−− 2006.06.14 エルニーニョ深沢(ElNino Fukazawa)
2011.11.08 改訂
■はじめに − 室内楽とは対極の大管弦楽曲
秋が深まった第13回例会(=05年10月13日(木))では<室内楽>+<大管弦楽>をテーマに、比較的馴染みの有る室内楽曲を聴いた後に大管弦楽の代表としてグスターヴ・ホルスト(※1)の『惑星』を聴きました。この曲は室内楽とは対極の大管弦楽曲です。秋の夜の天体の運行に想いを馳せて聴くのも良いだろうということと、この日が1周年だったので室内楽と大管弦楽を同時に対比して幅を広げようという狙いのテーマ設定と選曲でしたが、時間の都合で第1曲の「火星」〜第4曲の「木星」 −この曲のクライマックス− 迄を聴きました。
■曲の構成とデータ
ホルストの『惑星』と言えば通用しますが、正式名称は『組曲「惑星」 作品32』又は『管弦楽組曲「惑星」 作品32』です。「4管編成+オルガン+女声合唱」の大管弦楽曲で、曲の構成は以下の通りです。
第1曲:「火星:戦争を齎す者」 アレグロ ハ長調 5/4
地球の直ぐ外に軌道を持つ赤い星で、ローマ神話では軍神マルス(=ギリシャ神話のマルス)が司るとされる。
第2曲:「金星:平和を齎す者」 アダージョ 変ホ長調 4/4
地球の直ぐ内側に軌道を持つ明るい星で「明けの明星」「宵の明星」。美と愛の女神ヴィーナス(=ギリシャ神話のアフロディテ)が司るとされる。
第3曲:「水星:翼の有る使者」 ヴィヴァーチェ 変ホ長調 6/8
太陽に最も近く、日没直後又は日の出直前の短時間だけ見える。商売の神マーキュリー(=ギリシャ神話のヘルメス)が司るとされ、霊魂を冥界に導く役目を持つ。
第4曲:「木星:歓楽を齎す者」 アレグロ・ジョコーソ ハ長調 2/4
火星の外側で太陽系中最大の惑星。全能の天空神ジュピター(=ギリシャ神話のゼウス)が司るとされる。曲全体のクライマックスを成し民謡調のメロディーが鼓舞する様に響く。
第5曲:「土星:老年を齎す者」 アダージョ ハ長調 4/4
木星の外側で環を持つ黄色い惑星。農耕神サトゥルヌス(=ギリシャ神話のクロノス)が司り、災いを齎すとされる。
第6曲:「天王星:魔術師」 アレグロ ハ長調 6/4
土星の外側で肉眼では見えず1781年にハーシェル(※2)が発見した惑星。天神ウラヌス(=ギリシャ神話のウラノス)が司るとされる。冒頭の「ソ・ミb・ラ・シ」という主題(→後で説明)が色々な形で何度も出現し、弾んだリズムが面白い。
第7曲:「海王星:神秘主義者」 アンダンテ ハ長調 5/4
天王星の外側で1846年ドイツのガレ(※3)が発見した惑星。海神ネプチューン(=ギリシャ神話のポセイドン)が司るとされる。舞台裏に配置された女声合唱がヴォカリーズで神秘を醸し徐々に消えて終わる。
●データ
作曲年 :1914〜1916年(41歳)
演奏時間:約50〜55分
注記 :地球と冥王星(←作曲当時未発見、※4)は含まず
{火星と木星の写真へのリンクは2011年11月8日に追加}
■作曲された背景 − 占星術への傾倒から生まれた曲
太陽の周りを周回運行する惑星 −地球もその一つ− は太古の昔から人間の運命や吉凶を左右する力が宿って居ると考えられ、「良い星の下に生まれた」などと言われて来ました。運命を予知する為の星占いはやがて体系化された占星術に発展し長い間「占星術の時代」が続きました(△1のp49〜74)が、予知の精度を上げる為に天体観測技術が発達し客観的且つ科学的(=実証的)な天文学や宇宙物理学を構築し「天文学の時代」に入りました。現代は更に進み宇宙工学とコンピュータ&通信技術に支えられてスペースシャトルや惑星探査衛生が日常的に宇宙空間を飛び交って居ます。そんな最先端の「宇宙工学の時代」に生きる現代の我々でも尚、自分の未来や運勢を知りたいという欲求は断ち難いらしく、占星術のみならず有らゆる類の占いが大流行りしてるのが日本の現状です。
