螺旋の夜の中でくちづけは意味を変えてゆく

「Sweet Silence」

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家に着くと豪はジーパンのポケットから家の鍵を取り出した。 普段、家の鍵なんて持ち歩かない豪に目でどうしたんだ?と問うと 豪は鍵を開けながら「父ちゃんは休日出勤、母ちゃんは堀向日のおばさんち」という答えを返した。 なるほど。 豪が自分で鍵持ってくるとも思えないから、豪が家を出るとき母さんが渡したんだろう。 中に入り、靴を脱ぐと靴下までビッショリだった。 豪に持ってこさせたタオルで軽く水気を取ると、そのままお風呂場へ直行する。 湿気を含んだ布が身体に纏りついて気持ち悪い。 シャツのボタンを半分まで外した所で、ふと着替えがないことに気づいた。 かといって、濡れた格好で自室まで行くのも嫌だし・・・ と、考えるまでもなく、新しいものを持ってきてもらうのが一番だという結論に達する。 「んだよ、兄貴?」 僕に大声で呼ばれた豪は脱衣所にめんどくさそうな顔を覗かせた。 「あのさ、悪いんだけど新しい服と下着、持ってきてくんない?  僕、こんな格好だし・・・」 少し腕を広げて見せると豪は「ふぅん」という肯定でも否定でもない返事を返し脱衣所に入ってくる。 「なんだよ」と言おうとして豪の目とぶつかった。 ヤバイ。 思った時には右の手首を掴まれていて。 「その格好・・・誘ってんの?」 耳元で囁かれて、動けなくなった。              φφφ    φφφ    φφφ 返事がないのをいいことに俺がシャツのはだけた場所から手を滑り込ませると烈兄貴は身じろいだ。 顔をのぞき込むと困ったような顔。 でもそれは拒絶ではないと知っている。 少し意地悪をするつもりで「嫌なの?」と聞くと、顔を俯かせた。 「母さんがいつ帰ってくるか、わかんないし・・・」 言い訳じみたコトバ。 「おばさんとこで飯食ってくるから俺らは何かとって食えって留守電入ってた」 「・・・・・・」 それでも顔を上げない兄貴に「兄貴が嫌なら何もしない」と言ってやると、やっと顔をあげた。 正面から俺を見据えてくる目。 それから不敵に笑って 「うそばっか」 と、俺の首に腕をまわした。 満足した俺はとりあえずそれ以上手を侵入させるのを止めて、優しく兄貴に口付けた。 彼女にするのとは違うキス。 それよりもっと優しくて。 甘くて。 悲しくて。 せつない。 兄貴とのキスは目を閉じない。 それは暗黙の了解で。 目を閉じれば、瞼に浮かんでしまう。 やさしい両親の顔。 自分たちのことをよく知る旧友の顔。 付き合ってるオンナの顔。 ・・・・・まともに顔あわせたこともない烈兄貴の彼女の顔さえ。 せっかくの甘い時間、そんなモノに囚われたくないから。 しっかりと、目を開けて。 同じように自分を見つめてくる瞳を受け止める。 舌を絡めたた深い口づけを繰り返す。 その合間に下唇を甘噛みしてやると、兄貴の目が細められる。 それが妙に嬉しくて、何度も離しては角度を変えて。 唇を離し、兄貴の細い身体をそっと抱き込むと、その身体が異様に冷たいことに今更気づいた。 「・・・冷てぇ・・」 「誰のせいだよ」 呆れた声。 「・・・・・・ゴメンナサイ」 自分が悪いと思った時には謝る。 コレは烈兄貴の教育の成果だ。 「わかってんなら責任取れよ」 「まかせてv」 君が軽く言うから、俺も軽く答える。 ホントは、もっともっと・・・・・・だけど・・・
束の間の恋をせがむ言い訳は、せつなすぎて

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最初、あまりに受け受けしい烈を書いてしまい、再トライ。 ・・・って、あんま変わってないかも。 豪さまをカッコ良くしよーとするとどーしても烈が・・・あうぅ。(ジレンマ) あいこはこの目をあけたままちゅぅvが書きたいが為にこのお話を書いたのです。 ってことでノルマ達成。おめでとう、自分。