楢型駆逐艦
「桑(初代)」は楢型駆逐艦の4番艦である。
日露戦後の海軍国防方針は、アメリカを主敵とし、来攻するアメリカ艦隊を日本近海での迎撃決戦で撃破するというものであった。 このため航洋型駆逐艦として、1911年(明治44年)に排水量1,000トンを超える一等駆逐艦海風型が建造された。 しかしながら、予算上の制約で大型駆逐艦を多数建造できないため、同時に中型(二等)駆逐艦として桜型が建造され、引き続いて樺型、桃型、楢型が建造された。
第一次世界大戦下の1917年(大正6年)に連合軍の要請により、前級の桜型が地中海方面の船団護衛に派遣されたため、国内の駆逐艦戦力に不足が生じた。そのため臨時軍事費により楢型6隻を急速建造することとし、起工後6ヵ月で全艦完成した。 本型は急速建造を優先し、線図は前級の桃型に準じた設計で、準同型艦ともいえる。 しかしながら桃型が地中海方面で行動中に、荒天により船体に損傷を受けたことに鑑み船体を強化している。(1)
艦名は植物名。 クワ科クワ類の落葉高木の総称。 自生種では高さ10m以上に及ぶものがあるが、栽培種は養蚕のために刈りとるため長大なものは少ない。 春に淡黄緑色の花を穂状につける。 実は紫黒色で、味は甘い。 葉を養蚕用とする他、硬い自生樹の材は工芸用材として珍重される。 樹皮の繊維は製紙の原料となる。(2)
たらちねの母がそのなる桑すらに願へば衣に着るといふものを(万葉集)
艦名 | 桑 (楢型) |
---|---|
艦種 | 二等駆逐艦 |
基準排水量 ※1 | 770トン |
常備排水量 ※1 | 850トン |
全長 | 85.90m |
最大幅 | 7.7m |
喫水 | 2.4m |
主機 | ブラウン・カーチス式直結タービン2基、2軸 |
主缶 |
|
出力 | 17,500馬力 |
速力 | 31.5ノット |
燃料搭載量 |
|
航続力 | 14ノットで3,000浬 |
乗員 | 112人 |
兵装 |
|
備考 | - |
※1:英トン(1.016メートルトン)
年月日 | 履歴 |
---|---|
1917年(大正6年)11月5日 | 起工。 |
1918年(大正7年)2月23日 | 進水。 |
1918年(大正7年)3月31日 | 竣工。 |
1934年(昭和9年)4月1日 | 除籍。 横須賀航空隊の附属標的として夏島沖に係留。 |
1936年(昭和11年)8月15日 | 横須賀港外で台風のため漏水し沈没。 |
1937年(昭和12年)4月1日 | 解体訓令。 |
1938年(昭和13年)1月10日 | 解体。 |
アイコンはsinn様の「アイコン工房」より、ご提供頂いた。
コンテンツは特に記載されてない限り、クリエイティブ・コモンズ 表示-継承ライセンスのもとで利用できます。