『賭けた 儲けた 生きた』
〜紅花大尽からアラビア太郎まで〜
            鍋島高明著


河出書房新社
    

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リスクと命を賭して闘い、逞しく生き抜いた相場師たち

商品番号:M−7  定価2,000円

        

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<書評>
★フューチャーズマーケット 2005年6月号★
 「本書は2003年に上梓した『相場師奇聞―兜町の魔術師天一坊からウォール街の帝王モルガンまで』の系統に属するもので、投機に生きたマーケットの英雄たち30人の足跡を辿った著作です。できるだけ、エピソードを発掘するようつとめました。資料は古書展や古書目録を通じて入手したものが中心ですが、国会図書館、東京都中央図書館、横浜開港資料館、三井文庫、大宅壮一文庫などにも足を運びました。そうして集められた史料と格闘した結果が、こんどの本です。名にし負う傑物たちの生き方を21世紀に生きる若い人にもっと知ってもらいたいという一念で書きました。
 タイトルはフランスの文豪スタンダールの墓碑名「書いた 愛した 生きた」をまねたものですが、登場人物の皆が皆、命を賭けてリスクと闘い、巨富を築き、時には巨損を背負い、そして何よりも逞しく生きた点に共通項があると思います。
 昨今、IT産業の風雲児が身の丈以上の大勝負に出て世間の耳目を集めていますが、時代の節目、節目にはこうした冒険家が出現するのは洋の東西を問わず、万古不易の社会現象のように思われます。」(著者「書簡」より)

★MERIT 2005念6月号★
 本書は本誌の連載物「市場を彩る巨人たち」の中から30編を選び、大幅に加筆修正したものである。
 本誌連載中から愛読した面々だが読み通してみると、日本の経済界には脈々と相場に挑戦する投機の遺伝子が引き継がれていることがわかる。一方、D・リカードなど5人の青い目の相場師も登場するが、相場の世界には流れに乗るか、流れに逆らって転機を待つか、いずれにせよ深い読みと逞しい精神力が求められる点で共通する。
 平成不況はなんだったのだろうか。賭けた、の不在ではなかろうか。本書の最終登場人物は昭和の越後正一氏。投機の遺伝継承が一時途絶えたことが平成不況の真因とみることができる。
 文芸春秋5月号は平成ホリエモン事件、と題した特集を組んでいる。ライブドアの弱冠32歳の堀江貴文社長がフジ・サンケイグループに挑んだ勝負は事件だった。
 文芸春秋のインタビュー記事でホリエモン氏は「当時の大阪商人は金融テクノロジーに非常に長けていて、世界で初めて先物取引をやったのは堂島の米相場だったと言われています。いわばヘッジ取引の先駆けです」と述べ、本来の日本人はアグレッシブな事業力に溢れた人たちで、骨抜き経営者が当たり前という現在が日本の歴史の中では異常だ、と述べている。
 ホリエモン氏が単なるグリーン・メーラー(株式の高値での売り抜け)で終わるのか、どうかは評価の分かれるところだろうが、賭けた、(一応)儲けた、までは本書の登場人物に連なるところがある。
 登場人物の一人、石田禮助は石田式投資法について次のように述べている。
 「まず見切りをよくすることだな。東を向いても、いけないと思ったらさっと西を向くことができる」、「相場は自分の力以上はやらないことだ。つまり余裕をもってやることだナ。金儲けの楽しみは、その道行きにあるんだよ」
 賭けて、儲けた人の相場金言である。『粗にして野だが卑ではない』―は城山三郎の石田禮助伝記のタイトルだが、本書に登場する人物の共通項は生き方に卑なるところがない点だろう。読後、清涼感を覚えるゆえんだ。

