月夜裏 野々香 小説の部屋

    

新世紀エヴァンゲリオン 『一人暮らし』

 

NERV すちゃらか物語

 

 第3使徒戦後

 NERV事務局

 「・・・洞木君。被害集計は、出たかね」 久坂局長

 「はい、マギで承認されました」 洞木コダマ

 集計された損失額を見て、ため息しか出ない所員。

 さらに、戦傷者、戦死者の見舞金や医療費、ほか、法制上の違約金も加算されてくる。

 「・・・もしもし、葛城一尉を・・・」

 『・・・はい』

 「もしもし、久坂だが、そっちに送った。頂上決戦の損失額の集計は見たかね・・・・・」

 『い、いま・・・は、拝見、させていただいています・・・・あ、あのう・・・』

 「もちろん、碇司令にも送っている。わかっていると思うがね・・・・・」

 『あっ あのう・・・・こ、こちらにも、じ、事情が・・・』

 「金がなきゃ!! 何も出来ないんだよ!!!」

 『でっ でもっ・・・』

 がちゃん!

 受話器が叩き付けられ、切られる

 「洞木君。再建の優先順位は?」

 「はい、メルキオール、バルタザール。カスパーの所見と、統一見解です」

 「メルキオールでやりたいな・・・」

 「それでは、バルタザールの見解にあるように士気の低下と日本政府の介入が予想されます」

 「はぁ〜 統一見解だろうな。委員会は、何と?」

 「不信任の監察要求を求めています。ほか抗議文が各所から殺到しています」

 「追加予算は?」

 「まだです。碇司令の弁解を聞かないと収まりそうにありませんね」

 「だよな・・・・数年分の予算が飛んだからな・・・」

 

 

 第4使徒戦後

 NERV事務局

 第4使徒の搬送が始まる

 「・・・洞木君。戦自が新たに送ってきた使徒有事協定だが、一部、制限情報と絡んできている」

 「委員会の回答が遅れているな。催促の文書を送ってくれないか」

 「はい」

 「それと・・・使徒戦の見舞金だが、こちらの避難誘導が適切だったかも、クレームがきている」

 「初号機のパイロットが少年二人を発見した以後の損害は、NERV側の懲罰金で処理したいそうだ」

 「困りますね」

 「まったくだ。第4使徒の輸送費用で帳尻を合わせられるかどうか・・・・・」

 「・・メールか・・・」

 局長が電話を取った。

 「ったく・・・葛城一尉に繋いでくれ・・・」

 『は、はい・・・・・』

 「葛城一尉・・・このメール。どういうことかね」

 『えっ・・・あ、あのう・・・作戦上・・不手際でなく』

 『不慮の事態であったという・・・内容だったと思い・・・・』

 「葛城一尉。こういうのは、自分の文書で書くものだ」

 「署名は、君のものだがね。これは、日向君のIDで送られてきたものじゃないかね」

 『あ、いえ・・・そ、そのう・・・・たまたま、自分の端末が塞がっていたものですから・・・』

 「君ね・・・葛城一尉。内部で通用しないものを委員会に送って大丈夫なのかね」

 『あ、いや、そ、そのぅぅ・・・』

 「書き直したまえ。これじゃ こっちでも処理できんよ」

 『は、はい、すぐに』

 「それとだね。もっと、効率よく戦えないのかね」

 「そっちに予算額を送っただろう」

 「わかっていると思うが委員会に石潰し扱いされていることを知っているだろう」

 『は、はい、了解しています』

 「某国の養護施設の配給分がミサイルや弾薬に消えてしまっているんだぞ」

 『はい、了解しています』

 「頼むよ」

 『はい』

 

 

 第5使徒戦後

 NERV事務局

 ラミエルが沈黙して横たわっていた。

 「・・・洞木君。解体費用のことで委員会の方から、連絡が来ていると思うが」

 「いえ、まだです」

 「んん・・・発電所と政府、各自治体からも電力使用量のことで問い合わせが来ている」

 「マギで補填率の試算しているが各自治体とも反発が激しい」

 「委員会も第3東京市外での費用に関しては、後回しにしたいそうだ」

 「政府が怒るんじゃないですか、地方議員と有力者も補填請求で政府を突き上げていますから」

 「・・・委員会も、これ以上は、クーデターか、革命だそうだ」

 「碇司令が、当局の要人が民衆を煽ったという証拠を掴んで。提出して収まりかけたと聞きましたが」

 「日本向けの戦略物資を満載で送りっぱなしの国にすれば、焼け石に水だよ」

 「長々距離射撃は、葛城一尉の作戦だそうです」

 「・・・今回は、それほど悪くないな。第3東京市の損失も、それほど悪くない」

 「零号機大破の方は、委員会も渋々だが優先的に出すようだ」

 「ですが使徒解体費用までケチられると・・・」

 「・・・年間維持費の上澄み分があったな」

 「あれは、委員会が出し渋るのでは?」

 「・・・いつ使徒が来るのかわからないのだから、請求だけでもするさ」

 

