「相場師奇聞  兜町の魔術師天一坊から
ウォール街の帝王モルガンまで」
            鍋島高明著


河出書房新社
    

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投機史彩る敗軍の将と覇者たち

商品番号:M−5  定価2,000円

        

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<書評>
★「自著を語る」(1月12日付「先物ジャーナル」誌)
 初め本書のタイトルは『相場の鬼』にしようと考えていた。しかし、前著『相場師異聞』が思いのほか売れたので、それにあやかって『相場師奇聞』とした。サブタイトルが「兜町の魔術師天一坊からウォール街の帝王モルガンまで」と尾長鶏も顔負けの長々しいものとなったが、これは営業的視点による。
 本書に収録した32人の相場師を束ねて言えば、「相場師は永遠のロマンチストである」ということではないだろうか。一攫千金を夢見て、建玉を膨らまし、取らぬタヌキの皮算用を始めると、瓦落が襲来、槿花一朝の夢に終わる例に事欠かない。
 鈴木商店の金子直吉、鈴久、「借金王」石井定七、「新宿将軍」浜野茂などがその典型だ。投機の失敗を命で清算したひとたちもいる。岩本栄之助、ジェシー・リバモア、太田収、片野重久、平沢延次郎……。相場師の美学が生き延びる道を許さなかった。
 相場師は市場の花形役者であり、ヒーローである。衆人環視の中で、「二カイ三ヤリ」などといったセコい手は振れなかったのであろう。「ツケ口買い」と「成行売り」で市場を沸き立たせ、市場を取り巻く人々の喝采を浴び、一種の自己陶酔に陥るのもまた相場師の宿命であった。破綻は覚悟で見栄を張る局面もあったろう。
 相場師は悲しい。しばしば賭博師と混同される。テオドール・ルーズベルト大統領はかつて、投機市場をポーカーや競馬と同じ賭博場だと決めつけ、近くはシラク仏大統領が相場師を「世界経済のエイズだ」と吐き捨てた。松辰こと松村辰次郎は遺著の中で「偶然を争うか、経済道理を争うか、そこに賭博と相場の根本的相違がある」と述べている。両大統領には東海の小島の大物相場師松辰のこの言葉を噛み締めてもらいたい。
 相場師の足跡を辿っていると、いまの日本経済には欠落している冒険心、侠気といったものが感じられて勇気づけられる。「異聞」、「奇聞」ときたから、次は「秘聞」に挑戦してみるか。    市場経済研究所 鍋島高明

★「フューチャーズ トリビューン」(1月20日付)
 本書は「相場師奇聞〜一攫千金に賭けた男たち」の続編に当たるもの。著者の相場師についての造詣の深さには定評がある。これら人物に対する資料収集も「週末には古本屋を巡っている」というほどこまめに足で集めた豊富な蔵書ゆえであろう。前書では約300人の相場師を登場させたが、今回は大物投機師32人を取り上げ掘り下げている。その人物は副題が示すように買い一本の金子直吉から、ウォール街のグレート・ベアら国内のみならず海外の相場師までに及んでいる。これらの相場師の生涯を辿ることで「敗軍の将であれ、覇者であれ、今日の日本経済に欠けている冒険心、侠気のようなものを感じます」と指摘する。
 いずれの人物も魅力いっぱい。、紙面の関係上、一人だけ山崎種二を例に取ると、ケチ種といわれていた種二は郷里の吉井町に莫大な金額を寄進するなど実はケチではなかったことを記し、その人物の知られざる面をサラリと紹介する。山種グループに籍を置いた筆者として一言付け加えさせてもらうと、種二の三男・誠三氏の時代になっても群馬県のみならず幅広く寄付活動を行っている。私費を投じた障害児学習熱もその一つである。
 本書は3部構成になっており、第1章が「投機戦線に散った猛者たち」で稀代の相場師といわれた松村辰次郎ら9人、第2章「相場のために生まれた怪物たち」でギューちゃんこと・佐藤和三郎ら11人、第3章「相場を踏み台にした豪の者」でウォール街の帝王といわれたJ・P・モルガンら12人、がそれぞれ登場する。写真も一人物に数枚採用するとともに、参考資料、文献も巻末に人名検索と合せて書名を掲載している。

★エコノミスト「投資の達人」2月増刊号 毎日新聞社刊
 この本には福沢桃介や是川銀蔵といった稀代の相場師たちの写真が随所にレイアウトされている。なかでも印象的なのが、いまにも怒鳴り声が聞こえていきそうな男の写真だ。この男こそ神出鬼没、千態万様で恐れられた新宿将軍こと浜野茂だった。
 本書に収録されている写真はなんと百十枚にも及ぶという。「相場のために生まれてきた怪物たち」「相場を踏み台にした豪の者」など、これらの写真すべてに時代を活写するドラマがあった。わたしは投機の時代を否定も肯定もできないが、魅力がない市場といわれる昨今では、かつて日本にこうした相場師と呼ばれた人々が市場に君臨していた時代があり、個人の器量で相場を動かすことが可能だった史実に心惹かれるものがある。