グスターヴ・ホルストの世代は「天文学の時代」ですが、彼は『惑星』の作曲に着手する前に劇作家クリフォード・バックスから占星術について教えを受けて居ました。子供の時に”お勉強”した天文学よりも占星術の方を寧ろ新鮮に感じたのでしょう、『惑星』は占星術に傾倒した彼がギリシャ・ローマ神話や占星術に於ける各惑星のイメージ(←各楽曲の「〜を齎す者」という注釈を参照)に触発されて書いた曲です。作曲年は第一次世界大戦の最中で1920年秋に全曲初演されました。
尚、娘のイモージェン・ホルスト(Imogen Holst、1907〜1984)も作曲や指揮をし特に音楽学者として知られ、父の伝記を残しました。
■聴き方 − モダニズム音楽のリズムと音の厚みを楽しむ
占星術にインスピレーションを得た曲なので、聴く側は各楽曲に付された副題から惑星の占星術的意味を一応頭に入れて聴くことは必要です。又、惑星の天文学的データの予備知識も有った方が良いとは言えます。例えばしばしば単独で演奏される第4曲の「木星」 −と言うよりも世間では全曲が聴かれる事の方が少ない!− は太陽系で最大の惑星なので、やはり全曲中のクライマックスを成して居ますが、これは天文学的データの反映です。とは言うものの、各楽曲は副題の惑星の占星術的意味や天文学的データを厳密になぞって再現してる訳でも無く、曲想は作曲者の主観で自由に広がり料理されて居ますので、副題を過度に意識する必要は有りません。
聴き方としては、やはり「全体を聴く(=全曲を聴く)」ことです。ホルストは19世紀後半〜20世紀前半に生きモダニズム音楽の洗礼を受けた人ですから、「木星」の勇壮な民謡調のメロディー以外は無調的な部分が在り、初心者には”難しい”と感じられる曲かも知れません。モダニズム音楽を聴く場合はメロディー −しかし乍ら日本の音楽土壌は元々単旋律的なので日本人はメロディーに拘泥る− よりもリズムや音の厚みを聴く様に心懸けた方が良いと思います。その点この『惑星』は大管弦楽曲なので「火星」や「木星」の迫力は圧巻です。
クライマックスの「木星」の出出しの部分は映画音楽などで時々模倣されて居るのを聞くことが有ります。又、「木星」の民謡調の部分はスコットランド民謡 −元々はケルト民族の音楽(※5)− を素材にしたと思われますが、この部分はイギリスの民謡を採集して居た盟友ヴォーン=ウィリアムズ(※1−1)の影響が有ったと思われます。一度ヴォーン=ウィリアムズの『海の交響曲』や『管弦楽曲「揚げひばり」』などを聴き比べてみて下さい。
「天王星」の出出しの「ソ・ミb・ラ・シ」、即ち「G・Es・A・H」という音階の音列はホルストの原名”Gustav Holst”(※1)からの抽出です。作曲家という人種はどうも自分や愛する人の姓名を”密か”に音列に織り込む誘惑に抗し難いらしく数多くの作曲者がこの手の”遊び”を行って居ます。又、この曲のイメージは魔術師と記されて居ますが、弾んだリズムはデュカス(※6)の『交響詩「魔法使いの弟子」』(1897年作曲)を彷彿とさせます −この曲からヒントを得たとされる− ので、これも聴き比べをお薦めします。最後の「海王星」の女声合唱に依る神秘的表現も傾聴して下さい。
「宇宙工学の時代」である現代は夜も人工の光が煌々と輝き月や惑星や星々を直に見る機会は矮小化されて仕舞ったので、この曲に「旧き佳き時代」のロマンを感じ取って戴ければ良いと思います。
■考察 − 『組曲「惑星」』の「星の並び」こそ占星術に従った証拠
ところで占星術にインスピレーションを得た曲だと言われても、それらの曲を聴いて喚起されるイメージは作曲者の意図とは別の聴く人の主観ですので、必ずしも占星術的イメージが呼び起こされるとは限りません。そこで私は以下に『組曲「惑星」』が占星術的霊感から生まれた曲である”客観的証拠”を提示しようと思います。
皆さん、『組曲「惑星」』の楽曲順の「星の並び」に注目して下さい。
「火・金・水・木・土・天・海」
という順番です。この並びは私たちが小学校で教わった太陽系惑星の軌道の内側からの並び「水・金・地・火・木・土・天・海・冥」とは異なり、地球からの平均距離の順番「金・火・水・[太陽]・木・土・天・海・冥」とも異なり、つまりは天文学の並びでは無いのです。「宇宙工学の時代」の我々からは奇異に感じられますが、この並びにはどんな根拠が在るのでしょうか?、或いは単に思い付きで並べたのでしょうか?
