労働者派遣法 24年改正

労働者派遣法が、平成24年改正されました。
改正項目には、24年10月1日に施行されるものと、27年10月1日に施行されるものがあります。
その内容を簡単に紹介させていただきます。
断り書きがあるもの以外は、24年10月1日に施行されているものです。

[1]日雇派遣の原則禁止と、その例外

1.日雇派遣の原則禁止

日雇による人材派遣は原則禁止となりました。
ここでいう日雇とは「日々または30日以内」の雇用です。

雇用期間を「1ヵ月」として雇用する場合、30日以下の月があるので、この禁止規定に抵触することになります。

認められる最短の期間は「31日以上の期間」で派遣社員を雇用する場合です。
雇用期間が31日以上であれば、派遣契約における派遣期間は30日以下でも認められます。

ただし、雇用期間と派遣契約期間にあまりにも差がある場合には脱法行為ととられるおそれがあります。
ご注意ください。

なお、雇用契約が更新によって31日以上雇用されることになる場合は認められません。

2.日雇派遣が認められる「業務」と「派遣社員」

・日雇派遣が認められる「18種類の業務」というものがあります。

これら18種類の業務を行う派遣の場合、雇用期間の規制はありません。

  1. 情報処理システム開発
  2. 機械設計
  3. 事務用機器操作
  4. 通訳、翻訳、速記
  5. 秘書
  6. ファイリング
  7. 調査
  8. 財務
  9. 貿易
  10. デモンストレーション
  11. 添乗
  12. 受付・案内(駐車場管理等を除く)
  13. 研究開発
  14. 事業の実施体制の企画、立案
  15. 書籍等の制作、編集
  16. 広告デザイン
  17. OAインストラクション
  18. セールスエンジニアの営業、金融商品の営業

・下記に該当する人は、日雇派遣が許される「派遣社員」となります。

  1. 60歳以上の高齢者
  2. 昼間学生
  3. 副業として従事する者・・・生業収入が年500万円以上
  4. 主たる生計者でない者・・・本人の収入が世帯全体の50%未満であり、世帯全体の収入が年500万円以上であること

これらの要件を満たしているかは、それぞれ次の確認方法によります。

60歳以上の高齢者 年齢が確認できる公的書類など
昼間学生 学生証など
500万円以上の収入要件 本人・配偶者などの所得証明書、源泉徴収票の写しなど

・確認した結果は記録が必要

上記各種書類を保管することまでは求められていませんが、どのような書類により確認をしたかが分かるように派遣元管理台帳などに記録しておくことが必要です。

・認められる日雇派遣を行う場合

派遣会社(派遣元)は、派遣社員が行う具体的な業務内容について派遣先からヒアリングし、その業務内容に即した安全衛生教育を雇入れ時に行うなど、安全衛生確保のための措置をしなければなりません。

派遣先は、派遣社員が行う業務についての情報を派遣会社に対し積極的に提供し、派遣会社から雇入れ時の安全衛生教育の委託の申し入れがあった場合には、可能な限り応じるようにしなければなりません。

そして派遣会社と、派遣先は、相互に、雇入れ時の安全衛生教育が確実に行われたかどうかを確認しあうことが求められます。

[2]グループ企業派遣の制限

グループ企業内の派遣会社からの、グループ企業への派遣割合を80%以下にしなければならない制限があります。

そして派遣会社(派遣元)は、決算終了後3ヵ月以内に、「グループ企業内派遣の派遣割合」を厚生労働大臣に報告しなければなりません。 (報告は、その派遣会社全体として行います。事業所ごとではありません。)

1.「グループ企業」の範囲

派遣会社(派遣元)が連結子会社の場合
  • 派遣会社の親会社
  • 派遣会社の親会社の子会社
派遣会社(派遣元)が連結子会社でない場合
  • 実質的に支配している派遣会社の親会社等
  • 実質的に支配している派遣会社の親会社等の子会社等

・実質的支配の判断は

  • 議決権の過半数を所有
  • 資本金の過半数を出資

などによります。

2.グループ企業派遣割合の計算方法

グループ企業派遣割合の計算方法

派遣割合は、派遣社員が就業した労働時間によって計算します。
定年退職者は、派遣割合の算定から除外されます。 (グループ企業の退職者に限りません) (60歳以上定年退職者の確認は、退職証明、離職証明書などで行います) %表記にした場合の小数点第2位以下を切り捨てます。

[3]離職後1年以内の退職社員の派遣禁止

派遣会社(派遣元)が、退職して1年たたない人を、その退職した会社に派遣することは禁止されています。

同じく、派遣先となる会社が、自社を退職して1年たたない人を、派遣社員として受け入れることは禁止されています。

退職社員の、元の雇用形態は問いません。
正社員だけでなく契約社員、パート・アルバイト社員なども規制の対象になります。
ただし、60歳以上の定年退職者は例外として、禁止対象からは除外されます。

