月夜裏 野々香 小説の部屋

      

新世紀エヴァンゲリオン 『一人暮らし』

    

ゼーレ哀愁物語

 

 ゼーレ本部はスイスの古城にあった。

 ここには、ある種の独善的な欺瞞が存在する。

 しかし、選択枝は、限られていた。

 どう、数値を楽観的に変えても人類の未来は、暗いものを示唆している。

 

 第3使徒戦後

 ゼーレの座 分室の住人たち

 使徒戦の3Dデーターが流れ、解析が進んでいた。

 「おいおい。NERVは、何やってんだ。損害額が大き過ぎるだろう」

 「・・・やめてくれよ。いくら予算を使ったと思っているんだ」

 書類が放り投げられた。

 「もう、増税は利かんぞ」

 「臨時国債と国有財産の切り売りか」

 「買う人間がいないだろう。国債の購買能力も落ちている」

 「国債は、我々の空手形のようなものだ。入ってくれば良し、入って来なくても良し」

 「そんな帳簿上の名目経済なんて。実体経済は、南半球が、やられてジリ貧なんだぞ」

 「南半球は、オゾン層が破壊されて全滅だよ」

 「ようやく、虫食い状態に戻っているが資源の採掘は、困難だ」

 「どうする?」

 「南半球開発機構を潰すしかないな」

 「反発が大きいぞ。実質は、サードインパクト時の避難所だからな」

 「ったく。きたねえ連中だぜ。何が南半球開発機構だ」

 「老人たちも、まだ迷っているんだろう」

 「迷っているより、不確定要素が大き過ぎて、どうにもならない」

 「だいたい。零号機のパイロットが重体だったんだろう」

 「それを適正不定とかいってた。息子を引っ張り出して使徒殲滅? 信用できん」

 「しかし、まだセカンドインパクトから立ち直っていないのに」

 「使徒が出現したということは、本当にシナリオ通りということか」

 「ある意味、ショックだな」

 「ああ」

 

 

 第4使徒戦後

 ゼーレの座 分室の住人たち

 世界中の情勢と使徒戦の3Dデーターが流れ、解析が進んでいる。

 「シャムシエル殲滅か」

 「悪くないな。コア以外は、理想的な素材だ。これで、S2機関が進むな」

 「S2光質因子の浸透率に微妙な、揺れがあるそうだ」

 「問題なのか?」

 「問題になる可能性があるということだろう」

 「しかし、新しい素材が入れば、解決できるかもしれない」

 警報が鳴って、アメリカのフロリダ州で赤い点滅が光った。

 「・・・・暴動か」

 「・・・4万人強・・・か」

 「ケルベロスは?」

 「ケルベロスは、解析で一杯だよ。アメリカのマギでやらせてくれ」

 「武力鎮圧2。撹乱策1で武力鎮圧だ」

 

 

 第5使徒戦後

 ゼーレの座 分室の住人たち

 「・・・・零号機が大破したそうじゃないか」

 「ヘイフリックの限界スレスレのようだが・・酷いな」

 「碇司令が社会保障費を持っていったらしい」

 「あのやろう。人の国の予算だと思って、好き勝手もって行きやがって」

 「いくら日本が使徒迎撃の要でも限度がある」

 「作戦の不手際のシワ寄せがこっちかよ」

 「ったく。俺らの送金した一部がJAなんて無駄なものに使われているのだろう」

 「日本人は、自分たちの力で稼いだと思っているのさ」

 「俺らがどんな気持ちで物資を送って、金を作っているのかわからないんだよ」

 「NERVと日本政府を噛み合わせるのは、植民地政策の常套手段だろう」

 「植民地は、搾取して良いんだ。俺らがやっているのは、贈与だ」

 「マギの計算だと。この状態が後20年続くと。二階に放り上げて梯子を外すようなもの」

 「生産基盤が消え、日本から勤労意欲とハングリー精神が消滅して滅ぶそうだ」

 「その前にこっちが暴動と飢えで滅亡だよ」

 「だいたい。セカンドインパクトだって選択の余地があったか?」

 「人口60億を超えて食料、資源、水の枯渇」

 「そして、社会的な退廃と利己主義の蔓延。国家間の資源争奪戦」

 「宇宙に人類を放り上げるだけのエネルギーすら使い潰していた」

 「エントロピーの法則を無視できる物が眠っていたら、誰でも調べるだろう」

 「・・・だが、あれは、アメリカ軍の暴走だろう」

 「どうも、俺らの計画と違うことをやっていた節もあるぞ」

 「根こそぎ破壊されて、証拠がないからな・・・」

 「しかし、腕力バカに鍵を渡すと、ろくなことがない」

 