そこで西洋占星術の本(△1)を繙(ひもと)いてみましょう。簡単に言いますと西洋占星術は、天球上の黄道に沿う獣帯には黄道十二宮が1年の12ヶ月に対応して存在し、各宮には1つの星座が宿り対応する「生まれ月」の人の運命を支配する、という考えに基づいて居ます。日本には『さそり座の女』という歌謡曲も在る様にテレビや雑誌のホロスコープに拠る「星座占い」が一般的に普及(△1のp60〜73)し、自分の星座が「何座」であるかをご存知の方は多いと思います。そして各々の星座には支配星として守護惑星が存在しますが、その関係を解り易くしたのが下の一覧表です。
<占星術に従う『組曲「惑星」』の「星の並び」一覧表>
標準期間 十二宮 星座 支配星 金属 ─抽出→ 星の並び
春分点→ 3/21〜 4/20 白羊宮 牡羊座 火星 鉄 ───→ 火星
4/21〜 5/20 金牛宮 牡牛座 金星 銅 ───→ 金星
5/21〜 6/20 双子宮 双子座 水星 水銀 ───→ 水星
6/21〜 7/20 巨蟹宮 蟹座 月 銀 対象外
7/21〜 8/20 獅子宮 獅子座 太陽 金 対象外
8/21〜 9/20 処女宮 乙女座 水星 水銀 重複
秋分点→ 9/21〜10/20 天秤宮 天秤座 金星 銅 重複
10/21〜11/20 天蠍宮 蠍座 土星/冥王星 プルトニウム 未発見→ [冥王星]
11/21〜12/20 人馬宮 射手座 木星 錫 ───→ 木星
12/21〜 1/20 磨羯宮 山羊座 土星 鉛 ───→ 土星
1/21〜 2/20 宝瓶宮 水瓶座 土星/天王星 ウラン ───→ 天王星
2/21〜 3/21 双魚宮 魚座 水星/海王星 ネプツニウム ───→ 海王星
★十二宮と星座との対応は、春分点の歳差の為に”ずれ”が生じ、天文学的には現在は白羊宮には魚座が対応して居ます。地球の歳差運動の周期は25800年なので、2150年で1星座ずれて行きます。
★支配星で、土星より外の「×王星」が発見される以前に於いては併記した惑星が支配星でした。
<出典:【参考文献】△1のp52、p62、p64、△2のp410>
この一覧表を見れば一目瞭然です。西洋占星術は春分点が基点ですが、ホルストの『組曲「惑星」』の楽曲順の星の並びは、西洋占星術の「星座占い」に於ける守護惑星を春分から順に重複を避けて抽出したものだった、ということが”客観的”にお解り戴けたことと思います。つまり「火・金・水・木・土・天・海」という「星の並び」こそがホルストが占星術に準拠して作曲した”動かぬ証拠”なのです!
