2000年9月中旬の日常

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2000年9月11日(月)

 それにしても書類作り過ぎかも知れないな俺。整理しても整理しても終わらない。

 自転車との付き合いは長い。取り分け酷使したのが高校時代で、かなりきつい坂を挟んだ5kmの道程を毎日ペダルを漕ぎ漕ぎ往復していた。酷使していた、というだけあって当時使っていた自転車はあちこち錆びだらけ、学生時代に二・三度タイヤチューブを交換、一度はゴムそのものを取り替えたこともある。その間に幾度もパンクを経験した。乗り続けているだけで空気は抜けるもので、それを放置して走り続けるとゴムがチューブを噛み、その結果としてチューブが劣化してパンクする、という場合がある。だから、パンクした自転車を運ぶ場合も、無駄でも空気を入れるのがいい、とか、学生生活から今日まで色々と学んできたわけである。
 今日、仕事の暇に自転車で本屋まで行こうとしたところ、職場においてある自転車の後輪が凹んでいる。つい先日空気を入れ直したばかりだから、パンクしているのは間違いない。一瞬、大人しく短篇のプロットを練ることに集中しようかとも思ったが、どっちにしてもいつか直さなければいけないなら気付いた今のうちに片づけておくべきだろう、と、セオリー通りに空気を入れてみる。すると、折からの雨で濡れたスポークの付け根から泡が出る出る。何処かに大穴が空いている証拠だ。見る間に空気が抜けてしまう。もう一度空気を入れ直すが200mも行かないうちに萎んでしまいサドルに厭な感触が伝わり始めた。このまま普通に乗っているとチューブの他の場所も傷めてしまうので、あとは自転車屋まで押して運んだ。次第に雨足が強くなる中、修繕してくれた自転車屋のおねーさんはタイヤのゴムから小さいが鋭い釘を見つけた。「靴屋で使う釘ですね」そりゃ入れても抜けるわ。
 その後、雨が激しくなる中を行き付けの本屋まで自転車を漕いだが収穫ゼロ。はあ。その頃には雨も小降りになっていたが、もう一軒寄るには不安なのでそのまま戻る。

 相変わらず読了報告はありませんがちまちま読んでます。しかし感想を書く暇はありませんどー考えても。しかしそれでは沽券に拘わるような気もするので、今優先的に読んでいるものについて軽く途中経過を。
 宮部みゆき『あやし〜怪〜』(角川書店/本体価格1300円)、全9篇中7篇読了。江戸時代の市井を舞台にした怪異談ばかり集めた作品集。帯には「本当に恐い恐い江戸ふしぎ噺」とあるが、はっきり言って恐くはない。文章の巧みさと人心の機微を描き、そこに仄かな恐怖、というか情感が漂う、いつも通りの宮部節と言おうか。相変わらず読ませるので、怖さはなくとも不満は感じない。


2000年9月12日(火)

 ねむねむのくらくらなり〜。

 ふとそんなことをあるところに書き込んだら自分の中で大ヒットを飛ばしてしまった。頭の中で果てしなくリフレイン。他人は受けないと言うのに。

 ……などと呆けている場合ではない。東海地方は大変な騒ぎだったようだ。昨晩、私が風呂に入っている間に知人から「どーにか家に戻った」といった主旨のICQメッセージが届き、それっきり、返信も巧く届かず、会話が続かないまま終わってしまった。何事かと思っていると、暫くのちにたまたま点けたテレビで東海地方の豪雨を報じていた。それで漸く事態の深刻さに気付き、詳細を訊ねるためにずーっとICQを点灯したままだったが、私が就寝するまでオンラインになる様子なし。翌朝、某所の書き込みで取り敢えず当人が無事だったのは確認するも別の知人には避難勧告が出ていたらしい。……で、ご無事でしょうか。
 久本雅美は遅刻するし。

 昨晩、日記をアップしたあとは黙々と書類の整理とCD焼き。しかしCDの内容物の説明とか粗筋とか、細々と作らなければいけないものがあってなかなか終わらず、就寝時間が遅くなった。そして起床後は最後の確認と、手書き書類の追加を行って封緘、漸く郵便局に届ける……脱力。以後暫く結果待ち。

 本日のお買い物
1,首藤瓜於『脳男』(講談社)
2,椎名林檎『絶頂集』(東芝EMI・CDS3枚組)

