「ライバル増えちゃった・・」
ぽつり、と伊集院が言う。
「ライバル?」
俺が問うと、伊集院は顔を上げて、
「竜くんを好きな、ライバル!」
と言った。
「あのな、あんなのお祭りのノリだから」
本気にするなよ。
「そんなことないです。竜くん格好よかったもの、好きになった子、絶対いる」
「あー?」
確かに勝負に勝ってたら格好よくは見えると思うけど。
でも、それって。
「サッカー選手がサッカー上手いと格好よく見えるのと同じレベルだぞ」
普段から俺は学校で格闘しているわけじゃないし。
「ロナウジーニョは確かにサッカーのときは格好よく見えるけどな、でも顔だけ見たらそうは思わないだろ(失礼!)」
今は騒いでたって、すぐに俺がただの普通の人間だって、気がつく。
「竜くんはわかってないなあ・・」
オンナゴコロを全然わかってない、と伊集院がボヤく。
なんだよ。
わかってたまるか、そんなもん。
こっちはオトコゴコロしか持ち合わせてないんだ。
「別に、そんなん関係ねーだろ」
「ありますー」
「ねぇよ」
口を尖らせて拗ねる伊集院に呆れる。
――― オマエこそ、全っ然、わかってねえな。
「やるって言っただろ」
「え?」
「言っただろ?」
まさか、この俺が、そんなセリフ、簡単に言ったなんて思ってんじゃねぇだろうな。
「ライバルにさえ、なんねーよ」
大きな目を瞬かせる伊集院にチョップをかます。
ばーか。
呆然とする伊集院をおいて、俺は更衣室へ戻った。
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