派遣社員の労働保険・社会保険適用
社会保険が適用になるのか、適用にならないのかは、経営において人件費コストに直接影響してくるものです。
特に人材派遣会社にとっては、その損益・収支を大きく左右するものです。
労働保険、社会保険適用の基準を知って、正しく運営していきましょう。
社会保険の構成
社会保険は次のように分かれます。
社会保険 (広義) |
社会保険 (狭義) |
健康保険 (介護保険) |
厚生年金保険 | ||
労働保険 | 労災保険 | |
雇用保険 |
それぞれについて見ていきましょう。
社会保険(健康保険・厚生年金保険)
まず、
●派遣社員の「年齢」による判定と
●「働く期間」による判定
の2つがあり、
つぎに、
・「労働時間・労働日数」による判定
があります。
●派遣社員の「年齢」による判定
健康保険 | →年齢は適用の有無に関係しないので、下記の「働く期間」「労働時間・労働日数」により判定する。 |
厚生年金保険 | →70歳未満の場合は、下記の「働く期間」「労働時間・労働日数」により判定する。 70歳以上は適用なし。(「期間」「時間」に関係なく適用なし) |
●「働く期間」による判定
次に該当する場合は、社会保険の適用は除外になります。
2ヵ月以内の期間で臨時に使用される人(期間雇用者)と、日々雇い入れられる人。 | 2ヵ月以内の期間を満了してなお引き続き使用される人、日雇いで1ヵ月を超えて引き続き使用される人については、その期間を超えた日から適用になる。 |
季節的な業務に使用される人 | 最初から4ヵ月を超える労働契約の場合は、入社時から適用になる。 |
臨時的な事業に使用される人 | 最初から6ヵ月を超える労働契約の場合は、入社時から適用になる。 |
(注意)
派遣契約を2ヵ月とし、その更新を繰り返した場合、社会保険の適用はあります。
派遣社員本人も保険料負担を避けたいことを理由に、社会保険の加入を拒む人もいますが、社会保険の適用・不適用は、本人の意向で決めることはできません。
労働時間、労働日数により客観的に決まるものです。
誤った処理や不正な処理が明らかになった場合、最長2年間さかのぼって、保険料を徴収されることにもなります。
派遣期間(=雇用期間)が、上記の期間を超える場合、さらに次の判定により、社会保険の適用の有無が決まります。
・「労働時間・労働日数」による判定(平成28年9月まで)
その事業所に雇用されている社員の | |||
1日または1週間の 所定労働時間 |
所定労働時間 | ||
および | が | の3/4以上 → 適用 | |
1ヵ月の所定労働日数 | 所定労働日数 | ||
(3/4未満 → 不適用) |
(例) 会社の所定労働時間が、1日8時間・1週40時間の場合
派遣社員の所定労働時間が
1日6時間 または 1週30時間以上 → 1ヵ月の判定へ
1日6時間未満・1週30時間未満であれば → 不適用
- 1ヵ月の「所定労働日数」の判定ライン
- 1ヵ月19日の場合 → 14.25日
- 1ヵ月20日の場合 → 15.00日
- 1ヵ月21日の場合 → 15.75日 以上であれば適用
- 1ヵ月22日の場合 → 16.50日 未満であれば不適用
- 1ヵ月23日の場合 → 17.25日
- 1ヵ月24日の場合 → 18.00日
・平成28年10月からの社会保険適用の判定
○ 派遣会社(派遣元)が特定適用事業所(※)に該当する場合
勤務時間・勤務日数が常時雇用者の3/4未満であっても、次のすべてに該当する場合は、「短時間労働者」として社会保険の適用があります。
- 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
- 雇用期間が1年以上見込まれること
- 月額給与が88,000円以上であること
- 昼間学生でないこと
○ 派遣会社(派遣元)が特定適用事業所(※)に該当しない場合(平成31年9月30日まで)
その事業所に常時雇用されている社員の | |||
1週間の所定労働時間 | 所定労働時間 | ||
および | が | の3/4以上 → 適用 | |
1ヵ月の所定労働日数 | 所定労働日数 | ||
(3/4未満 → 不適用) |
(※)特定適用事業所とは
法人番号が同一である事業主(=派遣会社・派遣元)の被保険者数(*)の合計が、1年で6ヵ月以上、500人を超えることが見込まれる事業所
(*) 被保険者数は、短時間労働者を除き、共済組合員を含む。
派遣の場合の派遣社員の社会保険
派遣の場合、派遣就業にともなう雇用契約が終了した後、1ヵ月以内に、同じ派遣会社(派遣元)によって、次の1ヵ月以上の派遣・雇用が確実に見込まれるときは、雇用関係が継続しているものとして、社会保険の適用は終了せず、そのまま継続されます。
労働保険(労災保険・雇用保険)
労災保険 | →年齢や労働時間の長短にかかわらず、派遣社員全員に適用あり。 |
雇用保険 | →派遣社員の「年齢」と「1週間の労働時間」「雇用される期間」により適用の有無が決まる。 |
●派遣社員の「年齢」による雇用保険の判定
雇用保険 → 65歳以上で新たに雇用された場合、適用なし。
(ただし、65歳未満で雇用されていた人が65歳になった場合「高年齢継続被保険者」として適用あり)
●「1週間の労働時間」「雇用される期間」による雇用保険の判定
1週間の労働時間 | 20時間以上 | 雇用保険の適用あり |
かつ | ||
雇用される期間 | 31日以上 |
なお、派遣の場合、1つの派遣会社(派遣元)との雇用契約が31日未満であっても、雇用契約と次の雇用契約との間隔が短く、その状態が通算して31日以上続く見込みがある場合は、雇用保険の適用があります。
この場合、派遣先の会社が変わっても判定には関係ありません。