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-39- (2008.11 - 2009.1 ) 


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 ('09/1/24) 
2009年二輪市場はどうなる その3

予定どおり、ハーレーの第4四半期決算が23日に発表されました。このコーナーの12月30日付コラムの四半期毎の出荷グラフと、『続・ハーレーダビッドソンの成長神話』の年毎の出荷グラフをアップデートすると、それぞれ以下のようになります。

HD四半期毎出荷統計 HD年毎出荷統計

第4四半期のアメリカ国内の出荷が増えて、海外売りが減少しているのが予想と逆でしたが、年間の出荷数字は前年からの国内の減少傾向、国外の増加傾向が続いていることが分かります。ただ、国外需要に減少のきざしが見えます。

アメリカの大型バイクの昨年の販売台数が479,766台とありますので、ハーレーの出荷206,309台(小売り販売218,939台)は43%(46%)と微減ながらこれまでのシェアを維持していますから、のこり半分を争う日本メーカーも、その販売台数の減少はハーレーと同程度のものとみられます。

ハーレーの販売不振は予想されていたとはいえ、今年の出荷販売も264,000から273,000台と、さらに減少する予想をしています。そのために、いくつかの工場を閉鎖統合、1100人の従業員を今年から来年にかけて削減することも合わせて発表しています。

4メーカーについては、日本のライダーは海外市場向けに製造された大型バイクのおこぼれにあずかっていたようなものですので、その路線の延長ではますます日本市場への対応に期待ができなくなります。昨今、大型バイクを運転できる免許保持者、つまり中高年をターゲットにして「リターンライダー」キャンペーンをはるメーカーのコマーシャルが目に付いたものですが、お金のありそうなシニアより、貧乏でも夢のある若い人の挑発が必要なのでは? ハーレーはこの難局を乗りきる方策のひとつに「ブランド戦略の強化」を挙げています。たしかに4メーカーも、かつてのCB、Z、Katana、Ninjaは強いブランドの光を放っていました。


 ('09/1/22) 
意外なオバマ演説

とくにオバマ新大統領に特別の関心があったわけではありませんが、たまたま読んだニュース解説のコメントに興味をそそられ、就任演説のテキストを読み出したら、引き込まれてしまいました。景気付けの号令でもなく、大国の権力者ぶった傲慢さもありません。それは、どちらかというと、ひとりひとりに直接語りかけるようなメッセージでした。

とりわけ、その簡潔で平明な文章は、子供たちにも聞き届けられるように考えられたものと想像します。専門用語や経済金融用語、それに難しそうな技術用語などが一切出てきません。かわりに、それらの概念は、日常語に包まれています。それは、建国からの自由の精神を今思い起こし、次の世代にそのたすきを渡そうという、最後のフレーズに集約されていきます。

でも、メディアに掲載されている和訳文はちょっと違った印象を与えます。「希望と美徳をもって、この氷のような冷たい流れに勇敢に立ち向かおう」というとき、「希望と美徳」の組みあわせに違和感を覚えるのは私だけではないでしょう。Hope and virtue のvirtueって、いくら英和辞典に「美徳」や「徳行」とあるからといっても、文脈からして不自然です。もともとvirtueとはラテン語のvirtus(戦場で戦う男らしさ、勇気)からきているので、「勇気を伴う行い」の意味と理解します。

いずれにしろ、翻訳文は、語りかけているというより、なにか論文めいています。そのせいでしょうか、夜のテレビニュース解説では、この演説を施政方針文書と勘違いして深読み(浅読みか)していたコメンテーターがいましたし、また初の黒人系大統領としてケネディやルーズベルトのような有名なせりふ(one-liner) を期待していた向きは空振りの失望を味わったかも知れません。60年代、黒人差別撤廃運動は「公民権運動」と呼ばれていました。ジョーン・バエズの歌う We shall overcome は「我らは勝利する」と当時訳されていましたが、overcomeは勝利ではなくて、克服する、乗り越えていく、という意味でした。そしてキング牧師のI have a dreamのビジョンが40年後こういうふうに形をなすとは、当時の私には想像もできないことでした。


