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たばこの火災

                                      A2-02   06.09.01 改11.01.16

  1, たばこ
 
     ★ たばこ火災

  「たばこ火災」ほど、火災調査にとって、普遍的でありながら“難しい”火災原因もない。
 火災としては本当に多くあり、事例を探せばいくらでもある。しかし、延焼火災の調査現場で最終的に「たばこ」と判定
 する際には、躊躇することも多くあり、「不明にしょうかな!」と思うことがある。
   火災調査員の第一歩が「たばこ火災」から始まると言っても過言ではない、しかし、最近はたばこを吸わない
 調査員も多くなり、「たばこ(喫煙)の生活習慣」に対する洞察力が落ちていることも確かである。それこそ、灰かきの
 途中休みに紫煙をくゆらせて、警視庁捜査員と忌憚のない議論・考察ができるのが、このタイムなのだが。今は、近隣
 者等の喫煙に対する“眼”を意識して、火災現場周辺での喫煙が難しいなっている現況は、何ともいたしかたない。
  さて、その火災調査の第一歩は、テキストとして昔し読まれた塚本孝一氏の「火災原因調査入門」(1981年版)で
 も始めのところで論述され、「たばこと布団の火災」として、たばこの着火と発炎に係わる実験写真を掲載している。
 さらに、良く読まれた京都市消防局木野村健一氏「火災調査員へのアドバイス」でもたばこが紙屑入れに入れた
 時の出火実験のデータが掲載され、その調査要領が記されている。
  そして、今の火災調査のバイブルとなっている「火災調査教本」第6巻では「たばこ」だけで45ページ近い分量を
 書き込んでいる。この中の様々な実験は、過去からの積み上げて来たもので、教本の表6のたばこと木綿製座布団
 
の実験は、昭和56年当時のものだ。で、今の座布団は、そのほとんどが表7のとおり「化繊混毛」なので、たばこが落
 下した状態での「着火はしない」のが普通だ。 しかし、稀に、老舗の料亭、旅館の座布団、仏間の前の座布団などの
 火災で、古くからの「木綿製座布団からの火災」として出くわすこともある。
  さらに、屋外でのたばこの着火性挙動は別物となる。
  つまり、たばこ火災ほど、
着火物とその環境によりさまざまなバリエーションがあり、そのバリエーションに相当
 する様々な火災現場がある。単に、実験結果から「検証により」判定するとは言えないばかりか、現場には証拠物も乏
 しく、結局「焼けと関係者の供述」をたよりに、調査員の経験がものを言う世界となる。 
  ・・と言うことを、念頭に置いていただいて、話しを進めていきます。
 
       ★ たばこの喫煙
 
 
 JTの資料によると左図のようにたばこ(紙巻き)の販売本数は、
 1995年(平成7年)頃から減少の一途をたどり、2009年の販売量は
 2339億本となっている。15年間で約33%減少、毎年2%の減少率。
 特に、2002年、2006年、さらに2010年の増税と続き、さらに、2008年
 から始まった「特定健康診査・特定保健指導(メタボ健診)」で、喫
 煙習慣は大きなマイナス要因とされることから、成人男性の喫煙率
 の減少は決定的となった。1966年(昭和41年)の男性の喫煙率は
 84%近くあり、多数派だったが、2009年(平成21年)では39%と少数
 派となっている。
 渋谷の「たばこと塩の博物館」には、“たばこ盆”やキセルなどが多く
 展示されている。 鉄道の中抜けの乗車をキセルと呼ぶが、たばこ
 の衰退と、電子キップの登場で、キセルの言葉も消えてしまいそうだ。
  たばこの喫煙規制を月刊「フェスク」’11.01,N0351「Tea Time」から引用すると。
  無規制時代
   昭和40年代は、電車・観光バス、飛行機とあらゆる乗り物が喫煙でき、会社の会議室では資料配布の前に灰皿
  を配置するのが一般的であった。屋内で喫煙できないのは、当時から消防の指導を受けていた劇場・映画館など
  であった。およそ、その消防署でも火災現場が鎮火すると、ポンプ車の所で一服してから、引き揚げ作業が始まっ
  ていたし、派出所でたばこを燻らす(くゆらす)お巡りさんは良く見かけたものだ。
 分煙導入時代
  昭和50年代となって、それまで8割近い男性喫煙率は、減少し始め7割程度となり、平成になると6割と減少した。
  欧米の禁煙運動の表れから、1976年8月には東海道新幹線で部分喫煙となり、1978年には航空路線も追随、
  1982年地下鉄の朝夕禁煙、1987年(昭和62年)には山手線の原宿・目白の駅構内禁煙、東京・上野地下ホーム
  禁煙などの規制が、交通機関の苦情対応と安全運行と相まって進められた。特に、外資系や外国との関係会社
  では、WHOの勧告を受けて、社内の部分禁煙が促進されるようになり、分煙と喫煙室(席)の考えが一般化した。
  そして、1987年11月のロンドン地下鉄でのたばこ火災を契機に、さらに促進され、1988年には地下鉄は全駅構内
  「禁煙」、日本航空も2時間内空路は「禁煙」の措置を取るようになってきた。そして、1992年(平成4年)8月の
  山手線全駅の終日禁煙により、次の時代へと移る。
 分煙強化時代
  1993年(平成5年)から2001年(平成13年)では、男性の喫煙率は5割となった。女性は常に1割を保持している。
  室内分煙は、場所や席の指定でなく、区分を明確にして密閉室とするようになり、1998年には航空路線の全面
  禁煙となった。屋外の喫煙は、問題ないとされたが、室内では厚生省の指導指針などに基づき、明確な分煙を強
  いられるようになった。会社でも、喫煙室の区画工事が進み、室内の灰皿は取り払われた。
 喫煙罪悪時代
  2002年(平成14年)から2007年の男性の喫煙率は、4割台となり、少数派に転落した。さらに2008年(平成20年)
 では3割台となり、都心部の成人男性では「吸わない人」が一般的となってしまった。ここにきて、平成14年に千代
 田区が「歩きたばこ」に対する罰則の条例を制定し、平成15年厚生省の「受動喫煙禁止」の通知により、およそ公衆
 の集まる所では喫煙は禁止され、喫煙室は別に必ず設置するなど、喫煙禁止が一般となってきた。
 路上喫煙禁止条例は、そのももの条例は存在しないが、環境条例等にとりこんで、「歩きたばこ」を規制した。
 この動きは、室内から屋外に及んだことから、公共施設などは室内からさらに進んで「敷地内禁煙」となっ来た。
 さらに、2009年神奈川県の受動喫煙防止条例のように、単独の条例もできるようになった。
 今(2011年1月)や、建物の喫煙が緩和されてるJTビルと会議等でもたばこを喫って、話が出来る「自民党本部ビル」
 ぐらいが喫煙者に配慮(?)した建物となっている。
 
