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LOVELY、LOVELY、HAPPY ! - summer festival -





窓の下にアイスを齧っている竜くん、由希先輩たちが見える。
「それで一宮へばってんのか〜」
私の横に立って塩谷先輩が呟いた。
「文章というより ほとんど単語ですけどね」
文を考える余裕はないらしい。 伝えたいことだけ端的に言葉に出している感じ。
塩谷先輩がウンウンと頷いた。
「まぁ始めはそーなるよな〜」
「最近はもうヤケクソみたいで。今朝 『 グッモーニン! 』 にかっ☆ と笑われたときは、とうとうオカシくなっちゃったのかと思いました」
「あはは!」
一宮ってときどきキレるよな〜と可笑しそうに言った。

母さまも強引なことをする。
点数を見たけれど、そんなに悪くもなかった。
(アリーは、有りえない間違いが多数あったので許せなかった模様)
母さまに どうしてこんな、と訊けば、
『真琴のダーリンになる相手が英語も話せなかったら困るでしょう』
とアッサリした答えが返ってきた。
丁度いい機会なので身に付けてもらおう、という計算らしい。

「でもいいなあ、 俺も英語 特訓したいよ」
「そうですか?」
「だって映画の本場だし!!」
私が訊くと、塩谷先輩は目をキラキラさせた。
鈴木先輩が宇宙のことを話しているときや川原先輩がサッカーのことを話しているときと同じ目だ。
「ああいうデッカイの作ってみたいよなぁ〜」
目下の目標は字幕なしで観ることだけどさ、と照れたように笑う。
「うーん、こう見るとやっぱ藤崎もいいよなー。撮りたいな〜」
「交渉してみたらどうですか?」
「一年のときに先輩がしたけど断られてるんだよね」
確かに由希先輩ってあまり興味がなさそう。
「あいつって自分の顔の利用価値を知ってて利用はしてるけど、好きではないんだよな」
だから写真とかもあんまり撮らないらしいし、と塩谷先輩が言う。
「よく見てますね」
「人間観察は映画の第一歩だからさ」
「塩谷先輩は役者さんには興味はないんですか?」
役者の人は役作りのために人を観察すると聞く。
「ん〜、藤崎と一緒で、わがままなんだろうな。人の作った世界じゃ満足できないというか」
そう苦笑する。
「あれ?」
少し高い声を上げて塩谷先輩が窓下を覗き込んだ。
「え?」
「あの子、確か…」

桐香ちゃん!

竜くんにベッタリくっついている。 必死に離そうとしているけれど、結局 桐香ちゃんには甘い竜くんは、力が入れられないらしく首に齧り付かせたままにしている。
なんだろう。
遊びに来て、と言っているんだろうか。
それとも…一緒に暮らそう、とか?

「…ぷっ」
窓に張り付いた私の姿に塩谷先輩が笑った。
「行きなよ。今日はもう終わったしさ」
「え、あ、ハイ!」
お疲れ様でした、と声を掛けて慌てて教室を出た。
そんな私を塩谷先輩が眩しそう見ていたことも知らずに。


「ねーいいでしょ! りゅう!!」
「やだよ」
何かを強請ねだっている桐香ちゃんに素っ気なく竜くんが応えている。
妹さんに嫉妬なんて、と思うけど、竜くんの中では私より桐香ちゃんの方が上だから、ただ焦ってしまう。
家族なんだから当たり前、と思うのに、 落ち着かなくなる。






つづく






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