−5月−

−教務14−
このようにして,約45分間,具体的実践課題8項目についてそれぞれ例示しながら説明していきました。そして最後に「今紹介しているのは,はじめの第一歩です。まずこういう形を1学期中に作っていって,2学期以降に段々中身を深めていきましょう。そして3学期にはここにいる誰もがまだ気づいていない新しい授業の高みにたどりつき,私たちの学校独自の算数授業スタイルを築いていきましょう。」とちょっと大袈裟なまとめ方をした後,更にもう一言研究主任の先生に向けて大袈裟なお願いを付け加えました。

−教務15−
研究構想に関する模擬授業の最初は導入(−教務6−)
まず「導入」については,授業が始まってすぐに本時のめあてを提示するようなことのないよう,そのめあてが必要になる小さな話題(課題)から入る例をいくつか示しました。まず小さな課題の解決,又は疑問が生じてから本課題に取り組んでいくというイメージです。この方が子どもが学習意欲を持つはずと考えています。いわゆる「つかみ」です。物語のプロローグにあたる部分を授業に取り入れましょうと話しました。
についてでした。そして最後は「授業の振り返り」の工夫についてで,それは物語のエピローグにあたる部分だと話していました。そこで模擬授業の最後,研究主任の先生に,今年の公開研究会の実践発表をする時に勇気があったら「私たちの学校の算数授業にはプロローグとエピローグがあります。しかし,一番大切にしているのは,クライマックスです。」と言ってみて下さいとお願いをしました。これは大いに受けました。

−教務16−
はじめの第一歩ということで,この際,「ノートの使い方」や「子どもどうしの説明の途中の返事の仕方」等も提案していきました。そして,この学校では「問題解決型」の授業を指向していくということが決まっていたので,「最初から集団解決,練り合いをさせようとすると空気が重くなることもある。1学期のうちはどんどん教師が全面に出てやり方を教え,どんどん真似をさせて型を教え込んでいきましょう。」と提案しました。

−教務17−
4月,始業式前の忙しい時期に,45分間も時間を取ってしまった研究構想の提案でしたが,終わった後,何人かの先生から「模擬授業が楽しかったです。」という声をいただき,ほっとしました。同い年の先生からは「算数の授業をするのが楽しみになった。」とも言ってもらって,温かい職場に恵まれた幸せを噛みしめました。

−効果1−
今年から全校で100マス計算に取り組んでいます。実際にこの100マス計算に取り組むようになって,実はもう4月のうちに既に大きな効果が生まれてきています。

−効果2−
100マス計算に全校で取り組むことは前年度から決まっていたようです。そのための準備として各学級用にストップウォッチも購入されていました。100マス計算を行うことについて,私は3つの提案をしました。

−効果3−
提案の1つ目は「本気にならない」ということです。実際にはこういう言い方はしませんでしたが,100マス計算への取組みで全員に意欲的な姿を求め過ぎて,怠けている子を「叱る」ようなことはやめましょうと言いました。100マス計算のようなことを始めると,子どもの中には必ず無気力を絵に描いたような姿を見せる子がいるのです。こういう子は普段の生活の場面でも注意され,勉強中にも注意されています。それが,100マスを始めたことで,ここでもまた注意をされてはかなわないだろうという思いと,逆にそういう子をこの1年で,叱らずにいつの間にか本気にさせていくような気の長い取組みをしていけたらいいなと思いました。

−効果4−
2つ目の提案は「時間の無駄をなくす」ということです。各学年の計算内容は決められていましたが,具体的なプリントの使用方法は各学年に任されていました。そこで,問題用紙を毎回一々配るようなことはやめて,表裏に2種類の問題を両面印刷した用紙(同じでは前回の答えが見開きにした時見えるので)と答えを冊子に綴じ,子どもに渡しておく方法を提案しました。時間がきたら自分で用意して,できた子から答えを見て自分で答え合わせをさせることで,用紙を配ったり,答えを教師や子どもが言うのを待つ時間の無駄を省きます。

−効果5−
3つ目は,時間の計り方についての提案をしました。各学級にストップウォッチは準備してありました。しかしもし私が学級担任だったとしたら,それは使わないだろうと思いました。できた子一人ひとりに時間を教えていくことは,とても煩雑です。そこで時間を示す電光掲示板を用意し,できた子はそれを見て自分で時間を記録していくのです。本物はとても高くて買えません。昔はこのHPでも紹介したように,ビデオカメラでタイマーをその都度テレビに映しました。しかし最近はもっと手軽な方法を使っていました。

−効果6−
以前は100マス計算をする度にストップウォッチをカメラで映していましたが,ビデオカメラなので一度撮影すればいいと気づき,それからはカウントアップするタイマービデオを流していました。今回,学校全体で今まで漢字・計算練習に使っていた掃除後の10分間の帯タイムに100マス計算を行うことになったので,このタイマービデオを全校放送として流してみようと思いました。