更にホルストの作曲時には未発見であった「冥王星」の楽曲を後世に付加するならば「水星」と「木星」の間に挿入するのが占星術的に正しい、という事をもこの一覧表は明示して居ますが、さて実際にはどうだったのでしょうか?!、次の章をお読み下さい。
序でに言うと、十二宮と同様の考え方は中国でも発達し日本でも御馴染みの十二支がそれで、十二支に動物が割り当てられて居るのも獣帯と共通して居て興味有る類似です。私は多分古代天文学や占星術はメソポタミア地方のバビロニア辺りが発祥で、エジプトを経て西洋に、ペルシャを経て東洋に伝わったのだと考えて居ます(△1のp50〜55/△3のp39〜40、p180)。因みに木星の公転周期は約12年なので、木星は1年毎に十二宮を1つずつ廻ることに成りそれが十二支の12年周期の基です。その様な関係も有ってホルストの神秘主義はアジアにも向かいインドや日本を題材にした曲も書いて居ます。尚、占星術の起源や木星と十二支の関係については▼下の論考▼をお読み下さい。
2006年・年頭所感−十二支と猫(Chinese zodiacal signs and Cat, 2006 beginning)
{この章は06年7月10日に最終更新}
■冥王星について
ホルストがこの曲を完成した14年後の1930年に海王星の更に外側の惑星として冥王星(※4)が予言通りにC.W.トンボー(※4−1、※4−2)に依って発見されたのです。発見から約70年経って、ヨーロッパの歌劇場で活躍する日系3世の指揮者ケント・ナガノは「冥王星」を1999年にイギリス・ホルスト協会の会長コリン・マシューズに作曲を委嘱し、マシューズは次ぎの様な副題で
「冥王星:再生を齎す者(The Renewer)」
を2000年初頭に作曲し、最後の第8曲目に追加したのです。
この『組曲「惑星(冥王星付き)」』の世界初演は2000年5月11日にマンチェスター・ブリッジウォーター・ホールに於いてナガノ指揮/ハレ管で行われ大成功を収め、翌01には日本初演も行われました。イギリスでは現在「冥王星付き」で演奏される機会が増して居るという話で、既にCDも発売されました。
ところで「冥王星」を最後に追加した処置について私見を述べさせて戴きます。まぁ、誰でもそう考えますね。ホルストの『惑星』の後半は「木・土・天・海」という並びなので、「宇宙工学の時代」の我々は誰でも天文学の「水・金・地・火・木・土・天・海・冥」を想い起こし −後半の並びが一致して居る− て「冥王星」を最後に付加すれば良いと思って仕舞います。しかし、それは天文学的発想であって厳密には間違いなのです。「考察」の章の<占星術に従う『組曲「惑星」』の「星の並び」一覧表>をもう一度ご覧下さい。ホルストは天文学的並びでは無く「占星術から抽出した星の並び」に忠実に従って楽曲の順番を決めて居たのです。それ故に後世の人が「冥王星」を付加する場合、ホルストの意図を汲むならば「考察」の章の最後に記した様に、「冥王星」の楽曲はこの一覧表に基づいて「水星」と「木星」の間に挿入するのが占星術的に正しい解決法でした。
(*_@)
と書いて私は06年6月14日に初稿をアップロードしたのですが、それから2ヶ月後の06年8月23日に”とんでもない”ニュースが飛び込んで来ましたので、以下の節を追加しました。
◆「冥王星」狂騒曲
06年8月23日の”とんでもない”ニュースとは概略以下の内容です(毎日新聞ネットニュースより)。
チェコのプラハで総会を開いている国際天文学連合(IAU)は22日、惑星の定義案を大幅に修正、冥王星を惑星から外す最終案を纏めた。23日も細かい表現などの最終調整を続け、24日午後の全体会議で採択を目指す。
最終案は、太陽系惑星の定義を「太陽の周りを回り自らの重力で球状と成る天体」とする当初案を継承した上で「軌道周辺地域で圧倒的に大きい天体」という新たな項目を付け加えた。
冥王星はより大きい海王星と軌道が一部重なる上、03年に発見された「2003UB313」など同等規模の天体が周辺に在る為に新たに加わった項目を満たさず、惑星から外れることに成った。当初の定義案では惑星に昇格する予定だった小惑星セレスとUB313も、同様の理由で惑星とは見做されない。冥王星やその周辺の天体は惑星とは異なる
"dwarf planet"(矮惑星/準惑星)と位置付ける。」
同日の公開討論では、「軌道面からの考察が足りない」などの科学的な反論に加え、「政治的過ぎる」「提案が唐突で手続きが民主的では無い」といった意見も相次ぎ、3年後の次回総会への先送りも検討したが「今回の会議で決定しなければIAUの権威が失墜する」(会議筋)と判断した。
斯くして結局、06年8月24日に採択された国際天文学連合(IAU)の議決に於いて
惑星(planet)
準惑星(dwarf planet)
太陽系小天体(small solar system bodies)
の3分類が定義されました。冥王星の惑星から準惑星への”格下げ”が、正にIAUの権威に懸けて議決されたのです。
そもそも冥王星は月よりも質量が小さく他の惑星と軌道が大きく異なる上にティティウス&ボーデの法則からは海王星に近く、専門家の間で発見当初から「本当に独立した惑星なのか?」「海王星の衛星ではないか?」という議論が在ったのは確か(△4のp108〜110)で、更に1992年以降に海王星の外側の領域に小天体が1000個以上も見付かり冥王星もこの小天体のグループに属し「圧倒的に大きい天体」では無いとする説が段々と有力に成った結果です。これで06年8月24日以後は、太陽系の惑星は内側から「水・金・地・火・木・土・天・海」の8つに成り、ホルストの作曲当時に戻った訳です。とんだ”狂騒曲”でした。
(>_<)
さて、そう成ると『組曲「惑星(冥王星付き)」』の運命や如何に?!
