★ 影武者考察

『タイタン』にみられる過去のマンパンの大魔導が、監獄塔で遭遇する妖術師にそっくりなのは、今更語るまでもあるまい。自分は随分と前からこの妖術師の体は、大魔導本人の死体を蘇らせたものではないかと考えていたわけだが……ここへきて、別の可能性が出てきたことを認めざるを得ない。

 トゥルパなる怪異について、『真・モンスター事典』ではこのように説明している。


トゥルパはもともとスローベンの死霊術士ギルドによって作られたと考えられている。おそらくは〈魔法大戦〉以前に遡る文章を元にしたのだろう。トゥルパの鏡は、黒曜石の一枚板で作られた全身鏡でスローベンのルーン文字が刻まれた金属製の枠があるため、容易に見分けることができる。これらのトゥルパの鏡は、邪悪なスローベンの達人たちがテレパシーによる制御の下で、自身の思考形態を物理的に顕現させるために作る。

 以前の考察では大魔導が冥府の魔王に転生した後、影武者として自らの死体を蘇らせたのではないかと結論した。七匹の大蛇を切り取ったヒドラの首から産み出した彼には、この手の実績がある。また、砦にスローベンドアを設置したことからも、スローベンのネクロマンサーギルドとのつながりがあるに違いないというあたりがその根拠だった。
 今回の仮説も、やはりスローベンが関係している。影武者の身体が、転生前のそれであるというところは変わらないが、その由来をトゥルパに求めるという点が違うところだ。先に見た通り、トゥルパもまたスローベンの秘儀である。トゥルパは「自身の思考形態を物理的に顕現」させた存在なわけだから、魔法の腕前も記憶も、なにもかもが術士そのもののはずだ。影武者として働く件の妖術師が操る魔法は見事なもので、48の術を修めたアナランドの勇士をも上回った。
 ここに以前の仮説である「蘇った死体」説の弱点がある。いかにすぐれた術士の死体とはいえ、必ずしもそのまま蘇るとは限らないからだ。七匹の大蛇を見るがいい。まったく違う生き物として再誕している。だがこの点、トゥルパならば確実だ。

 マンパンの統治形態と諸王の冠の相性の悪さについて、冗談気味に取り上げたことがあるが、これについても思うところがある。そもそも、何の考えもなしに冠を盗んだはずがない。アナランドのみならず、フェンフリー同盟を敵に回す行為だ。モーリスタシアを除けば、ブライス、ラドルストーンと、カーカバードはフェンフリー同盟国に囲まれているわけだから、それなりに熟考の上で実行に移したはずなのである。
 冠を有効活用するには、砦に絶対の影響力を及ぼせる姿で着用する必要がある。つまり冠を得た大魔導は、もうファレン・ワイドの内に身を潜める必要はなくなったと考え、影武者の身体への“引っ越し”を計画していたのではないだろうか。身体を取り換える儀式に何らかの条件――天体の位置など――があれば、アナランドからの刺客が来た時にはまだファレンに宿っていたとしても辻褄は会う。
 料理番のスログにKINをかけたときの反応で分かるように、実際に以前の姿にはマンパン砦を統治するのに一定の効果があるわけだが、彼は冥府の力を手に入れるためにこの利点を手放さざるを得なかった。しかし、それも計画の一部であり、最初から再び元の身体にもどるつもりがあったのだとしたら……死体を変質させて蘇らせた身体よりも、己の写し身であるトゥルパのほうが精度が高いと判断していてもおかしくはあるまい。大魔導がスローベンの秘儀に通じた「達人」であるなら、なおさらだ。

