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     は     ん

ベガ大王

生年月日 不詳
血液型   不明
身長    231p
体重    100s

ベガ星の支配者にして、ベガ星連合軍の首魁。公称を「恐星大王ベガ」という。
その前半生は詳らかにならず、代々続いた王家の出であったのか、それとも一代で成り上がったものかすら分明の限りではない。
ベガ星はアンドロメダ星雲の中のベガ星系に在り、大変科学文明の進んだ星で、3000年前にはすでに他天体へ宇宙船を飛ばすほどだったという。住人は、地球の知能指数でいうと500を超えるほど知能の発達した種族でもあったようだ。
最も近い惑星であったフリード星や近隣諸星とも友好的な関係を築いてきた平和な星であった反面、大変な競争社会であり星の住人は二重人格の者が多いということである。また、ベガ星人の主食はガソリンやマグネシウムだそうで、地球人類やフリード星人とはまた一寸違った人種といえようか。ただし、宇宙で最も進んだ文明を持つ星として早くから宇宙の交易などの中心地であったようで、住人には純正なベガ人以外にも他星系の人種も相当住んでいたものと思われ、数千年のうちにかなり混血がすすんでいたようで、人種の坩堝と化していたものと見られる。余談だが、ベガ大王の妃も純血のベガ星人とは思えず、他惑星出身かあるいは先祖に他星系の血を持つ女性であったのではないかと推測される。
だがこの平穏なベガ星は、ベガ大王が現れるに及んで一変した。宇宙征服の野望を持つベガ大王は、まず、いの一番に資源の豊かなブルーエンジェル星を襲って支配下に収めたという。ブルーエンジェル星の人々は鉱夫として強制的に労働に従事させられ、常軌を逸した乱開発によって美しかったブルーエンジェル星は汚染され、かつ以後も被征服星の住人たちを労働に送ってきたり政治犯を送り込んだりと、いつしか人々はこの星を「レッドゴースト星」と呼ぶようになったという。
また、ベガ本星自体も乱開発が進み、惑星に汚染が進んでいったようで、いつしかベガ星の人々はドーム都市生活を余儀なくされていったようである。
そんなベガ大王の強欲な領土政策に懸念を憶えたものか、永年の友邦星であったフリード星のフリード王は地球の暦でいう昭和30年頃、宇宙の平和のためにと、グレンダイザーの建設を自星の科学者に命じた。その間ベガ大王はウルス星も侵略してその傘下に収めたようである。ウルス星の王女ルナンは満月の夜、星の滅亡時に殺されたようであり、王子のガウスも捕えられベガ大王に服属させられる。ウルス星はその日以来花も咲かない岩だらけの荒野となったという。
ベガ大王への疑念を募らせるフリード王だが、ベガ大王はその疑念を外らせるべく娘のルビーナ姫をフリード星に留学との名目で派遣した。地球の暦でいう昭和43年頃のことと推測される。
フリード星はベガ星と拮抗するほどに科学の発達した星であり、流石のベガ大王も迂闊には攻めるわけにはいかなかったというのが理由の一つでもあったが、他の理由としては、フリード星で完成間近となった万能兵器グレンダイザーの奪取と、来るべきフリード星侵攻のための下準備という目論見があったものと考えられる。
だが、フリード王はこのベガ大王の愛娘・ルビーナの来訪にすっかり気を許してしまったらしい。このルビーナ姫と自分の息子のデュークフリードとを結婚させて二星間の平和を守ろうと考えるようになった。
ルビーナは昭和44年にはフリード星を去ってベガ星に戻ってきたと思われる。そして、昭和45年頃、フリード星でグレンダイザーが完成されたと聞きつけたベガ大王は、いよいよフリード大攻撃を決行する。
戦闘の第一波としては、フリード駐留の在ベガ外交大使の配下あたりがフリード星の要所要所に超音波鋲を打ち込んで、ベガトロンを注入した小動物たちを解き放って各所を爆破し、フリードの防衛網を混乱させておいてから一気に円盤獣軍団やミニフォー群でもって都市を奇襲したものであろう。また、王宮にはフリード王家抹殺のためにホワイター少尉を派遣してフリード王を射殺、王妃は崩れる王宮の瓦礫に押しつぶされ絶命した。だが、王子のデュークフリードはグレンダイザーに乗ってフリード星を脱出してしまい、今一歩のところでグレンダイザーの奪取には失敗してしまう。
フリード星にはベガトロン爆弾を投下して、多くのフリード星人を捕虜とした一方でベガ大王はダイザー奪取のために追討隊を派遣する。だがデュークは追っ手の円盤部隊をかろうじて払いのけて宇宙のいずこかへと逃れ去っていった。
グレンダイザー奪取には失敗したベガ大王であったが、何時の日かデュークフリードが自分に牙を向けてくる時のことを用心して、生け捕ったフリード星の男爵令嬢にしてデュークの幼馴染だったナイーダ・バルザギッグを洗脳しておいた。また、昭和48年頃には同じくフリード星の友邦星であったモール星をも侵略しその膝下に収め、デュークの友人であった王子のモルスを生け捕って、同じく洗脳処理を施す。
