●こんなところで立ってたら、ドライバーにとっちゃすごい邪魔だよな。 ●こんなところに描かれているのは、足型ストップマークを描く人たちが、歩行者の実情を考えていないからではないかと思うんです。 ●例えばこれなんか。→(2) 確かに見通しの悪い路地のカーブなんですけど、車道を横断するわけでもないのに、どうして歩行者がストップしなくちゃいけないんでしょう? こんな狭い道に無理やり入ってくる車のほうが遠慮すべきですよ。 ●いわゆる車中心社会のしわ寄せが、歩行者に押し付けられてるということかな。 ●でもまあ、自転車なんかも通るからねえ。 ●自転車は車道を走ってればいいんですよ。どうせ歩道なんてデコボコなんだから。歩道は歩行者のためのものなんです。時たま「自転車通行可」って標識のある歩道もありますけど、あくまで優先なのは歩行者ですからね。 ●今回は真面目に交通安全政策に苦言を呈してるな。よっぽど自転車旅行で鬱憤が溜まってるんだろう。 ●第一この場所、べつに見通し悪いわけでもないじゃないですか。地面の地味なマークをいちいち気にしてる奴がいたら、「ちゃんと前見て歩け!」と叱ってやりたいですね。 ●地面ばっかり見て歩いてるのって、お前じゃないのか? ●そうなんですよー。新発見のストップマークに気を取られて、何度クルマにぶつかりそうになったことか。 ●こんなものに命張るなよな。 ●さらにバカバカしいのはこちら。→(4) なんなんでしょう、これ。段を下りるたびに立ち止まって左右確認しなきゃいけないってことですか? ●それとも、後の足型は順番待ちとかね。 ●そもそも、ぼくがどうして足型ストップマークに注目しているかというと、総じてこれらが無意味で滑稽でバカバカしいからなんです。 路面に何万という足型を描いたところで、クルマに轢かれる人は轢かれるんです。 ●ひどい言いようだな。少なくとも子供への教育的効果はあるんじゃないの?「ストップマークがある場所では注意するんですよ」って。 ●でも、本来の交通安全教育はストップマークの有無に関わらず、どんな場所が危険なのか、危険な場所ではどう行動すればいいか、の判断を子供たちに教えることが重要なはずでしょう。 ストップマークをダシにして交通安全教育をやってたら、「ストップマークのないところでは注意しなくていい」という考えを子供に植え付けることになりますよ。 そんな有様だからマークのない場所で事故でも起きると 「ストップマークがないのが悪いんだ」 なんて、おかしな議論になるんです。そうした結果、路上にストップマークが蔓延する現在の日本が出来上がってるんじゃないでしょうか。 ●まあ、実効性が確かじゃないのに延々と描かれてるという意味では、魔よけのお札に似ているかも。 ●そのとおり。交通事故の多い場所を「魔の交差点」なんていいますけど、ストップマークはまさしく「交通事故」という魔物の退散を願う魔よけの紋章なんです。 よくPTAや交通安全協会が「交通事故ゼロへの祈り」なんて言い回しを使うでしょう。あれ、比喩的表現を気取っているようでいて実は文字通りの意味なんですよね。 足型ストップマークをシコシコ描いてる人たちは、交通安全を「祈ってる」だけで、自分たちの行為が本当に事故防止に役立ってるのかどうかなんてことは眼中にないんですよ。むしろストップマークは、設置者が自分たちの「交通安全を祈る真摯な姿」を誇示するための記号にすぎないんです。祈ってさえいれば許されると思ってる。つまり彼らはオカルト主義のナルシストなんです。 ●お前、そこまで言うか? ●異論がある方は、ぜひとも足型ストップマークの実効性を具体的に示して反論していただきたいですね。足型の密度が高い道路ほど、飛び出し事故が少ないという統計データをね。 ●それはたぶん無理だろうね。事故が多い現場には、それだけ多く足型が描かれるだろうから。 ●それなら、足型が描かれて以降、飛び出し事故が何件減ったか、というデータでもいいですよ。(※1) ●うーむ、その分析はそれなりに意味があるかもな。この際だからお前調べたら?研究所の所長なんだから。 ●えー、嫌ですよそんなの、面倒くさいもん。この研究所はストップマークを馬鹿にして楽しむのが主旨なんですから。 ●…勝手なやつ。 ●足型塗ってる人たちだって好きでやってるんですから、ぼくたちも好きでイチャモンつけてればいいんですよ。 そもそも足型ストップマークには法的な根拠なんてありませんからね。 ●そういう意味では、ストップマークなんていい加減な代物だよな。交通安全っていう大義名分がなけりゃ、たちの悪い落書と変わらない。 ●その「交通安全」って思想も気になるんですよね。立ち止まれ、左右確認しろ、なんていちいちうるさいのは、交通強者―おもに自動車―の迷惑にならないよう歩行者を去勢したいだけじゃないですか。ストップマークに足を載せると、そうしたイデオロギーに取り込まれちゃうような気がして腹立たしいんですよ。 ●お前、神経質な上にへそ曲がりだよな。 ●それこそが研究への原動力ですからねー。事故防止の看板だって、 「飛び出したら轢き殺す」 とでも書けばいいのに、実際はおためごかしに 「よい子は左右確認しっかりと」 なんて書いてある。「よい子」ってのはつまり、ドライバーにとって「都合のよい子」なわけですよ。 まして、歩行者に交通マナーを説くなんて筋違いです。もちろん道路は危険な場所ですから、自分で身を守る術は心得てなきゃいけない。でもマナーというのなら、そもそもこのくそ狭い日本の道に、自動車をのさばらせてること自体が人間的にマナー違反ですよ。 一歩踏み出した先に、何トンもの鉄の塊が時速何十キロというスピードで突っ走ってる。そんな非常識な世界で、たかが看板立てたりマヌケな足型を描くだけで交通事故がなくなると信じてる日本人ってなんなんでしょう。 足型塗ったり、パンダのシール貼ったりする金があるんなら、それらを全部貯金に回して歩道の拡張工事でもしてみろってんだ。 ●工事なんて簡単にはできないから、みんな苦労してるんだろ。 ●そうです。自分の力ではどうにもできない。だからこそ人は神に祈り、無駄な魔除けを描き続ける。足型ストップマークは、現代の交通事情の板ばさみにあっている日本人が、伝統的な「まじない」の世界に逃げようとしてる姿なんですよ。 ●今日もシコシコ足型描いてる人たちが、お前の言い草聞いたらなんて思うだろうね。興味あるな。 ●ご感想は当研究所所長、イマイアキラまでご遠慮なく。 ※1 こうしたデータを入手した場合には、当サイトの記事を全面的に見直す可能性があります。 レポート23 >>
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