たばこ火災の年代別推移

(火災件数、死者は年の変化が大きいので5年単位で見た)

 東京消防管内
 のたばこ火災の
 推移。
 青線がたばこが
 原因の建物火災。
 赤線がたばこが
 原因のその他火災
 棒グラフがたばこに
 よる火災の死者数。
  たばこが原因となる火災は、近年、喫煙環境の影響により減少してきている。
 建物火災では、平成元年(1989年)から10年は件数の変化がなく、600件程度であったが、平成17年(2005年)
 あたりから、建物火災も減少傾向を示し、最近は平均して550件と、10年前と比較して約10%の減少となっている。
 その他火災では、平成3年頃の平均は370件であったが、平成8年(1996年)頃は430件程度に増加した。分煙
 化や列車内禁煙などの影響で、逆に屋外での喫煙が増えたために「その他火災の増加」となった。特に、この
 頃から「ほたる族の火災」が見られるようになった。「ほたる族の火災」とは、マンションのベランダで喫煙する風情
 で、初夏、夕暮れのマンションのベランダには、ポッ、ポットと「火」がほたるのように見える様を指す。このたばこの
 処理不十分からベランダでの火災があり、日曜ではお昼頃、火・水・木曜日では夕方に火災が見られた。
 平成19年(2007年)頃は平均290件となり、著しく減少しており、最近の「歩きたばこ禁止」などが強く影響している。
 たばこ火災の全体では、たばこの販売件数・喫煙者人口の顕著な減少傾向に少し遅れて、ほぼ一致して減少して
 いる。
 たばこが原因の火災で「火災による死者数」は、たばこ火災の減少と関係なく、増加している。
 平成3年頃は平均19人、平成8年頃に26人、平成19年頃の平均が33人と、たばこが原因とされる火災による
 死者は15年間で70%の増加
となっている。
 年齢別死者数
 平成9年(1997年)から10年間の東京消防管内のたばこが原因の年齢別死者数を示す。
 このように、50歳代からの「死者」が約8割となっている。10年間の合計が308人で、男性234人(76%)
 女性74人(24%)となる。女性の場合は、本人が喫煙の行為者である場合は53人(72%)だが、男性では
 211人(90%)となる。この中で、高齢者一人暮らし67人(22%)、高齢者世帯28人(9%)の合計で3割となる。
 65歳未満の場合も「一人暮らし」の世帯が115人(37%)を占めている。
 喫煙率の減少は顕著で、たばこ火災の減少も見られるが、高齢者を中心として「喫煙習慣」のある世代が、
 生活環境の中で、たばこ火災の「危険な領域」に陥り易いことがこの統計から読み取ることができる。つまり、
 これら喫煙世代に対する住警器の設置促進などが、急務となっていると言える。
 
 
 ★ たばこの燃焼
     

 左図は、たばこの喫煙時の状態の断面。
 たばこは吸引時と自然燃焼時では「酸素」の
 供給が変わります。

 吸引時には主として外側から、灰を経由して
 多量の酸素が入り、高温部(中心部)の燃焼
 が促進されて、未燃焼部を燃焼させて進みま
 す。
 
 自然燃焼時には、主として葉の紙巻き部から
 酸素が供給されます。
       たばこの喫煙時の状態
   上の喫煙時の断面写真は、作成がなかなか難しいものです。昔、科警研の木下先生が出された資料にあり、
  その仕様に従ったがうまくいかず、やっとできた思いがあります。
  さて、たばこの燃焼は、自然燃焼には主として紙巻き部から酸素が供給されるため、ハマキでは吸い続けないと
 立ち消えする。また、灰の部分が「引火防止網」的の役割と「酸欠」状態を形成するため、高温の中心部の温度が
 そのまま可燃性蒸気などの雰囲気状態での「発火温度」となることない。雰囲気状態では、外周部の温度が影響
 する。ただし、屋内的条件の場合であって、屋外においては「有炎火源」となり得るので、可燃性蒸気が滞留して
 いる場所に「たばこ」があると着火する恐れがあります。このことは、たばこ1本で、枯れ草が燃えるのと同じです。
 [引火の可能性]
 