まさか、「冥王星」の楽曲の挿入位置を間違えたから冥王星が”格下げ”された訳では無いでしょうが、これは占星術で占わなくても先行きは明らかですな。しかし、そう成ると『組曲「惑星(冥王星付き)」』のCDは数10年後には希少価値が増し”お宝”に変貌する錬金術(※7) −占星術から天文学が生まれたのと同様に錬金術から学問としての化学が生まれました− が成り立つかも知れませんね。「捨てる神在れば拾う神在り」です、ムッフッフ!
{この節は06年8月26日に追加}
■結び − 次ぎは全曲鑑賞
「聴き方」の章で「全体を聴く」ことが大切と記しましたが、当会では未体験です。何でもイージーにポップス化されたりCMの背景音楽化されたりする昨今ですが、ポップスや背景音楽(=BGM)は「聞こえて来る音楽」なのに対しクラシック音楽は「耳を澄まして主体的に聴く音楽」だというのが私の持論です。
それ故に私は何時かこの組曲の全曲を聴く機会を創りたいと考えて居ますので、その日を待ちたいと思います。
>>>■その後
●09年8月例会で全曲鑑賞を実現
『組曲「惑星」』を05年10月13日に前半部分を皆さんと一緒に初めて聴いてから4年振りの09年7月1日(水)の第55回例会で遂に全曲を聴きました。前の月で約2年間に亘りじっくり聴いて来た「古典派及びロマン派特集」の3つのシリーズが丁度終わりましたので、この日は<七夕、そして星の曲>というテーマで『惑星』の大管弦楽の醍醐味を堪能しました。会の皆さんからは「全曲を聴いたのは初めて」という意見が多く聞かれ、又「偶(たま)には全曲を聴くのも良いものですねえ」と仰った方も幾人か居りましたので「そりゃそうでっせ!」と私は申し上げました。
尚、この日は大阪府交野市に残る由緒正しい七夕伝説についても簡単に触れました。
{この記事は09年7月2日に追加}
【脚注】
※1:グスターヴ・ホルスト(Gustav Holst)は、イギリスの作曲家(1874.9.21〜1934.5.25)。グロスターシャー州チェルトナムに生まれ、ロンドンの王立音楽院に学ぶ。学生時代に同郷のヴォーン=ウィリアムズと親交を結ぶ。卒業後、セント・ポール女学校で生涯教鞭を執る傍ら作曲活動を行った。管弦楽組曲「惑星」の他、合唱曲・吹奏楽曲などが在る。
※1−1:ヴォーン=ウィリアムズ(Ralph Vaughan Williams)は、イギリスの作曲家(1872.10.12〜1958.8.26)。グロスターシャー州ダウンアンプニーに生まれる。ロンドンの王立音楽院時代に同郷のホルストと親交を深める。当時主流のモダニズム音楽に進まず民謡採譜とイギリス教会音楽の研究に没頭し、それを音楽的基盤とした。代表作に歌劇「海に乗り行く人々」、「海の交響曲(交響曲第1番)」、弦楽合奏曲「タリスの主題による幻想曲」、管弦楽曲「揚げひばり」。<出典:「学研新世紀ビジュアル百科辞典」>
※2:Frederick William Herschel。イギリスの天文学者(1738〜1822)。音楽家であったが、大型反射望遠鏡を作り、妹と共に観測。1781年に天王星を、次いで土星・天王星の衛星をそれぞれ2個発見。後に王室天文官と成り2500の星雲、800の二重星を発見。<出典:一部「学研新世紀ビジュアル百科辞典」より>
※3:Johann Gottfried Galle。ドイツの天文学者(1812〜1910)。ブレスラウ(現ウロツワフ)天文台長。1846年、ルベリエの依頼に依り海王星を予報位置に発見。又、小惑星の視差測定に依る太陽距離の決定法を考案。<出典:「学研新世紀ビジュアル百科辞典」>
※4:冥王星(めいおうせい、Pluto[ラ])は、太陽系の最も外側を回る惑星。1930年アメリカの天文学者C.W.トンボーが発見。離心率が惑星中最大の為に細長い楕円軌道を描き、太陽からの距離は44億4千万〜73億9千万km迄変化し、海王星の軌道の内側に入ることも有る。又、自転軸も120度傾き、固体の表面を持ち、メタンの氷か霜で覆われて居る。1個の衛星を持つ。質量は地球の500分の1。自転周期6日9時間。公転周期248年。<出典:一部「学研新世紀ビジュアル百科辞典」より>