 

 第6使徒戦後

 NERV事務局

 電話中

 「はぁ〜 二号機が中破で届いた〜」

 『で、でも、今回は、国連艦隊の指揮権を引き継いだ後から、ですから』

 「・・・葛城一尉」

 『はい! 久坂局長』

 「指揮権を引き継いだ前の中破かね。それとも引き継いだ後の中破かね」

 『え・・・えっ あっ・・あのうぅ〜』

 「もう、いい〜!!!!」

 「こっちで、査定する」

 「二号機のブラックボックスと国連艦隊のブラックボックスを照らし合わせば損失負担額は、決まるからな 」

 「指揮の委譲後に国連艦隊に損失を負わせてないだろうな?」

 『あ、いや。そんなに酷い、損失は、与えていないかと・・・・・』

 「とにかく、国連艦隊の失態ということで、こちらの過失負担金を減らすような報告書を頼むよ」

 『は、はい、その点は、抜かりなく』

 「二号機の損失もな」

 『はっ! り、了解しています』

 「わかっていると思うが、たとえ、戦友でも会計上は別だ。いいな。葛城君」

 『はい・・・』

 

 

 第7使徒戦後

 NERV事務局

 関係各所からの対応に追われる所員がバタバタと動き回る

 「・・・ええい! 抗議文は、全部、葛城一尉にまわせ。仕事にならん」

 「株式市場、金融市場、物流市場ともに大荒れです」

 「もう、そっちも葛城一尉に回せ!」

 「委員会に損失額の試算と再建プログラムを送ったはずだが、返事は?」

 「完全に旋毛を曲げていますね」

 「調整中ですが、PS文に、愛想が尽きたとか。呪ってやるとか」

 「この前送った金を返せとか。人殺しとか・・・人でなしとか・・・・」

 「ふっ まだ。本文に書かれていないだけ、ましか」

 3Dに各国の世相やデーターが映し出されていた。

 「葛城一尉は?」

 「どうやら、逃げ回っているようです。日向君は、憐れですね」

 「ははは・・・・もう、かばう気も失せたな」

 「そ、そうですね」

 「はぁ〜 やってられんな・・・子供の背中に隠れてか」

 「応えましたね。あの言葉は、消えませんよ」

 「そうだな・・・・」

 

 

 第8使徒戦後

 NERV事務局

 TEL 保坂局長と葛城ミサト

 「D装備一式。お釈迦と。二号機大破、初号機小破だと・・・二号機の片足は、どこにやった?」

 『・・・あ、あのぅ〜 マントルの底に・・・・』

 「・・・・葛城一尉」

 『は、はい』

 「一度、委員会に予算請求をしてみるか?」

 『あ、い、いえ、そのぅ〜 申し訳ございません』

 「足一本。いくらか知っているのか?」

 『は、はい。一覧表は、目を通しています』

 「・・・・委員会から、赤子や子供が餓死する直前の映像が送られてきたよ」

 「葛城一尉。そっちに転送したから。ゆっくりと見たまえ」

 『は、はい。拝見させていただきます』

 

 

 第9使徒戦後

 NERV事務局

 「洞木君。いや〜 損失が少ないのは良いね〜 毎度これなら、気が楽なんだがね」

 「本当ですね。何とか、データの復旧が終わりましたし」

 「下手な攻撃をしないで、素通りで片付けて欲しいな」

 「そうですね」

 「しかし、葛城一尉は、閉じ込められたエレベーターで加持局長と逢引していたそうじゃないか」

 「指揮を取らない方が損失が少ないのは、どういうことだ?」

 「た、確かに・・・委員会が説明を求めていますね」

 洞木コダマが苦笑いする

 「ったく。これが実力なら、葛城一尉は、いらないぞ」

 「データーが欠損している部分があるので、マギの判断は保留されているようです」

 「まあ〜 いい。みんな、今日は、久々に早く帰れるぞ」

 所員の歓声が上がる。

 