たばこを発火源として、可燃性蒸気内で引火するかどうか? 実験と言っても、吸っている状態では、たばこの燃
 焼は、不安定なので、一概にその状態を災害現場全てにあてはめることができない。
 考えられることは①たばこは、電気火花(2,500℃<)のような高温でなく、せいぜい850℃程度しかない。
 ②スモタ゜リング(無炎燃焼)ゆえに、火源の火種部が、局所的にバラバラの温度領域の集合帯であり、その近傍
 を通過する可燃性蒸気も、吸引部に近い高温度ほど、流速も早くなるので、引火しにくくなる(可燃性蒸気の流速と
 引火温度の関係グラフから、流速が早いほど高温の火球が必要となる。)
 ③同じく、800℃以上とされる高温領域が非常に狭く、実際は外周部で紙が燃焼している温度の250℃で代表され
 る温度が「火源」と見なされる対象となる。
 ④スモルダリング(無炎燃焼)は、火源近傍で気体の入れ代わりが少なく、燃焼部の周囲に不活性のCOガスを
 滞留させるため、可燃性ガスの浸透を防止又は拡散させてしまい、有効な爆発限界に至らない。
 ⑤たばこは、火源周囲の「灰」の影響で、灰が火炎伝播に対して阻害要因となる。炎が金網(疎密により違う)で
 火炎伝搬を阻止するように「火炎のクエンチング効果(負の複数の相乗効果)」により、火炎形成を阻害するものと
 思われる。
    これらのことから、屋内的条件では、可燃蒸気に対する発火源となりにくいと言えます。
  たばこの銘柄別「温度」
 左図は、1992年当時に測定した、たばこの銘柄別の
 温度です。上段が、中心の“高温部” 下段が“表面部”
 の温度です。
 測定は、気温22℃前後、湿度41%前後で、それぞれ
 中心部と周辺部を5回測定しています。
 周辺部の測定は、わりと簡単ですが、中心部温度測定
 は大変でした。
 当時全部で23銘柄を測定しました。
 ピースが高温部で774℃、周辺部で268℃、マイルド
 セブン・スーパライトで高温部789℃、周辺部380℃、
 フイリップモーリスが797℃、278℃でした。このように
 銘柄により少し温度の違いがありますが、通常、言われ
 ている中心部800℃、周辺部300℃となります。
 熱量は、ピース4,190?/g、マイルドセブン・スーパライトで
 3,720?/g、フイリップモーリス3,780?/gとなる。
 たばこのタール含量が多いと熱量はやや多くなる。 
  マイルドセブン・スーパライトは、長さ8.5cm、直径0.8cmで、重さ0.92g、フィルターを除くと0.68g、
  高温部790℃、周辺部380℃、ニコチン6mgとなる。 水平におくと12分~13分で燃え尽きる。

 