 午前中の空き時間、1と一緒に各種雑誌を買う。その中に珍しく『ファンタジェンヌ』なんてのがあったりして。お知り合いの関係したゲーム新作についての記事があるという情報を得たからである。二方いたのだが、どちらも意外なところに関与している……。
 東海地方に続いてこちらの雲行きも不安定。暇をいいことに早めに職場を引き上げて、帰り道2を購入する。楽しみにしていたのだが……思ったほどの出来ではなかった。ライブアルバムという性格上、楽器編成が少数であり録音のコンディションも一定しない。お陰で二枚以上続けて聴くと、曲によってテンションが変わりすぎてその違和感の方が際立ってしまう。楽曲としては常通りで迫力もあるのだけれど、例えばシングルカットして魅力を発揮できる曲があるかというと首を傾げる程度(個人的に絶頂2の「メロウ」はお気に入り……だがこの絶頂2は実は三枚中唯一のスタジオ録音であり、全体のクオリティは元々一番高いのだった)。つまり、この三枚組CDSという体裁は、いずれも独立させるにはパワー不足だが、ひとつに纏めてしまえば動くのではないか、といった打算があったのではないか……まあ、げすの勘ぐりの類ではあるが。ともあれ三枚を一々交換しているのは鬱陶しく、とっととCD-R一枚に纏めてしまう。

 ……ねむねむのくらくらなり〜……


2000年9月13日(水)

 あまりの眠さに12時過ぎに床に入るも、日が昇らないうちに目が醒めてしまった。半分寝ぼけたまま(それでも眠れるわけではない)、だらだらと本を読んだりしながら6時半頃まで潰し、そのあとはPCを立ち上げ、ずーっと起きたまま仕事をしているはずの某氏をICQで捕まえて暇潰しに付き合わせる。すみませんねー仕事中に。万一某氏が締切をぶっちぎった場合責任の一端は私にもあります、と一応言っておこう。

 本日のお買い物
1,芦辺 拓『殺人喜劇のモダン・シティ』
2,京極夏彦『文庫版 狂骨の夢』(以上、講談社文庫)
3,土屋隆夫『危険な童話/影の告発(土屋隆夫推理小説集成2)』
4,平井呈一『真夜中の檻』(以上、東京創元社・創元推理文庫)
5,井上雅彦・編『異形ミュージアム(1)時間怪談傑作選 妖魔ヶ刻』(徳間文庫)
6,川辺 敦『怪奇・夢の城ホテル』(ハヤカワ文庫JA)
7,『IN・POCKET 2000年9月号』(講談社)

 2の加筆400枚というのは既に別物じゃないんだろうか。6は拍子や粗筋に垣間見えるB級のムードに惹かれて購入。解説の心霊写真は線数が少ないせいか或いはオリジナルデータの解像度が低いのか見づらいことこの上ない。確かに、何か顔のようなものが出てはいるのだけど。

 10・11・12日、執筆枚数の報告がないのは脱力して全然原稿に手をつけていないからです。プロットをちゃんと組んでから、と思っていたからでもあるのだが、そろそろ急がないと。

 ……しかし、『ジュノンボーイ部』の彼女、最低。


2000年9月14日(木)

 ……今日のアンビリーバボーは杉沢村伝説の再来。スタッフにこういう取材をさせるな。外部の人間にやらせなさい。

 芦辺 拓さんの『死体の冷めないうちに』を森江春策探偵のエピソードとして改訂し漫画化した作品と、河内実加さんによる倉知 淳作品の漫画家作品が掲載されるというので、『サスペリア10/20増刊 ミステリーSP Vol.12 名探偵に乾杯』を購入。取り敢えず森江春策と河内さんのを読む。これらは及第。漫画にする必然性を論じると駄目を出したくなるが、ミステリ漫画としては水準以上の出来になってます。
 ……で、ざっと見た中で一番酷いと感じたのは……『上野谷中殺人事件』。ミステリとしてとか漫画化する上での改竄とかそういう以前に、現地取材も資料集めも殆ど怠っているのが一目瞭然。所々で、舞台を明確にする意図からだろう、上野駅と谷中銀座のカットを挟んでいるのだが、これが全て同じアングルから描かれている。しかも前者は人気がなく、後者に至ってはずーっと同じ車が止まっている。他にも、現地をよく知っている人間にとっては噴飯ものの表現があちらこちらに散見される。
 実はわたし、内田康夫氏の諸作からミステリに入ったという経歴の持ち主なので、かなりの数を読んでいるのだが、元々この作品は嫌いだった。あまりにも舞台の特性が活かされていない、事件としても展開がお粗末である、というのも嫌っている理由なのだが、一番不快だったのは、作中でヒロインが谷中銀座の正面に続く階段につけた『夕焼けだんだん』という名称。これ自体、某有名テレビ番組の悪趣味な改竄でしかないと思うのだけど、困るのは現在この悪趣味な名称がさも問題の階段の正式名称が如く扱われていること。元々作品的に不出来だったことに加えてこうした悪影響を齎したため、この原作に対しては殆ど憎悪に近い感情を抱いていると言っても過言ではない。そしてこれのコミカライズは前述の手抜き取材。最悪。
 余談だが、この階段を下りながら眺める夕陽は確かに美しかった。谷中銀座とその向こう側に低く立ち並ぶビル群の狭間に沈む夕陽は、恐らく他のどんな土地にもあり得ない独特の興趣があった。けれど近年、その谷間から突き出すように無粋な高層ビルが建てられ、興趣を損ねてしまった。そこへ来てこの名称の改竄。たとえノスタルジーに過ぎないと言われても、失われたことを惜しみたいものは、確かにある。

