★ トゥルパ

 『真・モンスター事典』について書いたエントリーの追記でも触れたが、KINの術などで呼び出されるような、鏡像のモンスターをトゥルパというらしい。
 鏡写しといえば、今回第三訳となるFFコレクション版では、第一巻から第三巻の表紙イラストがトゥルパ状態である。これは表紙イラストが本来横長で、一部の英語原文版では裏表紙まで込みの装丁であったものを、同じように採用したがためだ。かつて社会思想社版の『タイタン』もまたトゥルパであった。背表紙を超えて裏表紙まで迫力あるドラゴンが描かれていたのだが、これが鏡写しでない場合、背表紙側で繋がる配置にできない。本文が横書きであれば問題ないのだが、日本語は縦書き主流なのでこういう処置が必要となるのである。
 第四巻のみトゥルパにならないということは、このイラストのみ横長ではないことを意味している。以前探してみたとき、第四巻表紙イラストのみフルバージョンが見つからなかったわけだが、元々そうではなかったということだ。

 イラストのトゥルパの問題は、言語が書き込まれていたりすると致命的なことだ。「悪死」で知られる『サムライの剣』の表紙イラストなんかだと、採用は難しい。漢字について調べることも難しかったネット普及前、それも馴染みのない言語圏であれば気にしないという判断もあったかもだが、今の時代はまあ無理だろう。
 同じように、描かれている人物の利き腕が決まっていたり、例えば左目に傷があるなど、左右非対称なデザインであったりするとやはり難しいことになる。

 ここまで書いてきて思ったが、モンスターのほうのトゥルパも鏡像なのだから、左右反転しているはずだ。どこぞの世界では、リザードマンが左利きである理由が、右利きの者と剣を交える際に大きなダメージを奪うためといったような話もあるわけだし、技量点と体力点はオリジナルと同じでも一撃でやり取りするダメージは3点~4点といったアレンジはありな気がする。

(12/24/23)

★ 宵闇の魔法

 マンパン砦の中、行き止まりの部屋に《宵闇》の魔法がかけられている。この部屋は「トゲトゲした奴ら」こと大山嵐のテリトリーであり、不用意に踏み込んだ者を地獄送りにしているわけだが……この魔法は誰がかけたものであろうか?
 マンパンの大魔導は自分の身を守るために、砦のあちこちに魔法を施しているのは周知の事実だ。4つのスローベン・ドアの内3つは魔法が関与しているし、監獄塔の姿を隠したり、あるいは出現させたりもしている。だが、この部屋の魔法は大魔導の安全に関わっているとは言い難い。なにしろ行き止まりだし、何の秘密も隠されてはいないのだ。他に魔法がかけられた場所がマンパンにあるかといえば、ヒドラの胴体に幻影がしこまれているぐらいだろうか。ただ、これについては以前の考察で重要な意味がありそうだと思えなくもなかった。

 さてこの宵闇の魔法、大魔導が関与してないとしたら、いったい誰がかけたのだろう?
 最有力候補はノームのリッドである。ノームという種族がちょっとした魔法を使えるのは確かだ。『モンスター事典』や『タイタン』にもそう書かれている。リッドはこの宵闇の部屋と、第二のスローベン・ドアの秘密を握るヴァリーニャの部屋に通じる場所を持ち場としている。行き来する者をチェックし、怪しい人物がいれば衛兵を呼ぶのが仕事だ。そんな彼としては「トゲトゲした奴ら」には巣から出てきてほしくないだろう。あんな連中が出てきたら、面倒なことになるのは間違いないからだ。『真・モンスター事典』のヤマアラシの項目には、はっきりとマンパンの住人はこいつらを恐れていると書かれている。
 ヤマアラシは夜行性の動物だ。暗い場所を用意しておけば、そこから出てこようとはしないに違いない。宵闇の魔法で連中を一所に留めておけるがゆえに、リッドはこの場を任されているのではないだろうか。

(12/24/23)

☆★ 三本目の腕

 変異現象団子に見事に適応したアナランダーの脇腹からは、三本目の腕が生えてくることがままある。この腕は利き腕の下に生えてくるため、二本目の武器を手に戦いを有利に運ぶことができるというわけだ。というわけなんだが、その指示はちょっとあいまいだ。


今後は一度にふたつの武器を持って戦うことができるようになった。ふたりぶんの戦闘能力を持つことになったわけだ。(第四巻 パラグラフ544)

 これは創元訳における指示だが、具体的に戦闘時にどう処理すればいいのかさっぱりわからない。
 では次に創土訳を見てみよう。


これからは一つではなく二つの武器を使うことができる。今後は闘いに際しては自分をふたりと見なしてよい。(第四巻 パラグラフ544)

 少し具体的になった。自分を二人とみなすということは、攻撃力を求めるサイコロを二人分振るということだろう。それぞれ手にした武器によってボーナス値は異なる。ターン毎に二回の攻撃力算出なのだから、うまくすれば二回分のダメージを与えられるということだ。おそらく運試しも二回できるに違いない。

 この戦闘ギミックは、AFFの攻撃度数(AFF2では攻撃体数)へと発展していったと思われる。第四巻刊行時はまだ『ファイティング・ファンタジー』も出ていなかった。今なら戦闘処理も簡単に予想できるが、当時は戸惑った読者も多かったのではなかろうか。もっとも、この後は戦闘が発生することなくデッドエンドに至るので、実際にこの戦闘処理が行われることはないのであるが……

(12/24/23)

【追記】
 敵側であるが、スログの食糧庫のちょっと前にあたる中庭にいる赤目たちとの複数戦闘ルールに近い。
 赤目といえば、こいつらと遭遇した際に選択肢を誤ると腕を焼き切られてゲームオーバーということもあるわけだが、もう少しがんばって先へ進めば、肉団子によって腕が再生するという可能性もあったわけか……切られた腕の下からもう一本生えてくれば、左右でダンチにはなるものの武器だって振るえるし、魔法の行使にも支障はあるまいて。

(12/28/23)

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