  「国際的視野から見たたばこ・喫煙」の文献では、下図のように、主たる軸流と希釈のためのフィルター開口部
 からの枝流の合計が、吸引量とされ、1,050cc/minと記載されている。 
  開口部のあるフィルター付タバコの希釈拡散流動  フィルターの開口部・マイルドセブン・スーパライト
 フィルターの開口部は、上右写真の右のようにフィルターの吸い口から12mm程度の所に、筋状の穴が開いて
 いる。 写真は、マイルドセブン・スーパライトで、このフィルター紙を広げると上右の左のように「穴」がはっきり
 とわかる。このたばこでは、吸い口から13.5mmの所に2本の筋で穴の列がある。黒印が5mm間隔で、1cmで
 約20この穴がある。
 ここで、このフィルターの開口部について調査した報告が「第13回 日本法科学技術学会学術集会」で報告
 されている。北海道警函館科捜研 成田氏等の調査によると、国産たばこ110銘柄、外国たばこ168銘柄
 計278銘柄の中で開口部は約9割の銘柄にあり、それぞれフィルターの開口部の本数、位置を調べられている。
 つまり、刑事捜査現場で採取された「フィルター」の一部などから、開口部を測定し、銘柄等の特定の指標とされ
 ることになる。
 ただ、火災の現場では、関係者の供述や現場の発掘品等から、出火箇所周辺で採取されるたばこの銘柄との
 同定は、もう少し簡単にわかることが多く、だいたいはフィルターの名前やデザイン模様が判断対象とされる。
                低延焼性たばこ
 左写真が「低延焼性たばこ」
 見た目でも分かりにくく、写真ではなおさら
 分かりにくいのですが、赤い線の所がわずかに
 黄色く変色しており、スピードバンプがあります。
 右写真は、線が少しズレていますが。
 通常バンプは、幅5~8mm、間隔18~22mm。
 このホームページでは、「火災調査と法」のジャンルに、2009年2月に「火災安全たばこ」のページを設けています。
 今(2011'01月)では、Fire-Safty-Cigaretの呼び方から[FSC]火災安全たばこと言う場合と、「低延焼性たばこ」と
 呼ぶ場合。Lower ignition propensity の呼び方から[LIP]、 Reduced ignition propensity [RIP]から「低着火性
 製品」「低延焼性たばこ」とも呼ばれる。 Ignition propensity で「発火源としの特性」ですから、その発火源となること
 をLower 低める、Reduced 縮小させる、ことです。 確かに「火災安全たばこ」と直訳するには、少し現実的ではない
 ので、当ホームページでは「消炎たばこ」としました。
 「着火性」あるいは「延焼性」と呼ぶと、「試験方法」との関係において、理屈にかなっているとも思えます。
 米国材料試験協会(ASTM)のE2187の「たばこの着火強度測定用試験法」で、その性能基準に適合した製品です。
 ハマキと違い、「紙巻たばこ」は置いておくと燃え続ける特性があるので、紙屑などの他の可燃物に対して「発火源」
 となり着火します。で、ハマキと同程度の特性をもたせるとすると、葉の詰まっている所に2ケ所、「立ち消え」する
 バンプ帯を入れるというものです。バンプは、薬品など紙部で処理したものが多く、他にもさまざまな方法があるとされ
 ています。
                     ★ 消防関係の動き(経過)
 2009年10月29日の全国消防長会の役員会おいて、大阪市消防局から「たばこ火災による被害の低減について」
 の提供により、全国消防長会予防委員会で検討されることが決まり、「低延焼性たばこ実験検証等調整連絡会」が
 2009年12月に設置された。これらの検討を踏まえ、2010年6月30日全国消防長会から総務省消防庁に「たばこ
 火災による被害の低減に関する要望」がなされた。
 2010年12月2日消防庁から「たばこ火災被害を取り巻く状況」が、消防研究センターから「低延焼性たばこに係
 わる検証実験」のデータが出されている。
 ★ 東京消防庁消防技術安全所は月刊東京消防2010年10月号11月号、試験研究センター月刊誌Voice2010.
 12月号などに「FTCk着火性の検証実験」。
   大阪消防局は消防通信676号などに「FTCの有効性の検証結果」など。としてそれぞれデータを提供されている。
   ★ 奇妙な実験結果
 このFSCに関する消研、東消、大消の実験は、このあとに続く「たばこと各種着火物との着火性」に示すように、
 既に火災現場や各種火災調査実験から様々なデータ・知見を得ていることと、関連性を欠いている印象があり
 ます。
 一つには「低延焼性たばこ」が「有効か、否か」の視点が前提にありすぎて、公平で客観的な視点を欠いて
 いるようにも思えることです。 極端の結果では、Voice.2010 12 の東京消防庁の検証 「まとめ」で
 「(4)以上のことから、日本の生活環境において、FSCの有効性は高いとはいえない。」と記載されている。
  ここで「日本の・・」と言っている内容が「欧米の・・」たばこ火災と、どこがどう比較検討されたのだろうか。
 欧米でも、本実験にあるような「綿製品」は「絹製品」は使用されている。ゆえに、たばこ火災が人命に影響すると、
 考え欧米で、この「たばこ」が生まれているとしたら、この「まとめ」は何なのか?
 大阪では、「畳」との着火性実験があるが、この実験内容だと普通のたばこでも着火しないことが想定され、単に
 FSCがバンプのところで「消えたか・どうか」で、「有効と見なす」のは、あまり意味があるとも思えないが。本来、
 たばこ火災に着目することより、その着火性に対する課題を考えるべきで「バンプの効果」だけに気を使っている
 ようなデータとなっている。
 いずれにしても、これらの実験者は、「たばこ火災の実験の蓄積がない」と言うより、たばこ火災の火災調査経験も
 乏しいように見られるだけに、検証結果は、「?」と付けたくなる。
 なお、「たばこ火災の実験」では、たばこと着火物のバリエーション、特に含有湿気で変わる。実験で、ある意味
 「燃焼させたければ」、着火物となる製品を2~3日「乾燥庫」に入れて、その後常温で24時間置いて、実験すれ
 ば「燃焼する」。着火物が「綿製品」「紙類」ではその保湿条件で「たばこの着火性」はいかようにもなる。つまり、
 実験者に作為があれば、その作為にあったデータも可能となる。その典型は、点火したたばこ1本を、点火して
 いないたばこ15本、と一緒にしてテッシュに入れた時は、そのやり方次第で「燃やすことも、立ち消えさせる」こ
 ともどちらでも可能だ。
 つまり、この「たばこの着火性」総合検証実験は、実験者の「思惑が介在する」余地が有りすぎる、と言える。
 次ページのCoffee Break「火災研究との相違性」と同じジレンマに陥っているようにも思えてしまう。
 トータルとしての「火災」を捉えて、たばこ火災は、果たして、
「Indoor」の室内実験室レベルだけの課題なのか、
 或いは、「寝室の煙感知型住警器の
設置促進」ほどに、効果があるとされるのか、「火災の死者との関係」で
 有効と見るのか、いずれにしても、実験検証者は、この氷点下の寒い空で、「たばこ火災の調査現場」でも行って、
 灰かきでして、考えてみては、どうだろうか?????

 
たばこの燃焼

 居室内のたばこによる火災は,始めから炎が立ち上がるのではなく,布団やゴミなどの着火物に燃え込んでから,炎と
 なって立ち上がる。たばこの燃焼を、古くは“おき火”とも言われるような燃焼で、火災調査では“無炎燃焼”と呼ぶが,
 火災燃焼分野ではこのような燃焼形態を“
スモダリング(Smoldering)(くん焼)”と表記している。 たばこと紙屑の
 出火研究は古くは昭和22年当時に東京大学などで行われているように,古くて新しい課題でもある。たばこ火源として
 は,このスモダリングとしての性格とマッチと同様の“有炎燃焼の火源”としての性格がある。
 (「くん焼(スモルダリング)と火災被害」火災学会誌Vol.39 No.5(182)、東邦大学佐藤研二先生(と平野先生)
 「くん焼(スモルダリング)の発生、伝ぱ機構と性質」火災学会誌Vol.39 No.6(183)、茨城大学鈴木鐸士先生の論文を)