最も邪魔であったフリード星を滅ぼした後は、ベガ大王は破竹の勢いで瞬く間にアンドロメダ星雲全域を手中に収めた。侵略・占領した星々の被征服民たちを兵士として使役し、ここに一大ベガ星連合軍を打ち樹てる。
アンドロメダ星雲全域を手に入れたベガ大王が次に狙ったのが、銀河系であった。銀河系星系をも次々と蹂躙してゆくベガ大王。そして、銀河系完全制覇に最後に残った地球の制圧に目を向け始める。この頃までにベガ星連合軍は兵士一千万人、円盤獣6万体もの威容を誇り、その被征服惑星は知られているだけでもブルーエンジェル星、ウルス星、モール星、ルビー星、ズル星、ベル星、デラ星が挙げられ、星民が居住していたかどうかは定かではないがゴダ星、ザリ星、ブイ星、ガモ星も押えていたようである。
また、フリード星留学中にすっかりフリードびいきになってデュークフリードを愛してしまった娘のルビーナにはいろいろと詰られたことであろうが、ベガ大王は「デュークは死んだ」とルビーナには伝えて、厄介払いとばかりにルビー星の統治を命じて追いやった。

地球の制圧は配下のガンダル司令率いるスカルムーン師団に一任し、ベガ本星で指揮を執るベガ大王。だが、容易に事足りると思っていた地球侵略は思わぬところから蹉跌する。5年前に姿を消したデュークフリードが地球に隠れており、スカルムーン師団の地球攻略とともにグレンダイザーで立ち向かってきたのだ。
惑星一つを破壊することができると言われるグレンダイザーを手中に収めれば、宇宙制覇は更に容易となる。その為、ベガ大王はスカルムーン師団へ「グレンダイザー奪取」を厳命した。昭和50年10月、かくしてベガ星連合軍と地球の戦いが始まったのだ。
だが、ベガ大王自慢の円盤獣をも上回る性能を誇るグレンダイザーの前に、スカルムーン師団は苦杯を飲まされ続ける。また、亡命者デュークフリードに協力する地球人・兜甲児の活躍もあって、後一歩というところまで追い詰めながらも度々作戦は失敗に終わるのだった。
度重なる失敗にベガ大王は業を煮やして、親衛隊隊員ゴーマン大尉をはじめとして数次にわたってコマンダーたちを地球に派遣するが、それらも次々と返り討ちにされてゆく。そこでベガ大王は奥の手として、洗脳処理を施したデュークの幼馴染のナイーダをデュークに接触させ、グレンダイザーを爆破する策に出た。だが、途中で洗脳の解けたナイーダは、円盤獣とミニフォー小隊を道連れに爆死してしまった。
次にベガ大王が打った手は、親衛隊長バレンドスの地球派遣であった。ベガ星連合軍の中でもエリートと言われる親衛隊の、そのトップを投入することで事態の解決を計ったのだ。だが、ベガ星連合軍親衛隊長を以ってしてもグレンダイザーを撃滅することは適わなかった。逆にバレンドス隊長は討ち取られて、バレンドス旗下の部下たちも多数死亡したとの報を受ける。だが、この戦いでグレンダイザーに協力した地球のロボットがあったことをベガ大王は知ったようである。グレンダイザーにも匹敵する力を持つというダブル=マジンガーの存在を知ったベガ大王は、スカルムーン師団にむけてダブル=マジンガー奪取の勅を発したという。しかし成果は一向に揚らず、次第にベガ大王はスカルムーン師団の、特にブラッキー攻撃隊長に見切りをつけ始め、ガンダル司令に向けて「ブラッキーの使い捨て」と「ガンダル司令の解任」をほのめかす。
流石に焦りを憶え始めたガンダル司令は、昭和51年4月4日、ブラッキーに命じてグレンダイザー抹殺と宇宙科学研究所撲滅を図って大攻撃を掛けさせた。激戦の末邪魔なTFOは破壊したものの、ブラッキーはマザーバーンごと敗死し、ガンダルも顔に重傷を負ってほうほうの体で逃げ帰るという始末となった。
スカルムーン師団の戦力低下に懸念したベガ大王は、ベガ星一の科学者と言われるズリル科学長官をガンダルの協力者として月のスカルムーンへ派遣することとした。だが、ズリル長官の合理的かつ大胆な作戦展開にもかかわらず、グレンダイザーはなんとかベガの挑戦を払いのけ続ける。更には、宇宙科学研究所はダイザーの支援戦闘機として昭和51年5月、ダブルスペイザーを開発して、実戦投入してきた。グレンダイザーだけでも手を焼いていたところへ、コンビネーションクロスすることによって合体したグレンダイザー+ダブルスペイザーの威力は最早脅威的ですらあった。操縦者に兜甲児を得たダブルスペイザーとグレンダイザーの前に、スカルムーン師団は敗退を重ねる。更にはその7月、宇宙科学研究所はマリンスペイザーを投入。地球侵略の障壁は宇宙科学研究所にありと見て取ったベガ大王はガンダル・ズリルに命じて宇宙科学研究所総攻撃を開始させた。この猛攻撃の前に宇宙科学研究所は壊滅するが、新たに新宇宙科学基地を押し立てて更なる抵抗を示してきた。そして8月には、三機目のドリルスペイザーを投入し、デュークの妹、グレース・マリア・フリードを加えたダイザーチームの前には最早円盤獣は敵し得なくなっていた。