 ――で、これらの文章を書きながら、「夕焼けだんだん」と呼ばれている階段の本来の名称はなんだったのか、資料やネットワークを当たって調べていたのだけれど、結局大半が「夕焼けだんだん」になっていて昔何と呼ばれていたのかは解らなかった。一番頼りになると思っていた資料が発見できなかったのが惜しい。その代わり、この名称を最初に言い出した人物はどうやら判明した。森まゆみ氏。地域紙「谷中根津千駄木」編集者の一人である……そうか、彼女か。

 本日の買い物
1,『ジャーロ新創刊号 2000.AUTUMN』(光文社)
2,『KADOKAWAミステリ 2000年10月号』(角川書店)
3,『江戸川乱歩賞全集(10) 日下圭介『蝶たちは今…』/伴野 朗『五十万年の死角』』
4,ロバート・クラーク『記憶なき殺人』(以上、講談社文庫)
5,あだち 充『いつも美空(1)』(小学館・サンデーコミックス)

 ギリギリまで忘れていた1。1500円は辛い。4も買うつもりはなかったのだが、ゴダードを押さえてのMWA受賞、チャンドラーやクラムリーの系譜に連なると聞いては買うしか。あああああああああああ懐が凍る…………
 あだち 充最新作の5、だが、新機軸を打ち出したように見えて現在連載中の内容は旧来と殆ど変わらないソフトボールもの。どうもスローステップとか虹色とうがらしのように中途半端に終わりそうな予感が既にある。なので単行本は様子見しようかと思っていたのだが、店頭で現物を見るとデザインはH2よりまともだし、何より私は元々あだち充の絵が好きなのである。結局買ってしまう。まあ、通して読んだらまだまともなのかも知れない、とちょっとだけ期待を寄せる。

 すっかり書き忘れていたが、一昨日宮部みゆき『あやし〜怪〜』(角川書店)を、昨日京極夏彦『怪 『巷説百物語』のすべて』(角川書店)を読了。感想……詳しく書く余裕がないのでここで簡単に。
 尤も『あやし』の方は11日の感想に付け加えることはない。『怪 『巷説百物語』のすべて』は、小説『巷説百物語』とドラマ版『怪』の解説が中心であり、あとは京極氏自身の筆によるドラマ『七人みさき』の脚本。まだドラマを見ていないが、耐えられずに読んでしまう。原作以上に必殺シリーズのイメージが濃厚、しかもよりミステリ的。ただ、やはり映像化されることを念頭にした所為か、文章として読むと全体にあざとさが際立つ内容ではある。まあ、原作及びドラマへの興味を煽るには最適なので、(皮肉な言い分になるが)商売としてはうまい。
 ……さて、明日以降は『ジャーロ』収録短篇に言及して暫く誤魔化すか。


2000年9月15日(金)


槇原敬之、復活!
2000/11/29、Warner Music Japanより最新アルバム発売!!!