 

 第6使徒戦後

 ゼーレの座 分室の住人たち

 3D映像で世界中の情報が流れている。

 「国連艦隊は、第6使徒の回収をしているのか」

 「どうも、アメリカと日本の国軍艦隊が動いている節があるな」

 「ナショナリズムを出している場合か」

 「ナショナリズムが力をもっとも発揮しやすい最大公約数だからな」

 「ゼーレもそれを利用している。一概に否定ばかりも出来ないさ」

 「まぁ 第6使徒ガギエルを殲滅」

 「金食い虫の国連艦隊も3分の1が沈んで維持費も減らせて、国連艦隊も休眠だな」

 「ふっ 本音は、言えないな〜」

 「子供に食わせたいだけだよ。いい加減にめげるよ。この手の映像は」

 「計算上は、浮かせられるが・・・また、碇司令が来るらしいぞ」

 「またかよ。冗談じゃないぞ。あの男は、何を考えているんだ」

 「使徒戦に勝つことだろう」

 「人類補完計画をやってくれよ。このまま、使徒戦に勝っても俺たちには未来がないぞ」

 「国家運営は破綻寸前で、俺らは、民衆に殺される。それもあの男のせいだ」

 

 

 第7使徒戦後

 ゼーレの座 分室の住人たち

 「第11局の会計主任が自殺したそうだ」

 「・・・そういえば、教育関連費を持っていかれたんだよな」

 「金のないときは、会計になりたくないよな」

 「まったくだ」

 「ところで、惣流・アスカ・ラングレー。期待より戦功が低いな」

 「プロフィールでもデーターでも初号機の倍の戦闘力のはずだろう」

 「ATフィールドを発揮できたということは、そういうことだろうな」

 「しかし、ATフィールドの発生の因子が恐怖心なのは、本当なのか」

 「もう一度、赤木博士に確認を取ってみるか」

 「ニューロンとシナプスの指数とマップグラフからすれば、そうなるな」

 「もっと本質的なものだと思ったが・・・」

 「なんにしても、それで、こっちの3号機と4号機以降を調整しよう」

 「しかし、4号機からようやくニュートラル型でS2機関装備だ」

 「これで、コアをNERVに頼らずに済む」

 「4号機以降は、ケルベロスの計算能力の半分を使って調整したんだ」

 「セカンドインパクト以降の子供なら500分の1の確率でシンクロできる」

 「人柱の数が違うからな。分子が増えれば、その分だけ分母も減らせるさ」

 

 

 第8使徒戦後

 ゼーレの座 分室の住人たち

 計算式の数値を変えながら、微妙にグラフが変わっていく。

 「マントル熱発電は、悪くないだろう」

 「熱伝導性の良い棒を地核に打ち込んで、その熱を利用して発電できる」

 「エヴァ光質を使えば、何とかならないか」

 「発電が十分なら自動車、船、飛行機の燃料は余裕が出来て、宇宙開発も何とかなるかも知れない」

 「もちろん、全面的に賛成だよ」

 「地球の重力収縮熱を使えるのは、悪くないさ・・本当」

 「そこに注ぎ込む予算があれば、だろう」

 「しかし、せっかくのアイデアも予算が全部、NERVに次ぎ込まれたら、何も出来やしないか」

 「クサルな・・・」

 「しかし、耐熱素材として優れた第8使徒サンダルフォンを完全に失ったのは痛い」

 「人類の未来を考えれば、二号機のパイロットは、軍法会議で死刑だな」

 「地上に出るまで待てば、良かったんだ」

 「いや、二号機のブラックボックスの情報を解析すると」

 「そのまま、マントルに沿って進んで地下から直接セントラル・ドグマという可能性もあった」

 「んん・・・それは不味いな」

 「セントラルドグマの地下にも装甲版はあるが、それほど厚くない」

 「装甲を厚くするだけの金はないよ。もう限界を超えている」

 「というか、財政破綻だな」

 「碇の野郎・・・無節操に空手形打ちやがって」

 「結局、財政破綻を見越して使徒戦に次ぎ込んでいるわけか」

 「第8使徒の捕獲も失敗か、コアも素材も回収できず。痛いな」

 「戦ったのだから、どこかに粒子でも引っ掛かっていないのか」

 「んん・・・あっても隠すだろうな」

 「ったく。それらしい口実があれば、なんでもするやつらだ」

 「金食い虫だからな。初号機、二号機ともに中破か」

 「ところで、例の計画は、大丈夫か?」

 「ああ、失敗しても戦自のせいになる。成功すれば、本部マギにプログラムを送り込める」

 