その苦境の中、更に追い討ちをかけるかの如くベガ星が打ち続いた乱開発の結果の環境汚染の為に崩壊し、完全に人間の居住が不可能にまでなってしまった。ここにおいてベガ大王はベガ星を棄てて他の惑星に本拠を移さざるを得ない状況に追い込まれる。
ここで、ベガ大王の選択肢としては、当然既に制圧していた他惑星への移住という案が考えられるのだが、自分の居住していた星さえ乱開発の挙句に崩壊させてしまうようなことを考えあわせるにつけ、更に云えば他の制圧済みの惑星で詳しい状況が知れているフリード星・ブルーエンジェル星・ウルス星の三例全てが惑星が汚染され、あるいは生物が住めない状況にまで追い込まれていることを考えれば、この時点でベガ星連合軍が制圧していた惑星は多かれ少なかれ相当に汚染が進んでいたものと断言してまず差し支えないだろう。だとすると、汚染されきった支配下の惑星に一旦移り住むよりも、交戦中とはいえ物の数ではないと見倣していた(しかもベガ獣という新兵器も出来たのであれば更に制圧が容易と思えた)、自然豊かな地球を乗っ取って第二のベガ星とするほうが得策と踏んだのも道理と云えよう。
結果、ベガ大王は大挙配下の軍団兵民を引き連れて月面のスカルムーン基地へと移住してきたのだ。地球を第二の宇宙征服の根拠地とすべく、ベガ大王は配下のダントス防衛長官に地球制服軍の指揮権を与える。ダントスは、昭和51年9月26日、新開発のサイボーグロボ兵器・「ベガ獣」キングゴリを実戦投入させた。ベガ獣の凶暴さは円盤獣の比ではなく、強敵・グレンダイザーすら片腕をもぎ取られ敗退するほどであった。だが、ダントスの下につくことを快く思わなかったガンダル・ズリルは、後一歩というところまでグレンダイザーチームを追い詰めたダントスを謀殺してしまう。
再び地球攻略の指揮権をガンダル・ズリルに与えるベガ大王ではあったが、月基地からの作戦の手緩さには立腹して、ガンダル・ズリルに地球上に基地を建設することを厳命した。その甲斐あってか、ズリル長官が中心となって日本海海溝に海底基地を無事建設する。
以後地球侵略はこの海底基地を中心に進められてゆくが、しかしダイザーチームのしぶとい抵抗の前に徐々に海底基地は追い込まれてゆき、昭和52年1月には新兵器・ウルトラサブマリンの前に敗れて海底基地を遂に失ってしまう。
ガンダルも、そして少し遅れてズリルも月のスカルムーン基地に逃げ帰ってくる。その状況に流石のベガ大王もいよいよ焦りを憶え始めた。
そんな折、ベガ星脱出時に行方不明となっていた親衛隊員モルスが帰還してきた。ベガ大王は、デュークとモルスの共倒れを謀って、洗脳済みのモルスを親衛隊長に任命した。その厚恩に奮い立つモルスは、仇敵と思い込んでいるデューク目掛けてベガ獣ジガジガを駆って襲い掛かる。だが、ふとしたことから洗脳が解けたモルスは、真の敵・ベガ大王を討ち取るべくスカルムーンへと突進してきた。が、用意周到なベガ大王は、ジガジガに仕掛けた爆薬によりモルスをジガジガもろとも自爆させる。
八方手詰まりとなったベガ大王の元へ、娘のルビーナがルビー星の統治を放棄してスカルムーンへとやって来た。ルビー星の者から、デュークフリードが生きていて、ベガ大王と戦っていることを聞きつけたのだ。父に詰め寄ってデュークとの和平を望むルビーナ。だがベガ大王はそんなルビーナの進言を無視する。一人デュークと遇おうとするルビーナを引き止めるべく、ベガ大王はズリル長官にルビーナを娶らせることを仄めかした上で護衛を命じた。既に息子を失い、ベガ星連合軍の後継者としての野心のみに生きがいを燃やしていたズリル長官は、ルビーナとデュークの密会をこの上ないチャンスと見て、罠を張りめぐらせてグレンダイザーを捕らえる。だがそれをルビーナは必死で助け出し、ズリル専用母艦に攻撃を加え、自暴自棄となったズリルはグレンダイザーに特攻を掛け、そして敗死した。また、ルビーナもデュークを庇ったために息を引き取って逝った。その死に際にスカルムーンの場所を教えて。
ルビーナを失ったベガ大王は、流石に落胆は拭えなかった。そして本来の目的だった宇宙制覇よりも、ただただデュークとの決戦を望むようになる。そのベガ大王の檄を受けてレディガンダルは決戦の露払いにと、最強のベガ獣・グラグラでグレンダイザーに先制を仕掛けた。優勢に戦いを進めるもののレディガンダルはデュークと甲児のタッグの前には敗れ去ってしまう。グレンダイザーの前に敗退し、地球の武力制圧を断念したレディガンダルは己の保身を考え、宇宙科学基地に向けベガ大王暗殺の暁には地球の一区画を貰い受けたいと交換条件を持ちかけた。そして、ベガ大王暗殺を果たそうとするが逆に別人格のガンダルによってレディガンダルは処刑されてしまう。自分の命の血の一滴までもベガ大王に捧げんとしてガンダル司令は、グレンダイザーに向けて母艦で特攻を仕掛け、壮絶に散って逝った。
