SecretStory

　最近、お皿のことばかり考えているような気がします。 奉公先の家で秘蔵の絵皿を割っちゃって、1枚、2枚……足りない。 足りない。 足りない。
　そう、足りないのです。 食事を作り、食べる時の、躍る心が。
　それは無くてもいいと思われるかもしれません。 でも、それが無いと、食材を買う段階で何もイメージが出来ないのです。

　我が家には昔から不気味なお皿がありました。 奇妙な虫が笑っている……嗤っている絵が描かれているのです。 それも1匹ではなく6匹も。
　幼いころの私はその奇妙な虫が嗤うお皿に乗せられた料理を食べるのが嫌で嫌でたまらなく （今でもなるべく使いたくないです） 、その料理に手をつけることが出来ませんでした。

　このことを思い出し、奇妙な虫が嗤うお皿とは反対に、素敵なお皿を使えば、料理も食事も楽しくなるのでは……と考えました。

　余談ですが、本当はそのお皿の絵は花だと思います。 昔から “奇妙な虫が嗤っている絵が描かれたお皿” だと思い込んでいたので、未だに虫にしか見えません。