 一般の火災では,固体(可燃物)は“熱”により熱分解し可燃性ガスに酸素と反応した炎が形成されて,火炎伝ぱが進行
 することになるが,スモダリングでは熱による固体残留分が直接,酸素と反応して固体表面で燃焼することになる。
 たばこや線香などの燃焼の特徴であり,燃焼している炭素を含んだ固体残留分がその熱を下方に伝え,熱分解を伝ぱ
 させることにより燃焼を継続させる。スモダリングとしては,他に布団の燃焼も最適な事例である。
  スモダリングは可燃性ガスによる発炎燃焼でなく,固体表面での燃焼であることから,空気の通気性が燃焼の継続に
 影響する。紙巻きタバコはそのまま燃えつづけるが,通気性のない葉巻では消えてしまうことでも分かる。
 逆に,通常燃えにくいものでも,適度に詰め込むとスモダリング
 による燃焼を継続する。 左図は、雰囲気酸素濃度と羽毛の詰
 込み量(通気性の程度)におけるスモダリング限界を示した実験
 結果である。このように14 g(400×5cm)以下で通気性がよいと
 21%雰囲気酸素濃度で燃えない物も,詰め込むと酸素指数が
 低下しても燃焼している。酸素指数21は、普通の空気中であり、
 それ以下だと、酸素の少ない雰囲気のことである。本来、燃え
 ないような条件でも、スモダリングの形態を整えると燃えていくこ
 とになる。
  固体(可燃物)の熱分解で固体残留分ができる程度に熱を蓄熱させて,可燃性ガスの燃焼を押さえ込むことから,不完全
 燃焼による一酸化炭素等の有害ガスを発生させ,これらの有毒ガスが大気中に放出されて液体の微粒子を形成し多量の
 煙がでる。このため,スモダリングの煙は,タバコの“紫煙”や線香の“お香”と呼ばれている時はよいが,一般的には人体へ
 の危険性が高いガス又は微粒子である。
  タバコによる布団の着火・燃焼実験をすると頭痛を訴える実験員が多くでるのは周知のことである。
 参考資料
 1) 「新火災調査教本」 第6巻
 2) 書房「たばこデータパル」(旧専売公社)丸善出版
 3) 火災学会誌 No182~ 186の「スモダリング」の連載記事
 4) 秋田一雄「火のはなしⅡ」
 5) 防炎ニュースNo125 「羽毛布団のスモルダリング 特性に関する研究」概要
 6) 岩澤昭一,橋本武彦「たばこの温度測定結果」92'3 東京消防庁調査課
 7) 塚本孝一著「火災原因調査入門」
 8) 木野村健一著「火災調査員のアドバイス」
 9) 東京消防庁監修「火災原因調査事例集」昭和56年版
10) 東京消防庁監修「火災原因事例集」昭和59年版 
 2,たばこと着火物の関係
 着火物の出火時間帯

 たばこと着火物   との火災件数。
 左は、1時間
 ごと
 右は、1時間
 の中の15分
 ごとの件数。
 1984年~
 1993年の10年
 間の合計結果
 
 このグラフは、昭和59年(1984年)から10年間の東京消防のたばこ火災10,439件について、出火時間と着火物の火災
 件数を示したものです。少し古い統計数値ですが、着火の関係は今(2011年)と大きく相違することはないと考えます。
 上・左図から、布団は1時間程度の時間をおいて、出火することが最も火災件数が多く、1時間以上2時間未満
 がピークとなる。上・右図では、布団は30分以上45分未満も多いが、全体の件数では、1時間を超えた時間帯に「出火
 (覚知)」している。衣類も似たような傾向です。 火災現場では、朝、たばこを吸って布団を片づけて、外出した10時頃
 に出火する火災事例であり、寝る前にすった場合は、就寝して夜中の1時頃に出火する火災事例となる。
 紙屑、ゴミ屑などは1時間以内の出火がほとんどで、2時間を超えると少なくなる。その1時間の内訳を見ると、紙屑
 どは15分以上から45分未満がピークとなっている。 火災現場では、外出前にたばこを吸って、ゴミ箱に捨てて、
 外出後30分程度の出火となる。 
 つまり、火災調査上は、家人が外出して、1時間を超えていれば「布団類」、30分前後なら「紙屑類」からの出火の可能
 性が高いと言うことになる。 もちろん例外はいくらでもあるが、たばこを発火源とした場合の「着火物」の出火時間
 は、おおむねこのような時間帯で出火すると考えると分かりやすい。
 
タバコは、屋内では捨てられた状態での経過時間に注意
 様々な条件でのゴミ箱からのたばこ火災実験研修    布団からの出火立ち上がりの実験研修
 火災調査活動は、現場調査の起訴を実験研修から学ぶと、理解しやすくなる。実験指導者から、さまざまな条件での
 の実験を通して、火災現場調査のコツを教わると始めての現場でも、スムーズに対応出来るようになる。

 ① 「紙屑入れ」ゴミ類

 無風環境下における「発炎」の実験として,ゴミ箱にたばこを入れた実験では,「新聞紙,ちり紙等を切り裂いて入れる」
 「紙屑と綿ごみ等を入れる」「吸殻を数十本と新聞紙等を入れる」など,たばこによるスモダリング(無炎燃焼)と相性の
 よい綿や吸殻,糸屑などを入れると立ち消えることなく燃焼を継続し,ある程度の大きさとなり周囲の可燃物を着火・発
 炎させ,炎として立ち上がる。 
 火災調査教本等の文献や再現実験では,その場合のゴミ箱の発炎経過時間は,8分~17分で,だいたい「15分
 前後がゴミ箱からの火災事例の発炎に至る時間」とされる。ほぼ、統計上の数値とも一致する。たばこによるゴミ箱の
 火災は、火災現場での関係者の供述に従って実験することが重要である。それは、どのような状態でたばこがゴミ箱
 の中に捨てられたか、と言うことに尽きる。
 2010,12.02消防庁消防研究センター「低炎症性たばこに係わる検証実験」から、
 ごみ箱内に丸めたティッシュ60gを入れ、その上に、点火したFSCたばこ1本と点火していないFSCたばこ
 15本をティッシュの上に置いた時、約12分で発炎している。
 これはFSC(低延焼性たばこ)ではあるが、無炎燃焼の着火機構として普通のたばこと同じでことが言える。