 

 第9使徒戦後

 ゼーレの座 分室の住人たち

 流れる3Dの画像。

 「んん・・しかし、危なかった。偶然に使徒が襲来とは・・・」

 「だいたい、実務レベルで戦自に任せるからだ」

 「使徒襲来のタイムスケジュールから外して、計画していたのに」

 「襲来時ドンピシャで電源を落としやがって、間抜けが」

 「しかし、いついつは止めろとか、戦自に説明できないだろう。実は、知ってますとか」

 「ははは、それは言えんな。いくらなんでも」

 ため息が漏れる。

 「・・・勝っても、経済崩壊か。負ければ人類滅亡」

 「老人たちも人類補完計画を進めるしかないということだな」

 「俺らも片棒を担いでいるから、後戻りは出来ないさ」

 「しかし、各国とも、これ以上の負担は、暴動どころか、クーデターや革命だよ」

 「ったく。マスコミも民衆も赤子を前面に出しやがって、偽善者が汚ねえ連中だ」

 「使徒戦で負ければ人類は、終わりなんだぞ」

 「非常時なのさ」

 「セカンドインパクトで壊滅的な打撃を受けた後、建て直しも効かない状態で使徒を迎え撃つしかない」

 「それこそ、有り金どころかミルク代まで搾り取らないと使徒には、勝てんよ」

 「しかし、このNERVの戦い方は、なっちゃいないぜ」

 「NERVは、もっと、節制しながら戦って欲しいよ」

 「ばあさんと赤子を飢え死にさせて物資を拠出している側は、一言、二言、三言、言いたいぜ」

 「しかし、いったい、いくら、使えば気が済むんだ」

 「湯水の様にお金を使いやがって。万死に値するよ」

 「ははは・・・お金が血の色に見えるな」

 警報と赤い点滅が3Dに浮かび上がる。

 「・・・・また。暴動だよ・・・バルカンだな」

 「規模は・・20万・・もっと増えるぞ・・・オゾン層が北上したのか」

 「そんな・・・予兆はなかったはずだ」

 「マギの指示は?」

 「武力鎮圧1、封鎖1、内紛工作1で割れた」

 「やれやれ、シミュレーションを繰り返して、結果をローマに送ろう」

 「そのうち、意見も一致するだろう」

 「また、増えるな。コア入り」

 「仮宿だよ。老人が専用のコアに入った後、老人を核にその他大勢がインストールされる」

 「量産型エヴァ12個のコアが人類補完計画後の核になる」

 「俺らも、時機を見て入ることになりそうだな」

 「そうだな。年内に財政が破綻する」

 「そうなれば、産業も機能せずに全てが失われる。現実に生きるよりは、と思うな」

 「ところで、人類補完計画後の世界は、この計算で良いのか」

 「既にコアのスペクトル偏差と生体反応から、液体生命体の造成が可能になるのは、わかっている」

 「・・・しかし、現状は、カオス状態だな」

 「いずれ落ち着くさ」

 「老人たちが中核に入ると、もう一波乱あるが時間の問題で、まとまるだろう」

 「地球ごとATフィールドで守られた単一世界だ」

 「ケルベロスで認識できた精神個性体は?」

 「いま、133万だそうだ・・・問題はなさそうだな。障害はない」

 「本当に楽園なのか?」

 「中の人間がそういっているのだから、本当だろう」

 「既に身内が確認しているから確かだろうな」

 「しかし、惣流・キョウコ・ツェッペリン」

 「どうして、NERV式にこだわったのだろうな」

 「ゼーレ式のニュートラル型コアが汎用性で高いのに」

 「エヴァの制御に時間がかかるからだろう。現に間に合わなかった」

 「・・・まあ、そうだろうがね」

 

 

