本格的な商業・サービス業向け補助金を作る  

補助期間中も収益を上げられるようにしたい。

私が考えた対応策〜(b)原材料費を対象から外し、収益を上げながら補助事業できるようにする
補助金をその性格別に分類すると、「創業(開業)補助金」「新製品開発補助金」「販路開拓補助金」に分かれます。しかし、そもそもこの区分を作っているのは補助金を出す側の都合でして、「似たような事業が多いではないか」と行政内部から圧力がかかると必要以上に類型化が進みます。
役人は物事を細分化するのが好きなのです。

しかし現実の企業活動は、そのような行程に分かれて進行しているわけじゃありません。
商業・サービス業の場合、これらが同時進行することが多いと考えた方が自然でしょう。
一般的に、店舗を開いて商品を売る前には、その商品をどんな客層が買ってくれるのか、事前に想定するものです。
「店構えを作ってから、そこに並べる商品を開発し、商品ができてからそれを買ってくれるお客を探す」なんてことは、しません。こんなのは当たり前です。
しかし、補助金の各ステージごとに区分してしまうと、「そういう手順になる」ということが前提にされるのです。どう考えても、何か変です。
商業・サービス業では事業開発と販路開拓が同時進行する→

実は、研究開発型の製造業の場合、こういうことが成り立ちます。
例えば、液晶テレビが商品化されるためには、まずは、液晶の技術開発が必要です。それが何年も続きます。
やがて、それがテレビに組み込まれます。しかし、その時点では、まだ一般消費者には手が出ない値段です。
そこで、どういう消費者層が、液晶テレビを買ってくれるか調べ、販売方法などを工夫し、コマーシャルなどを流します。
そういうモノに対して、補助金を出すとすれば、創業・開発・販促の各段階が分かれていても、何ら差し支えないのです。だから、研究開発型の企業は、複数のステージに区分けされた支援制度を望みます。
それはそれで正解です。
ですが、そのやり方を商業・サービス業に当てはめるのは、間違いだと思います。
開発補助金は、収益が上がる前に終了しなければなりません。

また、商業・サービス業の企業は、とにかく、収益を早く上げたいと考えるようです。
創業補助金の説明会で参加者に質問を聞くと、「収益が上がった場合、いくら返すのですか」という質問が、寄せられます。
補助金には、収益が一定以上上がった場合に返還するという、「収益納付」の制度が付いているからです。
ですが、そんなに簡単に収益が上がるもんではありません。
収益納付の制度も見直すべきかと、思います。企業の意欲を削ぐのは得策とは思えません。

なぜ、創業補助金説明会でそんな質問が最初に出るかというと、参加された経営者が、「量販する商品の原材料費に補助金が投入できる」と勘違いしているからです。
量産される商品の原材料に補助金が投入されるとすれば、商品価格を抑えることができますので、収益がグッと上がります。
商業・サービス業の場合、経営者は自社の新製品が「絶対に売れる」と信じ切っている場合が少なくありません。そうでなければ、とても企業経営などできないからです。
その材料費に行政がお金を出してくれるというのなら、こんな美味しい話はないのです。原材料を仕入れて商品化し、一般に売るというのが、商業・サービス業の、ごくごく当たり前の姿なんです。そういう企業に、「それでは対象となりません」と説明するのは、とても辛いです。
新商品が開発できたとしても、それが実際問題として売れるかどうかは、売ってみなければなりません。だから、テスト販売が必要となってきます。
「いくらなら売れるか」を確認することも重要なのですが、「予定した価格では買ってくれる人がいない」という、厳しい現実をいち早く知ることも、また、重要なのです。

実際の補助金制度で、量産化のための材料費を認めているものは、私の知る限り見あたりません。
補助金で材料費が認められるとしても、それは試作品開発のための材料費です。
それでは、あまり有難味が感じられません。

有難味がないのであれば、思い切って「原材料費は補助対象としない」と決めます。
こうすれば、材料費の横流しや、試作品と偽って量販品を売る、などの不正を防ぐことができます。

試作品の材料と量産品の材料は同じです。このため、「試作品用の原材料と称して購入した材料を、そのまま販売品に転用、あるいは、他社に横流しする」という不正は起こります。その峻別のために支援する側は複雑な事務を求められます。企業には大きな負担になりかねません。

そして、その代償として「補助対象期間内に収益を上げることもできる」というメリットを加えます。
「補助対象期間内も、どんどん売ってください」というわけです。
そうすれば、テスト販売は全面解禁にできます。
展示会での商談はもとより、即売会だって開催できます。
量産化を進め、実際の販売を行いながら、補助対象事業も回転させていくことができるようになります。
補助対象期間内に収益を上げることのメリットは、商業・サービス業にとってはたいへん大きいのです。

商業・サービス業の場合、試作品を作ることは少ないですから、原材料費補助は製造業ほど重視されません。
一日でも早く収益を上げたい企業のために、「原材料費は出ないけど、営業活動を同時進行できる補助制度」を作ってみてはどうかと、思うんです。
財産処分・生産転用・目的外使用→


メニューに戻る   次のページへ