先にズリルを、そして今またガンダルを失ったベガ大王は、グレンダイザーとの戦いにケリをつけるためにスカルムーン基地を爆破して背水の陣で総攻撃を開始した。一方ダイザーチームも、これが最終決戦とばかりに新兵器宇宙戦用スペイザー・コズモスペシャルを駆って戦いを繰り広げる。ミディフォー部隊が善戦しているうちに地球への侵入をしようとするベガ大王のキング・オブ・ベガ号ではあったが、グレンダイザーに見破られ、ダイザー・コズモスペシャルの猛攻の前に遂に破れる。デュークフリードの怒りのダブルハーケンを身に受け、爆風に包まれて全宇宙を荒らしまわった独裁者ベガ大王はここに死亡したのだった。

ボス

生年月日 昭和32年3月31日前後
血液型   不明
身長    196p(キャラ表ヨリ推計)
体重    不明

昭和32年3月31日前後出生。本名不詳。くず鉄屋の息子で、父も母も相当にパワフルな人物であるようだ。ヌケとムチャとは幼馴染であるらしく、一緒のみなと保育園にいた。当時は気が弱く、逆にヌケとムチャにいじめられていたようである。また、同じ保育園のミーコちゃんのことが好きだったらしい。小学校の頃のボスは、学校をサボってばかりであまり字が読めなかったという。さやかとは中学生のときの同級生だったようで、美人のさやかにぞっこん惚れており信奉していた。
小さい頃はいじめられていても、体格が大きかったことが幸いしてか喧嘩も三人までならへっちゃらというほどに強くなり、中学三年生の頃には番長グループのボスにまでなっていた。渾名の「ボス」とはそこから来たものらしい。オートバイが好きで、配下の連中とよく暴走行為に耽っていた。理想の人物は武蔵坊弁慶。塚原ト伝や宮本武蔵にも憬れていたようで、後に彼らに学んで武者修行と称して特訓に励んだりもしている。石川五右衛門の故事にも詳しく、その好みの系統を見るに立川文庫の英雄・豪傑の話が大好きなようだ。武事を好む者特有の傾向であり、ボスという人間を知るのに格好の材料である。また、後半顕著に見られたボスの義侠的な物の考え方や行動も、そういった英雄豪傑談に影響されてのものが多いように思われる。食事は日に丼で十五杯も食べるという。また、釣りが趣味のようでよく夜釣りに行っている。
番を張っている割には、意外と苦手なものが多い。まず、トカゲやヘビが嫌いだという。かなづちで、泳げない。スキーも滑れない。お化けに弱い。とどめに典型的に地震・雷・火事オヤジが怖いのだそうだ。
兜甲児が富士山麓に引越ししてくると、さやかに半ば騙され家の掃除を手伝わされてしまう。さやかより、「東京から来たバイク乗りの名人」と紹介され、嫉妬と自尊心からか最初は甲児のことを気に入らなかったようで、しょっちゅう衝突を繰り返していた。しかし、甲児とはいがみ合いながらもその戦闘に際してはなんだかんだいいながらかなり手助けして、機械獣撃退に一役買うことが多かった。勉学や学校生活という点から言えば甲児もボスと同じくどちらかといえば劣等生の部類に入り、ある種の親近感を醸し出すところが多分にあったのであろう。ちなみにボスは勉学のほうはからきし駄目で、テストは白紙答案の0点が多かったようである。甲児と同じく、後にカンニングさえ目論んだこともあると謂う。徐々にお互いを理解しあうようになる二人であったが、しかし根本的には甲児のことをさやかをめぐっての恋のライバルと見なしており、張り合う姿勢を崩さず、やがてはそれが嵩じて、加えてさやかがいつもマジンガーZの踏み台になっているのを見かねて自分もロボットを造ってさやかを助けようと計画する。そしてくず屋をやって集めた部品と儲けた六万円で、誘拐してきた光子力研究所ののっそり・もりもり・せわし三博士にボスボロットを製造させた。ボスボロットを手に入れてからのボスたち三人組の悪乗り的な活躍は凄まじいの一言に尽き、あらゆる戦闘に割って入っては時にマジンガーZの邪魔をし、時に危機を救ったりと戦いに笑いを添えてくれた。
ボスボロットは、大事な部分には鉄板を使用しているがその大部分はブリキでできており、しかも武器らしい武器は装備しておらず・・・・いや、装備に耐えず為に戦闘においてはそのバカ力とボスたちの創意工夫のみに頼っているため、機械獣に簡単にあしらわれることが多く破壊されることもしばしばであった。しかしボスのそもそもの目的はさやかの手助けであり、その目的は十二分に果たしていたといえよう。基本燃料はハイオクガソリンであるが、その燃料費は専らボス以下三人組のアルバイトによる捻出であったそうである。折からの石油ショックによりガソリンが高くなったため、お金に関してはけっこうがめつくなり、光子力研究所の雪掻きにアルバイト料を強要したり、ドクター=ヘル軍団の大破した戦車を屑鉄屋に売り払おうとしたりしていた。また、非道い時にはジェットパイルダーから光子力エネルギーをかっぱらったことさえあった。グレートマジンガー時代のことになるが、熱病を発生させるトカゲが街に繁殖した時には偶然海水が特効薬になることを発見して、「トカゲごろし」なる製品を作って一儲けしようと目論んだこともある。