※4−1:C.W.トンボー(Clyde William Tombaugh)は、アメリカの天文学者(1906〜1997)。ニューメキシコ州立大学教授。1930年にP.ローウェルが予言した冥王星を発見。その後、宇宙工学の研究に従事。
※4−2:P.ローウェル(Percival Lowell)は、アメリカの天文学者(1855〜1916)。私立天文台を設立、火星面の観察から火星運河や火星人存在説を唱えた。冥王星を予言。
※5:ケルト(Celt)とは、5世紀頃迄アルプス以北のヨーロッパの大部分とバルカン迄、広く居住した民族。やがてローマの支配下 −ローマ人は大陸のケルト人(Celts)をガリア人と呼び、イギリス諸島のケルト人をブリトン人と呼んだ− に入り、又、ゲルマンの圧迫に因り次第に衰退。現在はアイルランド/スコットランド/ウェールズ/ブルターニュなどに散在する。妖精伝説や多くの民話・神話で知られ、又、7〜8世紀のアイルランドや北部ブリテン地方は、独特な幾何学模様に依るキリスト教美術で知られる。
※6:Paul Dukas。フランスの作曲家(1865〜1935)。パリ音楽院に学び、作曲の他に評論・教育にも携わった。新鮮な着想、色彩的な響き、精巧な構成など独自の作風と管弦楽法に優れ、ストラヴィンスキーらに影響。完璧主義の為に作品は寡作。交響詩(交響的スケルツォ)「魔法使いの弟子」、歌劇「アリアーヌと青ひげ」など。デュカ。デュカース。<出典:一部「学研新世紀ビジュアル百科辞典」より>
※7:alchemy。古代エジプトに起り、アラビアを経てヨーロッパに伝わった原始的な化学技術。近代化学の基礎が創られる迄全ヨーロッパを風靡。卑金属を金・銀などの貴金属に変化させたり、不老不死の万能薬を製出したりすることなどを試みた。これらに成功はしなかったが、種々の化学物質を取り扱う技術を促し近代化学発展の基に成った。<出典:一部「学研新世紀ビジュアル百科辞典」より>
(以上、出典は主に広辞苑です)
【参考文献】
△1:『魔術師の饗宴』(山北篤と怪兵隊著、新紀元社)。
△2:『占いを始める人のために』(國生稔貴著、池田書店)。
△3:『暦と占いの科学』(永田久著、新潮選書)。
△4:『現代天文学小事典』(高倉達雄監修、講談社ブルーバックス)。
●関連リンク
@参照ページ(Reference-Page):惑星や星座や占星術の用語▼
資料−天文用語集(Glossary of Astronomy)
@参照ページ(Reference-Page):音階や調性について▼
資料−音楽学の用語集(Glossary of Musicology)
@補完ページ(Complementary):占星術の起源や木星と十二支の関係について▼
2006年・年頭所感−十二支と猫
(Chinese zodiacal signs and Cat, 2006 beginning)
1周年の感想▼
(クラシック音楽は「耳を澄まして主体的に聴く音楽」という持論も)
「ブラボー、クラシック音楽!」発足の経緯
(Details of our CLASSIC event start-up)
火星の写真とデータ▼
写真−火星(PHOTO - Mars, Japan)
木星の写真とデータ▼
写真−木星(PHOTO - Jupiter, Japan)
モダニズム音楽や無調について▼
「モダニズムの音楽」概論(Introduction to the 'Modernism Music')
愛する人の姓名を音列に織り込んだ例▼
ブラームス「弦楽六重奏曲第1番」(String Sextet No.1, Brahms)
由緒正しい交野の七夕伝説について▼
2003年・交野七夕伝説を訪ねて(Vega and Altair legend of Katano, 2003)
この曲の初登場日▼
ブラボー、クラシック音楽!−活動履歴(Log of 'Bravo, CLASSIC MUSIC !')