 いやまあ、そういうことらしい。まだ執行猶予期間中ではあるが、ひとまず復帰を慶びたい。

『ジャーロ1』の散発レビュー。ピーター・ラヴゼイ『完全主義者』2000/11/7付けでリンク先に移動しました。

 最近短編集中心にぱらぱらと読んでいるので、ことのついでに読んだとこだけレビューしておこう。うん。
 まずは二階堂黎人・編『密室殺人大百科[上] 魔を呼ぶ密室』(原書房)より、芦辺 拓『疾駆するジョーカー』太田忠司『罪なき人々VSウルトラマン』読了。この二編だけで判断すると……密室云々よりも書き手としてのキャリアで読ませている気がして、密室ものとしての興趣はいまいち足りない。まあこれだけで断定してしまうのは我ながら早計とは思うが。
※レビューは2000/11/9付けで別ファイルに収納しました。

 更に、忠告通り一気に読まず一日一本ぐらいのペースでちまちま読み進めているピーター・ラヴゼイ『服用量に注意のこと』(ハヤカワ文庫HM)にも軽く……最初の方はもう一週間以上前に読んだので記憶が薄いが。
「そこに山があるから」:60になったパトリック・ストーム教授の元に、突然カレッジ時代の友人を自称する男がコンタクトを取ってきた。今は主教にまでなったベン・タタソームにも呼び掛け、40年前に約束した登山を実行に移そうと誘う男。訝しく思いながらも、パトリックは計画に参加したのだが……
 ある「秘密」に関する物語。謎云々ではなくその行動に至る心理の軌跡を描くことに主眼がある。
「殿下とボートレース」:「バーティ殿下シリーズ」短篇。ボート競技に対しては嫌悪感のある殿下だが、学生時代に一度、懸想した女性と逢瀬を得るために王室主催のボートレースを利用したことがある。だがこのとき、同じ女性に想いを寄せていた艇長の青年が、競技中に急死するという事件が発生する。殿下が導き出した事件の真相とは……
 仕掛けと展開が混然と一致した佳品。あまりに巧すぎて騙された気分にすらなる。
「殿下と消防隊」:探偵活動のみならず消防士としての才覚のあるバーティが、二つの才を遺憾なく発揮した事件があった。数日前に持ち主が亡くなり、雇われていた人物も出ていき空き家となった邸宅から火が出た。バーティはかつての執事の犯行を疑うが、彼には強固なアリバイがある上動機も不十分に思われる。だが、バーティは夫人との会話から、放火の思いもかけない裏側を看破する。
 前のエピソードと較べると、オーソドックスな探偵ものの印象が強い。難航する調査と意外な真相に至る伏線の鏤め具合が絶妙。
「イースター・ボンネット事件」:”猫のマキャヴィティ”の異名を取る泥棒がいた。ちょっとしたミスから彼は危機に陥るが、巧く擦り抜けたかと思った次の瞬間、見落とした落とし穴に填る。
 ダイヤモンド警視もの、と言ってもダイヤモンド警視はおまけ。警視を道化に採用した、一発ネタである。
 ……もーちょっと読み進んでいるのだが疲れたので今日はここまで。

 ……あああ、やっぱり感想を書き始めると時間を食う。ついでに色々と逃避をしてしまう。部屋の在庫をちょこっと整頓したり、HPを一見しただけでは分からない程度に弄ってみたり。

 夕食に出てきた焼き肉のうち、味付け済みのものが劇的に不味くて暫く不機嫌になる。執筆が進まなくてふき……それは自業自得。


2000年9月16日(土)

 今期は珍しく通しで見てきたドラマが多い。それらを完結した都度評価してみるつもりだったのだが、すっきり忘れていた。以下、終了順にざっと。

『合い言葉は勇気』(CX系・毎週木曜10時〜)
 らじさんも推薦されていた、三谷幸喜脚本・役所広司&香取慎吾主演のど田舎はちゃめちゃ裁判奮戦記。最後まで楽しませてくれました。最終話近くなって全員が善玉になっていく様は、まあ御都合主義的と捉えられなくもないが、ずっと絶対的な悪役として描かれていたのは津川雅彦演じる網干弁護士一人であって、そういう意味では初めから巧く計算された結末だったと言えるだろう。心配していた切り札も、最後になって美味しいところを攫っていった杉浦直樹演じる赤岩弁護士の存在と相俟ってきちんと決着をつけてくれた。肝心の証人がぎりぎりで出廷をしぶり、その到着まで場を誤魔化そうとする一同のすったもんだは非常に強引だったが、その過程を含めて最後まで目を離させなかったのはお見事。その後の物語も概ね予定調和に陥っておらず、却って清々しい。空き缶を紙くず入れに捨てようとした役者に憤る暁仁太郎(役所広司)もいいが、ダルマ池の傍らに設けた監視台で綺麗になった池に泳ぐ子供達を見守る安西(元)社長(國村隼)が象徴的でいい。