[4]マージン率などの公開

1.派遣会社(派遣元)は、

  1. 派遣社員の数
  2. 派遣先の数
  3. 派遣社員に支払う給与と、派遣先から受ける派遣料金との率(マージン率)
  4. 教育訓練の内容、実施期間、費用負担の有無など
  5. 派遣先から受ける派遣料金の平均額
  6. 派遣社員の給与額の平均額
  7. その他参考になると認められる事項(例:福利厚生に関することなど)

などを公開しなければなりません。

公開する情報は、事業所ごとです。
(派遣会社全体ではありません。)

2.マージン率の計算方法

マージン率の計算方法

マージン率の計算は事業所ごとに行うことが原則です。
事業所が他の事業所と一体的な経営を行っている場合は、その範囲内で計算することもできます。
%表記にした場合の小数点第2位以下を四捨五入します。

3.マージン率などの情報提供の方法

  • 事業所への書類の備付け
  • インターネットの利用
  • その他の適切な方法

のどれかによります。

[5]派遣料金額の明示

派遣会社(派遣元)は、派遣社員に対し、派遣先から受ける派遣料金の額を明示しなければなりません。

1.明示するタイミングは、

 (1) 雇い入れ時(労働契約の締結時)
 (2) 派遣の開始時
 (3) 派遣料金の変更時
 です。

ただし、(1)雇い入れ時と、(2)派遣開始時の派遣料金が同じ場合は、(2)派遣開始時の明示は省略することができます。

2.明示する派遣料金は、

  • その派遣社員本人の派遣について、派遣先から受ける派遣料金額
  • その派遣社が所属する事業所の、派遣先から受ける派遣料金額の平均額

のどちらかです。

3.明示方法は、

  • 書面の交付
  • FAX
  • 電子メール

などによります。
口頭などによる明示は不可とされています。

[6]派遣契約が中途解除された場合

派遣先の都合により派遣契約を中途解除することになった場合
派遣先は、

  • 派遣社員の新たな就業機会の確保
  • 休業手当などの支払いに必要な費用の負担

などをしなければなりません。

派遣契約の中途解約時に、上記のような派遣先の義務に関する事項を派遣契約に明示しなければなりません。

[7]派遣社員の待遇について

● 派遣会社(派遣元)

同種の業務に就く派遣先の社員の水準や一般水準など、職務内容や成果などを考慮して派遣社員の給与額を決定するようにしましょう。

教育訓練や福利厚生などについて、同種の業務に就く派遣先の社員となるべく同じくらいになるようにしましょう。

● 派遣先

派遣会社(派遣元)に求められた場合には、派遣社員と同種の業務につく自社社員の給与水準や教育訓練などに関する情報を、なるべく提供するようにしましょう。

また、派遣会社に求められた場合には、派遣社員の職務評価などになるべく協力するようにしましょう。

[8]派遣社員を雇い入れる際の説明

1.派遣会社(派遣元)が派遣社員として雇い入れる際には

次のことを説明しなければなりません。

  1. 給与の見込み額や、その他の待遇に関すること
  2. 派遣会社の会社概要など事業運営に関すること
  3. 人材派遣についての制度の概要

2.説明方法

・書面の交付、・FAX、・電子メール、その他の方法により説明することになります。
給与の見込み額については・書面の交付、・FAX、・電子メールのどれかによって説明しなければなりません。

[9]有期雇用である派遣社員の無期雇用への転換推進

派遣会社(派遣元)は、次のような派遣社員に対し

  • 派遣会社に雇用された期間が通算して1年以上である有期雇用の派遣社員
  • 派遣会社に雇用された期間が通算して1年以上である人を派遣社員として雇用する場合 (登録型派遣で、登録中の労働者を新規雇用する場合など)

  ↓

無期雇用への転換推進措置として次のようなことをするよう努めることが求められます。

  • 無期雇用の派遣社員または無期雇用の一般社員として雇用する機会を与える
  • 紹介予定派遣の対象とすることで、直接雇用を推進する
  • 無期雇用の社員への転換を推進するための教育訓練等を実施する

[10]みなし雇用(労働契約申込みなし制度)

(これは平成27年10月1日施行のものです)

派遣社員を受け入れる派遣先企業が、

  • 労働者派遣の禁止業務(港湾運送業務、建設業務など)に派遣社員を就かせた場合
  • 派遣許可がない会社から労働者派遣を受け入れた場合
  • 派遣受け入れの制限期間を超えて派遣を受けた場合
  • いわゆる偽装請負にするなど、悪質に「派遣契約」にせず労働者派遣を受け入れた場合

その違法状態が発生した時点に、派遣先が派遣社員に対して雇用の申し込みがあったとみなされます。
その派遣社員の労働条件は、派遣会社(派遣元)の労働条件と同一の内容になります。

→その社員は、派遣先企業の「社員」として法の保護を受けられることになります。



(注意)労働者派遣法および改正事項は、ここに記載した内容がすべてではありません。

当事務所は、人材派遣が適法・適正に行われることを願います。


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