 

 第10使徒戦後

 NERV事務局

 「損失は、初号機の大破だけか。あとは、エヴァの通過上の雑損だけだな」

 「委員会がサンプルの件で抗議しています」

 洞木が書類を久坂局長に渡す。

 「ないものは、ないさ。初号機や他のエヴァのブラックボックスも確認している」

 「委員会が何を言っても。どうにもならんよ」

 「葛城一佐の面目躍如ですね」

 「まあ、ギリギリの勝負運の強さは、本物だな」

 「戦自の介入は、とりあえず。引っ込みましたね」

 「使徒襲来自体。信じられなかった時代に」

 「明確に対使徒戦に参入した正規の軍人だからな」

 「どんなに優秀でも、後からしゃしゃり出ようとしても周りが納得せんよ」

 「人生を賭けた訳ですからね」

 「そういうことだ。巨大生体の襲来など、信じられない話しだからな」

 「直接、自分の目で見た者にしか、自分の人生を賭けようとは思うまい」

 

 

 第11使徒戦後

 NERV事務局

 「・・・洞木君。記録の改ざんは、終わったかね」

 「はい。兆候を確認するものは、全て・・・あとは、人の記憶のみです」

 「それは、何とかなるだろう。証拠もなく。損失も少ない」

 「ええ。使徒殲滅と同時に生体そのものが変質してしまったようです。機能不全です」

 「問題は、サンプル培養だな。何とか予算上。枠を作って、保管しないと・・・・」

 「コアがあれば足がでますね」

 「コアの捜索まで、予算は、回らないよ」

 「赤木博士も、これ以上、ATフィールド探知機の精度を上げるのは、困難と言ってる」

 「・・・・・・・・」

 「しかし、これで、委員会に対し、優位を保つ情報が一つか」

 「でも、疑っているようですが」

 「証拠がなければ、どうにでもなるさ」

 

 

 第12使徒戦後

 NERV事務局

 電話中

 「・・・第2、第3区画の兵装ビルごと消された〜」

 『あ、あのぅ〜 く、久坂局長』

 「葛城・・・おまえが私財で弁償しろ」

 『そ、そんな〜 久坂局長・・・車も買いなおしたばかりなんです〜』

 「やかましい! 委員会からの通話記録をそっちに送ってやる。目覚まし代わりに聞いてろ!!」

 ガチャン!!

 受話器が叩きつけられて切られた。

 「洞木君・・・・兵装ビルの再建費用が捻出できるか、マギの判断は?」

 「各国とも限界のはずです」

 「再建するためには、社会保障や福祉関連費を大幅に削ることになりそうです」

 「南半球開発関連費は?」

 「・・・抵抗が予想されます」

 「ったく。あいつら、ここに至ってまで逃げ腰か」

 「なんか、許せませんね。人類存亡なのに。逃げ道を造っているなんて」

 「それが人間の本能だろうな。我々には、そういう機会すら与えられていない」

 「それだけなのかもしれないな」

 「そうでしょうか?」

 「アメリカ第2支部の消失で、こちらに3号機が送られてくるはずだ」

 「その分の予算枠で、何とか・・・」

 「それでも、追加の予算を貰わないと、どうにもなりません」

 「そうだな・・・・」

 

 