 ('09/1/11) 
2009年二輪市場はどうなる 続き

アメリカの二輪市場が縮小する一方で、日本の二輪市場はどうなるかというと、ちょうど全国軽自動車協会連合会の統計ページが更新されましたので、そこから小型二輪(251cc以上)と軽二輪(126-250cc)の新車販売台数、それとその保有台数のデータをグラフ化してみます。

小型二輪新車販売台数 軽二輪新車販売台数 二輪保有台数

ここから見えることは、小型二輪の新車販売では4メーカーが減少傾向、輸入車は依然右肩上がり、軽二輪は激減傾向、そして保有台数は微増基調、というところ。とくに目を引くのが軽二輪の3年前からの落ち込みです。これは何を意味するのか?

ひとつには、どうせバイクに乗るならより排気量の大きいモデルを、という大型志向、あるいはステータス志向があるのでしょうか。そのために小型二輪の新車販売の落ち込みが軽二輪ほどではないことと、外車の微増傾向が続いていることに目が行きます。次に、これまで250ccクラスを支えていたビッグスクーターもいよいよ販売が頭打ちになったのではないかと想像します。ただ市場が飽和状態かというと、そうとばかりも言えないのではないか。

もともと250ccクラスは、オフ車を別にすれば、スクーターも含めて、街乗り用途の比重が大きいものです。ビッグスクーターも、地方ではほとんど見かけないもので、これは完全に都市型の移動手段でありファッションツールです。街乗りであれば、簡単に移動、駐輪できることが売りになるはずですが、路上駐輪が取り締まりの対象になってから、その利用価値が揺らいでしまいました。

それなら、駐輪場を増やせばいいかというと、大都市圏で駐輪場というと、わざわざ建物を作って、管理人を置き、有料で駐輪させるというものです。駅のそばの通勤客用の自転車・バイク置き場なら採算があうし、利用者もその料金を負担と思わない程でしょうが、街中では採算がとれるかどうか。

もともと二輪は路上駐輪も見逃されていたものですが、キップを切られるようになった都市圏では二輪のメリットがなくなりました。二輪ばかりでなく四輪も、ただ排除の論理だけが横行していますが、ヨーロッパのように、もともと車が栄える前からある都市では、車の置き場所に柔軟な姿勢があります。夜はアパート近くの路上ばかりか、歩道の上にさえ駐車できるようにしている都市もあります。バイクも、道路の一部として駐輪スペースを設けています。スペースが不足するようになれば、行政が歩道の一部を駐輪スペースに指定する都市もあります。それだけ、お客に集まってもらいたいというお店や街のあり方にかかわる問題でもあるわけです。つまり、都市計画行政の一環として車や二輪のスペースを考える文化が土台にあります。警察機構が取り締まりの対象としている駐輪問題とはそもそも次元が異なります。

二輪の販売動向には経済状況が影響するのは当然としても、そればかりでなく、都市のあり方、そこで人が集うことを考慮することなしに、駐車規制だけを強化したことも陰を落としていると見るのは、私だけではないでしょう。


 ('08/12/30) 
2009年二輪市場はどうなる

アメリカの三大自動車メーカー、いわゆるビッグスリーの経営破綻が世界的ニュースになったあとで、たっぷり内部留保をため込んでいる日本のビッゲストワンが、たかが経常赤字になるとの予測から突然臨時工の首切りを始めたことも、これまた内外で大きく報じられました。会見で「100年に一度」の経済危機などという表現を使ったのは、だから首切りは当然という釈明なのか、それとも本気で1930年代の世界恐慌に比べているのか、いささか消化不良の気味があります。しかし、それによって雇用不安を高めている事実は変わらず、まわり回って新車の買い控えとさらなる販売不振という、負の連鎖にはまることになりつつあります。