また、ボロットに空を飛ばせることに異様なまでに執念を見せ、何度となく飛行を挑戦し続ける。中にはやはりジェットスクランダーをかっぱらったこともあったが。なお、ボスの名誉の為に一つ付け加えるなら、光子力エネルギーかっぱらいもジェットスクランダーかっぱらいも、その首謀者はムチャで、ボスはどちらかと云うとそれに押し切られた形で尻馬に乗った感が強い。新兵器開発にも余念がなく、頻繁に珍奇な新兵器をひっさげて事態を攪乱することも多かった。
先の、甲児の家が爆破され甲児が光子力研究所に移り住むようになると、甲児とさやかの急接近を危ぶみ光子力研究所に忍び込み夜な夜なさやかの部屋の周囲を徘徊するようになる。それはさやかに見つかって間もなく取り止めとなるが、それでも不安は尽きなかったらしく、自分のいとこのみさとをお手伝いさんとして光子力研究所に送り込み、甲児とさやかの間を裂こうと躍起になる。このボスの目論見はかなり成功したといって良く、甲児は美人でおしとやかなみさとに首ったけになっていった。
折から戦局は、ミケーネ闇の帝王の先遣隊・ゴーゴン大公の参戦により大混戦を呈して来た。ゴーゴン大公の妖機械獣はマジンガーZをも大苦戦せしむる程の戦力を有し、ボスの操るボスボロットも更なる悪戦苦闘を強いられることとなる。だが、持ち前の破天荒な行動から、劣勢なりにも強敵相手に大健闘を果たしていたと言って良いだけの実績を残しており、マグレながらもサーペンターT6を倒したのを筆頭に、ブラッキーF2を、そして海中で罠に陥ったマジンガーZを救助するなどその活躍には枚挙に暇ない。
昭和49年7月24日、予言者に扮した兜剣造より暗黒大将軍の侵攻を告げられ、そしてボス以下三人組は誰よりも先んじてグレートマジンガーを目撃することになる。第一次攻撃にはいつもの如く敵に翻弄されて終わってしまったが、続く第二次攻撃においてはマジンガーZ救出のためロケットで空を飛び、戦闘獣軍団の中でも特に戦闘能力の高いと思われるダンテを見事に討ち果たした。直後倒され、一発芸に終わってしまったが、この時見せたボスの勇気と義侠心は賞賛に値しよう。そうしてドクター=ヘルとの戦いは終局に向かって突き進み、グールにおびき出されて地獄島で捕われた甲児の救出に力を尽くし、続く地獄島の総攻撃にも参戦してドクター=ヘル撃滅に貢献した。
だが、昭和49年9月1日、力を使い果たした光子力研究所とマジンガーZにミケーネ帝国が本格的に襲い掛かってきた。マジンガーZの露払いにボスボロットとダイアナンAが出動するが、戦闘獣の圧倒的な強さにボロットもダイアナンもたちまち戦闘不能に追い込まれてしまう。そして今度ばかりは頼みの綱であった鉄の城・マジンガーZすらも敗れ去り、絶望の中、新たな魔神・グレートマジンガーが参戦して戦闘獣を打ち倒す。ボスとさやかは怪我を負いながらもなんとか光子力研究所の所員に救出されるが、甲児は行方不明となってしまった。
行方不明になっていた甲児は科学要塞研究所に収容されていた。手術を受け一命を取り留めた甲児は療養を兼ね、さやかと共にアメリカへ留学する。その留守の後託を甲児に誓うボス。ボスはそれまでのアジトから科学要塞研究所近くの漁港の廃ドックに移り住み、以後科学要塞研究所の連中よりも早くミケーネの戦闘獣を倒せるようにと見張るようになる。恐らく学校へはこの時以来行かなくなったものと考えられる。
ところでボスはどうしたものか、ひと目見た時から炎ジュンにベタ惚れして、さやかから鞍替えしたのかジュンを追い掛け回すようになった。曰く、「さやかより美人!さやかよりグラマー!!」なんだそうな。しかし、大嫌いな剣鉄也と張り合う為にもジュンのビューナスAの協力が必要との打算的な目算も密かにはあったようだ。以前はさやか一筋だったものが、その他にも遭難者に化けたヤヌス侯爵の色香に迷ったことも。
グレート時代のボスの行動には、甲児への男の友情が根本にあったようである。グレートマジンガーが格好良く活躍することは、マジンガーZが無用だと云われているように映ったのであろう。甲児と共に闘いを駆け抜け、甲児のそれまでの苦闘を知るボスにはそれは耐えられないことだった。なればこそ、ミケーネ戦闘獣を倒すのはグレートではなく、Zと闘いを共にした自分でなければならないと思いつめたものであろう。また、たった一人の肉親と別れ独りぼっちになったシローの面倒を何くれとなく見ていたのも、甲児への友情からだった。シローにせがまれると請われるままに特訓をしてあげたり、凧を作ったりと、将に良き兄貴ぶりだった。
戦闘においても、シローがロボットジュニアにのるようになるとその指導をしたりジュンの危機を様々に救ったりと、結果的にはグレートの手助けをすることとなっていった。オンボロロボットと敵味方から嘲られていた割には時々驚異的な活躍を示すことがあり、イレギュラー的存在として両陣営の作戦計画を狂わす存在であったといえよう。また、鉄也との対立はさておき研究所の危機には必ず馳せ参じ、またはその補修に協力したりと、男気溢れる行動をとっているうちに何時の間にやらすっかり科学要塞研究所側にあてにされるようになってしまい、協力を依頼されることが多くなってゆく。そして鉄也との関係も、激しい戦闘の中反目しあいながらも共闘してゆくうちに友情めいたものが生まれるようになっていき、特に鉄也の方では最初すっかりボスをバカにしきっていたものが、後には戦闘を任せきるなどの信任ぶりを示すようになってゆく。
