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2. 泌尿器科専門医の立場から
泌尿器科専門医の立場から
市立砺波総合病院 泌尿器科 江川 雅之
骨盤臓器脱(膀胱瘤/子宮脱/直腸瘤)のうち、泌尿器科が専門とする臓器は膀胱です。
膀胱が下がってくるときに感じる症状としては、下腹部の不快感、尿の出にくさ(排尿困難)、急に尿意を感じること(尿意切迫感)などが挙げられます。これらの症状は、起床直後はほとんど感じないのに時間経過とともに悪化することが特徴です。脱出の程度が軽い場合で、尿に関する症状が主体であれば、泌尿器科を受診することが多いと思われます。しかし、骨盤臓器脱について専門的な知識が乏しい泌尿器科医の場合(実際、知識の豊富な泌尿器科医は少ないのですが)、脱が症状の原因であることに気づかず内診も行われない可能性があります。
はっきりと脱を自覚している場合は、泌尿器科ではなく婦人科を受診するケースが多いと思われます。しかし婦人科でも、骨盤臓器脱について専門的な知識が乏しい場合には、泌尿器科的な検査が行われないまま、リング挿入や従来手術(子宮摘除+膣壁縫縮術)をすすめられるケースが多いと思われます。
骨盤臓器脱に関する重要な点(問題点)は、患者さん側というより医療者側にあるのではないかと、最近考えるようになっています。この疾患を専門に扱える医師や医療機関がこれまで非常に少なかったことや、診断や治療に関して討議する場(学会)や新しい治療法を確立するための試み(臨床研究)の評価が未発達であることが問題です。
最近メッシュを使用した経膣的骨盤底形成手術(TVM手術など)が広まりつつあり、この領域に興味を持つ泌尿器科医は増加傾向にあります。メッシュを使用する手術は、従来手術に比べて明らかに再発が少なく良い手術ですが、すべての脱がこの手術のみで対応できる訳ではありません。むしろ行わない方が良い場合もあります。また、膀胱だけ、子宮だけ、が単独で脱出することは稀ですので、やはり膀胱/子宮/直腸それぞれの専門医が連携している施設で治療することをお勧めします。
泌尿器科医にとって、子宮や直腸は膀胱のすぐ隣に並んでいるおなじみの臓器ですが、それらに手を加える(手術操作を加える)のは恐いものです。万一予測できない事が発生した(または発生しそうな)場合には、それぞれの臓器の専門医の助けが必要です。同じ事は婦人科医や外科医にも言えますので、医療機関を受診した場合には、担当医とご自分の3つの臓器の状態について良く相談をして治療法を決めるのが良いでしょう。
文責:市立砺波総合病院 泌尿器科 江川 雅之
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