同じ自動車として、二輪車も同様に販売が落ち込んでいますが、四輪ほどにニュースで取り上げられないのは、二輪ジャーナリズムの不在という事実もあるでしょうが、日本の二輪ビッグフォーは二輪専門メーカーではなくて、ずっと大きい本体の一部門であって、二輪事業の不振が直接日本経済の問題として考えられていないことが、いちばんの理由でしょう。

ところがハーレーダビッドソンは事情が異なります。バイク専業メーカーであること、大型バイクに特化していること、10年で販売台数3倍増という驚異的な成長を遂げたメーカーであること、そして、以前分析したように、その成長がアメリカ経済のこれまでの好調をバックにしたものであること、さらに日本に限っていうと、ビッグバイク市場の先導的役割を果たしていること、などからその業績はビッグスリー以上にライダーの関心事になるものです。

ハーレーは上場企業として四半期決算報告を行っており、2008年度の第4四半期の決算報告は1月23日に行うと発表がありましたが、これまでの四半期毎の数字から、ある程度の予測はつきます。右は2005年の第3四半期から今年の第3四半期までの3年間の販売台数推移をグラフにしたものです。

グラフから予想できることは、まずアメリカ国内の二輪市場の縮小です。これは大型バイクの販売シェアで半分を占めるハーレーひとりの問題ではなくて、残り半分を競う日本のメーカーにとっても打撃になります。しかも、急激な円高の進行がさらに追い討ちをかけます。

もうひとつ分かることは、ハーレーの国内販売の不振を国外販売がカバーするようになっていることです。2008年度はアメリカ国内販売の50%にまで伸びています。ただ、主な輸出先であるヨーロッパと日本も、金融危機が波及していますので、これも先の見通しは明るくありません。ひとり日本においては、ドル安円高をバックに安売り攻勢をかけてくることも考えられますが、これはブランド力を低下させるリスクもあります。

では2009年の二輪空模様は? もしも「100年に一度」の経済危機なら、自動車は四輪も二輪も、趣味性・レジャー性の強いモデルの新車販売は落ち込むことは避けられません。でも、趣味とはいえライダーの思い入れの強いバイクは、新車より中古市場がいくらか拡大すると思われます。当然パーツ転売を目的とするバイク窃盗もマニアックな手口が増加することでしょう。ハーレーも一時の生産停止や人員削減を余儀なくされるかも知れません。日本のバイクショップは、新車販売で利ざやを稼いでいたところは苦しくなるでしょうから、固定客をもち、修理や定期点検のサービスとともに中古バイクやレストアなど、その腕で客を引きとどめるとともに、客が気軽に立ち寄れるショップへの転換が必要になるでしょう。ではライダーになにができるか? バイクに乗れるということは、ショップとメーカーがあるからだ、と知れば、いろんなアイデアが生まれるはず。ここが、バイクが文化として日本に根づくかどうかの分かれ道なのかも知れません。


 ('08/12/18) 
高級な小型バイクも

新聞などのバイク盗難を扱う記事で大型バイクを「高級バイク」と呼ぶことがあります。四輪で言う「高級車」からの連想ではないかと思いますが、窃盗団が高価で取引できるという意味もあるのでしょう。しかしそれによって、原付きや小型バイクの窃盗事件が相対的に軽視されることには違和感を禁じえません。No.4'403 高槻市のAPE100さんから。

こんにちは。YAHOO検索にて、こちら様を知りました。
長年 オートバイを愛してきまして、現在の所有は小さい車輌ですが 可愛がっておりました。
何とか 一縷の希望を持ちたく思い、メッセージを送らせていただきました。
お忙しい中、誠に恐れ入りますが、どうか宜しくお願い申し上げます。

