−2月−

−生徒指導8−
トラブルのあるクラスの様子をみるようにという指示を受けて,毎日廊下で非常事態に備えています。問題のあるクラスで,生徒指導として対応が難しいのは,その問題が子どもと教師の人間関係から生じている場合です。この場合,子どもには子どもなりの正当性がありますから,横から下手な口出しをすると,よけい火に油を注ぐことになってしまうことがあります。

−生徒指導9−
生徒指導主事としての活動を「活動実績記録」に毎日残すことになっています。決められた用紙には「朝会等」「1校時」「2校時」「3校時」「4校時」「昼休憩等」「5校時」「6校時」「放課後等」の枠があり,その全てに生徒指導としての活動を夏休み等の休業中も記録していきます。

−生徒指導10−
不登校対策と共に,いわゆる「別室登校児童」の指導も行います。これは養護の先生や情緒担当の先生方とも連携しながら,毎日の様子をみながらの対応となります。担任の先生は学級事務で忙しいので,その子の学習に対する評価や採点はこちらでするようになります。最も難しいのは,「その状態で満足できるような手厚い対応をしてはいけない」ということです。一人でも学習できると思ってしまっては,学級への帰属はより遠のいてしまいます。しかし,あまり不十分では教育の保障をしていないことにもなります。

−生徒指導11−
毎日の校内巡視でチェックするものの中に靴箱の整頓,備品の整頓があります。靴が脱ぎっぱなしになっていたり,片方落ちていたりすると,担任の先生に,休憩時間に本人が直しに行くよう伝えます。また時々掃除道具が置きっぱなしになっていることがあるので,1階のロッカーにしまっています。もう随分たまってきて,溢れんばかりになっています。しかしどこからも掃除道具が足りなくなったという声が聞かれません。こんなことをするから生徒指導は嫌われるのかもしれません。

−生徒指導12−
今年度は生徒指導担当ともう1つ,情報教育の担当もしています。どちらも今まで一番避けたかった担当です。情報担当は昨年度までマシン語も扱えるような専門的な知識を持たれた方で,どんなトラブルも解決されていました。その方が転勤されてしまい,今年は困ったことになっています。私などのパソコンの知識は車の運転と同じで,どうすれば曲がるかは分かっていても,エンジンがかからなくなってしまえばとても直せないように,パソコンの調子がいつもと違ってしまうと,もうさっぱりお手上げの状態です。

−生徒指導13−
出張で1日学校を空けていた次の日,学校に行くと,今まで問題行動のよく見られたクラスで前日も問題が起きたので,これからはそのクラスに入るように言われました。目の前には画用紙に数箇条の約束事が書かれてあり,それが3回守れなかったら別室に連れて行って授業をすることにしようということになったようです。そしてその注意の回数を数えて連れ出すのが私の役割だと言われました。

−生徒指導14−
私はそれはできませんと言いました。「3回守れなかったら・・・」という話を聞いた瞬間に,はっきりと目に浮かんだのは「修羅場」です。もし本当にこの約束事を実行しようとして,該当の子どもを教室から出そうとしたら必ず「自分だけじゃない。」「あの子も喋っていた。」「○○もやっていた。」「なぜ○○は注意しないのか。」等の反発,文句が出てくるはずです。その中で,出なさい,出ないの言い合いが繰り広げられる・・・という修羅場が目に浮かびました。

−生徒指導15−
それに,誰を何回注意したかをいちいちチェックしていくような殺伐としたことなどできるわけがありません。その場で私は担任の先生に,教室に貼ることになっていた画用紙の内容は,口頭で注意するようお願いしました。そしてどうしても守れない人は,生徒指導の先生と別の部屋で勉強することになると伝えてもらうことにしました。そして,注意の方は私がするので,担任の先生は聞いている子や座っている子など,当たり前に活動している子をほめていってもらうようお願いしました。

−生徒指導16−
その日から3日間,私は教室の後ろの角にぴったり背中をつけてできるだけ存在感のないように努めました。3日間で一度だけ出歩いている子に注意をしただけでしたが,担任のほめ言葉もあり,時には担任の周りに子どもたちが集まり談笑する場面もありました。私が担任の先生に伝えていたのは,朝の会と帰りの会に必ず一人の名前を出して短くほめて終わること。授業は1分前には終わること。感動的,感激的にほめることでした。

−生徒指導17−
しかし,段々チャイムで授業が終わらなくなってきたり,ほめているようで,それが他の者への注意に聞こえてきたり,朝の会でほめることがなかったりしてきました。次の週からは私は教室の外に出て廊下で待機していましたが,1日に何回か教室に呼ばれることがありました。注意3回で教室から出るという取組みでも,ほめる取組みでも問題が起きる時は起きます。どうせ起きるのならば,少しでも明るい方向で指導していけばいいのではないかと思っています。

