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HAPPY、HAPPY、LOVELY ! − school festival −







     由希が言うことには・・・




『 見事、特賞を当てたのは・・』

『 陵湘のアリスこと、伊集院真琴さんです!

大沢の声に歓声と拍手が上がる。

『 実行委員、映画、だけでなく、クラスの喫茶の和菓子、学内の飾りの生け花、などなど』
『 表だけでなく、裏方でも大きな働きで陵湘祭を支えてくれた当選者!』
『 周囲から、納得のあたたかい拍手が贈られます!』

そのときちょうど俺と電話中だった伊集院は、友人たちに引っ張られ、壇上へ上がった。

『おめでとうございまーす!』
『実行委員長の朝居くんから旅行チケットが渡されます!』
『おめでとう』
『あ・ありがとうございます・・』
手渡されるチケットを伊集院は遠慮がちに受け取る。
(このときの伊集院の微妙な顔は、俺から「温泉を当てろ」と言われていたせいだ、とみんなから非難をあびた)

『ホント、ありがとう。伊集院さんが企画に乗ってくれたから、幅が広がって、色々できたよ』
朝居がマイクで感謝の気持ちを語る。
『そんな・・、みんなで力を合わせて頑張ったから出来たんです』
伊集院はキッパリと言った。
そんな伊集院と朝居に、大沢が肩を叩き、
『今回の陵湘祭の成功に、功労者に、拍手ーー!』
とマイクを持った手で拍手をした。
大きな拍手の音が体育館を包む。
『ここにいる全員が、ですよー! え、俺も? そっか、どうも〜!』

と、青春が繰り広げられ・・


『 さてさて、このチケット、ペア!!ですけれども!』

『ずばり、伊集院さんは誰と?!』

マイクが伊集院の前に差し出される。

『え・・』

思わず、といった様子でマイクを受け取った伊集院。



『 もちろん、竜く―・・・ 一宮先輩と 』


おお〜〜!
きゃーー!


『え、あ!ちがっ!』
自分の言葉が、何やら誤解を招く発言だったらしいことに気がついた伊集院は、真っ赤になって否定した。


『 竜くんが 欲しい って言っていたから!』


きゃあぁーー! ををぉ〜〜!


『 なにを?!』
『 なにが欲しいって!!?』


『 ち・ちが・・だって、私が当たってしまって、だから、』





『 竜くんに捧げようと思って・・ 』





・・おおぉおーー!


『 ゆるせん一宮ぁああー!』
『 まこと大胆ーー!きゃー!』






阿鼻叫喚。





・・・みんな・・・




みんな、アホだろ。





はぁー、と俺がため息をつくと、伊集院が睨んできた。
「竜くん・・」
「あ?」
「いま、アホだなーと思ったでしょ!」
「いやいや・・」

正解ですけどね。

「考えを改めました」
「へ?」
「このチケット」
「うん?」

「一緒に行ってくれなければ、あげません!」

「おい!」

「友達と行くことにします」
こらこら。
「まぁまぁ、考え直せ」
チケットを、俺に捧げる決意をしたんだろー。

「男女ふたりで温泉なんて、ダメですよ?」
よしよし、と伊集院の頭を撫でる。
ニッコリ笑うと、伊集院は一瞬ポーっとしたあと、
「またそんな!騙されません!」
と強気な口調でまた俺を睨んだ。

まったく。

「もっと自分を大事にしなさいねー?」
生意気な顔をした伊集院の頬をつまんで、引っ張る。

「私は、私を大事にしています」
ますます生意気になった顔で、伊集院が俺を見た。

どこがだよ。


「だって私は、竜くん以外には、ふれさせませんから」


毅然とした目を俺に向ける。


「だから、」


「私は、自分を、とても大事にしているってことです」









「・・・ばぁーか」

俺はそう言って、ピンッと伊集院の額を指で弾いた。

「むうー」
「ぜんぜん判ってないね、伊集院さん」

ま、いいけど。

「どっちにしろ、俺の怪我が治るまでは、どこにも行けないけど?」
俺はギプスに固められている脚をブラブラさせた。


「それでもいいなら」


「・・・竜くん!」
わー!バカ!
飛び掛られて、俺は、したたかに後ろの壁に頭をぶつけた。


ピヨピヨ・・

ひよこが飛ぶ。


俺たちの会話を聞いていた周りから湧き上がった歓声、そんなものは、



頭を打った衝撃と、ぎゅうぎゅうに抱き締めてくる腕のせいで、俺の耳には届かなかった。






つづく




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