★ 硫黄霊について

 カレーの防衛に一役買っている硫黄霊。四行詩を正確に知らぬ手合いが北門を開けようとすると、門の上部にある箱からこやつが飛び出してきて愚か者を死に導くという仕組みになっているが、よく考えてみると中々に不思議なことである。そもそも硫黄霊というのは何なのか。霊というぐらいだから、きっとアンデッドの類だろうと考えがちではあるが、タイタン世界では「死者が呻くような声を上げる」から沼霊と名付けられたような存在もいたりするので、早々に決めつけるのはよろしくない。
 だが実はこの硫黄霊、ありがたいことに『超・モンスター事典』に載っている。それによると、火山地帯や岩だらけの荒野で死んだ者が成るとある。自然発生するタイプのゴーストのようだ。これなら「彼(男か女かは不明だが、便宜上こう呼ぶことにする)」が死んだ場所については想像ができる……カーカバードのバク地方はまさしく岩だらけの荒野だし、火山にしても可能性が無いわけではない。かのマンパン砦が建っているのはカルデラ地形だ。ザンヌスの峰々の中には火山が存在する。作中、噴煙の描写が無いことから現在は死火山となっているのかもしれないが、「彼」が死んだ時代が特定できない以上、絶対にないとは言い切れない。遥かな昔、活発な火山だったころのマンパンで死んだ者が、今日カレーの北門に縛り付けられているという可能性は0ではないのである。

 硫黄霊が生まれる経緯について考えてみたわけだが、これだけでは北門の守りに組み込まれている理由はわからない。北門を閉ざしたカレーの実力者が、何らかの魔術で「彼」を例の箱に縛り付けたというのが最もありえそうな話だろう。誰が北門を魔法で閉ざしたのかがわからないが、硫黄霊を利用しようと考えた者がカレーの住人であったのなら、カレーに近いバク地方で彷徨っていた「彼」を捕まえて来たという線が濃い。

 いずれにせよ、四行詩を知らずに北門を抜けようとする者――つまり、資格を持たざる者――を抹殺するのが「彼」の使命となっているわけで、全てが全て術で強制されているということにすると何もかもが片付いてしまうのだが、ちょっとつまらない。実際、自分としては、バク地方にせよマンパンにせよ「彼」が死んだ場所が北門を越えた先であろうということに興味が出てきてしまっている。
 「彼」は未だに未練が残る北へ戻ることを渇望しているが、北門に縛られてそれは叶わない。北門を開けようとする者が現れる度、カレーを離れられるかもと色めき立つが、閉ざされた箱から「彼」が出れるのは近づいてきた者が四行詩を間違って唱えた場合のみだ。詩を正しく唱えた場合には「彼」は解き放たれない。つまり彼が北へ向かうことは不可能なのだ。
 全ての行を知る第一貴人サンサスは一度ならず北門をくぐっていると思われる。「彼」はそのたびに縛られたままの己を呪っただろう。そして、ついに箱から解き放たれたと思ったら門は開いておらず、途方に暮れているアナランダ―へと怒りのままに襲いかかる……妄想はかどるなぁ。

 もしも、カレーの探索において「彼」を解放する手段を見つけ出し、共に北門を抜けたアナランダーがいたとしたら……「彼」は自分の死んだ場所にたどり着くまではいい道連れとなるかもしれない。ロルタグが「役に立つこともあるかも」と渡してくれた緑のかつらの出番が無かったことからも、本文に書かれていない部分にもカレーの秘密はあるはずなのだ。「彼」の怒りを鎮める方法が見つからないとは限らない。そして「彼」と共にバク地方へ入れたら、そして十分に絆を育てることができたのなら、きっと「彼」はマンパン攻略の心強い味方となってくれるだろう。その風大蛇にも似た即死能力は強力無比で、多くのシーンで有効に働くはずだ。もっとも、大魔法使いの影武者と出会う段になれば、簡単に祓われてしまいそうではあるが……

(7/23/22)

★ 『バルサスの要塞』の魔法を取り入れてみる

 『ソーサリー!』と同じ著者ジャクソンによる『バルサスの要塞』にも魔法システムが存在する。『バルサス』の方が書かれたのは早く、ゲームシステムとしては後発になる『ソーサリー!』の方が整理されているような気がするが、こちらはこちらで中々に魅力的なラインナップである。『バルサス』の舞台はおなじみ西アランシアであり、カーカバードやアナランドと同じタイタン世界に存在する。となれば、当然アナランドはこれらの魔法も取り入れようとしていておかしくは無かろう。

 先ずは『バルサス』に用意された魔法のリストを出してみよう。ちなみに社会思想社版『バルサスの要塞』の翻訳者は創土版『ソーサリー!』と同じ浅羽莢子さんである。沿えた英語は原文だ。


  <妖怪うつし> Creature Copy
  <千里眼>  E.S.P.
  <火炎>  Fire
  <愚者の黄金>  Fool's Gold
  <目くらまし>  Illusion
  <浮遊>  Levitation
  <開運>  Luck
  <防御>  Shielding
  <技術回復>  Skill
  <体力回復>  Stamina
  <怪力>  Strength
  <骨抜き>  Weakness

