程第22条の規定を準用するものとする。 紛失又は盗難等の事故により亡失した場合の措置は,査察規程第22条の規定を準用するものとする。 第3節「立入検査証」の各条文は、立入検査証の管理等に関わる事務手続きを定めたものである。 |