1999年7月上旬の日常
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1999年7月1日(木)
忙しかった。なんかやたらと。
朝一番で一つ仕事を片付けると、上野の某百貨店にバイクで向かう。昨日新聞の挟み込みチラシに、その百貨店で壱万円均一のセールをやっているというのがあり、そこに載っていたタグホイヤ(か?)だかなんだかの時計を買ってこいという親父の命令を受けてのことである。しかしチラシを見る限り何処にもタグホイヤなんて書いてなくて『テイクスピード』って書いてあって、店で見てもタグホイヤだか何だか解らなかったのだが命令だし自分の懐が痛むわけでもないから取り敢えず買う。ついでに近くの家電量販店でPCソフト『ママトト』(アリスソフト・18禁)を自費で買って、更に帰途、本屋であかほりさとるの新刊と雑誌を買ってやっと仕事場に戻る。本当に仕事をしているのか私は。
午後は特に用もなかったので長篇改稿の続きをしていたのだが、本職の方で直し原稿の入稿が遅れてえらい騒ぎになる。夜になっても最後のMOが届かず、バイト先での仕事中に一旦とんぼ帰りしたり。作業量は多くなかったのだが、それ故余計に疲れた一日。
『プレゼントプレイ』におけるムービーの不具合は、どうやら特殊な症例らしい。午後の空き時間に再び発売元に連絡して、対応を御願いした。どっちにしたってこのソフトは異常が多い。トラプルを厭ってセーブデータの保管を怠らなかったから、最新バージョンをアンインストールしても、旧バージョンで直前の状態に復帰させて続きをやることは可能なのだが……暫くいいや。クリックのし過ぎで手が腱鞘炎になりそうだし。他のゲームでもやってよう……だから『ママトト』なんか買ったんですねえ。しかし長篇の書き直しも漸く佳境である。上旬のうちに印字まで漕ぎ着けたいから、ゲームは少し押さえ加減にしなければ……ところで本はいつ読むんだ?
……………………猫。いい加減に箱から出てこい。
1999年7月2日(金)
日付が変わってから、結局『プレゼントプレイ』を最初のバージョンに戻して続けてみる。安定動作。漸く三人目が登場する。しかし……何だか読んでいて所々冷める描写があって、特にあれだけバグに悩まされたあとだと空々しいだけの叙述が頻出するのがどうもなぁ。ギャグか滑る、という話もあるが、その点私はあんまり気にしない。どうも私は笑いのツボの位置が変らしいので。だから寧ろ、本気で語っているらしいシーン――作品理念や脚本家の思想が語られていると思しいシーンと、作品のどうしようもない現状とのギャップに興醒めしてしまうのだな。まだ60%近く残っているシナリオを、果たして私は何処まで堪えて読み進められるだろうか。甚だ不安。
仕事? なにそれ。
冗談は兎も角(冗談になってないが)、今日はアンソロジー『大密室』(新潮社)、斎藤純『オートバイライフ』(文春新書)、谷川健一『日本の神々』(岩波新書)、PCソフト版『STAR WARS エピソード1 ファントム・メナス』(エレクトロニック・アーツ・スクウェア)を購入。実は私スターウォーズは一本も見ていない。ゲームを買ったのは、最近使っていない3Dチップに活を入れるためである。で帰宅早々に遊んでみる……凄い。OPムービーも本編も、流石に原作には及ばないだろうがPCソフトとしては見事なまでの出来映え。ライトセーバーをぶん回すのが楽しいっ!!……が、深川の反射神経は遙か昔に切れたままであった。ふん。はてさて何処まで進展させられるものか。
ついでに昨日手付かずだった『ママトト』も試運転。発売元のアリスソフトは、あくの強い独自の世界観ゆえにファン層が固まってしまいがちなのだが、もともとゲームの質の高さには定評がある。案の定というか、戦闘のシステムが懲りすぎていていささか取っ付きにくいが、懇切丁寧なチュートリアルも用意してあり、ゲームとしては序盤だけでも及第。Hシーンを序盤から取り込むためにだけ存在するよーなカカロ王には疑問を感じないでもないが、18禁としてそういう期待にも応えようとする姿勢の現れと捉えれば問題なし。『プレゼントプレイ』で大分苛立っていた矢先だから、不安を感じさせない造り自体が嬉しい。『ママトト』も『スターウォーズ』も、である。