 ② 「布団」綿など
  布団の上に落下した場合には、出火までに数時間以上、あるいはそれ以上の時間を必要とする。
 たばこを布団表面に落とした実験結果では、座布団で(表地 100%綿、中綿 100%綿)で11~12mm/min、布
 団で(表地 100%綿、中綿 100%綿)で6.5~12mm/minと計測されている。
 また、他の実験結果でも布団では(表地 100%綿、中綿 100%綿)6~7mm/minと報告されている。まさに、
 スモダリングそのものである。ただし、実験条件として布団の乾燥度により時間の長短が生じるので、室内の雰囲
 気温度・湿度と被試験体の状態をチェックする必要がある。
 「たばこの布団上での落下では、概ね、1時間に直径が30~40cmで水平方向に延焼していく」こととなる。
 さらに、垂直方向では4mm/minの速度で炭化が進むとされており、1時間弱で布団の下の畳が焦げてくる。
 この下の畳の焼損を実験した時間経過の資料は見当たらなかった。多分、根太まで達するには、3~4時間を要
 すると推定される。
 なお、現在、座布団は表地が化繊を、中綿もポリエステル混綿の綿を使用しているため、たばこを座布団の表面に
 落下しただけでは燃焼が継続しない。
 現在は「材質のすべてが綿」である布団は、婚礼布団などを除き、あまり販売されていない。
 布団も羽毛、羊毛混毛、化繊混毛などさまざまなタイプがあり、一言で「何時間ぐらいで燃える・燃えない」とは言
 えない。ただし、布団は、混毛あるいはマットレスなどと記載されていても、表層部に「真綿」を使用していること
 が多くあり
、羊毛混毛やマットレスだと言っても「燃えることがある。」
 また、たばこは、上に静置した実験では着火しないが、火災現場の再現のように、巻き込こむと「着火しやすく
 なる
」。
 
 ③ 「畳み」の場合
 畳みは、畳みおもてにたばこを静置させた状態では、燃焼していかない。そのため、畳の合わせ目に静置くと燃焼して
 いくと記載(火災調査教本)されているが、これも現在では井草の中に折り込んでいる化繊などの影響で、実験すると
 「燃えていかない」ことが多い。 もちろん、畳縁(長い方の端をまっている生地)に置くと、ほとんど化繊が使用されて
 いるので、燃えることはない。また、畳みも「井草畳み」だけでなく「発泡スチロール入り」「合板ボード入り」「段ボール紙
 入り」などがあり、厚さもマンションサイズだとわずか2cm程度のものもあり、実験により、たばこで独立燃焼に至ること
 は難しい。 実験で、たばこで畳みに着火させるには、①と同様に、火災現場での供述内容を参考にすると「着火」させ
 ることが可能となる。つまり、たばこと着火物の相性を踏まえて、無炎燃焼が継続されるようにすることだ。
 なお、「畳みの燃焼」としては、1991年8月に東京消防庁消防研究所から、1992年6月に京都市消防局研究課から
 実験報告がなされている。それらは、燃焼時の挙動と有毒ガスの発生に関することである。特に畳にサンドイッチされた
 材質の燃焼が問題とされる。
 ④ たばこと紙
  たばこと「紙」だけを取り出して着火実験している報告として、平成14年全国消防技術者会議で「たばこによる可燃物
 への炎症性状わ解明するために行った委託研究成果について」として東京消防庁から報告されている。紙として、
 クラフト紙、新聞紙、雑誌紙、コピー紙を用いて、たばこにどんな状態で置いた時、炭化する経過である。火災調査的
 にはあまり必要とされない。として、4
 ★ タバコの火災は、着火物と環境により、燃焼形態が有炎・無炎に別れ、また出火時間も非常に広いひろがりがある
 ため、燃焼現象だけを見ても原因の特定が難しい面がある。
 たばこは屋外では「有炎火源」となる。
 
 たばこの内部の温度は800℃近くとなるが、外周部は250℃のため、上記載のように、屋内ではこの250℃と言う微妙
 な温度ゆえに、着火物に着火する場合もあるが、着火しない場合もある。つまり、たばこの温度よりも「着火物に対
 する
燃焼時の形態」が原因調査上のポイントとなる。
 屋外では、例えば、1本のたばこが転がって側溝のゴミに落ちた時、枯れ草の上に転がった時、河川敷の枯れ草の中に
 放り込まれた時、また、トラックの車窓から投げ捨てたばこが荷台に入って荷台から出火する時など、容易に火災になる
 のが「有炎燃焼物としてのたばこ」です。
 屋外を想定した実験では,タバコから紙への着火に際しては1.7m/s の風速時に10回試験中7回が発炎している,
 ひき粉への着火では微風で10回試験中2回が発炎している。 乾燥し、適度の風があればたばこは微小火源と言うより
 有炎火源として捉えるべき発火源となる。
 全国統計でもたばこ火災全体の約8%が林野火災で、山林下草・落ち葉に投げ捨てられたタバコから出火している。また、
 東京消防庁の統計でもその他の火災として計上されているたばこ火災の着火物が、枯れ草・落ち葉・芝生・立木であり、
 平成21年(2009年)で32%を占めている。 たばこ火災は、屋外でこのような着火物に対して裸火として作用している。

