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 集塵機の火災
                              A3−55   12.08.05 

 最近(2012年)の全国火災の中で、ショットブラスト関連の火災があった。
 そこで、ショットブラストとして表題にするよりも「集塵機」としたほうが、火災実態と調べやすいかと思いこの題とした。  

  1,集塵機の火災
  
   集塵機装置は、粉じんを集めるためのもの

 集塵装置を簡単な図にすると、上のような図となり
 大きく3つの部分に分かれる。
 @研磨関連装置 
 Aダクト
 B集塵機(粉じん等回収処理装置)
 全部を机規模の一つにしたものから、屋内に研磨機、
 屋外に集塵装置を設置している施設など、用途規模
 において多用である。
 この場合に、
 研磨機としては、「破砕機」「靴等研磨機(コバ掛け機)」「ショットブラスト」などがある。
   破砕機は、 廃棄物の中間処理場などで使用されており、鉄アレーのようなものが高速で回転する構造や
           洗濯機の回転機のような構造などがあり、対象によって、火花がゴミの中で保持されてダクト
           を経由して集塵機に吸引されて出火となることがある。
  研磨機は、 コバがけと言われ、靴、サンダル、電気・車両等の部品のバリ取りなどに使われる。この場合も
          研磨時に、主体となる製品とは別の金属類(鉄などの鋲)を間違って研磨し、コバの屑に火種が
          残ったものがダクトで吸引され、集塵機器から出火する場合と粉じんが帯電し静電気で出火す
          る場合がある。
  ショットブラストは、 金属粒子を噴射して、製品の表面加工をするもので、多方面で取り扱われている。金属
          粒子の噴射により、静電気を発生があり、また、火花が残る場合がある、さらに、被研磨剤の材質
          がマグネシウムなどの非鉄金属の場合は、湿気等による自然発火もある。集塵機に行くまえの
          ダクト内で出火することがある。

  研磨機本体で、粉じんを吸引することになるが、研磨機の手元での吸引制御風速は、表1のように設計されて
  おり、集塵機火災となめるのは、比較的手元の吸引が強い場合である。
       表1  研磨機器類の手元での制御風速の一覧  
   発生条件  制御風速(m/s) 作業の例
気流を生じない作業で、飛散速度のほとんどない場合  0.25〜0.5  液面から発生する蒸気、ガス、ヒューム
気流のない作業で、飛散速度の速い場合  0.5〜1.0  吹付塗装室、容器に粉末を入れる作業、溶接・溶断作業、化学反応ヒューム
気流の大きい作業か飛散速度の速い場合  1.0〜2.5  高圧吹付塗装室、高熱溶鉱炉ヒューム、
気流の非常に大きい作業か飛散速度の非常に速い場合  2.5〜10  グラインダ作業、岩石研磨、粉砕作業、
 サンドブラスト

  研磨機と集塵機の間のダクトからの出火。
     研磨機と集塵機の間を結ぶダクトは、一本の缶や箱ダクトの単純なものから、、一本でも幾つもの屈曲を経るもの、
     幾つもの複数に枝分かれしたダクトなど、現場の仕様によりさまざまである。ダクト内を流れる粉じんの輸送風量を
     おおむね次の表1のようになるが、枝分かれした場合で清掃などが不適切であると、必要な輸送風量を確保できず
     に、屈曲部に塊状の屑玉が発生する
粉じん 輸送風速(m/s) 作業の例
極めて軽い粉じん 8〜15 各種ガス、蒸気、金属ヒューム、綿ほこり、木材研磨粉
中程度の比重の乾燥粉じん 15〜18 木綿、おが屑、穀物、ゴム研磨粉、ベークライト粉、羊毛
一般工業良い粉じん 18〜20 バフ研磨粉、麻屑、サンドブラスト、グラインダー研磨粉、かんな屑、顔料、鉱石
重い粉じん 20〜25
鉛ヒューム、鋳造作業、旋盤工程等で発生する粉
発比重が大きく、生する 25以上 ぬれた鉄粉、鉛粉、リサージ

   ダクトが屈曲しているとその部分で、粉じん等が堆積し、破砕機内でのわずかの「火花」がこの部分で、屈曲物で溜ま
  った粉じんに着火して火種となることがある。
   また、粉じんが帯電する条件にあると、ダクト内を流動している時にさらに帯電量が増して、ダクト内で、剥離帯電によ
  る火花で爆発的に出火することがある。研磨の屑が、マグネシウム、鉄などの場合は、金属粉じんが溜まっている所に
  結露等の水分により出火することがある。
   原理的には、「火花」の発生が継続して、火種となってダクトから集塵機に吸引されることはないが、実態としては、清
  掃不良より、研磨機周辺に綿くずのような塊ができ、これが、お灸のもぐさ同様に「火種」となる。しかし、火災焼損後の
  その清掃管理状態が十分に見分されないことから、「火花から火種ができる」過程が打ち消されることが多くある。