『TRICK』(テレビ朝日系・毎週金曜11時〜※)※地域によって異なる
 やたらアングルと効果音に拘った特徴的な演出、異様に癖のある登場人物、しかし題名の割にちゃちなトリックなどで異彩を放った今期の話題作のひとつ。最後まで「肝心の謎解きがいい加減」という宿命を負い続けてしまったが、ここに至って隙がないほどに完成されてしまった登場人物たちの魅力で私は屈しました。ええ屈しましたとも。下手な気がするんだがその味わいが役柄に填っていっそ愛らしくさえ見えてしまった仲間由紀恵、ついこの前まで同じ時間帯に放映されていた夜叉とは宛ら線対称のようなコミカルな役柄を怪演しきった阿部寛、いつもと同じ格好でこの妙なドラマにちゃんと自分の場所を確保してしまった野際陽子、などなどゲストも含めてラストまで完璧に異空間ドラマを形成し楽しませてくれました。最終回にそれまでのエピソードを包括しとどめを刺すほどの迫力がなかったのが辛いが、人間関係の整理はついたようだし、何より細かい悪戯の盛り込み方が徹底していたので良しとする。あのあと多分彼らは鬼束ちひろ嬢に助けてもらったんでしょう。
 私はDVDプレゼントに応募します。外れても買う。でも買わずに済めば嬉しいから必ず応募する。そのくらいお気に入り。繰り返すが、トリック自体は駄目だった。

『フードファイト』(日本テレビ系列・毎週土曜9時〜)
 草g剛(意地でも漢字で書く)主演、企業の地下で行われる大食いの賭け試合を主題に据えたドラマ。初回は異様なテンションの高さで魅了したが、以後は日テレ土曜9時の王道――学芸会ノリに終始してしまった。私はさだまさしのゲスト出演を予め知っていたので、それまではと耐えて見続けたが……結論は、まあ、そこそこ楽しかった。期待していたさだまさしの回と最終回は第一回のテンションに匹敵していて、予定調和の臭みも薄らいでいた(都合良く進みすぎている、という感はやはり消せなかったけれど)。胃袋大にまで肥大したガン細胞を抱えていて平気で済むかとかましてそれを二つめの胃袋と錯覚するのかとか、会長が死んだからってそっくり夫人に全財産が渡るのかとか、主人公ヒロインの演技含めその他色々細かいところでツッコミは入れたくなるが、それを楽しむ話だと思えば大して腹も立たないし充分楽しめる。最終回はそれなりに緊張感も盛り上がりもあり、意外な(但し如何にも企画・野島伸司だと思わせる)結末も用意されていたし、学芸会レベルなりに見所のあるシリーズではありました。
 なお、本編終了と同時にチャンネルを変えたりテレビを消した方、井原満(草g剛)は死んだものと思ってませんか? 実は、あのあと、コマーシャル終了後に出るエンドテロップで、最後のフォローが為されていたのです。平らげられ、上に箸が置かれた牛丼の器が。……不幸な決着にしなかったのは認めるが、そういうのはコマーシャル前にやりなさいって。

 ……疲れた。因みに『ジャーロ』は二編目のサラ・パレツキーで早くも躓いております。どうも文章と構成の呼吸が合わず、読みづらい。

 キバヤシさん、土屋隆夫の選集も買って。お願い。


2000年9月17日(日)

 二日ぶりの『ジャーロ1』(光文社)散発レビュー。収録短篇全てに言及できたら別ファイルに纏めるかな。出来るかどうかは謎。
<……で、無事完成したので全てリンク先に移動させました。この日の言及分はサラ・パレツキー『<進歩の世紀博>での殺人』若竹七海『死んでも治らない』ローレンス・ブロック『やりかけたことは』の三点となっております(2000/11/7)

 一篇読んでは感想を書き、その都度アップロードしていた。プロットはその合間にちまちまちまちま進める、といった感じ。どうにか山は乗り越えられそうだが、果たしていい出来になるのかどうかが依然不安。執筆だけは早めに片づきそうだけど。

 さっさとリンクページに加えればいいのだが、あそこはいずれ全面改築するつもりなので、取り敢えずここで触れておきます。『幻日』の著者・福澤徹三氏のサイト『鬼哭堂本舗』が開設されたそうです。幻想文学・ホラーに興味のある方はどうぞ。


2000年9月18日(月)