 トゥルパは鏡像だ。つまり、この説が正しければ……生前の姿と影武者は鏡写しなはずである。
 まずは影武者が描かれている、第四巻のパラグラフ198のイラストを見てみよう。机の上には書類が広げられているが、注目すべきはペンとインク壺の位置だ。影武者から見て、右側に置かれている。これは影武者が右利きであることを示していると言えよう。次は、生前の姿を描いたイラストだ。第四巻の表紙については、時系列がわからないので除外するとしよう。『タイタン』には二枚のイラストが載っている。「善の勢力」のコレタスのエピソードと、「悪の勢力」の大魔導本人に触れているところだ。一枚目は手に何かをもっているわけでもなく、彼の利き腕がどちらかはわからない。二枚目においても、両手からそれぞれ別の魔法を放っている。『タイタン』に掲載されたイラストからは、決定的なものは見つからなかったというわけだ。
 だが、あきらめるのはまだ早い。第四巻のパラグラフ321を見てほしい。このパラグラフのイラストには、ファレン・ワイドが描かれている。アナランダーに不意打ちをくらわそうとして、できなかったシーンなのだが、殴るための武器として選んだ真鍮の壺は、左手に握られているのがわかるだろう。ファレン・ワイドは、左利きということだ。この時、ファレンが精神的にも大魔導その人であることは以前に述べた通りなので、内なる大魔導も同じくと考えることはできる。つまり、生前の彼もまた、左利きだったということだ。
 左利きと右利き。この二人は鏡写しなのだ。第四巻を隈なく捜索してみても例の黒曜石の鏡は見当たらないが、マンパン砦には未知のエリアがある。どこか秘密の場所に隠してあるに違いない。

(12/26/23)

★ 重ね掛け

 アナランドの魔法というものは、両腕を使っての動作が必要である。片腕を失って魔法使いを引退した老人もいるし、捉えられて縛られた主人公が魔法に失敗するというシーンでもはっきりとそう明言されている。
 だが、これはあくまで術の発動の条件だ。BIGなどを使えばわかるが、体躯を三倍にした後、普通に戦闘を行ったりするのだから術の継続には腕の動きが束縛されるということはない。つまり術の効果が出ている間に、次の術を継ぎ足すことはできるのではないだろうか?

 先に挙げたBIGを初手としよう。第一巻の丘巨人戦では技術点を倍にすることができた。攻撃の前にもっと上を目指そう……PEPなんてどうだ? これで剛力無双が追加される。BIGは戦闘中は維持できるわけで、戦いには何ターンもかかることを考えるとまだ術を加えることはできるだろう。よし、次はNIPといこう。神速も君のものとなる。とどめにSIXで六人になれば、これはもうどんな敵が来ても遅るるに足らずだ。冥府の魔王でさえ捻りつぶすことができるだろう。即死の鼻息も5/6の確率でハズレをつかませることができるしな!

 BIGで2点、PEPとNIPがそれぞれ1点、SIXが2点の合計体力6点の消費でこれなら、断然お得というものであろう!

(12/27/23)

★ 双方向ソーサリー!

『ソーサリー!』は単方向型のゲームブックだ。先に進むことはできるが、引き返すことはできない造りになっている。このため、アイテムや情報の取捨選択というか取りこぼしとかが起きるわけである。デッドエンドブロックなんかも同じくだ。
 ところで、ゲームブックには双方向型というものもある。『ドルアーガ三部作』などに代表されるこのシステムだと、プレーヤーは同じ場所を行き戻りできる。『火吹き山の魔法使い』や『悪夢の国のアリス』など、迷宮部分にのみこのシステムが搭載されているというタイプもあるわけだが……この方向の最大拡張版はTRPGということになるだろう。後戻りを阻むものはシステムのみだったのだ。普通に考えて、やっぱり元の分かれ道に戻ってみるか! ということは冒険ならあり得ることではないか。

 しかしゲームブックで双方向となると、基本的には全てのイベントに遭遇できることになる。『ソーサリー!』で安易に導入すれば、七匹の大蛇を探し求めてバクランドを何往復もするなんてことも可能だ。カレーの四行呪文を探すのも随分楽になるだろう。これは、何か別のゲーム性を加える必要がありそうだ。ゲーム全体を引き締めるようなギミックを。
 個人的には、タイムリミットを設けるのが良いように思う。プレーヤーには知らされないが、カントパーニ門から旅立ってから●日以内に冠を取り戻さないといけないとするのだ。じっくり探索することを許すが、時間をかけすぎると、ある日突然マンパンの軍勢が南下を始め、すべては手遅れ……というバッドエンドになってしまうという形式ですな。

(12/27/23)

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