昭和50年9月、兜甲児とマジンガーZが帰還し戦線復帰。ボスはその帰りを狂喜する。だが、ダブルマジンガーの戦力に恐怖を覚えたミケーネ帝国側は総力戦を決意、戦局は最終決戦へと雪崩れ込んで行った。その戦闘の最中、鉄也は気勢を先ぜられ戦闘獣の攻撃を受けて重傷を負ってしまう。その瀕死の鉄也を助けるため兜剣造は研究所の管制室ごと体当たりを敢行し、還らぬ人となってしまった。父・剣造の敵討ちの為、そしてグレート戦闘不能の今最大の戦力を有する者の務めとしてデモニカと雌雄を決する甲児とマジンガーZ。が、マジンガーZにも限界が近づきつつあった。メカの加熱でオーバーヒートを起こし、先に倒れるのはマジンガーZかと危惧される中、救援に向かうジュン・さやか・ボス。しかし、眼下に更に力なく苦戦している鉄也のグレートマジンガーを見た時、ボスは甲児の救援を置いてまで今まで反目していた鉄也の救助に走るのだった。恐らく自分が真っ先に甲児の危難に駆けつけたかったろうに・・・・・・・自分の為に死んでいった剣造のために戦場へ向かわんとする鉄也の思いを受け、もはや自力で飛行出来なくなったグレートを助走をつけ投げ飛ばして空を飛ばせ、戦場へ送り込む。男・ボスの面目ここに極まれりといったところで、この時のボスこそは甲児にも鉄也にも、そして後のデュークにも増して最高に格好いいといって過言でなかろう。
終戦後、ダブルマジンガーとダイアナン・ビューナスは富士山麓はロボット科学博物館に納められることとなった。が、ボスとボスボロットはそのまま伊豆半島の漁港の廃ドックに居残ったようだ。ロボット博士を目指して勉強していたと言う。しかし、後の行動を見るに、どうやらその勉強というのは独学だったらしく、しかも主にボスボロットのパワーアップと新兵器開発に明け暮れていたようだ。それがロボット博士の勉強になるのかどうか甚だ疑問ではあるが・・・・・
ミケーネ撃滅後、幾許も無くしてベガ星連合軍による侵略戦争が勃発し、兜甲児はその前線で闘うこととなる。だが、戦線拡大を防ぐためと、戦争の鍵を握る超合金NZの守秘のためダブルマジンガーとダイアナン・ビューナスはその一切の戦闘行為の参加を見合わされることとなった。地球規模でダブルマジンガーの守秘作戦が展開される中、当初ボスにはその事実は知らされていなかったようである。それはボスの過去の行跡から考えるに、ベガ星連合軍との戦争を知れば以前と同じく戦闘に割って入ることが容易に想像され、ひいてはボスボロット→ダブルマジンガー→光子力研究所のラインが繋がり、守秘作戦が破綻することを上層部が懸念した為と思われる。だが、「地球人類の良心」として地球最大の戦力としてグレンダイザーの護衛の任に就いた兜甲児は、その任ゆえに光子力研究所および科学要塞研究所関係者、そして唯一の肉親のシローとすら交流・音信を絶たざるを得なくなったであろうことは想像に難くない。そんな中で唯一ボスたち三人組だけが両研究所とは直接関わりないことが逆に幸いして、多少の手紙のやりとりなどが許されたものであろう。ベガ星連合軍との戦争の最中、昭和51年1月、八ヶ岳の甲児の元に遊びにやってきて、円盤獣と一戦交える。その時、グレンダイザーとも邂逅を果たすこととなった。その後も甲児との手紙のやりとりがあったようで、昭和51年4月、ブラッキーとの死闘でTFOを喪い、かつ新円盤の設計も上手くいかない甲児より弱音を見せた手紙が届いている。甲児にとってはボスは弱みも見せられる親友として認識していた証であろう。だが、ボスたちにとっては甲児は希望の星であり、ずっと輝きつづけてほしいという思いを抱いており、甲児を励ますためにボロットを改造して貸し渡そうと考えた。前後、ベガ星連合軍諜報員は甲児の身辺調査をしていたようだが、両者の手紙の交流からかボスのアジトを突き止め、ボロットの存在を地球の新兵器と勘違いしてその破壊に乗り出す。昭和51年5月、再びシラカバ牧場にやって来たボスは新兵器・ボススペイザーを引っさげて甲児にボロットを渡し、グレンダイザーとともに円盤獣撃退に力を示した。そしてデュークフリードとともに地球の平和を守ることを約し帰っていった。

炎ジュン

生年月日 昭和32年4月〜8月頃
血液型   不明
身長    165p
体重    50s

昭和32年4月〜8月頃、黒人を父に、日本人を母に持って出生。
両親のことはともによく伝わっていないが、確実なところでは父は国外にいたようであり戦争で死んだという。種々の文献から勘案するに、ジュンの父は駐日米国軍人かと思われ、時期的に考えてベトナム戦争で死亡したと考えられる。父も母もジュンが幼少の頃死亡したようである。