−効果7−
そこで,3つ目の提案は,時間を計るのに,各学級でストップウォッチを使われてもいいし,テレビをつければ校内放送でストップウォッチのビデオを流しているのでそれを使われてもいいですよということでした。そして掃除終了のチャイムが鳴り終わったらビデオを毎日流していきました。


掃除終了を告げるチャイムは掃除終了と共にそれから10分間の漢字・計算練習タイムの開始を告げるチャイムでもありました。このチャイムが鳴る5分前には放送委員会が掃除終わり5分前を知らせる音楽を流していたので,音楽を聞いてから片付けを始めれば,チャイムが鳴る時点には教室にいることができるようにはなっていました。

−効果8−
タイマービデオは今まで自分のクラスだけで利用していたので,ビデオのカウントが始まるのを見ながらスタートの合図をしていました。しかし今回校内放送として流し,他のクラスにも利用してもらうのであれば,テレビのスイッチを入れるだけですむようにしたいと思い,ビデオに私の声で「よーい,スタート。」の声と共にカウントが始まるように撮影し,それを流していました。ところが・・・。

−効果9−
タイマービデオには「よーい,スタート。」の声と共に撮影時の外部の騒音が入っていて,子どもたちが計算している間中テレビからはその音も流れてしまっていました。テレビの音量調節をすれば問題ないのですが,毎日それをするのは煩雑だろうと思いました。そこで,本気になってビデオの編集をし直して,時報の音でスタートし,その後は一切音が流れないようにしました。「ビデオカメラでの撮影」→「パソコン編集」→「ビデオカメラへのダビング」→「VHSテープへのダビング」と手間はかかりましたが,それからはスタートの時報以外は静かな電光掲示板の役割をテレビで行えるようになりました。

−効果10−
校内放送でストップウォッチのビデオを流して100マス計算の時間を計るという話は今まで聞いたことがありませんでした。ほんの思いつきから始まったことで,ひょっとしたら日本中でここだけでやっている経費節減のせこい方法かもしれません。実際に始めてから,ストップウォッチか校内放送かどちらでもいいですとは言いながら,放送を利用しておられるクラスはあるのだろうかと思っていた所・・・。

−効果11−
タイマービデオを使用する場合,担任の先生方には「掃除終わりのチャイムが鳴ったら,子どもたちが全員教室に帰っていようといまいと,黙ってテレビのスイッチを入れるだけにして下さい。」と伝えていました。また「早く準備しなさい。」等の指示は一切しなくていいこと,問題プリントを冊子にして渡しておけば,毎回教師が配らなくても,自分で用意して待っているはずだということも話していました。しかし,実際にビデオを流し始めてから使用状況は確認していませんでした。使っても使わなくてもいいとは言いながら,もし誰も使っていなかったら,少し寂しいものがあると思っていたからです。

−効果12−
傷つくことが嫌なので,タイマービデオの利用状況の部分は意識的に避けながら,4月の半ばから毎日,掃除終わりのチャイムと共にビデオを流す日々が始まりました。1ヶ月ほど経ったある日,午後から出張の予定が入っていました。時間的にビデオのスイッチを入れることができないので,「もしチャイムが鳴ってもビデオが始まらない場合は私が忘れているということなので,空気を読んでストップウォッチを使って下さい。と言っていたことだし,今日は忘れたことにしてビデオなしにしようか。」と職員室で話していたところ,「えっ,ビデオ流さないの?」と学年主任の先生から言われました。「あれいいんよ。何も言わなくても掃除終わりのチャイムを守るようになって。」

−効果13−
その数日後,同じようなことを他の学年主任の先生からも言われました。「最初提案を聞いた時,えーっ掃除で遅くなって帰ってくる子もいるのに,放送に合わせて全員が始めることはできないよーと思っていたけど,テレビをつけるようになったら,何も言わなくても時間を守るようになって,ビデオの始まりをシーンとして待っている。とってもいいよ。」と。つまり,「実はもう4月のうちに既に大きな効果が生まれてきています。」というのは,何と「計算力」ではなく,「時間を守る」という効果でしたとさ・・・。

−効果14−
今日,試しにいくつかの教室を回って見てみると,どの教室でもタイマービデオを利用されていました。必ず使って下さいとは言っていないので,この方が便利だから必然的にこちらを使っておられるのだろうと思います。教務の仕事を今年するようになって,思っているのは,こういう先生方の仕事のバックアップをしていきたいということです。

−相談1−
新学期が始まって1週間ほど経ったある日のことです。一人の先生が「子どものことで相談がある。」と言ってこられました。瞬間的に,昨年生徒指導担当をしていたので,課題児の問題関係かなと思ったのですが,話を聞いてみると全く違う内容でした。

−相談2−
「子どもが静かであまり発表しない。」というのが相談の内容でした。新しいクラスと先生の状況の中でお互いに牽制しあっているようです。何となくよそよそしく,何とも言えない緊張感が教師と子どもの両方に継続している感じでした。その先生には,以前私の授業を見て「どうしたらあんな発表(指名なし発言)ができるようになるのか。」と聞かれたことがあり,このHPに載せている「5分でできる指名なし発言」をプリントして渡していました。

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