 アナランドとしては、既知の術に近い内容のものは後回しにするだろう。上から順に見てみると、最初の<妖怪うつし>は KIN のような魔法と言える。触媒が不要な点は強みだが、ここは次の魔法に行こう。<千里眼>は TEL と似ているが、無生物にも効く点が異なる。第一巻でエルヴィンの翼を焼くシーンで披露される炎の操り具合を見るに、<火炎>は HOT とほぼ同じような感じだ。<愚者の黄金>は DUD で代用が効くだろう。<目くらまし>も KID が既にある。
 <浮遊>は FAL があると思いがちだが、両社は大いに異なっている。FAL は落下速度を落とす呪文だが、<浮遊>はその名の通り自在に飛ぶことができる。これに該当する呪文はアナランドにはないので、こいつは是非とも取り入れたい魔法だ。
 <開運>は強運値を回復させる魔法だ。原強運値の半分にあたる数値回復という中々の強力ぶりだ。次の<防御>は WOK や FOF、WAL があるので特に急いで導入する必要はあるまい。
 <技術回復>と<体力回復>は<開運>の技量点、体力点版だ。前者はアナランドには見られないタイプの術で、後者は病気の治療はできないものの、薬がなくとも使用できる点は評価できる。なんだかんだ言ってブリム苺は貴重でありますから……
 自らの腕力を増強する<怪力>、逆に相手の力を萎えさせる<骨抜き>も、該当する呪文はアナランドには無い。BIG を使用した時のように身体が大きくなることには利点もあるが、マズい状況に陥ることもある。だが、<怪力>ならその心配はない。総合的な使い勝手はこちらのほうがよさそうだ。

 ざっと見てきたが、アナランドが欲しがりそうな魔法は……<浮遊><開運><技術回復><体力回復><怪力><骨抜き><千里眼>といったところか。実に半分以上なので、こいつは大漁と言える。
 アナランド式にするには、魔法名を三文字のアルファベット、それも「短母音、それ以外、短母音」の形にする必要がある。短母音というのは「a e i o u」のことだ。その上で、効果を連想できるような三文字にすることが肝要だ。

 <浮遊>から始めよう。これは元の英語記述 Levitation をそのまま活かすことできるだろう。すなわち、「LEV」だ!
 <開運><技術回復><体力回復>の三つは効果が似ているので、やはり似た感じでまとめたいところだ。ところだが、これが難しい。<開運>は LUCK から「LUK」で問題ないのだが、残る二つがうまくいかない。原文はSkill と Stamina なのだ。「SKL」とか「STA」とかできればいいんだが、残念なことに「短母音以外、短母音、短母音以外」の形にならない。だからといって、「SIL」や「SAM」では Skill と Stamina を連想するのは難易度が高い。全く違う単語をベースに三文字を探す必要がありそうだ。だいぶ悩んだが、結局それぞれ「REP」と「TOU」あたりでどうだろうかと。Repair(回復)と Toughness(タフネス)だが、どうだろうか。Lifeから「LIF」なんかも考えたが、ちょっと違う気がしたので没にした。

 <怪力>も Strength を短縮するのは難しいので、ここは視点を変えてシンプルに「POW」で行きたい。<骨抜き>は特に悩むことなく「WEK」だろう。
 最後の<千里眼>だが、「FEL」だろうか。Feel だ。感じろ。

 一応偽呪文と照らし合わせてみたが、かぶっている物は無かった。よかったよかった。
 あと、「TOU」は実は「短母音以外、短母音、短母音」になってしまっているのだが、見逃してくれまいか……

(7/23/22)

【追記】
 <浮遊>はZEN、<怪力>はPEPが近しいのではないかと掲示板にて指摘を受けました。確かに!
 何で思考から抜け落ちたのかと考えてみましたが、どちらもいまいち『ソーサリー!』本編では活躍するイメージがない術なので、おそらくはそのせいかと……。(見苦しきいいわけ)
 しかし、本来はどちらもそれなりのポテンシャルを持つ術だとは思うのですよ。ZENは何時間でも飛んでいられるし、PEPで得られる効果は様々なシーンで有用なはず。個人的には、48もの術を覚えさせるゲームシステムであることを活かしきるための「はずれ」だと思っております。実に便利そうなのに、いざ使ってみるとどうにもしゃっきりしないという……ある意味ゲーム性の被害者とも言えるのではないかと。せめてTRPGであるAFF2では存分に活躍してほしいものですね。PLの発想とGMの適応力次第で可能性は無限なのですから。

(8/2/22)

★ カーカバード症

 『超・モンスター事典』を見ていると、時折カーカバードに長年吹きだまった悪しき気によって変異を起こしたという旨の記述があることに気付く。物見(サイトマスター)やクラタ族(クラッタマン)は元は人間だったが、吹きだまった悪によって今のような姿になってしまったという。これは種の汚染のようなものではないだろうか。明らかに矮小化している人馬もこういった一例と考えると腑に落ちる。カーカバードの謎の種族扱いされているミニオンも、ノームかドワーフあたりの変わり果てた姿なのかもしれない。
 バドゥ甲虫やスナタ猫のように、カーカバードの地名を冠した生き物もいる。これらの特異な生き物もこの土地によって捻じ曲げられた存在だと考えることができるだろう。女サチュロスに雄が見当たらない謎もこれで説明がつく。渾沌の影響と考えると如何なる状態であろうもありえる気がするから便利だ。

 このカーカバード症とも呼ぶべき現象は、本来長い時間をかけてゆっくりと狂った進化を引き起こしていると思われるが……どうやらこいつを濃縮させようと試みた者がいるようだ。言わずと知れた変異現象団子である。あの哀れなゴブリンたちや、団子を一掴みも一気喰いした愚かなアナランダ―の身体に起きる変化をみれば、汚染の過程で多くの脱落種がでたことは確実だろう。クラタ族は物見に比べて明らかに出来が悪い存在だが、それでも成功した部類だということだ……

(8/4/22)

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