 ('08/12/17) 
アフリカからの便り

思いがけない国のライダーの方からメールをいただきました。南アフリカとモザンビークに囲まれた、人口100万人あまりの小さな国、スワジランドに住んでいるというI.C.さんから。

Hey - just found your website doing some search about bikes stolen in japan. My story is 
pretty amazing and still unfolding, here are the highlights:
 - In 2005 I was living in Cambodia and I bought a Honda xr400 from a local shop;
 - I registered the bike in Cambodia and rode it there until 2007;
 - In 2007 I exported the bike to Romania, and from there, a few month ago I exported 
   it again to Swaziland (where I am living now - I move a lot with my work);
 - When I tried to register the bike in Swaziland (Swaziland is a small country in Africa,
   between Mozambique and south Africa) the police run an international Interpol search 
   and it seems the frame is registered as stolen in Japan in 2004!!
 - The Swazi police then confiscated my bike waiting for more info from Japan.
 - I am still waiting to see what will happen

This is an amazing story and very disturbing to me as I have been for years a good faith 
owner (who has spent loads of money on the bike even after buying it, shipping it and 
riding it all over the world over three continents).

Just in case the owner has ever registered the bike with your site - here is the frame 
number: JH2NE0302VM103009.

内容は概略以下のようになります。
仕事の関係で国を移動することの多い私は、カンボジアに住んでいた2005年に地元のショップから
XR400を購入。カンボジアでナンバーを取得して2007年まで乗っていた。2007年にルーマニアに
バイクと一緒に引っ越し、さらに今住んでいるスワジランドに移ったのが数ヶ月前のこと。ここで
登録しようとしたら、警察がインターポルを通して調査したところによると、このXR400のフレーム
番号は2004年に日本で盗難被害にあったものとのこと。バイクは今警察が押収しており、日本からの
情報待ちの状態。どうなるのか、私も進展を待っているところ。

何年も大切に乗ってきて、しかも3つの大陸を跨いで、文字通り世界を一緒に回った愛車なのに、
驚くとともに当惑している。貴サイトに登録されているかも知れず、フレーム番号を添えます。
この車体番号は当サイトのリストにヒットしませんでした。インターポルを通して日本の警察に 照会しているなら、たぶんオーナーにはすでに連絡がいっているものと思います。もっとも、被害届の住所、連絡先 に変更がなかったら、の話ですが。

しかし、せっかくオーナーに連絡がいっても、日本のインターポルは、外国のインターポルからの 問い合わせに回答をするだけで、取り戻すための手助けをしてくれるわけではありません。また、オーナー 自身が取り戻す意志がなかったり、取り戻したいと思っても、どうしていいか分からないままうやむやに なってしまうのがこれまでのケースです。

以前、バンコクで同じように大型バイクに乗っていたスイス国籍の方が、当サイトで照合したら盗難バイク だったと連絡をくださったことがありました。その顛末はこちらで。

 『海外で見つかったNo.2'440 CB1300SFの顛末』('05.11.27)

バイク盗難は、被害者ばかりでなく、それを購入した善意のライダーまで不幸に陥れるものです。でも、このように、世界のライダーの連携の輪が、すこしづつでも広がってくれることに勇気づけられます。


 ('08/12/7) 
『Wall-E』のロボット造形

公開中のDisney Pixarの『Wall-E』を観てきました。これが目当てだったわけではなくて、所用で出かけた帰りに府中のTOHOシネマズに寄って、どれにしようかと、消去法で残ったのがこのアニメでした。

内容も全く知らずに、あまり期待もせずに観たのですが、これがなかなかの傑作でした。ひとつには、いつものディズニーの人や動物のキャラクターではなくて、ロボット2台が主人公で、その2台がマシンながら動きと表情が豊かで、しかもその造形がすぐれていたためでした。