★出版ニュース 2005年六月上旬号★
 本書は、リスクと命を賭けて闘い、巨富を築きあげるが時には巨額の損失を背負っても逞しく生きた稀有の「相場師」たちの列伝である。
 山形から大阪に海路で紅花を運び、帰路には塩や砂糖、綿布を持ち帰って富を膨らませる「のこぎり商法」で財をなし、吉原を三日三晩貸切で豪遊した紅花大尽こと鈴木清風に始まり、甲州財閥の開祖・若尾逸平や、前半生は商人として、後半生を考古学者として生きたシュリーマン、投機師であったが後に易学に転向し、高島易断を開いた高島嘉右衛門ら30名が登場する。どの人生も波乱に富み、その行動派豪胆ゆえ、彼らの前では平成の世を賑わすIT企業の風雲児さえも赤子同然に見えてしまう。

★高知新聞 2005年5月31日付★
 定年退職を機に同じ新聞社のOB5人の共同出資で会社を設立しました。マーケット調査や単行本の出版・編集などの委託を請け負っています。社員の大半が新聞記者出身ということで”もちはもち屋”で仕事に励んでいます。
 その一方で3年前から、個人でインターネットの古本屋を運営しています。蔵書を処分しようと娘にホームページを立ち上げてもらって始めたんですが、意外と注文が来ましてね。カリフォルニアやロンドンからも注文があったりで意外と面白い。そうするうち、リュックを背負って高円寺や神田まで仕入れに出掛けるようになりました。屋号は竹林寺の檀家ということで「五台山書房」です。
 ここ数年は1年に1冊強のペースで書籍を執筆、出版しています。記者時代に商品市況を担当していたので相場師にまつわるエッセーや人物伝が多いですね。明治・大正期の大商社「鈴木商店」の大番頭だった高知県出身の金子直吉をはじめ、リスクを冒しながらも自己責任で投機に懸けた人物伝にひかれます。最近、ライブドアの敵対的買収が話題になりましたが、そうした買収劇は明治時代からあるんですよ。
 来年は70歳。節目にまた1冊、本を書くつもり。ゆくゆくは岩崎弥太郎の話も書きたいですね。

★日経ビジネス 2005年5月25日号★
 リスクを背負いながら事業や投資に賭け、巨富を築いた30人の波乱万丈の人生を紹介する。江戸時代から現代に至るまで活躍した多様な相場師・実業家が登場する。
 山形特産の紅花を商い、巨利を得た鈴木清風。その羽振りの良さを嫉妬した江戸の紅花問屋が「不買同盟」を結ぶと、「せっかくの荷物を国に持ち帰るのも商人の名折れ」と、紅花の荷物をそっくり焼却してしまった。その日のうちに、紅花相場は急騰。頃合を見計らって、清風は大量の紅花を放出し、数日間で3万両という大金を儲けた。先に焼却したのは紅花に見せかけた古綿花だったという。清風はその金を使って吉原で豪遊し、「紅花大尽」の異名を取った。
 幕末、女貿易商として活躍したのが大浦お慶。ある時、イギリス商人から日本茶を大量に受注し、九州中の茶を買い占めた。こうして築いた巨額の資産は坂本龍馬ら幕末志士の資金援助に充てた。晩年は保証人となったのがきっかけで借金地獄に陥るが、お慶自身は「不注意のために残念なことになってしまった」とあっけらかんとしていたという。
 歴史に名を残す相場師たちの度胸、たくましさ、スケールの大きさが非常に印象に残る。