 漸く『新・本格推理』のための短篇プロット完成。思いの外難産だった……これで心置きなく執筆にかかれる。毎年『本格推理』シリーズの投稿作品を執筆する際苦しめられていたのが終盤の論理展開だったので、キャラクターの構築などはそっちのけで論理的誤謬の摘出と論理展開をストーリーと馴染ませることに腐心した。それ故にこんなに時間がかかったわけだが、気合いを入れただけあってプロットだけ眺めた分には久々に理想的な『本格ミステリ』になりそうな予感(あくまで私の理解する「本格」という意味だが)。
 ……で、すぐに執筆にかかるかというと……その前に、平行で某氏と約束している短篇の構想にかかる。こっちは流れは既に固まっているので、細部のアイディアを煮詰めていくのみである。ああ、しかしこういう描写は楽しい……といっても約束している某氏にしか意味は解らんだろうが。

 本日のお買い物
1,高瀬彼方『カラミティナイト Calamity knight』
2,竹本健治『クー』(以上、角川春樹事務所・ハルキ文庫)
3,野間美由紀『パズルゲーム☆はいすくーる(1)』(白泉社文庫)
4,川原由美子『前略・ミルクハウス(5)』(朝日ソノラマコミック文庫)
5,藤田和日郎『うしおととら(2)』(小学館・少年サンデーコミックスワイド版)
6,村枝賢一『かもしか!(6)』
7,猪熊しのぶ『SALAD DAYS(11)』
8,河合克敏『モンキーターン(14)』
9,三好雄己『デビデビ(14)』
10,ゆうきまさみ『じゃじゃ馬グルーミン★UP!(25)』
11,青山剛昌『名探偵コナン(29)』(以上、小学館・少年サンデーコミックス)
12,島田荘司『季刊 島田荘司 創刊2号 2000 Autumn』(原書房)

「そうかん」と打ったらいきなり「相姦」と変換されて眩暈がする。
 2は来月待望の続編が刊行されるのに先駆けて復刻されたもの。解説・友成純一というのも凄まじいが、困るのは表紙である。帯が掛かっているうちはいいが、帯が外されたら迂闊に手に取れません。
 3は待望の文庫版。装幀の方にまで面識があるというのはなかなか奇妙な気分である。二・三話読んだ印象では、現行のシリーズよりも私好みかも知れない。現在のものよりオーソドックスな少女漫画タッチ。

『ジャーロ1』(光文社)散発レビュー第3弾。マーシャ・マラー『温泉は飛行機で』(2000/11/7付けで別ファイルに纏めました)。
 ――今日はこれだけ。漫画買い過ぎなのよ。

 MSNのCM、村上ショージ・ヴァージョンが、生々しく痛くて笑える……

『バスストップ』(CX系・毎週月曜午後9時〜)
 ……あ、負けたかもしれん俺。くさい材料の積み重ねでもこれだけ重ねられると流石に敵わん。敢えて手放しで誉めましょう。お見事。全てお約束、と言えばそれまでだが、この時代に敢えて定番のみで闘おうとした心意気だけでも私は買う。それでいて、伝説の『101回目のプロポーズ』ほどの牽引力が感じられなかったのは、小谷夏生(飯島直子)の役柄(飯島の演技力の問題もあるが)に普遍的な魅力がないのが原因ではないかと思う。少々造形が特殊だったのだ。とはいうものの、最後まで徹底した純愛メロドラマであり続けただけで私は評価します。
 第一回以来殆ど使われた記憶がないパット・メセニー、最終回にして久々に使用されていた。阿部究吾(国分太一)と笹島小次郎(柳葉敏郎)が会話しているシーンから、小次郎が宮前武蔵(内村光良)を呼び出すシーンにかけて流れていたのが、サウンドトラック『A Map of the World』収録の表題曲。

 昨日ご紹介した福澤徹三氏のサイト『鬼哭堂本舗』、リンクページ改築前ですが取り敢えず追加させていただきました。


2000年9月19日(火)

 本日のお買い物
1,天原ふおん『キミはボクらの太陽だ』
2,藤崎真緒『お星様にお願いっ(4)』
3,絵夢羅『Wジュリエット(5)』(以上、白泉社・花とゆめコミックス)