 ★火災研究との相違性
   「たばこの火災」ほど、実際の現場と相違する研究報告が多いのには、びっくりする。
 例えば、平成14年火災学会「初期火災における着火物とその燃焼性状」の報告(消防総プロの調査)では、ゴミ箱の
 火災は、6分から10分となっている。また、平成16年火災学会「住宅における初期火災の典型パターンとその再現」
 も同様に考え込んでしまう。ただし、いずれも、発煙量などを計測することが主眼であるから、着火方法はどうでも
 良いとは言えるが。 着火方法は、「ゴミ箱のたばこによる火災」としての実験では、「火の点いたたばこ4本をまと
 めてテッシュで包んでゴミ箱の中に入れる」、「布団とたばこ」では「火の点いたたばこ5本を敷布団とかけ布団の
 間におく」とある。 こんな条件は、「放火火災」以外にはあり得ない
 過去の研究機関の多くの実験は、それが「住宅火災の出火の火災性状」などと言われると、色あせたこじつけの
 ような実験で、ほとんど「現実的にはありそうにない、放火火災のような実験」となっている。
  さらに、その実験結果から、「避難時間」の計算式を立てている例もある。
  最近は(2010年12月)消防研究所センターの低燃焼性たばこの「ゴミ箱火災」は、ラウンドロビン試験として、「火の
 点いたたばこ1本と点いていないたばこ15本を、テッシュと入れる」着火方法としている。これなら、火災現場と一致
 する。 なぜ、今までの研究機関はこのような実験をしていたのであろうか?
 上のグラフのような、たばこと各着火物との出火時間別火災件数などの統計結果を利用しないで、単に「たばこと
 着火物」の火災件数とか、「経過」を集計しているだけの資料を基にしたため、火災の実態に対する視野が狭い実験
 となっていた、と思われる。
参考資料
 1) 「新火災調査教本」 第6巻
 2) 東京消防庁統計書 「たばこ火災の着火物と出火時間」1984年~1993年
 3) 東大 防火研究室「たばこによる紙屑の出火に関する研究」 災害の研究 第1巻
 4) 東京消防庁 第三期鑑識技術研修「実験レポート集」
 5) 東京消防庁「火災データパル」1995'03
 6) 東京消防庁「火災による死者の実態」平成20年版
 7) 第50回全国消防技術者会議資料
 8) 火災学会 研究発表会概要集 平成14年、平成16年
 9) 月刊消防 1997年7月、8月号
   3, たばこ火災の事例
現場見分状況
 一階の台所が最も強く焼損している。その台所を中心として居室・廊下・
 風呂場・玄関等の天井と壁が焼損又は煤けている。二階は廊下の壁が
 破壊され,壁内が焼損し,さらに小屋組の内部も焼損している。台所の
 天井は全て焼け落ち,打上げ板天井の野縁では台所入口付近の上が
 消失しているが,家具類を見ると台所奥の流し台セットがステンレス製の
 流し上部を残して木製流し台の全てが消失し,その付近の焼損が強い。
 台所内のテーブル上の炊飯器,トースタ等の電気製品,ガステーブル
 の器具ツマミの位置を見るといずれもOFFで使用されていなかった。
 落下物を除去し,詳細に見分すると流し台の手前の床板が燃え抜けてお
 り,その付近を基点として流し台が消失している。内壁は流し台の裏(北
 側)が床上から出窓の下まで幅20㎝の大きさで焼け抜けている。
 関係者の供述
 「外出前にはガス器具は全て止めていた。居室で吸っていたタバコをガラスの吸殻に入れ,その中には十数本の吸殻が
 あった。これを流し台の水道で水を入れ,側のゴミ入れに捨てた。」との供述であった。
 出火原因の判定
 流し台の手前の床板の燃え抜けがあり,台所全体の焼損をその部分を基点とすると焼けのつながりが説明できること,
 出火前の関係者の供述によるタバコを捨てたゴミ入れの位置と一致し、捨てたとされる時間と出火時間との間は20分で
 あり出火を推定させるに十分な時間であり、また,台所内の他の火源となる器具の使用が否定され,施錠状況から内部、
 外部からの放火も否定されることから,たばこによる火災と判定する。
 
たばこ火災の統計分類について
 本件火災事例では【発火源:たばこ 4201 ,経過:不適当なところに捨てる 64 ,着火物:ごみ類(紙類)282 】
 発火源はもちろん「たばこ」です。
 経過としては、「消したものが再燃32,不適当なところに捨てる64,消し忘れ・放置65」などが考えられるが,「再燃
 は、火災(人の意に反して出火した)となった対象に対して消火した場合であって、たばこは「火を点けて消している。」
 がもともとは「火災」ではないので、たばこ火災で「再燃」の経過コードをとることは誤りです。 同様に、廃材などを
 燃やして、消したつもりでいたが又、燃え上がって他の立ち木や建物を燃やした場合も消した行為はあっても「再燃」で
 はなく、「残火処理の不十分67」です。たばこ火災の統計で、経過に「再燃」を入れているのは全て誤りです。また、
 「放置・消し忘れ65」も火災危険が通常存在することを知りながら放置した天ぷら火災などに適用されるもので,本
 火災のようなたばこ火災では「不適当なところに捨てる・投げ捨てる 64 」を適用する。
 経過分類は、原則として「現象・状態・行為」の順で取り扱うことを建前としており、「投げ捨て64」の行為より、上位
 の熱的現象の「再燃32」を取りたいところですが、もともと「火を取り扱っている事象」に対しては、その直接の原因とな
 った「行為」を経過分類とするとなっています。これらは、たばこ、タイマツ、炭火、など「裸火」に起因する対象では、
 「行為」が直接の火災原因となることが大部分であることから、それらの発火源コードの「42 たばこ・マッチ」の場合
 は行為者の行為に着目した統計分類となる。
 着火物はゴミの紙類です。
 ゴミ箱
 から
 出火
 事例
 住宅の居室のごみ箱から出火した火災
 