 
 集塵機  火災となる場合は、研磨機やダクト部でなく、ほとんどが集塵機部で出火する。この場合に、爆発事故
   を発生させて、粉じん取り出し口の扉が吹き飛んで、従業員が負傷するケースもある。
  東京で最も大きなこの種の火災事例 
    平成6年12月(1994年)東京都T区 靴底加工会社の工場兼住宅ビルの2階作業所付近で爆発火災が発生した。
    合成ゴム靴の底板を研磨中、ゴム研磨粉じんを集塵機へ送るダクトの枝ダクトから出火し、さらに集塵機が爆発
    出火した。集塵ダクトの一部で流速が不足していたためゴム分が堆積していたところで、発熱、発火したと推定さ
    れている。
     この火災は8階のビルの各階が竪穴ダクトからの火炎で延焼し、大勢の死傷者を出す火災となった。 
  
    集塵機は、
     昔は静電気による火災の発生が多くあり、構造的にバグ
    フィルターに粉じんが付着し、それらがフィルターから剥離
    する際に、蓄積されていた荷電が剥離する際にスパークし
    て、火花が発生すると粉じん爆発を招くことがあった。
    このため、
    @バグフィルターに導線を編み込んで、アースを取る。
    Aバグフィルターに振動板を取り付けて、間欠的に粉じん
     を振い落として、帯電させない。
    B定期的に水噴霧を放射する。
     などの方策を取りいれる安全策が取り入れている
     ものもある。最も、静電気の発生が予測されない時は
      そのような対策は必要としない。
 集塵機の一例(火災等とは無関係)
  さらに。
  ダクトと集塵機の間に、帯電防止のための設備を介在させて、粉じんの静電気を防止することをしている施設も増えている。
 
     
   2, 火災事例 
   火災事例(1988年)
  
 参照 東京消防庁 「靴底材研磨作業中における集塵機からの火災
        月刊「東京消防」昭和63年10月号 実務シリーズ 主任調査員からの報告No92
   要約  東京都T区 1988年5月
        靴底の研磨(グラインダー)作業中に、集塵機から出火した火災で、カジュアル靴用のかかとを研磨した際に、
       研磨条件によって摩擦出火時分したものと判定した。材質のスチレンブタジエンラバーが、実験により、摩擦に
       より研磨中に着火することが確認されたことから、研磨機で研磨中に着火した粉じんが集塵機に吸引されて、出
       火したものと判定された。  

   火災事例(1995年)
   
 概要  東京都F市 1995年3月
          ショットブラスト内に堆積した鉄粉の粉じんに、作業時の静電気がその部分に集積し、静電スパークを発生
          させて出火した。

   火災事例(2005年)
    参照 消防科学総合センター
         季刊「消防科学と情報」2005年夏号No81 火災原因調査シリーズ(37) その他の火災
        千葉市消防局 「集塵機からの出火事例」
         http://www.isad.or.jp/cgi-bin/hp/index.cgi?ac1=IB17&ac2=81summer&ac3=3857&Page=hpd_view
    概要  集塵機から出火したもので、バグフィルターの銅線アースが不良となり、静電気が蓄積して、内部でスパーク
         して出火したものと判定された。なお、研磨機のショットブラスト時に発生する出火と鉄粉じんの自然発火の可
         能性は、検討のうえ否定されている。
  3,  現場調査上の留意事項
   
   集塵機の火災は、研磨機関連・ダクトなどと一体として「調査の対象」とすること。
    火災後の焼損した集塵機内部だけを見ていると、調査自体の進め方がわからなるので、
    @ 研磨機での研磨対象(部材)、粉じんの状態、集塵機の運転状況などの研磨フローを作る。
    A 出火する1ケ月近く舞うからの作業工程と出火時の作業工程、集塵機の清掃状態を確認する。
    B 出火直前と出火時の異変や火災発見状況の確認をする。
    C 焼損現場の焼損物件の微細確認をする。
   焼損後は火災熱で二次的に静電除去装置関係が、出火前とは異なっているので、静電気にとらわれた火災原因調査
   を進めないようにする。企業側も粉じん等の作業清掃環境や無理な作業工程に原因が向くよりも一般的な「静電気」
   災害に落ち着かせる思惑が出るので注意を要する。
   意外と、作業中の「たばこ」や、研磨時の研磨ミスによる金属片の混入など、たわいのない原因があることにも配慮する。

 参考: 日本火災学会、火災、Vol.46 No.6 1996.12 (特集:廃棄物と火災・爆発)
:      日本火災学会 平成21年度火災学会講演討論会 八島正明「粉じん爆発と紛体火災に関する過去の事故災害事例」
      安全工学学会 安全工学、Vol.14 No4 1975,  岡村勝郎「集塵装置設計上の基本的考え方」
                   〃               内藤道夫「粉じん爆発事例」
     東京消防庁監修  (一公)東京防災救急協会 新火災調査教本 化学火災編、 微小火源等編
     日本火災学会 火災便覧 第3版

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