Wall-Eはいかにも作業ロボットとしての機械、そしてEVEは700年後の設計の洗練された高性能マシン。そのEVEの光沢ある白はiPodを思わせます。頭部と腕が本体から浮いているのもデザインとしてすぐれているものです。でも、足を省いたそのシンプルさは、どこか手塚治虫の『火の鳥 復活篇』のロボットを連想させます。

ところで、EVE(イーヴ)という名前は直截すぎるくらいですが、Extraterrestrial Vegetation Evaluatorの頭文字とのこと。「異星植物探査ロボット」というところか。しかし、そもそもEVEとなるように単語をこじつけたものでしょう。わからないのはWall-Eの名前の由来。いちおうWaste Allocation Load Lifter Earth-Class(地球用ゴミ処理ロボット)の省略形らしいですが、これもいったいどちらが優先したものか。日本語としては「ウォーリー」って、あまりいい響きがありませんが、英語の語感ではなにか連想があるのかな。


 ('08/12/5) 
師走の防犯

No.4'398 西宮市のCBR1000RRさんの被害状況。関西方面で窃盗団が暗躍しています。

マンションエレベーターホールに警報機とディスクロックをしてカバーを掛け
駐輪していたところ盗難に遭いました。
引きずった跡などもなく、カバーを置いてバイクが消えて無くなっていました。
被害を出したところ私が住んでいる近辺でここ一月の間に10件ほどの大型バイ
クが被害にあっていると聞きました。組織的な窃盗団の仕事だと思います。
こんなに悔しい物だとは思いませんでした。掲載の程,よろしくおねがい致します。


 ('08/11/30) 
二輪車の排出ガス規制

現在日本の二輪車メーカーのラインナップから多くのモデルが「生産終了」となっています。ホンダの場合を見ると、ロードスポーツ からはCB750が消えて、ナナハンとしてはシャドウが残るのみ。この中間排気量のスポーツタイプはCBR600RRだけになります。250ccは全滅して、CB223Sがかろうじてこのクラスのモデルとなっています。

どうやら、新しい排ガス規制に対応できないことが製造中止の理由のようですが、対応しようにも販売台数の関係から、いきおい日本市場向けは対応が後回しになっている印象を受けます。

いっぱんに、ただ「排ガス規制が厳しくなった」で済まされて、あまり深入りはされていないようですが、この新しい規制(平成18年規制と呼ばれる)はいったいどんなものなのか?

JAMA日本自動車工業会のWebサイトに「二輪車の排出ガス、騒音規制」の概要を説明しているページがあります。そこに「日本と諸外国の排出ガス規制値」の一覧がありましたので、以下に引用します。 

二輪排出ガス各国規制値

これを見ると、125cc以上についてはヨーロッパと同レベルになっていることが分かります。つまり、ヨーロッパ向けに製造しているモデルなら、日本でもそのまま適合しますので、ホンダのCB1300SF, CBR1000RR, CBR600RRは早くから対応していたことが分かります。

ではそれまでの日本の旧規制値はどのようなものだったかというと、125cc以上の場合、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)がそれぞれ、13.0、2.00、0.30 (g/km) だったのに対し、新規制値は上図のようになりますので、削減率はそれぞれ、85%、75%、50% となります。(アメリカのHCとNOxが1.40というのは、このふたつの合計数値のこと)

削減率が大きいことをもって「厳しい」と評されることが多いようですが、今まで二輪車は台数的にも、走行距離の上でも、四輪とは比較にならないと思われて、大目に見られていただけのことと思います。けれど、新規制に対応するにはキャブレターからインジェクションに変更しないと難しいと言われており、それはエンジンの設計変更を強いるものでしょう。

すると問題は、規制が厳しいかどうかではなくて、その対応に要するコストに見合うだけの販売台数が見込まれるかどうか、ということになるかも知れません。輸出モデルの中心は1000cc以上のビッグバイクで、日本人には体格的にも、道路事情からしてもちょうどいいと(私には)思える750ccのモデルが無くなる恐れもあります。CBR600RRはそもそもヨーロッパ向けのモデルでした。