両親死亡後は孤児院に入っていた。混血児で肌の色が他の子たちと違っていたことから、小さい頃は周囲の子供たちに虐められていたようである。しかし、同じ施設の生田信一郎だけはジュンと仲が良く、川に溺れたジュンを助けたことが知られている。この出来事は虐められてばかりだったジュンにはとても嬉しかったらしく、後にまで大事に信一郎の写真を首飾りのロケットに入れていたことから考えて、彼がジュンの初恋だったのかもしれない。
やがて、支援ロボットの操縦者を探していた兜剣造の目に止まり、剣造に引き取られることになる。昭和43年の後半頃のことである。そこでジュンは厳しい特訓に耐えてパイロットとしての修練を積んでゆく。一歳違いの剣鉄也とは同じ境遇からか兄妹のように育って絆を深めてゆく。
異伝ではあるが、中学生時代のジュンは喧嘩ばかりしていた女番長だったとか。しかし、厳しい中にも愛情を注いでくれた剣造のことは父親のように思っていたようであり、その世界平和の悲願に協力するようになる。
当初は鉄也と同じく明神島で過ごしたと思われ、マジンガーZがドクター=ヘルの野望を阻止するため立ち上がった時もまだ戦闘態勢の整わない彼らは暫し静観し、ジュンも特訓に励んでいたことと思われる。昭和48年には科学要塞研究所が完成すると、そこへ移り住んだものと考えられる。
昭和49年9月1日、マジンガーZがミケーネ帝国に敗れるといよいよ科学要塞研究所が戦闘に乗り出す。
甲児・さやかが戦いで傷ついた身を休めるため暫しアメリカへ留学すると、その留守を鉄也とともに守ることとなるが、兄がアメリカに渡り、独りぼっちとなり寂しがっている兜シローを見て、科学要塞研究所へ引き取ることを提案した。恐らくは唯一の肉親と別れて孤児となったシローの姿に、昔の自分の姿を重ね合わせたものであろう。そしてジュンは、そんなシローの姉となろうと決心してシローの引き取りを申し出たものに違いない。事実、以後ジュンは姉の如くシローの世話をするようになる。そして昭和49年9月22日には、待望のジュンの専用機・ビューナスAが完成すると、グレートマジンガーのサポートとして善くミケーネの侵略を防ぎ善戦する。また、戦線が富士の裾野から伊豆へと移ると同時に、ボス・ムチャ・ヌケの三人も科学要塞研究所近くに移り住むようになるが、美人でグラマーなジュンにボスは一目ぼれして以後ジュンを追い掛け回すようになる。だが、ジュンはボスにはあまり興味はなかったようで、割と素っ気ない態度に終始していた。余談ではあるがジュンのバストサイズは87p、お風呂では足からまず洗うそうである。
幼い頃肌の色のことで周囲から虐められたことはジュンに相当の心的外傷を残したようであり、思い悩むことが多々あったようである。あるいは異聞にせよ、中学時代にグレていたということが伝わっているのもそのためだったのかも知れない。そんな中、鉄也は「肌の色の違いなんか問題ではない」と言い切るが、戦闘のパートナーとしての鉄也の発言に反発し、一人の女性として傷ついたジュンは戦闘を放棄する。そんなジュンを救ったのはボスの言葉と近隣の牧師の諭しだった。「戦えない人たちの代表として自分が闘っている・・・・」その自分の存在意義に気付いたジュンはコンプレックスを克服し以後も戦闘を続ける。そんなジュンの姿に、剣造は「青春に真っ赤に燃えているあの夕陽こそお前の色なのだ」と心でエールを贈る。
昭和50年2月23日、ビューナススクランダーが完成してビューナスAが空を飛べるようになるとその戦闘力は益々高まり、万能要塞ミケロスをグレートとともに駆逐するなど戦いに大いに貢献する。グレートマジンガーの支援としての役割をよくこなし、鉄也のピンチを度々救うなどその功績は計り知れないものがあるのだが、肝心の鉄也はその重要性や感謝の念には薄く時として喧嘩することもあった。しかし幼い頃からいっしょに育って鉄也のことをよく知悉するジュンは、鉄也の支えになることを決して忘れず戦場でサポートし続ける。それは愛とか恋と言うよりは、同じ寂しさを共有し合って苦楽をともにした同志のような結びつきであったと云えよう。但し、一方ではジュンは鉄也に異性としての想いも感じてはいたようだ。時には恋人のように、そして姉のように母のように、妹のようにとジュンは鉄也の傍らで彼を支え続けて行く。
また、この戦いの中剣造とシローはようやく父子の名乗りを上げられ、その二人にジュンは心から祝福をしている。自分の父のような存在の剣造と、同じく弟のように可愛がっていたシローに漸くにして訪れた幸せに目頭を熱くさせていたようだ。