−花芽−
ノースポール12本,パンジー24本を庭に植えました。赤と白のハナミズキ,ヤマボウシにも今年はたくさん花芽がついています。全ての葉を落として1年,枯れてしまったと切り倒される直前,幹から新芽を出して命拾いしたツバキにも多くの蕾が見られます。そこにセキレイやジョウビタキが時折訪れてくれます。いつもながら,春を迎える季節は命の喜びを与えてくれます。

−変化1−
生活指導担当になって4月に全体に呼びかけた1つに「ゴミ袋の口をくくること」がありました。収集作業をされる方からの苦情も聞いていたからです。そこで,時にはくくってない袋の中身を調べて,それが出された教室まで持って行ったことも何度かありました。ゴミステーションで出合う子どもたちにもその都度確認していました。

−変化2−
最近ふと気づいたのは,そのゴミステーションに出されたゴミ袋のくくり方の変化です。稚拙ながら何回も何回も小さくくくってある袋が目につくようになりました。ここからは,はっきりとした子どもたちのゴミ出しへの意識の変化,又は各担任の指導の変化が感じられます。この1年間生活指導をしてきた中で,ささやかな具体的な成果ではないかと,一人で勝手に喜んでいます。

−変化3−
小さなゴミ袋の変化に比べて,変化しないことはたくさんあります。例えば「掃除の態度」です。全校を相手に指導をしていくことの難しさを感じています。午後校内巡視をしていると,掃除道具がそのまま置いてあることもあります。以前はその場所を掃除している学級を調べて返していましたが,ある時から回収することにしました。

−変化4−
先日,回収してきた掃除道具を改めて見てみると,いつの間にか何十本もの箒とちりとり,そしてぞうきんの山になっていました。とうとうある日の全校朝会で,掃除道具が投げっぱなしになっていることを話し,その日の午前中に廊下に並べておくから,教室に帰って掃除道具の数を確認して,足りなかったら取りに来るよう伝えました。

−変化5−
その日の昼になって,掃除道具を並べた廊下に行ってみると,見事にほとんどの掃除道具がそのまま残っていました。これが現実です。変化しない掃除態度を変化させるには,校内全体の掃除に対する意識を変革させるような一大ムーブメントを巻き起こすことが必要です。そのためのシナリオとエネルギーが今の課題です。

−タイムマシン1−
生活指導担当は,いつも問題のある場面に出かけていくことになります。学級担任をしている時に,友人関係のトラブル等から「好ましくない行動」が学級で見られることは時折ありました。普段は楽しく過ごしていても,こういう時は砂を噛むような思いにとらわれながら指導します。そしてその日は家に帰っても心配で,心に澱が溜まったような気分になったものでした。それが今年度は,全校のそういう場面ばかりに出向いていくことが毎日の仕事になってしまいました。

−タイムマシン2−
それでもこれが今年の私に与えられたMissionなので,自分にできる精一杯の取組みをしてきたつもりです。しかし,世の中の常として,心ない一言はあるものです。問題行動で苦労しておられるクラスに行って取組みをしても,後で「あなたのすることは全く効果がない。」と言われ。問題が起きているからちょっと来てと言われ,行って指導すると,後から「あなたが叱ったから・・・。」と責められるのでした。

−タイムマシン3−
クラスが荒れる場合の授業の共通点は,「抑揚がない」「工夫がない」「面白味がない」です。また「ほめない」「終わらない」「遊ばない」ので,どんどん深みにはまっていきます。そういう部分の指摘をし,改善点を助言しても,継続的なこだわりを持った努力は見られず,返ってくるのは件の心ない一言ということもあります。つい「訴えてやる!」気分になってしまいます。しかしこういう時,どうにかこらえることができるのは,「タイムマシン」を思い浮かべるからです。

−タイムマシン4−
「もう一度あの時に帰れたら」というような空想を誰もがするものです。これは少なくとも今の科学技術では無理な話ですが,今すぐにでも叶えられるタイムマシンもあります。

−タイムマシン5−
あの頃のあの時にもう一度帰ることができたら,今度はもっとうまくできるのに・・・と思うことがあります。今思えば若気の至りだったと反省することがあります。だから,現在の自分の行動も後悔と共に後で思い出すこともあるはずです。今すぐに叶えられるタイムマシンは,歳を取った自分が今の時代に帰ってきていると思えばすむことです。「もう歳だから」なんて言っていては人生の大損です。「今の自分」は,歳を取って死にそうになった自分がタイムマシンで若返ったのだと思えば,忙しく働ける今がありがたく思えることもあります。未来にいるはずの,のどかにベンチに座って,昔を思い出している年老いた自分なら,きっと,今の小さなことにいちいち腹を立てて,ぎくしゃくした人間関係をわざわざ自分からつくり出すことの愚かさに情けない思いをすることでしょう。

3月へ

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月