さらに新モデルの価格がアップするとなると、いきおい購入層は新車よりも中古車に目が向くことになりますから、ここしばらくは中古市場が賑わうことになるでしょうか。金融危機から来た不況も追い討ちをかけています。このところ、温暖化ガスとしてCO2に関心が集中して、燃費のいい二輪車という脈略で語られることが多かったものですが、二輪人口が増えてくると、CO2以外の排出ガスも合わせて考えないとなりません。


 ('08/11/13) 
八珍

八珍(はっちん)ってご存知でしょうか? 種無しの渋柿で、家庭で焼酎などで渋抜きをして食べます。子供のころから当たり前に食していた柿ですが、東京に出てきてからは、お店に見当たらないので、実家からずっと送ってもらっておりました。これが新潟だけにある柿だったとは、つい最近まで知らないでいました。最近では、近くのスーパーに「おけさ柿」として並ぶようになって、今さらながら人気のようです。

「八珍」だなんて、子供心に語感がおかしいなあ、どうせ私の田舎だけの呼び名だろうと思っていたら、これが正式名で「越後七不思議の次に珍しい、の意から『八珍』と名づけられた」とのこと。へえー。

以前、タイからのお客さんが、柿を有り難がって食べていました。なんでも、タイには柿がないそうで、柿は薬の効用があるとか。そういや、日本の国外で柿を食べたことがありません。花見に近郊のアジアの国々から観光客が大挙して押し寄せるようになりましたが、柿ツアーもありかな。

どうも日本にいるとなかなか日本ならではの有り難さに気づきません。今度樹齢300年の八珍の原木があるという新潟市まで足を延ばしてみよう。


 ('08/11/10) 
二輪車出荷統計

JAMA 日本自動車工業会が「9月の自動車生産実績」を発表しています。そこに二輪車の統計があり、国内需要(出荷)の数字が見えます。それによると、

9月の国内需要(出荷)は56,594台で、前年同月比18.9%の減少となった。(うち原付第一種31,962台で
前年同月比33.7%の減少、原付第二種14,941台で同43.8%の増加、軽二輪車5,776台で同24.1%の減少、
小型二輪車3,915台で同8.4%の増加。)
9月以前の月ごとの統計もありますが、原付き第一種の減少、第二種の増加、軽二輪(125ー250)の減少、小型二輪(250以上)の増加傾向は多少の変動はあるものの一貫しています。 したがって、上半期の集計もそれを反映したものになっています。
上半期(4〜9月)の国内需要(出荷)は292,201台で、前年同期比24.4%の減少となった。(うち原付
第一種148,441台で前年同期比 42.1%の減少、原付第二種79,570台で同50.2%の増加、軽二輪車32,427台
で同42.4%の減少、小型二輪車31,763台で同 53.2%の増加。)
以前、軽二輪と小型二輪の販売台数の推移を論じたことがありますが、原付き二種の需要が高まっているのは現在の金融危機の経済状況が影響しているようにも見えます。けれど、車検のない軽二輪が減って、車検が必要な中型大型バイクが増えているのは面白い現象です。どうせ趣味で自動二輪に乗るのなら、250ccよりも400あるいは大型バイクに、という心理が働いているものでしょうか、あるいは、250クラスを押し上げていた大型スクーターの出荷が鈍ってきたものか。

 ('08/11/3) 
二輪用一体型ETC車載器

10月31日のニュースで、二輪車用ETC車載器の新製品が11月25日発売と報じています。

『日本無線、二輪車用ETCの新製品を発売…アンテナ一体型』(Yahoo!ニュース)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081031-00000001-rps-ind
日本無線は、二輪車用ETC車載器の新製品として、今まで車載器本体の格納スペースが
なく取り付けが出来なかった車種にも設置できるアンテナ一体型の「JRM-12シリーズ」
を11月25日から発売すると発表した。
どのニュース配信も、日本無線のプレスレリースを引用しているだけで、モータージャーナリズムからのコメントや分析はまだ目にしておりませんが、最初の二輪ETC車載器JRM-11の発売からわずか2年で新機種を追加してくるとは予想外のことでした。