 2階からの臭いに気づいて、発見して
 いる。出火前に2階居室で吸ったたばこ
 の灰皿の中身をゴミ箱に捨てたもの。
 ファーストフード店のゴミ箱から出火したたばこ火災
 
 ゴミ箱内の焼損したゴミ類を見ると、中から吸殻が
 複数見分された。灰皿の吸殻を「燃えるゴミ」の中に
 捨てたものである。
 
 ガラス製
 灰皿の
 破損に
 よる火災
 実験
  ガラス製灰皿は、吸殻を多量に入れて、その中でたばこが燃えると灰皿が破れて、燃えているたばこが
  飛び散って火災となる。
  何となく「灰皿は安全」との思いがあり、過信すると、火災につながるとして警告した事例である。
  実験では、ガラスのカットが大きく、厚い所と薄い所が顕著な灰皿ほど「破れやすい」。
  外側と燃えている内側のな「温度差」が70℃程度に差がひらく「ビッ」と音をたてて破れる。破れて飛び
  散った火の点いたたばこが、無炎燃焼にふさわしい着火物(布団など)がそばにある時に始めて「火災」と
  なる。つまり、実際の事例としては、火災に至る条件が多く、件数の少ない火災である。
  

 ★ 火災原因調査の留意点
 これらのゴミ箱のたばこ火災などは、いずれも「灰皿の吸殻」を入れたことによる。
 火災原因調査でのポイントは、繰り返すが無炎燃焼となるべき「着火物」の存在であり、たばこ火災の多くが、「吸殻」を
 第一着火物として、1本のたばこの火が継続して“数本以上の吸殻”を火の塊りに拡大させ、その後に、紙やゴミに着火
 するのがプロセスである。
 このことは、「1本吸ったたばこ」だけををゴミ箱に入れたからと言って、火災にまで至ることはほとんどない。たばこの火
 が燃えて広がるのに最も相性の良いのが、たばこである。
 つまり、隠れたばこにる火災などと言う、高校生が吸うたばこは、密かに吸った「1本のたばこ」でなく、数本以上を吸って、
 その吸殻をまとめて、捨てることによって起こる。それは、行為者に「喫煙習慣」があることが前提となる。

 
  布団のたばこ火災事例
 住宅火災。
 2階から出火
 2階の寝室で
 寝たばこをし
 て、階下でTV
 を見ていた。
 外灯が点燈し
 ており、電気
 火災の可能
 性はない。
  2階を発掘すると、布団の焼け切れの先から、畳みの縁(ふち)が、焼け込んでいる。
  丸輪の印の所からは、ライターの風防が見分され、布団と畳みの焼け込みから「たばこ火災」
 と判定した。
  焼け込みの“発掘”は、慎重にやらないと明確な形で出てこなくなる。ピンセットなどは、必需品だ。
  また、カメラ撮影のスタンスを考慮して、綿製ひもも必需品となる。
  たばこ火災は、現場の状況そのものが証拠であり、現場を如何に“客観的に分かるように”発掘し
  て写真を撮る技術が要求される。
  単に、たばこ火災の理屈を知っているだけではなく、現場の発掘技術の習得がたばこ火災の要素
  となる。

 
 住宅の2階の
 居室から出火
 した。
  2階は、中央にテーブルがあり、窓に沿って、壁際にベッドが置かれている。焼損はベッド周り
 が最も強い。ベットの布団の焼損の強い所をめくると、木製ベットのスプリングが焼けて外れ、
 強い焼損が見られる。
 このように、「たばこと布団」の組み合わせは、深く、強い“焼け”を表す。
 火災実験で示したように、布団がたばこにより無炎燃焼しても、容易には「立ち上がらない」ため
 深く燃え込んで、その後に立ち上がり「火災」として発見される。
 ★ 原因判定上の留意点
        ・着火物の存在とたばことの着火性の関係
        ・喫煙習慣〔行為者の喫煙量,灰皿,ライター等火源〕
        ・喫煙と出火までの経過時間(着火物との関係で)
        ・焼損状況(焼け込み等)
  屋外のたばこ火災
 左写真は、道路と畑の境に立てられていた「杭」の上部が
 焼損した火災だ。
 杭の上部が雨水で腐食状態であったところに、通行人が
 火の点いたたばこを捨てたために、出火したものです。
 このように、屋外では風等の影響で「たばこは有炎火源」
 になることから、容易に腐食状態の杭に着火することに
 なる。
 
 屋外のたばこ火災
        ・たばこは、屋外で、捨てられると風等の影響で「有炎火源」となる。
        ・着火物は、枯れ葉や立ち木など可燃物であれば何にでも良い。
        ・トラックなどの荷台、高速道路の法(のり)面、ベランダ、河川敷の停留ボートなど以外な
         所や物などの「火災」はたばこによるものを前提として考えると、解決の糸口となる。
 参考資料
 東京消防庁 「火災の実態」平成19年、20年、21年版
 たばこ火災
   長い論文におつきあいいただき、ありがとうございました。
   たばこ火災は、始めに記したように、火災調査員の第一歩であり、そして、最も難しい退職まで続く課題です。
   自分の経験と知識に従って、ズバット判定してください。 迷って、「不明」などとしないことです。
   特に、行為者が男性の高齢者の場合は、必ず言い逃れします、「吸っていない!」と、しかし、現場の見分
   をしっかりやって、現場から「喫煙習慣」を探り、この2つをテコに真の供述を引き出してください。
   あきらめない、ことです
   ま、できたら、自分でたばこを吸って、味わってみることも必要かも?
   少し古いですが、随筆「パイプの煙」の本なども読んでみてください。