 第10使徒戦後

 ゼーレの座 分室の住人たち

 「やはり、ここに来て、資本投資かよ。本当に後先なしか・・・」

 「ゼーレの人類補完計画が成功すれば勝ちだよ」

 「争いも、飢えも、葛藤も、憎しみも、病も、階級もない世界だ」

 「物質世界の資源枯渇もない」

 「しかしな。コアの中が、それほど良いというのは、実証が足りないな」

 「コアからサルベージされないのは、種子の替わりにコアの核になっただけじゃないだろう」

 「そこが良い場所だからだろう」

 「だろうな。しかし、このコアの生命力の強さは尋常じゃないな」

 「そういう造りなのさ。どういうことかわからないがね」

 「LCLで水増ししているとはいえ、物質と精神を」

 「いや、魂を、これほど高密度で集積させられる物質は、いったい、なんだろうな」

 「物質とはいえないな。光子というべきだろう」

 「光子質。エネルギーであり粒子であり。波動でもある」

 「どうして、光が固体として形を保っているのか、謎だがね」

 「わけのわからないものに、なりふり構わず注ぎ込まなければ、ならないのもな〜」

 「日本は、良いよな。生活が楽で」

 「それは、第3東京市と主要都市だけだろう」

 「それだけでも羨ましいよ」

 「最近は、まともな生鮮食品を食ったことがない」

 「体制側の俺らでさえ、そうだからな」

 「それより、碇司令が、また来るらしいぞ」

 「またか、くっそぉぉおおおおお〜!!! あの金食い虫の石潰しが一言、言ってやる」

 「この前、送った金と物資を返せ」

 「ははは、今度は、どこの予算を削るつもりだ」

 「配給分だろう」

 「あのやろう。使徒戦が終わったら、絶対! に殺してやる」

 「ほんと、迷惑しているからな、俺ら、国に帰ったら」

 「売国奴とか、ヒットラー顔負けの大量殺戮者だぞ」

 「全部、あの男のせいなのに、直接、実務で割り振りしている俺らが恨まれるんだからな〜」

 「納得できないよな」

 「ところで、ロンギヌスの槍。見つかったのは、本当なのか?」

 「・・・そうみたいだな」

 「しかし、一応、コピーの培養には、成功していたから良いが」

 「オリジナルの槍をNERVに渡すのは、どうかと思うぜ」

 「ゼーレは “魂” 。NERVは “神経” という意味だろう」

 「結局、時期を見て連中に渡すしかないのさ」

 「槍でリリスの復元を抑えないと、使徒に正味のサードインパクトを起こされたら一巻の終わり」

 「欧州や北アメリカでサードインパクトを起こされれば、人類は、本当に終わってしまう」

 「こっちが望むときに正味であるほうが好ましいのさ」

 「そうだけどな・・・しかし、碇ゲンドウ。どうにも信用できんな」

 「確かにな。あちらこちらの指導者層の弱みを握っている。動きに不穏な要素がある」

 「だいたい。ゲヒルン時代から、えげつない方法で、のし上がった男だ」

 「信用できんよ。俺らのやっていることと、ほとんど変わらない」

 「しかし、そういう人間でなければ、第3東京市を国連直轄地にして使徒戦の戦線に出来なかった」

 「んん・・・」

 「まあ、最悪、日本を磨り潰しても使徒から防衛できれば良い」

 「いや、日本と使徒の共倒れは、シナリオで最善だろう」

 「あ、そうだったな」

 「しかし、衛星がやられたのは痛いぞ。根こそぎ衛星がやられた」

 「アメリカ空軍のN2電磁弾道砲で使徒を宇宙に飛ばすというのは怪しいな」

 「どうもゼーレの衛星潰しの疑いがある。ドサクサに何個かやられただろう」

 「3個だ。アメリカもゼーレからの離脱を考えているのか」

 「伝統ある。ゼーレ崩壊も秒読みだな」

 「もう選択枝は、人類補完計画か、人類滅亡しかないな」

 

 

