第2回

「オーストリア　〜ザルツブルグ・ウィーン〜」(1998.10)

− オーストリアが舞台となった映画で最も有名な作品といえば「サウンドオブミュージック」でしょう。小都市ザルツブルグとその周辺を舞台としたその名作ミュージカルは私の最も好きな映画の一つでもあります。また、オーストリアで最も有名な都市ウィーンはモーツアルト、ベートーベンら多くの音楽家が活躍した都市で、その音楽家たちを題材にした映画も数多く作られています。その中でも、天才作曲家モーツアルトの半生を描いた傑作「アマデウス」は最も好きな作品です。今回、ドイツはハイデルブルグからロマンチック街道を経由し、オーストリアに入り、ザルツブルグ、ウィーンを訪ねることができましたので紹介します。

− ハイデルブルグからローデンブルグまでの古城街道は街道沿いに文字通り古城が点在する街道ですが、山並みにはさまれたネッカー川沿いを走る道からの風景は時々現れる小さな街と城を除いては日本のそれとそれほど変わらず、古城に興味がなければそれほど魅力的ではないかもしれません。しかしながら、最初に訪れたハイデルベルグは最も大きい街で、教会を中心とした街並みはとても美しく、なかでも山の中腹に立つ廃墟となったハイデルベルグ城からの眺めは一見の価値があるでしょう。また、街に数多くあるレストランのテラスでは昼間から誰もがビールジョッキを片手に食事をしており、さすがビール消費量世界一の国だと実感させられます。ちなみにドイツはビールのほかにワインもとても有名で、特に甘口の白ワインがお好きな方はぜひお試しになるとよいでしょう。

− 今回訪れた街は、古城街道に限らずどこも教会を中心にして広がっており、昔の人々の信仰心の強さを窺い知ることができました。

− ロマンチック街道にはローテンブルグから入りました。ロマンチックとはここでは中世的なという意味だそうで、同街道はまさに中世的な街並みが点在する魅力的な街道です。これらの街並みを保存するために住民たちの大変な努力があるようです。全体が城壁に囲まれた城下町ローテンブルグとデュッケンスビュールはともに所せましと立ち並んだ赤い屋根の家々と入り組んだ石畳が続く、うつくしい街です。識字率が低かったために作られたという工夫を凝らした店先の看板も魅力の一つになっています。デュッケンスビュールはローテンブルグに比べ、一回り小さく、ガイドブックにもあまり載っていませんが、それぞれ家の壁がカラフルに塗られていて、個人的にはこちらの方が気に入りました。ちなみにどの本にも載っているローテンブルグ名物シュネーバレンは食べ覚えのある味のするチョコレート菓子でしたが、ソフトボールほどもあるので、一人では食べきれないでしょう。絶対吐きます。

− ロマンチック街道の終点フュッセンは同街道のハイライト、ノイシュヴァンシュタイン（新白鳥）城のある街です。この城はディズニーランドのシンデレラ城のモデルになったとも言われています。また、絵葉書やガイドに良く載っている有名なアングルは空撮だそうで、実際には見ることができませんでしたが、その姿は「ルパン３世　カリオストロの城」に登場するカリオストロ城にそっくりです。今年のドイツは秋が早いらしく、それまでもずいぶん寒かったのですが、同城は山の中腹に建ち、湖の近くにあるためか、訪れた早朝には深く霧が立ち込めていて、麓からはおろか近くのマリエン橋からもその姿を見ることはできませんでした。霧の立ち込めた城も幻想的で、非常に良かったのですが、やはり遠景を見ることができなかったことを後悔しながら、歩いて下りてきて、昼食をとっていると、ようやく霧が晴れてきました。麓からは見えないと思い込んでいた私は、馬車の運転手にマリエル橋から城が見えるかどうか聞いたところ、後ろを指差すので、振り向いてみると、なんとすっかり霧が晴れ、露に濡れて木々が緑に光る美しい山肌にまさに奇跡のように白く輝く白鳥城がそびえ立っていたのです。ほとんどあきらめていただけにその感動はひとしおで、ろくに文化遺産など知らないくせに、世界一美しいと確信しました。城の内装は、比較的新しい建築物のせいか、絵画にしろ、調度品にしろ、あまり精巧ではなく、大雑把な印象を受けたんですけどね。

− ロマンチック街道は全長350km程度で、一日で観ようと思えば、できないこともありませんが、それぞれの街がとても魅力的なので、ゆっくり各所に1日ずつかけて旅するのが良いでしょう。ほとんど一本道で、迷うこともなさそうですから、レンタカーを借りてゆっくり回るのがベストだと思います。わたしも次に訪れる機会があればそうしようと思います。ツアーは歴史背景などを詳しく説明してくれるので、良い点もあるのですが、やっぱり好きな場所に好きなだけいられないのが一番の難点ですね。

− オーストリアの国境に近いフュッセンまでくるとアルプスの山並みが見えてきていよいよ気分が高ぶってきます。サウンドオブミュージックの街、ザルツブルグももうすぐです。

次のページ