 他は定期購読誌のみ。……にしても2は開始当初の危なげな魅力が巻を追うごとに薄れている気がする。結局序盤からあとはラブコメの王道を単純に辿っているだけという話になってしまっているのだ。別の理由から私は当分読み続けるだろうが……これを長く続けるのは作者のためにはならないかも知れない。1は作者のファンな為無条件に許容してしまう、ので敢えてコメントせず。
 帰り道、他に買うものがないか覗くが早出しの某誌があるだけで収穫なし。ただ、富士見ファンタジア文庫で某あかほりさとるの新刊がちゃんと出るか確認するために投げ込み広告を見たところ、気になる文字が。
 帰宅後、早速富士見書房のホームページを開いてみる。『富士見ヤングミステリー大賞』。ヤングアダルトの系統では、ミステリーも許容する賞が大半であっても看板に「ミステリー」を謳った賞はこれまで存在しなかったのではないか、と記憶している。審査員に有栖川有栖と井上雅彦を並べているあたりにも多少の本気が窺える。実は、一般のミステリ公募ではまず受け皿のなさそうな構想があったので、俄然やる気になったのだが――「主人公の年齢設定は10代前後にしてください」という至極もっともな制約があって悩む。……ヒロインは十代に出来るけど反則のような気がする……ホラーも可のようだから(例によって一緒くたにされているのが納得行かないが)『夏祭り』以降の連作をホラーと謳って投稿することも不可能ではない……と思う。私自身が引け目を感じなければ、だけど。
 まあそれはいいとして、同時に富士見書房ではファンタジア文庫の姉妹レーベルとして『富士見ミステリー文庫』を起こすようだ。ホームページの(この日付の時点での)トップに告知と主な執筆陣の名前が挙げられているのだが……思いっきり首を傾げる。井上雅彦を除けば、全てファンタジア文庫の主要執筆陣。例えば今までヤングアダルトに登場したことのないミステリ作家とか、SF系からの意外な起用とかは一切ない。確かに名前の挙げられた作家の中には、ヤングアダルトの中でミステリーを書くことに熱意を抱いている向きもあるだろうが……少なくとも、外側に波及するほどのインパクトが与えられる企画内容でも執筆陣でもない。刊行作品の中で圧倒的インパクトを伴ったシリーズが誕生するか、「ミステリー」として一定以上の水準を保つことが出来なければ、公募で毒にも薬にもならない新人を輩出しただけで終わり、という事態にもなりかねないと思うのだけど……? ってもしかしたら投稿するかも知れない賞を扱き下ろしていいのか私は。

 帰り道、ヘルメットのシールドを上げて、風を顔に浴びながら走っていた。道中、自然とスピードが速まる箇所があるのだけれど、そのど真ん中で。
 シールドを風に持っていかれた。
「ぱき」という快い音がして、左手で探ってみると、ない。元々左側の留め具がバカになっていたので、殆ど右側のみで留めていたような状態だったが、よもや風に持っていかれるとは。道の構造上戻って探すことも出来ないので、そのまま何食わぬ顔で帰宅する。……そのあと現場で何が起きていたかは知る由もないが、兎に角これでヘルメットの買い換えは決定となってしまった。ああ、散財。

 ちなみに、昨日触れたMSNの村上ショージのコマーシャル、ちゃんと連動企画としてホームページが立ち上がっておりました。こちら。なので、何か思いついた方は応募してみましょう。私はしない。この人は既にギャグ云々は問題じゃないから。
 まだ件のCMを御覧になったことのない方は、こちら(56k)こちら(100k)でご確認あれ。痛いです。

 ドラマ寸評、確かこれが最後。
『花村大介』(CX系・毎週火曜午後10時〜)
 中小事務所から駄目で元々と大手のキャピタル法律事務所の募集に臨んだところ、なぜか採用されてしまった花村大介(ユースケ・サンタマリア)。だが、実は小さな仕事を請け負わせるために自分が雇われたのだと気付くが、それでも持ち前の真面目さと正義感で奮闘していくうちに、周囲の仲間たちや依頼人たちの信頼を集めるようになっていく。第4話辺りからと深川の見始めは遅かったが、ドラマとしての安定感は今期見ていた中でも屈指の部類だろう。最終回のエピソード以外はいずれも一話完結で、からくりやどんでん返しはちゃちだが筋運びと登場人物たちの遣り取りが楽しく飽きない。なまじ大がかりな事件を扱わせず、身近で妙に生々しいごたごたばかりをエピソードに持ち込んでいたのが弁護士ドラマとしての新鮮さと、全体の軽快さを助けていた。全編にユースケ・サンタマリアの味が染み渡っており、彼の芸風が好きならまずのめりこめたでしょう(過去形)。最終回、一旦キャピタル法律事務所を辞めていた花村が復帰したその日、事務所に彼と縁のあった人々が詰めかけており、各自と挨拶を交わしつつ(この辺り、ユースケの言動に虚実が混ざっている)中央に出た花村の音頭で三本締めを行った直後、花村、というかユースケの頭上から盥が落ちてきたのには、流石にぶったまげた。最後にはレギュラーメンバーに身ぐるみ剥がれてるし。
 ともあれ、気楽に見られる娯楽作品として、今期の密かな名作と判断しております。見落とした最初の数話が惜しい。再放送を切に望む。
 それはそうと上にリンクした公式ホームページ、放送直前から更新している形跡がない。

