ヘタな経済書より名作に学べ
金と相場
            鍋島高明著


河出書房新社
    

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古今東西52編が語る
マネー&相場

商品番号:M−6  定価2,000円

        

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<書評>
★貿易日日通信砂糖版(2004年8月3日号)「新刊書紹介」
 ”カネと相場”を文学的感覚で捉え、すでに「今昔お金恋しぐれ」「相場師奇聞」「相場師異聞」を文芸出版社の河出書房新社(発売元)で出版、次いで刊行された本が、この『ヘタな経済書より名作に学べ―金と相場』であり、文字どおり「イソップ童話集」からエミールゾラ、サッカレー、ボルト、そして子規、啄木、百閨A織田作、谷崎、武者小路、尾崎〜三島、城山、黒岩、池波、藤沢、北杜夫まで古今東西の作家群と名作52編のお金と相場にまつわる文章を取り上げ、作者の視点で「根堀り葉堀り詮索しながら現代に生きる知恵を引き出そう」という試みは相変わらぬ軽妙な文体に見事に活かされている。
 ちなみに本著は第1部が「マネー」27編。第2部に「相場」25編を収め、第1部は原作の発表順、第2部はテーマを年代順に並べ、文字どおり”ヘタな経済書”を読むより本書に見られる”名作”に学んだ方が、より分かり易くカネと相場(と文学)の本質をつかむにふさわしい著書と言えよう。そしてこの書を一段と引き立たせたのが、全編にわたる原作本の写真と作家の似顔絵、あるいは挿画(ウタ子夫人とご息女智子さんの絵筆による)であり、前回出版された『相場師奇聞』でも数点の似顔絵を挿入し好評を得たもので、今回さらに筆の冴えがみられた。

★読売新聞(2004年8月1日付)
 お金をもうけるにはどうしたらいいか。そんな問いかけに、手軽な指針を示す経済本は多い。だが、努力もせずに秘訣がわかるほど世の中は甘くない。バブル期に、一連のハウツー本に乗せられ、痛い目にあった人も多いことだろう。
 本書は、タイトルの通り、古今東西の名作にこそ、金銭哲学の神髄があると主張する。取り上げた五十数本の名作のエッセンスには、やはり感心することが多い。成功談より、失敗体験や警告が数多く盛り込まれ、反面教師的な内容になっている。
 例えば『エジソンの生涯』(M・ジョセフソン著)。十九世紀後半の金投機ブームの際、貧乏なエジソンは投機に参加できずひたすら相場表示機の改良に努めていた。それが幸いし、特許料で大金をつかむ。勤勉さが道を開いた好例だ。池波正太郎の自伝小説『青春忘れもの』に記された、兜町の株屋で働いていた当時の体験談も興味深い。

★商取ニュース(2004年7月6日号)「話題の新刊」
 市場経済研究所社長の鍋島高明氏が、河出書房新社から、―ヘタな経済書より名作に学べ―『金と相場』を刊行した。
 同書は、第一部「マネー」、第二部「相場」の二部五十二編で構成されているが、文中三女の三好智子さん(第一部)と奥様のウタ子さん(第二部)による似顔絵と挿画は著者の筆致に劣らずすばらしい。
 「古今東西の名作五十二編のおカネと相場にまつわるくだりを取り上げ、現代に生きる知恵をさぐった」と著者は語っている。


★フューチャーズ・トリビューン(2004年7月6日号)「新刊書紹介」
 名をはせた相場師はいずれも魅力に富む人ばかりで、それはそれなりに興味は尽きない。本書は「相場師異聞」等の相場師物語とは趣を異にし、「古今の名作の中から『金と相場』に触れているくだりに焦点を当て(略)今に生きる知恵を引き出そうという試みだ」とのことで、著者の「今昔お金恋しぐれ」に属するもの。「古今の名作」というだけあって、その名作の良いとこ取りで読むとの観点でも面白い。収納された名作を見ながら、かすかに自信のあった自分の読書量に改めて愕然とさせられた。機会を見つけて原作に触れてみたい気持ちになった。
 収められている名作は第一部「マネー」では27、第二部「相場」では25であるが、それぞれの関連した名作も登場するので、全部で何作かわからない。ただタイトルとして取り上げた作品にはその本の写真、著者の似顔絵が添えられ、貴重な写真も掲載されている。そして巻末には登場人物、書名の索引がついている。これらの検索はものを書く立場として極めて重宝するものである。心憎いばかりだ。
 名作の個々については紙面の関係上、紹介できないが、一つだけ「三十六歌仙絵巻の流転」はたまたまNHKのテレビで見ていたので興味をそそられ、この絵巻を歌ごと36枚に裁断する下りをどのように紹介しているか興味深く読ませてもらった。さすが著者の造詣の深さ、蔵書家としての知識の豊富さが顕れており、テレビでは語れなかった逸話が出てくる。
 またもう一つ興味のあったのは、相場師や著者の金に対する姿勢である。以前、財界の長老にこんなことを言われたことがある。「金が貯まらないのは金を大事にしないからだ」と。赤貧に喘ぎ、借金に苦しみ、その借金の厳しさを知り尽くしている石川啄木が、啄木のために知人が懸命な思いで工面してくれた金を湯水のように使うくだりがある。同様な話が他にも出てくるが、これらの話を読みながら自戒の意味を含めて「金を大事にしなければ…」と思った。


★先物ジャーナル(2004年7月5日号)「自著を語る」

 『貧乏物語』などで知られる京大教授の河上肇博士は、かつてお金についてこう語った。
 「世にお金ほど不思議なものはない。貨幣は煮ても焼いても食えず、元来、何の役にも立たぬ代物なる上に、常に宿無し犬の如く世間を流浪して、時には縮緬の袱紗に包まれしことありとも、またしばしば盗賊の懐に潜みしことある、履歴の甚だ怪しき物にて、何千何万の人の手を潜りし古物なれども、何人もこれを歓迎せざるはない」
 「イソップ」から「サラ川」まで古今東西の名作文学52編の中からお金と相場にまつわる個所に焦点を当て、現代に生きる知恵を探ったのが本書である。お金を巡る悲喜こもごも、相場の醍醐味と恐ろしさを抜きに名作は生まれないし、人生もない。人はいかにして、「一夜泊まりの旅人」にたとえられるお金と上手につきあうか。そして人の裏をかくことを身上とする相場と慣れ親しむか。
 一攫千金は人類永遠の夢である。宝くじ売り場はいつも夢を追う老若男女で混み合っている。だが、宝くじは政府公認の賭博の一種である。
 相場は賭博ではない。相場は投機であり、満天下に恥じることはない堂々たる経済行為である。本書に登場する兜町の美形相場師がこんなことを言っている。
 「あたしにとって、新株(東京株式取引所新株、戦前の人気銘柄)は知識的なゲームなの。ひとつの快適なスポーツ。相場が投機として、一般社会から軽蔑されるのは、習慣的な古い徳性からきた感情ですよ。相場に非難される材料があるのではなく、非難する者の感情に封建道徳の影響があるのですよ」
 この当時から70年の時は流れ、相場に対する国民の認識はかなり変わってはいるが、相場について一種の偏見はまだ払拭され切ってはいない。それが証拠に新聞紙面等を見ていても、投機は投資に置き換えられ、相場は価格や市況に改められている。
 お金は上手に使えば人生は楽しい。相場もほどよく付き合えば、緊張感をもたらし、弛緩しがちな人生に句読点をつけてくれることに違いない。


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