戦いは激化してゆき、ゴーゴン大公が死に、暗黒大将軍が倒れ、それを補うように新幹部ヤヌス侯爵、地獄大元帥が現れる。また、万能要塞ミケロス撃滅後はそれに換わる無敵要塞デモニカが投入されてきた。マジンガーZ譲りの光子力ビームと、初期のマジンガーZに迫る戦闘力を持ってグレートマジンガーをサポートしつづけてきたビューナスAではあったが、敵の大攻勢の前には最早力不足は否めなくなってきた。また、肝心のグレート自身も、敵戦闘獣のパワーアップの前に徐々に押されていった感は拭えなくなってきている。それでもなんとか火山島基地をグレート・ボロット・ロボットジュニアとともに打ち滅ぼすことには成功するが、戦いを好転させるべく科学要塞研究所はグレートブースターを開発した。
一方、そんな戦いの中、ジュンのかつての幼馴染であった生田信一郎は、暴走族として無為な日々を送っていた。昔、川に溺れた自分を助けてくれたほどに真っ直ぐな心を持っていた信一郎の変わり果てた姿にジュンは少々失望する。信一郎の奮起を期待してジュンはきつく信一郎に叱咤する。だが、鉄也の前では昔の想い出の中の男の子であった信一郎のことをついつい庇うような言動も見せた。
だが、信一郎はジュンの言葉に反発を憶えたものか、「剣鉄也よりでっかいことを成し遂げてみせる」とばかりに、ミケーネ帝国との和平を策するのだった。闇の帝王は、そんな信一郎の甘さを利用して戦闘獣に仕立て上げ、ジュンと鉄也の矛先を鈍らせようと信一郎=戦闘獣ゲルニカスを戦闘に押し立ててきた。利用され、自分に時限爆弾が仕掛けられていることを知った信一郎は、デモニカに少しでも被害を与えようとして爆死してゆく。その急ぎすぎた人生に、ジュンは涙する。あるいは自分と再会さえしなければ、信一郎はこんなことにはならなかったのではとの思いを抱いて・・・・・。
昭和50年9月、ミケーネ帝国との最終決戦が近づき、激戦の中科学要塞研究所絶体絶命の危機が到来する。その危機を救ったのはマジンガーZだった。ミケーネ戦闘獣の強化に伴って、もうグレートのパートナーとしては役不足となっていたジュンは、素直に鉄也の為に「力強いパートナー・マジンガーZ」の出現を喜ぶ。だが、鉄也と甲児の間には微妙に隙間が差してきた。甲児の帰国歓迎会にそっと会場を抜け出す鉄也に、ジュンは同じ「行き場のない者」として管制室でそっと付き添う。
「あたしたちにはここがお似合いの場所なのかもね」
暖かな家庭からはみ出したように感じて焦りを募らせていく鉄也に対し諌めながらも、しかし決定的に反対できない「孤児の寂しさ」を自分も抱えていることにジュンは気付いていた。だが、ジュンが鉄也ほどには取り乱さなかったのは自分の居る場所を知っていたからなのかも知れない。ジュンにとっては随分と前から鉄也の傍こそが「自分の居る場所」だったのではないだろうか。本来は甲児の出現によって「戦闘員」としての地位をもっとも脅かされたのは鉄也ではなくジュンだったのであるから・・・・・。
鉄也と甲児の橋渡しになろうと、甲児のピンチに鉄也のかわりにグレートマンモスに立ち向かうビューナスだが、しかしミケーネ最強の戦闘獣の前には最早ビューナスAが敵うべくもなく、善戦空しくジュンは返り討ちにあってしまう。しかし、ジュンの助力でマジンガーZにドッキングすることに成功した甲児は、なんとか五分の戦いを展開してゆく。折から、シローの言葉で自分の心の狭さを恥じた鉄也は、甲児救出に出撃するがその出鼻を挫かれ重傷を負ってしまう。そのグレートに止めを刺そうとデモニカは向きを変えてグレートに迫る。グレートの危機を救ったのは剣造だった。管制室ごとデモニカに特攻を掛けて、剣造は甲児の手の中で息を引き取る。デモニカは甲児が追討し、死亡した剣造をジュンは光子力研究所に収容する。自らにとっても父のような存在だった剣造の死に涙するジュン。そしてミケーネの息の根を止めるべくジュンはさやかと共に出撃してゆく。グレート救出をボスに任せてZに尽力するビューナス。やがて戦場にグレートも到着して、四体のロボットの合同攻撃により、ついにデモニカは爆発四散する。
闘い終わり重傷を負った鉄也は入院する。その傍らで鉄也を励ますジュン。
「鉄也、あなたはどんな苦しみにも耐えて来た人じゃない。再起するのよ・・・絶対に」
鉄也は昭和51年4月までは確実に入院していたことが突き止められているが、ジュンもその看病に当っていたことであろうと思われる。その間世情はベガ星連合軍による地球侵略戦争が始まっていたが、鉄也もジュンも参戦することはなかった。それは、鉄也の療養ももちろんその理由の一つではあるが、それ以上に対ベガ星連合軍戦の戦略として、補給基地である光子力研究所の守秘にあったものであろう。しかし、ジュン個人としてはやはり鉄也の看護が一番の優先ごとだったのであろう。
野史によれば、鉄也は復帰後は新科学要塞研究所を建設し、その所長を務めたということである。恐らくジュンはその補佐を務めたことであろう。その頃の逸話として、鉄也が再起した時、二人は剣造の葬られている教会を訪れ鉄也全快の報告を天国の剣造にしたという。そして、鉄也は自分を支えつづけてくれたジュンに対して心から感謝を述べたと謂う・・・・・・・・・・
あの不器用な鉄也をして、「俺のかけがえのないパートナーだ」と言わしめるほどに、二人は固く結ばれたようである。