メーカーの事情は分かりませんが、新製品の開発設計は発売の1年くらい前からスタートするものと想像します。そして発売の最終ゴーがかかるのは半年前くらいでしょうか。

すると、発売に至った背景としては、まず、現行のJRM-11が予想していたよりも好調に出荷されていることがあるかも知れません。今年6月末の時点でセットアップ件数がおよそ11万台。この数字と、セットアップ件数の推移から、需要がメーカーが当初予想したよりもありそうだ、という判断があったとしても不思議ではありません。それは2万円という価格にも反映しています。

さらに、ネイキッドやオフロード車など、車載器本体を装着するスペースがない車種のオーナーから、苦情と改善要望が多く寄せられたことも影響しているやも知れません。そこから、一体型の車載器を開発するだけの需要の大きさが見えたものでしょうか。

ともかく、売れそうもない製品をメーカーが販売するはずもなく、ということは、売れそうだとの市場判断があってのことでしょう。

新しい車載器は電源をとるだけで作動するはずですから、脱着可能の構造であることを期待するところです。そうであれば、めったに高速を利用しないライダーにとっても、ノンカウルのモデルにとっても、装着のための心理的抵抗が無くなるはずですから。


 ('08/11/2) 
『グランド・ジャット島の日曜日の午後』の謎

シカゴに1週間ほど出張しておりました。秋の短いシカゴは天気がよくても風が冷たく、低い太陽も手伝って冬の気配が漂います。走っているバイクもほとんどありません。

多忙で更新もままなりませんでしたが、半日ほど空いたので、アドラープラネタリウムとシカゴ美術館へ足を運びました。アドラープラネタリウムは天体望遠鏡からアポロまで展示が充実しており、学校の子供たちがバスで大挙して見学に来ておりました。

7年前にはじめて訪れたシカゴ美術館は今度が二回目。フランス印象派の絵画のコレクションがとくに有名ですが、あいにく貸し出されていたものか、あまり展示がありませんでした。しかし、後期印象派ジョルジュ・スーラの『グランド・ジャット島の日曜日の午後』は門外不出の所蔵品のためにここには常に展示されています。

この絵は点描画として有名ですし、だいたい学校の美術の教科書などでだれもが目にしている作品です。けれど、子供のころこれを印刷物で見たときはすんなり名画として納得したわけではありません。

そもそも、日本に紹介されてきたヨーロッパ絵画は、初めから「名画」としてのハンコが押されているものばかりで、生徒は「これは名作なんだ」と無意識のうちに評価を植え付けられるのが一般的です。

点描という画法だけで名画とは思えず、かといって、ほとんど動きのない静物のような人の配置、陽光の中に漂う気だるさ。いったい画家はなにを描こうとしたものか。

最初に目に入るのは右に立つ夫婦のような1組の男女。けれど男の顔はわざと隠されているようにも見えるし、二人の間もどこかよそよそしさがある。子供は連れておらず、替わりに猿が足元にいるのは何かの暗示か。もうひつと遠近法が焦点を結ぶのは絵の中央ほどの、母親らしき女性に手を引かれた白い服と白い帽子の少女。けれど絵の中で一人だけ正面を向いているその顔はぼんやりとしていて、そのぶん現実から浮游しているような不思議な雰囲気が囲んでいる。画家がなにか意図的に生気を抜いたような日曜の午後の印象風景。

後期印象派というのはあくまで後世の美術史家が付けた呼称。作家がなにを思い創作に打ち込んでいたか、その時代に想像を巡らすと、絵はまるで生き物のように自らを語りはじめるかのようです。




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