 第11使徒戦後

 ゼーレの座 分室の住人たち

 「本当に使徒なのか」

 「タイムスケジュールでは、この時期だろう」

 「だが警報は、すぐに消されて、誤報にされている」

 「NERVの安全保障関連は、ブラックボックスでリークされているはずだが」

 「実態でそうなっていない」

 「どう計算してもワンクッション置かれて、それを問題にしているんだろう」

 「しかし、証拠がないな」

 「たしか、こちらの諜報員も入り込んでいるはずだが」

 「きな臭いのは、事実だが戦闘が行われた形跡はない」

 「少なくともエヴァは使われていない」

 「・・・やられたな。使徒の数を間違うわけにはいかない」

 「我々は、既に倒したはずの使徒を待ち続けて、日本に支援を継続するのは、本意ではない」

 「監視をエヴァに集中させすぎた」

 「だが、こちらの諜報員が切り崩されている形跡もある」

 「しかし、職員の給与はゼーレから支払われている」

 「口座を握っているのは、ゼーレのはずだ」

 「・・・・だが、どう考えても碇ゲンドウの動きは、怪しい」

 

 

 第12使徒戦後

 ゼーレの座 分室の住人たち

 警報が鳴り響く分室。3Dに投影される映像は、異様なものだった。

 「アメリカ第二支部が消滅したのは、本当なのか?」

 「ああ、映像は、本物だな」

 「何があった。内部データは、リアルタイムで入ってくるはずだ」

 4号機を中心に黒い光が広がって、映像が途絶えた。

 「・・4号機がこれだけの暴走をしたのか。パイロットは乗っていなかった」

 「調整に失敗したのか。S2機関とニュートラル型。どっちの原因だ」

 「ハーモニックス率、シンクロ率は反応なし」

 「S2機関がエントロピーを超えた時点での反応のようだ」

 「エントロピーの法則を超えた事と、この爆発に何の関係があるんだ」

 「状況としては、この黒い光は、第12使徒の黒いディラックの海に似た要素があるようだ」

 「わからんな。S2機関と虚数空間に何の関連性があるんだ」

 「NERV本部のせいにしておくか」

 「ニュートラル方式S2機関装備も基礎構造システムは、NERV方式の真似をして造ったものだ」

 「・・・・それでいこう」

 警報が鳴った。

 イギリス。イタリア。アメリカ西海岸で暴動が起きていた。

 「またか」

 「もっと増えるよ。第12使徒レリエルによる被害も少なくない」

 「碇ゲンドウ。あのやろう。わざと被害を甚大にしてゼーレを傾けようとしているんじゃないのか」

 「ありうるな。これ以上被害を出してみろ。本当に左遷してやる」

 「上は、もう、その気だろう。老人たちも破産寸前だよ」

 「しかし、レリエルのコアの輸送費がこの金額か。あの恥知らずが調子に乗りやがって」

 「こっちの会計を裏も表も知っているとしか思えん要求だな」

 「・・・・日本に “わら人形” というのがあるそうだ」

 「人形に本人の写真や髪の毛を入れて、真夜中に釘で木に打ちつけると呪い殺せるそうだ」

 「「「「・・・ふ、ふふ、ふふふ」」」」

 数人がそのまま、笑い続けた。

 

 

 第13使徒戦後

 ゼーレの座 分室の住人たち

 「アメリカの第二支部が消滅に続いて、3号機破棄。零号機中波。初号機パイロット失踪」

 「ふ、ふふ、ふふふ・・・絶対に殺してやる」

 「ゲンドウのやろう。どんな気持ちで送金しているのかわかってんのか。あいつは・・・」

 「それより、第11使徒の隠匿の疑惑。これは、重大だぞ」

 「使徒を全て倒してからの人類補完計画だろう」

 「もし、サードインパクトを起こした後に使徒が出てきたら、どうにもならんぞ」

 「証拠が足りないな。第9使徒のとき、NERVの回路を探ろうとした」

 「しかし、NERV本部へのハッキングには、失敗した」

 「その後もハッキングに失敗している。疑わしいだけでは・・・・」

 「んんん・・・しかし、エヴァ4体のはずが・・・・実働2体か・・・・」

 「パイロット捜索は?」

 「誰か向けよう」

 「あの男は?」

 「確か、冬月副司令の事で動くはずだが」

 「いや、行方不明だぞ」

 「どういうことだ。NERVにやられたのか? 裏切ったのか?」

 「まだ。情報収集中だ」

 「NERVがやったのなら。明らかに敵対行為だ」

 「確かに・・・そうなるな」

 

 