ある人からのメールに返信しようとしたら、PCが暴走した。どうした牛。再起動したら何事もなかったかのよーに動いてはいるが。
長篇をバリバリ書き上げる予定だったが何故か頭痛がするので適当に切り上げようと思う。猫は漸く少しまとも。
1999年7月3日(土)
一応日中は休みなので長篇の直しをしたり『ママトト』やったり『スターウォーズ』やったり。『プレゼントプレイ』の名が出ないのは…………疲れたから。
夕方からバイト。その前に津原泰水『蘆屋家の崩壊』(集英社)と漫画と雑誌。漫画の評論なんてのも素材に使えるかと一瞬思ったが、私は完結していない作品を論じることにあまり意味を感じない質である。連載漫画が殆どを占める現在、漫画について私がどうこう言いたくなることはあまりない。受け入れがたい作品は途中で買うのを止めてしまうし、既に完結した作品は市場に残っている限り常に支持者がいるという意味で批評の必要性を感じないし。だからここには買った漫画のタイトルをあまり記さないようにしている訳だ。と書いて自分で納得する。
長篇をバリバリ書き上げる予定だったが……って昨日も書いたか。猫は依然、日中は私の部屋に戻ってこない。夜に連れ戻し、無理矢理蒲団に置くとそこで寝る。撫でると喉を鳴らすが薄目で人を見る。やめんか。
1999年7月4日(日)
昨日とあんまりやってることが変わらない日中。アリスソフトというレーベル(社名じゃなかったりする)はちゃんと”ゲーム”を作ってくれるので、『ママトト』はやっててすごく気が楽……粗が目に付かない、という意味でね。ゲームとしての難易度は高いから、やはりやってて何処か張り詰めるのである。そんな訳で一日にいくらも出来ないからその合間に長篇の直しを……って転倒しとるやんけ。
折を見て『プレゼントプレイ』もやってます。ただ、後半に進むに従ってシナリオの雑さが目立つようになった。表現手法とは捉えがたい語句の誤用も頻出するし。やっぱりチェック機構が甘すぎる、という印象は未だ否めず。という訳で今後少しずつペースダウンするでしょう。終らせるつもりは依然あるのだけれど。
長篇の改稿、いよいよ解決編にかかる。いやー長かった。元の原稿を見ながらとは言え実質いちから書き直したわけだから時間がかかるのも宜なるかな。だがしかし、解決編は元原稿で四百字詰め220枚弱(エピローグ的部分も含む)。直し抜きでこのまま付け足しても一千枚は越えないが、しかしこの内容でこの解決編はやっぱり長すぎるよなー。当初の予定では六月末には脱稿するつもりだったので、週末までにはどうにか決着させたいのだけど……。
1999年7月5日(月)
きょうはなにをしたかよくおぼえていません。きっとふぬけかのーみそすかたんになっていたんでしょう。ぼうおひるのばんぐみで、なぜかいっせいにうしろをむいていたドラえもんのでんぽうにつぼをつかれてしまいました。
暇なら素材を作るか長篇の直しを続けりゃいいことなんだが、如何せん、ことはあまりにメンタルな世界なので、進めたいと思ったときに進められる訳じゃない。はっきりと気持ちがそちらに向かなければ、気張るだけ却って煮詰まってしまうものなのである……と必死に自分に言い訳してみたり。いや別に本当に煮詰まってるんでなくてね。
そう言えば件の『プレゼントプレイ』にはミステリー的手法(あくまでも「的」)を用いたエピソードが、今把握している限り二つある。それを遊んでみて思ったのは、やはりこの18禁ゲームの世界では、ミステリーを本格的に扱える作家があまりに少ない、ということである。一本はまだ未完結だが展開の仕方が粗雑すぎる。ありがちの探偵ものだが、依頼のプロセスや主人公の思わせぶりな過去はいいとしても、他の箇所の展開がメタフィクショナルな記述から始まる場合が多いこと、非効果的な視点の転換を安易に行ってしまってストーリーの緊張を殺いでしまうこと、特に主人公の過去を伏せるために、プレイヤーの目を完全に主人公から切り離してしまう部分はあまりに戴けない。