 第13使徒戦後

 NERV事務局

 各所の損失が3Dに流れる

 「松代実験場が大破。死者重軽傷者多数。零号機が大破。二号機も中破」

 「初号機は、良いとしても、パイロット不在。最悪だな・・・」

 「いくら、都市要塞を守れても、これでは、元が取れんよ」

 「委員会の要求を聞くと。ろくなことありませんね」

 「あいつら、杓子定規なんだよ」

 「予算で戦争をしていると思っている連中に現場は、わからんよ」

 「それより、追跡衛星の打ち上げ予算は困るな。こっちに回してもらわないと」

 「そういえば、第10使徒の折。アメリカ軍がドサクサにまぎれて、ゼーレの衛星を破壊していましたね」

 「気持ちはわかるさ。人類に対するゼーレの楔だからな」

 「あと・・・ゼーレ側のメールは、憎まれ口から殺意を帯びてきていますが」

 「はぁ〜 もう、人類は、限界かもしれないな・・・・」

 「マギの計算でも、ギリギリの状態だそうです」

 「どこも・・・・そうだろうな・・・・」

 電話が鳴り。

 洞木が受話器を取る

 「・・・・はい、こちら事務局です」

 『・・・久坂局長を・・・お願いします』

 洞木コダマが局長に受話器を渡す。

 「・・・葛城三佐。怪我は大丈夫かね」

 『はい、申し訳ありません。大丈夫です』

 「そうか、労災の申請は、こっちでやっておいたから、ゆっくりと養生したまえ」

 『・・・は、はい・・・うぅっく・・・ありがとうございます・・・久坂局長・・・』

 「あとは、こっちでやっておくから、心配しなくても良い」

 『あ、ありがとうございます。初めて優しい言葉をかけていただいて、感激です』

 受話器の向こうから涙声が聞こえる。

 「災難だったな。元気を出したまえ」

 『は、はい』

 受話器が置かれる。

 「投げやりに言った言葉が・・・優しい言葉か・・・・」

 

 

 第14使徒戦後

 NERV事務局

 日本政府に接収されるNERV。

 過去最悪の損失を抱え込むことになった日本政府は、絶句する。

 天井都市半壊。

 ジオフロント半壊。

 二号機大破、

 零号機大破。

 初号機拘束具造り直し

 「・・・・・・」 NERV

 「・・・・・・」 戦自

 「・・・・・・」 政府

 

 

 第15使徒戦後

 NERV事務局

 「予算が入っただと!」

 「ええ、どうやら、碇シンジ君がゼーレの凍結を一部、解除させたようです」

 「輸送船団も日本へ向けて移動を開始しています」

 「そうか、一時は、どうなるかと思ったが一息つけるな」

 「でも、凄いですね。ゼーレから予算を取るなんて」

 「手切れ金かな」

 「それでも、一部の再建は進められそうです」

 「代わりに第15使徒のデータを全て要求しています」

 「そうだろうな。日本政府の承認待ちか・・・」

 「はい」

 「とりあえず。こちらの損失は、二号機パイロットの精神汚染とロンギヌスの槍だけだ。一息つけるな」

 「結局、スポンサーがゼーレから日本政府に変わっただけで、やることは同じなんですね」

 「戦自も、維持費も出ないというところだな」

 「これでは、接収しない方がましだったな」

 「確かにそうですね」

 「各国ともNERV債を日本に被せている。史上最大の債務国になってしまったな」

 「本当なら、ゼーレと各国で償還するところを日本に押し付けただけですね」

 「戦自も、日本も、馬鹿なことをしたものだ」

 「でも・・・・碇君も・・・・」

 「思うところはあるが・・・見方によっては、意外と悪くないのかもしれないな。ゼーレの混乱は・・・・」

 

 

 第16使徒戦後

 NERV事務局

 「・・・朝霧ハルカは、どういう人間だ?」

 「報告書では、綾波レイと同じ、アルピノで、労働孤児だそうです」

 「それで、エヴァとシンクロ?・・・・・・」

 「エヴァシステムの詳細は、不明ですから」

 「しかしな・・・・・・」

 頭を捻るが、わからないものは、わからない。

 バタバタと走り去る足音。

 リツコが奇声を上げて通路を走り去る音が聞こえる。

 「・・・・・・」

 「・・・・・・」

 「エヴァ光質各種の弾薬生産は、予算が通りました」

 「ああ、やはり、最優先になったか」

 「それと、初号機のS2機関は、助かりますね」

 「割高な、建造費だがエントロピーを無視した発電だ」

 「長い目で見れば割安だな。ずっと初号機に入ってくれたら良いのに」

 「人道上。問題が・・・・・」

 「わかっちゃいるがね。電力不足で生産が遅れている。思いたくなるさ」

 

 

 

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 月夜裏 野々香 です。

 NERV すちゃらか物語です。

 どこか他人事で、どこか、杓子定規な中間管理職たちの戦い? です。

 必要な部署なんですけど。

 現場の人間からすると、このやろう〜 なんですよね

 

楽 天

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第48話 『ゼーレ来襲』
短編 一人暮らし 『NERV すちゃらか物語』
短編 一人暮らし 『ゼーレ哀愁物語』
短編 一人暮らし 『碇ゲンドウ物語』
第49話 『新しい世界』
登場人物