★週間ポスト(2004年3月5日号)

 私はエコノミストとして当然為替や金利の予測もする。それどころか、もう10年以上も前のことだが、銀行のディーリングルームで自ら相場を張って、わずか二ヶ月ほどの間に二億円もの損(!)を出したこともある。
 とはいえ、所詮はサラリーマンディーラーだったに過ぎない。
 しかしそれでも、単に相場を予測するのと、自ら相場を張るのでは大違いだった。損が膨れ上がっていくと夜も寝られない。そうなると、エコノミストとして相場を予測しているのか、そうなってほしいと希望を述べているのかが自分でも分からなくなってしまい、二足のわらじは早々にギブアップした。
 本書が扱っているのは、当然のことながら、そんなレベルの話ではない。登場人物は全く異質の人々、まさに相場をやるために生まれてきた人たちだと言っていい。生活がかかっているどころか、文字通りいのちがけだ。得意の絶頂から素寒貧に落ち込んだり、最後には自ら命を絶ったりする人も出てくる。「相場師」は「賭博師」とは違うはずだが、相場と「一攫千金」は切っても切れない関係にあるだけに、まず正業とは思ってもらえないことになる。しかし、おのれの賭けに狂奔したというよりも、そこに相場があるから人生を賭けたという心意気が伝わってくる。彼らがどうやって一攫千金を掴んだかという話は千差万別、掴んだあとどうなったかもまた興味深い。そこにはそれぞれドラマがあるからだ。そのドラマが彼らに「人呼んで」のしゃくめいを献上する。いわく、「魔術師天一坊」、「東大出の飛将軍」、「ウワバミ」、「ウォール街の帝王」、「大統領の父」等々。
 「公会堂将軍」は、今なら数十億円という人々の度肝を抜く金で、中之島公会堂をポンと寄付した。義侠心厚く、紳士的品性の持ち主だった。大新聞は、号外を出してその死を悼んだという。
 国内外32人の相場師。その32人の人生の物語は、気の向くままどこから読んでも楽しめる。(五十嵐敬喜氏=UFJ総研調査部長)

★メリット2004年3月号
 本著に収録されている相場師は32人。
 第一章「投機戦線に散った猛者たち」には買い一本やりの快物・金子直吉、カラ売り王・ジェシー・リバモアら9人が顔を出している。
 第二章「相場のために生まれた怪物たち」には紀州相場師の祖・紀伊国屋文左衛門、近藤信男ら11人が登場する。
 第三章「相場を踏み台にした豪の者」には出羽の小天狗・本間宗久、大統領の父・ジョセフ・ケネディら12人の足跡が描かれている。
 古今東西の相場師たちの奇聞が紹介されているが、評者には破れざる相場師より、第一章の相場の花と散った面々の足跡に特に共感を覚える。
 本書には写真110枚が収められているが、特に相場師たちの顔写真には共通した面立ちがない。強烈な個性を表に出す人、ひそかに策を練り、個性を表には出さぬ人、いずれにせよ、”面だましい”という死語こそふさわしい。
 平成の相場師といえる人がいるのかどうか。平成不況は相場師不在ゆえではないのか、そんな思いを深くした。
 相場師出でよ、と呼び掛ける書と評することができる。(米良周氏)

★「消費と生活」2004年3月号
 本誌当欄で『今昔お金恋しぐれ』『相場師異聞』などを紹介した市場経済研究所主宰の鍋島高明氏が新しく『相場師奇聞』を著した。前二著と同様、河出書房新社の刊。いずれも好評だったことの証だろう。抱負に集めた資料でインターネット販売の五台山書房を開くに至った著者らしく、本書でも「兜町の魔術師天一坊からウォール街の帝王モルガンまで」のエピソードが豊富に語られる。相場師と言われる人も多いのだが、実はモノ作り、農業など経済のインフラがしっかりしていた時代には投資活動や企業家精神が躍動していたことを知り、ひるがえって現代の経済社会に思いを至すことになる。鍋島氏は元日経新聞の商品部記者、編集委員を長く勤め、産業消費研究所を経て今日なお専門誌に健筆をふるっている。(評論家 早川克己氏)

★日刊ゲンダイ「新刊アラカルト」2004年4月15日付
 歴史に名を残す国内外の投機師の足跡をエピソード豊かに伝えた一冊。
 砂糖商だった鈴木商店を財閥と肩を並べる企業集団に育て上げ、第一次世界大戦勃発時には大規模な思惑買いで巨利を得た金子直吉をはじめ、生糸の巨商「天下の糸平」こと田中平八や、2・26事件で100億円超の大儲けをした山崎種二、そして米国の鉄道王ハリマンやJFKの父親ジョセフ・ケネディまで投機史を彩る32人の波乱の人生が並ぶ。

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