いま一方は一応「問題編」と「解決編」に分かれているが、すれた読み手には「問題編」を読んだ段階でからくりが見えてしまう。いやそれ自体は必ずしも悪いことではないと思うが、いけないのは「問題編」で提出されているヒントの殆どがヒントとして機能していないこと、そして「問題編」の記述や展開にあまりに矛盾が多いことだ。仕掛けの派手さ(ミステリ読みにとっては既にお馴染みの奸計に過ぎないが)に囚われる余りか、仕掛けそのものに直結する部分以外の筋に無理ばかりが目立つ。こちらはシナリオとしての着想がなまじ面白いだけに、先述のエピソード以上に文章力の欠如が際立ってしまっているし。
この業界ではほかに『野々村病院の人々』(エルフ)とか『リップスティックアドベンチャー』(フェアリーテイル)、シーズウェアの幾つかの作品などがミステリー的作品に該当するが、それなりに見られるのは『野々村…』ぐらいだったように思う。『野々村…』にしても、最終的に犯人を導く根拠が一つしかなく、しかもそれがミステリの世界では常套手段に当たるもの(少なくともメイントリックに使ったりしない)だった、ということもあり手放しでは誉められないし。『リップスティック…』は最新作をやったのみだが、ハードボイルド的なキャラを主人公の一人に据えているにしては三分の二ぐらい緊張感のない展開が続くし、探偵のくせに推理しないし流されっ放しで結局プレイヤーに「推理」を楽しませることも「スリル」を味わわせることもないまま終ってしまうし。加えて結末は悲劇的。登場人物にとって、ではなくてプレイヤーとクリエイターにとって、だ。未見の人のために一応オチの内容は伏せておくが、兎に角茶番なのである。殆どがこういう具合なので、だからこのスタイルからメジャーに上がってくる企業もクリエイターもいない、ということになる。ミステリ読みの間で話題になることもないし。無論、誰もがメジャーを志しているわけではないだろうし、いい作家がこういう半ばアンダーグラウンドな業界で活躍すること自体は、ある種の豊穣を示すことであり、望ましいとも思うのだが……現実にはそんな作家はいないからなー。この業界で誰か、ミステリ魂を見せつけてくれる奴は出てこないのか!?
……適当に書いてお茶を濁すつもりがマジになってしまった。
1999年7月6日(火)
ちまちま文字を打ったりしながら基本は長篇の直しを続けるのみ。合間を盗んで週刊誌とか月刊誌とかややおたく寄りの漫画だ小説だ買ったり。午後には槇原敬之『Cicada』(SME Records)を買ってきた。ここのところまめにシングルをチェックしていたため、うち五曲は既知(カバー、アルバムバージョン込み)。”Name Of Love”の、顔に似合わず繊細でキュートな歌い方が印象的。この曲はかつてローリー(寺西一雄)が「不良少年の純情」といったニュアンスで歌っていたので、差別化を図ったんだろうな。わたしはどちらも好きだ。しかし初回限定版に同梱のシングルは全く以て意味不明。”印度式”のラップ部分をマイナーチェンジして取り込んでいる辺り、要はスタッフを使ったお遊びなんだろうが。少しは意図を匂わせて欲しいよな。
うちの両親は今日私がバイトだということを知らなかった。それだけならまだしも同僚のF氏も知らなかった。まさか社長しか知らなかったのか。
直しを続けていたら、解決編の論理展開に僅かな穴があったことに初めて気付く。ロジック同士の関連を微妙に弄って、どうにか修繕する。書き終えた部分には手をつけずに済んだ。ああ吃驚した。しかし、どうやらこれで完全に山を越えたよう。今度こそ終らせる。
ホームページの置き場所を確認するためにジャストネットの登録内容をチェックしよう、と思ったんだが……最近接続をPCに任せっきりだったので認証にひたすら手間取る。
西澤保彦『瞬間移動死体』(講談社ノベルス)読了。相変わらず着想は凄いと思うんだが、ここの処立て続けに読んで慣れてしまったのか驚きは少ない。主人公の描写が妙に身につまされるんだが。うううう。物書き志望には解るだろうこの気持ちが。
1999年7月7日(水)
今月買う予定だったソフトは結局全部延期。何か別のものを買おうかとも思うんだがめぼしいものが全くない。困った……困んないか。余計な遊びに興じない分仕事が進むかも。それ以前に終わってないゲームが沢山あるだろうがっ!!
