Page 1 民法関連の論文など   TOP PAGE HP全体の目次     LAW P. 2 信託・信託法関連 
 LAW P.3 その他  (カンボジア民法典起草関係、日蘭法学集会)  LAW P.4 深掘り用の資料
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近年の研究 (2006年頃からの主な論文=民法関係のみ、信託関係は  LAW P. 2
2007年
 「人の権利能力ーー平等と差別の法的構造・序説 PDF」平井先生古希記念論文集所収
2007年4月
  人間の尊厳=平等と差別の法的問題として扱ったテーマ。権利能力平等を標榜する近代法のもとで、なぜ奴隷制度が成立しえたのか。奴隷制度に対して、学者や裁判官は、どのような態度をとったのか。奴隷を正当化する学説や判決は、なんら矛盾を感じなかったのか。どのようにして、奴隷制度は廃止されるようになるのか。これに法律学は寄与することがあったのだろうか。
  ーー>ルイジアナ民法典(1825)における奴隷制度
      イギリスのSommerset Case (サマーセット事件)(1772)
      南北戦争以前のルイジアナの奴隷売買を扱う映画 Way down South (1939)
    
  差別は、自己保存の本能から来る側面があり、根が深い。グループの中に突然「変わった者」が登場すると、他の者は、それを脅威に感じ、自己保存のために「変わった者」を排斥し、差別し、その者からの影響を遮断しようとする。「変わった者」は、自己主張が強い人間であったり、外国人であったり、時には単に優秀であったりするだけで(学校では、時々こういうことがある)、差別される。これは、別に日本特有の現象ではなく、外国でも見られる。子供の社会にも、大人の社会にも見られる(残念ながら、私が勤めていた東大にもあった)。これは、自らの人間性を問われる問題である。率先して差別する人間は論外だが、せめて差別に同調しない勇気を持ちたい(はたして自分にはそれがあったか、忸怩たる思いがある)。・・・・ 賃貸の際の「差別」や、宿泊の際の「差別」などの問題を法的に分析し、どのように理論的に対処すべきかを論じることを研究課題の1つとしている。・・・・
  2008年日蘭法学シンポジウムの「基調講演」ではこれを論じた ーーー>  Equal treatment of citizens and Contract theory(2008年 日蘭法学集会) 
                          
2009 「桃中軒雲右衛門事件と明治・大正の不法行為理論」 (PDF  関連資料)
   要旨:桃中軒雲右衛門の吹き込んだ浪曲のレコードをコピーして売り出した行為が民法709条の不法行為となるかが争われ、大審院が「権利侵害」にならないとして不法行為の成立を否定したいわゆる「桃中軒雲右衛門事件」の分析。著作権法違反の刑事事件の付帯私訴として不法行為の成否が争われたが、付帯私訴では刑事事件で有罪にならないと不法行為の損害賠償も請求できないこともあり、大審院は慎重な判断をした。因みに、桃中軒雲右衛門のレコードは、ドイツのライロフォン社で製作されたもので、当時日本ではまだなかったレコード盤の両面に吹き込まれたハイテクニックのものであった。
    

    「投資家の経済的損失と不法行為法による救済」(西武鉄道事件)前田庸先生喜寿(2009.4)(PDF)
    要旨:有価証券報告書に株主数に関して虚偽の記載をしたことなどにより、東証の上場基準に抵触したとして上場廃止となった西武鉄道株式会社の株主が会社に対して提起した損害賠償訴訟における損害論を論じたもの。原告側にたって提出した意見書をもとに、ドイツの類似事件の判例などの分析も加えながら書いた論文。被告西武鉄道側からは京都大学の潮見教授の意見書が出され、幾つかの論点で対立することになった。なお、本論文を書いた時期は最高裁判決の前である。

2010 「新しい法益と不法行為法の課題」(私法学会シンポ総論補論1)NBL936,937号
    要旨:日本の社会・経済の発展の中で、不法行為によって侵害される権利・利益の範囲も広がり(経済的利益や精神的利益)、また、侵害の態様も物理的な侵害から非物理的な侵害に変化してきた。このような状況変化の中で、これらを適切に把握できる不法行為要件の再構成が必要であることを論じる。過失一元論が有力であった学会に対して、違法性要件の再評価を主張するもの。

2012  「預金債権の消滅時効」金融法務研究会『預金債権の消滅等に係る問題』所収(2012.6)

2015  「芸娼妓契約と公序良俗」(星野先生追悼論集所収)(2015) PDF ( 関連資料)
    要旨:明治5年の「芸娼妓解放令」の後も、自由になったはずの娼妓は遊郭において「貸座敷」という形で拘束される同様の営業を続けていた。そこで使われていた「契約書」がいわゆる「(芸)娼妓契約」である。民法施行前においても同契約は娼妓の自由廃業との関係で度々裁判で問題となったが、民法施行後、名古屋で争われた事件において、娼妓契約が民法90条の公序良俗違反になるか否かが初めて争われた。一審の名古屋地裁は、公序良俗違反性を肯定したが、控訴院は同契約のもとでも娼妓の自由廃業が認められるから公序良俗違反ではないという判断を示した。すなわち前借金によって性的サービスを提供を事実上強制されることについては公序良俗違反とならないとした。この基礎には、警察令で娼妓稼業(貸座敷稼業)を認めている以上、すなわち国家の承認がある以上、公序良俗違反とはいえないという考え方があった。梅謙次郎も、当時の論文でこのような考え方を支持している。公序良俗違反の中身、行政との関係など、考えさせられる問題がある。

  (下左・吉原の貸座敷で使われていた明治29年の契約書)
 
 (上中右:娼妓□□Bから、貸座敷業者△△Aに対して、警察に提出する娼妓廃業届への連署を求めた裁判の判決。廃業には貸座敷業者の連署が必要であったが、貸座敷業者は借金が残っているとしてこれを拒むことが多く、娼妓から連署を求める裁判が多数提起された。この事件(明治23年)でも一審名古屋始審裁判所で被告の連署を命じたところ、被告が控訴。控訴審の審理中に、被告は原告と廃業届を出すことをやめるという和解が成立したから、被告の連署を求める原告の請求は意味がなくなったと争った。しかし、名古屋控訴院は、娼妓Aの自由な意思による和解ではないとして和解の効力を否定し、原審を維持した。)   

  「日本法における利益吐き出し」(国際比較法アカデミー  ウィーン会議 national report)      
   Disgorgement of Profits in Japanese Law, in:Hondius and Janssen, Disgorgement of Profits, (2015)

2018  連載「債権法改正と実務上の課題」 「第1回 法定利率(中井・能見対談)」論究ジュリスト2018年1月号
    「契約書式の過去・現在・未来」論究ジュリスト巻頭言2018.Aug. . (PDF)
2020.4 「民法における比較法」法律時報2020年4月号(贈与の比較)
  (訂正)17頁で、ドイツ民法起草時に自筆証書遺言が認められたとの記述があるが、これは間違い。ドイツの自筆証書遺言は、1938年の法律によってはじめて認められた。同法21条。その後、民法典に取り込まれ、現在はBGB2247条。