 第14使徒戦後

 ゼーレの座 分室の住人たち

 世界情勢が3Dで流れ。住人たちが珍しく。動き回る。

 「どういうことだ。第3東京市の戦自管区は何をやっているんだ」

 「ゼーレの諜報ネットワークがズタズタだぞ。状況が掴めん」

 「反撃プログラムは、どうした?」

 「誰に反撃するんだ」

 「・・・老人たちは?」

 「駄目だ。まだ混乱している。こっちが情報を選別しないと状況が掴めないぞ」

 「・・・おい、ゲンドウが追放されたぞ!」

 新規の映像が逐次、流れ始めた。

 「ば、ばかな・・・」

 「な、何てことだ。日本がゼーレ資産を没収した。信じられん。世界を相手に戦争する気か」

 「国連軍に連絡を取れ」

 「・・・駄目だ。通信が遮断された」

 「どういうつもりだ。NERVが裏切ったのか」

 「それとも戦自の暴走なのか。日本政府なのか、指揮系統が掴めないぞ」

 「・・・予兆はなかった」

 「ケルベロスで、日本政府の基幹を破壊するか?」

 「老人たちの命令がないのに出来るか、使徒は、まだ残っているんだぞ」

 「くっそぉぉぉおおお〜!!!」

 「注ぎこんだ金と物資をどうしてくれるんだ」

 「それどころ、じゃないだろう。使徒戦が残っている。迎撃が出来なくなるぞ。人類滅亡だ」

 「最終報告の解析は?」

 「・・・過去最悪だ。天井都市に穴を開けられて、ジオフロントまで破壊されている」

 「マギは、破壊されていないようだが」

 「零号機、二号機が大破。サードチルドレンが帰還して初号機は、覚醒したらしい」

 「初号機が第14使徒のN2機関を捕食したらしい」

 「な、なんだと。覚醒ということは、種子以外の機能を取り戻したということだぞ」

 「それにS2機関を捕食して、自由に動けるだと!」

 「サードインパクトを起こせなくても初号機が人類の敵になるぞ」

 「・・・いや、動いていないようだ」

 「なぜだ。機能としては、自由に動けるはずだ」

 「種子の代わりの碇ユイが止めているのか」

 「そんな力があるものか。ニュートラル機なら、もっと安定しているがね」

 「個人がどうにかできるレベルではないはずだ」

 「・・・動けるのに動かないということか。計算違いしているわけじゃないだろうな」

 「ケルベロスで再計算中だ」

 「いや、現状調査を優先すべきだ」

 「こんなことが突発的に起きてたまるか」

 「報告次第では、こっちが無能扱いで飛ばされるぞ」

 「くっそぉぉぉおおお!!! ゲンドウのやろう〜」

 「大枚注ぎ込まさせた上えに日本に接収されただと。その上に追放」

 「もう我慢ならん。こうなったら、ゲンドウと心中してやる」

 「ゲンドウとか。それは嫌だな。若い女と心中したいぜ」

 「くそっ! けったくそ悪い。とにかく情報を集めるぞ」

 「なあ、少なくとも日本が接収したということは・・・我々は、融資しなくても良いんだよな」

 「・・・・・・」

 「・・・・・・」

 「・・・アメリカと、ドイツの動きは?」

 「まさか、支援金を送りたくなくて、承認ということはないだろうな」

 「・・・保留」

 「・・・・・・」

 「・・・・・・」

 

 