寝ている猫をひっくり返して遊ぶ。それでも起きないし。
霧舎巧『ドッペルゲンガー宮 ≪あかずの扉≫研究会流氷館へ』、高里椎奈『黄色い目をした猫の幸せ』(双方とも講談社ノベルス)購入。前者の刊行は個人的にちょっとした感慨を禁じ得ない。解る人はいないと思うが。
漸くデジアニメから連絡が入る。結局、全てのバグを修復したものをディスクで送ってくれるらしい。mpgデータの改良なども行ったため、HPに掲載するのには無理があるそうだ。それで解決すればいいけどなー。これだけ初っぱなでマイナスイメージを定着させてしまったら、あとは幾ら対応したところで泥縄のような気もする。
『まもって守護月天! VI ラブレターをあなたに』を読む。完全にファン向けの内容なのでここで触れるつもりなんかなかったんだが、あああ視点の入れ替わりが気になって気になって……普段は小説を読まない人間も対象に含むような作品だからこそ、視点の扱いには注意を払って欲しいものだが。因みに私この漫画は好きです。考証なんかしてないも同然だが、間の使い方やコマの使い方といった表現の仕方が好みなのである。小説版の方も嫌いではない。人に勧めたりはしないにしても。
1999年7月8日(木)
猫が鼠を捕ったらしい。父が収穫を見せつけられたそうな。
仕事と長篇の直しの合間を縫って、溜まってしまった漫画を読む。で、そのついでにあかほりさとる『源平伝NEO 第弐巻 富士川』(角川スニーカー文庫)読了。改めて筋回しは上手いんだよなーと感心するのだが、物語の進度が遅い。異常に遅い。普通、ここまでで普通の小説一巻分か、一巻の半分ぐらいだと思うんだが。最近痛々しいあとがきも気に懸かる。大丈夫かあかほりさとる。
他には切手を買って、溜まっていたユーザー登録の葉書と某ソフトの修整ディスク申し込み用の封書を投函しに行ったり。
夕方からバイト。ついでに高千穂遙『ダーティペアFLASH2 天使の微笑』(ハヤカワ文庫JA)と漫画一冊を購入。既に持っているダーティペアを買う理由は二つ。一、表紙とあとがきが変わっている。一、何故か最新刊が文庫で出るから(判型を揃えないと気が済まない)。
明日は諸般の用を片付けに上野を彷徨する予定。また長篇が滞る。ううううううう。
1999年7月9日(金)
午後に所用で上野と秋葉原を走り回る。訳あってNECバリュースターNXの薄型モデルの値段を確認しに出かけたのだが、値札は数種あっても筐体見本は一つしか見当たらない。そして何故かFMVの値札と筐体は沢山。なーんとなく厭な気配。混んでいたので店を早々に出ると、デパートで時計のバンドを調整して貰い、更に足を伸ばしてアニメ版『To Heart 第二章』(KSS)のDVDを買う。もっとあれこれしたかったんだが気力が尽きて帰宅した。
それはそうと今回の直木賞候補は意外というか何というか、久々に一冊も持っていなかった。佐藤賢一だけは別ルートで評判を耳にしてバイト先に頼んであるのだが、これほど他人事な気分になったのは久々かも知れん。誰がとっても、ああそうですか、という感覚。大体最近の直木賞選考委員は全く信用してないんだけど。
どうでもいいことだが、七夕って旧暦に祝った方が実際的じゃないかと毎年思ってるんだが。梅雨の時期に「晴れてないと逢えない」のでは五年も十年も逢えないかも知んないじゃないか。尤も、星の寿命と照らし合わせると「逢い過ぎだ」という意見もあるのだが。……本当にどうでもいい話だ。
それにしてもどうして解決部分でこんなに手間取ってるんだか私は。泥縄式に粗を直してるからだ。
1999年7月10日(土)
従姉が(……そういや姉だったっけ)PCを買うのに付き合って上野へ。NXを買うことは予め決めてあったので、あとは予算と相談して機種を決めるだけなのだが、やはり迷っている。他人事だから私は迷ってない。PentiumIIIの450を積んだ奴に決めたのを見届けると(私が使ってるのより早い)、手続きをしている従姉を余所にソフト売り場へ行き、懸念だったホームページ作成用ソフトを購入。『Adobe Page Mill 3.0』だ。PhotoshopとかIllustratorとか、Adobeのソフトはばか高いのが多いので一万円台だと安く見える不思議。
……そうだ書き忘れていた、祝・こおろぎさとみ同級生シリーズCV完全制覇。 それだけ。解らない? じゃあ忘れなさい。それが厭ならここを見ろ。しかし何故に私は居丈高。
長篇の直しをバリバリ……もういい? あそ。……するつもりだったんだが、Page Mill の操作方法を覚えようと作りかけのファイルを弄っていたら何だか上手く表示されなかったりして悪戦苦闘する。悩んでいたタイトルは若おやじの殿堂に決めたんだが……だからそんなことしてるバヤイじゃないだろうが。