「相場師異聞 一獲千金に賭けた男たち」
鍋島高明著
河出書房新社
岩波赤版1 岩波赤版2 岩波緑版 岩波青版 岩波黄版 岩波白版
新潮文庫 角川文庫 教養文庫 旺文社文庫 中公文庫他 新書 単行本
満天沸かせた大物相場師群像
知られざるもう一つの顔
商品番号:M−4 定価2,000円
<書評>
★株式新聞6月12日付★相場師のエピソードをまとめた著作は少なくないが、投資家の「相場ごころ」に響く本となると、実際はごく一部。
おそらく、この本の水準を越える相場師伝は、今後もなかなか登場しないだろう、と思わせる力作が「相場師異聞〜一攫千金に賭けた男たち〜」である。
取り上げられた多彩な人物と、相場にまつわる彫りの深い人間描写は圧巻だ。第一章の「相場界ゆかりの面々」では、高橋是清の「仲買もやれば山師もやった」経歴を紹介。相場道に精通した戦前の大物政治家三土忠三や、投機界の魔王と呼ばれた雨敬こと雨宮敬次郎など数多くの傑物の生きざまがリアルな筆致で描かれている。第二章「相場師余聞」、第三章「相場外遺文」にも興味深い内容が随所に盛り込まれ、相場好きがつとに有名だった大隈重信の際立った「相場師」ぶりにも目を光らせる。とにかく面白く、繰り返し読みたくなる。
日本経済新聞社編集委員などをつとめた著者は、相場師の今昔についてことのほか造詣が深い。相場と長く付き合っていこうとする投資家にとって、座右に置きたい「相場人間学」の白眉だ。
★日本経済新聞★明治から昭和にかけて株式、商品、為替などの相場に挑んだ男たちのドラマを元市況記者が描いた。雨宮敬次郎、吉村友之進といった職業的な相場師だけでなく、高橋是清、大隈重信、安田善次郎ら政財界の大物が相場師の顔も持っていたことを、豊富なエピソードで浮き彫りにする。
例えば金融恐慌の収拾にあった蔵相、高橋是清は、二十六歳の時に為替相場にのめり込み全財産を失う。しかしその後も相場に背を向けず、逆に相場をもっとよく知ろうと、自ら商品売買を仲介する仲買店を設立する。南米ペルーの銀山に投資し、失敗したことさえある。波乱万丈の相場師ぶりだが、そんな経験が高橋の中に世界経済のリアリズムを育てていく。
大隈重信は、資金集めのために早くから地所の切り売りや株式の売買を行い、日清戦争時には株式の高騰によって巨利を得た。安田善次郎、岩崎弥太郎、福沢桃介といった財界人も本業のかたわら相場を張り、富を築いていった。特に福沢は株式を好み、投資する時は兜町のプロとは逆をいき、腹八分目の早期回収で常に利益を上げたという。
彼らに共通するのは、生身の体を市場という戦場に置き、政治、経済、社会の状況をにらみながら、命を刻む思いで相場と格闘し、自らを磨いた点にある。日本経済が閉塞状況から脱却できないのは、こうした相場師的な勇者がいなくなったからではないか、と著者は主張する。
★エコノミスト3月増刊号★―相場好きにはたまらないアンソロジー― この本を読んではじめて知ったのですが、大阪には不遇の死を遂げた無名の相場師たちの共同墓地があるといいます。「人ニハ―一」と書いてなんと読むでしょう?本書によれば「人には辛抱が第一」と読むそうです。かつて日本市場の黄金期を駆け抜けた相場師たちの世界は、今日では想像を絶する厳しい戒律が確立されており、勝者と敗者を問わず、その華麗にして壮絶な生き様は庶民生活と隔離された別世界でしたl
当時の貴重な写真も多数収録され、一攫千金を夢見る相場師たちが、兜町や北浜を戦場に繰り広げる壮絶なバトル!と、気分はすっかり講談調になってしまうのですが、古参の相場好きだけでなく、若い投資家層にも人気がある書籍です。
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文庫本100円市