 第15使徒戦後

 ゼーレの座 分室の住人たち

 世界情勢が3Dで流れ。住人たちが動き回る。

 警報があちらこちらで鳴っていた。世界中で暴動と食料を得るための殺戮が行われていた。

 「・・・アメリカもドイツも、日本のゼーレの資産接収を見逃すらしい」

 「ゼーレの威光もここまでか」

 「アメリカとドイツの世論も同じようにゼーレの資産を接収する動きを見せている」

 「しかし、本当に加持が裏切ったのか。あいつが黒幕なのか」

 「・・・どうも、初号機のパイロットが父親の追放を求めて」

 「それに加持が仲介に入って、日本政府と戦自をまとめ上げたのが実情のようだ」

 「・・・・あの石潰しやろう。世界のバランスを親子ゲンカで狂わせやがって」

 「しかも、子供まで脅迫して予算を取りやがった。親子揃って万死に値する」

 「しかし、事情からして振り上げたコブシも降ろしにくい」

 「計算づくなら天才だな」

 「しかし、本当に親子ゲンカなのか、戦自の洗脳じゃないのか」

 「洗脳は、駄目だろう。シンクロ率に影響がでる。違和感は、直接、伝わる」

 「現にシンクロして第14使徒を撃退しているのだから洗脳はしていないだろう」

 「加持に対して、暗殺部隊は?」

 「既に派遣している。現地の・・・ゼーレ日本は、加持に根こそぎやられた。13年前と同じだ」

 「・・・もう我慢ならん」

 「碇司令は、国連の使徒研究所所長に納まったようだ」

 「何で、老人たちは、妥協しているんだ。裏切りじゃないか」

 「・・・・現実問題として、第2使徒から・・・」

 「いや、あの男の独断で南極から遺産を引き揚げた時から人類滅亡を救っている」

 「冷静になれば、妥協もしたくなるさ」

 「それにATフィールドを自力で貫通させるまで調査の遅延を要請していたのも記録されている」

 「・・・だが。オリジナルのロンギヌスの槍を使われた」

 「人類補完計画では必要なはずだ。知らなかったでは済まさせんぞ」

 「冬月は何をしていたんだ。裏切りだぞ」

 「ロンギヌスの槍は、複製が進んでいる」

 「我々も南極から持って帰った遺品がある」

 「これは、NERVにも知られていない。実力行使できるさ。日本人め、舐めやがって」

 「もう、資産の回収はきかない。捻じ伏せて、奪い返すしかないな」

 「どうでも良いだろう。人類補完計画が成功すれば、全ては、収まる」

 「ふっ そうだな」

 

 

 第16使徒戦後

 ゼーレの座 分室の住人たち

 世界情勢が3Dで流れ。住人たちが動き回る。

 警報があちらこちらで鳴っていたが気にする者はいなかった。

 「第15使徒 (第16使徒) の回収は?」

 「そんな金はないだろう」

 「日本の監視には、絶好の場所だ。ここを取れば、今後、日本は完全に制圧下にできる」

 「しかし、日本に取られたら。日本は、世界から完全に自立するぞ」

 「それは不味いな」

 「それより、日本は、NERVを維持できるのか」

 「実質、NERVと戦自の連合で核は、NERVの職員がそのままだ」

 「・・・・なんか、とんでもない、詐欺に遭った気がするな」

 「人類史上、最大級の資産を投入して、それを全て、奪われた」

 「無資源国の日本人に働かせて、胡坐をかいていたのが、ここに来て、裏目に出た」

 「日本の技術力と労働力水準の高さは、世界一だ」

 「最初から碇ゲンドウの計画なら。絶対に殺してやる」

 「いや、意図していなかったとしても、殺してやりたい」

 「第16使徒 (第17使徒) は、どうした」

 「接触したのに行動を起こしていないのは、なぜだ」

 「いや、本当に第16使徒 (第17使徒) なのか。第17使徒じゃないだろうな」

 「老人たちは、ゲンドウをなぜ、日本に帰還させた?」

 「確認していないだろう」

 「使徒は、襲来していないと言い張っていた」

 「本当だろうか?」

 「疑わしいが、これまでの使徒戦からエヴァを使わず、使徒を殲滅するなど、ありえない」

 「しかし、限りなく怪しいだろう。それに第2使徒の例もある」

 「リリスは、動かしていない。それは、はっきりしている」

 「ラミエル戦の様に大量の電力が使われたという話しも聞いていない」

 「しかし、もう、老人たちは、動くぞ・・・・準備は出来ている」

 「渚カヲルに接触しようとした諜報員は、不慮の事故で掴まったらしい」

 「本当に不慮なのか、情報が全然入ってこないな」

 「ゼーレ日本は、消滅したからな。どうしようもないさ」

 

 

 最終決戦

 

 

 

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 月夜裏 野々香です

 掲示板の提案が面白そうだったので真に受けて書いてしまいました。

 仮想戦記  赤レンガの住人のゼーレ版です。

 わたしは、不良官僚が嫌いなのですが中間管理層を書いてみると、

 本当に共感してしまう自分が怖いです。

 そういう立場になると、そうなってしまうのでしょう。

 朱に交われば赤くなるです。やはりトップの基本姿勢は、重要ですね。

 

楽 天

誤字脱字・感想があれば掲示板へ

第48話 『ゼーレ来襲』
短編 一人暮らし 『ゼーレ哀愁物語』
短編 一人暮らし 『NERV すちゃらか物語』
短編 一人暮らし 『碇ゲンドウ物語』
第49話 『新しい世界』
登場人物