 CMネタをもう一つ。缶コーヒー『FIRE』は現在、スティービー・ワンダーが作曲したテーマを日本人アーティスト数名がカバーし、それぞれ一風変わったシチュエーションで歌っているものを数種類放映しているが、これを見ていて思うのは、やはり日本の演歌歌手にソウルの血が通った曲を消化する能力はあまりないな、ということ。シチュエーションの勝利もあるが、出色なのは鈴木雅之(どうでもいいがフジテレビ系のドラマで同姓同名の演出家の名前をよく見る……)とTinaのヴァージョンのみ、という結果は企画自体あまり成功していないように見える。単なるえーかっこしいは止めましょう。


2000年9月20日(水)

 本日のお買い物
1,さだまさし『日本架空説』(テイチクエンタテインメント)
2,恩田 陸『光の帝国 常野物語』(集英社文庫)
3,ゆうきまさみ『機動警察パトレイバー(9)(10)』(小学館文庫)

 待望のさだまさし最新作。幸運にも午前中に入手できたので聴き込む。……素敵。色々と語りたいところだが午前中聴き込んでいた所為で執筆が滞っているため一日回避。ただ、色々と発見も多い豊潤な一作でした、とだけ。詳しくは明日以降時間を見付けてやります。ええ絶対やりますとも。

 知り合いのお好み焼き屋が、旦那さんが具合を悪くしたため実家のある三重に引っ越すとのことで、今月いっぱいで店を畳むことになった。その前に一度来てくれ、と母が言われたので、両親と私の都合を考慮して、夕食がてらにお邪魔することにした。
 その前に上野に立ち寄り、ヘルメットを新調する。あれこれ考えず、前に使用していたのとほぼ同一のデザインのものを購入した。製造元も同じで、相違点は頭頂部に開閉自由の換気口が二つ備わったところのみ。予算内でもう一つ買い物が出来そうだったので、ついでにウエストポーチを選ぶ。ヘルメット同様二輪免許を取ったときから愛用していたため、ファスナーの把手はあちこち壊れるわあて布は千切れそうだわとかなり草臥れてしまったのだ。全く同じものが店内にあったので迷わず購入する。
 そのあと知り合いのお好み焼き屋へ行く。夕食時にはまだ早く客のいない店内で、体調が悪いという旦那さんも寛いでいた。そのあとお客が増えてからも厨房に立っていたが顔色は良くない。ともあれ、我々はどんどん注文する。お好み焼きともんじゃは美味しいのだが、今日は折悪しくオリンピックサッカー予選リーグ・日本対ブラジル戦の日。店内にあるテレビ目当てに若造が(といっても私と同じ年代だと思うが)座敷に詰めかけ、騒がしいったらありゃしない。騒ぐのは兎も角として、ワンパターンな歓声ばかりを聞かされるのは結構な拷問だ、と思う結果には殆ど拘りのない私であった。勝ち負けは二の次、なんじゃなかったっけか、オリンピックって。あまり高度なプレイは見られなかったものの、あれだけスリリングな試合展開が出来るなら捨てたものじゃないだろう、とちょっと思っただけ。尤も、日本もブラジルもいなければいけない場所を殆ど見過ごしているためにこんな接戦になったように見えたのだけど。

 執筆の気晴らし程度にちょこっとずつ進めていた『ピュアメール』(Overflow・18禁)、漸く一回りクリア。18禁ならではのシーンを通過せずに終わってしまったし格別なイベントも発生しなかったので、ハッピーエンドではあったが多分傍流のエンディングだと思う。ただ、その点を考慮に容れても全体的に展開が緩く、退屈な感がある。キャラクター造形が極端なのはこの手のソフトの常道としても、それを駆る文章やエピソードに決定的な力が感じられないのも、少々辛い。一度のプレイではフラグの繋がりや伏線の配置が把握できないので、本来この段階で評価してしまうのは予断に等しいのだが、今の私のように一回りのプレイに時間を費やさざるを得ない人間にとっては不適当だと感じる。システムや全体の雰囲気は纏まっており、作り込んでしまったが故の弊害の可能性もあるが。ともあれ、まだ当分は遊んでみよう。『AIR』に辿り着くのはいつの日か。

 昨日は、正確に枚数を数えたわけではないが、大凡8枚程度執筆が進んだ。今日は兎も角、事件が発生する明日以降ペースアップさせたいところ。


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