★フューチャーズトリビューン誌 4月19日号★
 著者は古書収集を趣味とし、その古書の中でも相場師にかんするものの蔵書はピカイチとの評である。今回の新書もこれまでの著書と同様に登場人物、参考資料、写真の資料は豊富で、その貴重な珍しい資料の密度には感心させられる。それもそのはずで資料は古書展や古書目録を通じたものの他に、「国会図書館、東京都中央図書館、横浜開港資料館、三井文庫、大宅壮一文庫などに足を運びました」というように記者出身らしく足で集めたものである。それらの人物、資料は巻末に人名索引、署名索引として価値を高めている。
 本書は2003年央に上梓した『相場師奇聞』の系統に属するもので、『奇聞』はどちらかというと「相場師」と呼ばれる人を取り上げているのに対し、本書は『実業家』とみなされる人々登場させている。年代順に上げると、一番手に登場するのが、芭蕉の門人・鈴木清風、以下D.リカード、シュリーマン、A.カーネギーらの外人組を加えながら表題サブタイトルのアラビア太郎こと山下太郎、越後正一まで30人といずれも興味深い人物が並んでいる。
 芭蕉の『おくの細道』で「尾羽沢にて清風という者を尋ぬ。かれは富めるものなれども、志いやしからず7」という文章に出会った記憶がかろうじてあるが、その清風が紅花で大もうけし、吉原にて豪遊したなどは初めて知って興味深かった。トロイの遺跡発掘で知られるシュリーマンは当然、その膨大で長年にわたる発掘にはそれこそ膨大な資金が必要であったと思われる。その資金をオランダ、ロシアでの地道な商い、一転して「刻苦勉励だけが商人の道ではあるまい。一攫千金は人類永遠の夢ではないか」との性急な財産作り、さらにはカルフォルニアのゴールドラッシュへにも身を投じ、クリミア戦争では持ち前の先見性と行動力で築いた巨万の富であったことがわかった。この富を私するのではなく、一転して実業界から身を引きトロイ等の遺跡発掘に情熱を傾ける。
 山下太郎はアラビアでの石油開発成功では良く知られているが、東京・深川で起こした仲買業がロシア革命で大儲けした後、欧州大戦景気の反動で没落、再起不能かと思いきや、満州では世界有数の家主王となって大成功し、三菱、三井に並び称せられたものもつかの間に日本の敗戦で無に期してしまう。並みの者ではここで意気消沈するところだが、69歳にしてアラビアでの油田発掘に乗り出す。
 いずれの人物もケタはずれに人間のスケールが大きく個性的で魅力的である。これら30人の相場師を中心にその人たちを取巻く歴史的な人物群を巧みに紹介する筆運びはさすがである。なお、「賭けた 儲けた 生きた」はスタンダールの墓碑名「書いた 愛した 生きた」をもじったとの由。

★先物ジャーナル 05年4月4日付 『自著を語る』
 人生は賭けである。人間は賭けをする動物である。「賭けとは、他人が損しているさまを眺めることから楽しみが得られるゲーム」と定義づけたのは、アメリカのジャーナリスト、ビアスである。
 書は人を表すというが、賭けもまた人を表す。さらにいえば、賭に負けた時、その人が端的に表れる。「天下の雨敬」こと雨宮敬次郎は花札をよく引いたが、負けが込んできても、泰然自若として動ずることは全くなかった。
 賭けと投機はもとより別物である。しかし、両者には一脈相通じる要素がある。
 本書に登場する30人の投機師は文字通り命を賭して相場に、商売に、事業経営に打ち込んだ
猛者たちである。巨万の富を築き、時に巨損を背負い込むが、逞しく生きた29人の男と1人の女の物語である。
 紅一点、大浦お慶は幕末の長崎で「お茶」の商売で巨利を博し、その金で坂本龍馬をはじめ志士たちを支援した。いかにして儲けたかは大事だが、その金をどう使ったかが、もっと重要である。投機師たちの足跡を辿っていって、鮮やかな金使いの名人に出会えるのはうれしい。
 本書のサブタイトルを「紅花大尽からアラビア太郎まで」とした。山形の紅花商鈴木清風は特産品の紅花で富商の地位を占めるが、志は卑しくなかった。清風に限らず、本書に登場する面々は、皆が皆、志を高く持っていた。兼好法師は「賢き人の富めるは稀なり」と断じたが、逆は必ずしも真ならず。富んで賢き人は決して稀ではない。
 山下太郎は「アラビア太郎」「山師太郎」をはじめ数々の異名の数だけ、人間としての丈の大きさと行動半径の広さを物語っている。かつて財界総理石坂泰三は「なぜ山師ごときを使うのか」と問われた時「山師だから使うのサ」と切り返した話はよく知られる。
 リスクと闘った先人の記録の中から21世紀に生きる若者たちが高い志のもと、言葉の正しい意味での投機心に点火してくれらば、これにまさる喜びはない。

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