登場人物一覧あ行

あ          ん

あしゅら男爵

生年月日 紀元前1300年代か?
血液型   なし
身長    180p
体重    65s

紀元前1600年代からペロポネソス半島に移住してきたというアカイア人は、文明紀元前1450年頃にはミノア文明にかわってエーゲ海の支配権を手にしたという。ミケーネの地を中心に栄えた彼らの文明は後の世に「ミケーネ文明」と名づけられている。
のちに「あしゅら男爵」となった二人は、そのミケーネ王国の絶頂期に生まれたということである。
国内は平和に治まっており、ギリシャ随一の大国として発展していたミケーネ王国で、「あしゅら男爵」貴族夫婦は、権力をほしいままにして人民を苦しめていたという。そして、その死後は貴族の葬送によってミイラにされ、死体はバードス島に安置されていた。
そして幾星霜ーーーーーーーーーー。
いくつもの文明が興隆し、また、衰退していく歴史を繰り返し、人類は20世紀を迎えていた。そして人類史上未曾有の戦争となった第二次世界大戦が終わって7年後の1952年(昭和27年)、古代のミケーネの遺跡調査にある科学者調査一団がバードス島を訪れた。やがて調査団は地下遺跡の中から、伝説のミケーネ巨人ロボットを発見した。調査団は、その巨人ロボットを復元することとした。
そして、巨人ロボットの復元が完了した昭和30年。調査団の団長であったヘル博士(ドクター・ヘル)は、このミケーネ巨人ロボットを利用して世界を己が膝下に納めんことを発起、他の調査団員を殺害した。ただ一人、兜十蔵博士がこの惨事から逃れ去っていった。ドクター・ヘルは、ミケーネ帝国の先遣隊であるゴーゴン大公と世界征服の盟約を交わし、世界征服に乗り出すための準備を開始した。協力者としてドクター・ヘルに生き返らせてもらったナチス残党のブロッケン伯爵が、軍団の編成に乗り出す。そしてドクター。ヘルは、バードス島を一大要塞にすべく、さらに地下遺跡を掘り進めていった。
その発掘作業の中、落盤事故が発生した。落石で、地下の底深くに眠っていたミケーネ王国時代の二体のミイラの遺体は、こなごなになってしまった。ミイラのそれぞれ半身が無事だったのを見てドクター・ヘルは、己が腹心とすべく二体のミイラの遺体のそれぞれ無事な半身を繋ぎ合わせ、サイボーグ手術を施して蘇生させた。時に昭和35年ーーー、それこそが男と女の体を持つ怪人「あしゅら男爵」の誕生だった。
あしゅら男爵の頭部には男と女の脳が半分ずつ設置されており、その体組織のほとんどは人工物のようである。また、体内には記憶用超小型コンピューターがとりつけられている。変身能力も有しており、いろいろな女性に変身が可能である。そして、ヘルの命令に服従させる為に、首輪はヘルの合図で絞まるようになっている。実際、あしゅら男爵はドクター・ヘルに絶対服従していたわけではなく、隙あらば自分がヘルにとって代ろうと、虎視眈々と狙っていたということである。
あしゅら男爵は、当初はヨーロッパ地区を担当していたようである。ヨーロッパの暗黒街で恐れられていた存在だったという。おそらくは、ヨーロッパでは、軍資金の調達を主な任務として経財界に喰い込んでいったのであろう。配下に鉄仮面軍団を擁して、あしゅら男爵は着々と勢力を扶植していった。
昭和46年頃には、ドクター・ヘルの地下帝国の陣容はほぼ整えられてきた。いよいよドクター・ヘルが本格的に世界に牙を剥く日が近づいてきた! あしゅら男爵は、ヨーロッパ地区担当から日本地区担当になり、ドクター・ヘルより兜十蔵博士の抹殺指令を受ける。ドクター・ヘルより、海底要塞サルードと機械獣を与えられてあしゅら男爵は、富士山麓の青木原の兜家の別荘を急襲して兜十蔵博士の抹殺に成功する。昭和47年12月3日のことである。そして別荘の廃墟の中から、ミネルバXの設計図を盗み出したのだった。
首尾よく兜十蔵博士を抹殺したあしゅら男爵は、夢のエネルギーと云われる光子力エネルギーとその原料であるジャパニウム鉱石の確保を狙って、機械獣を差し向けて光子力研究所の占拠を図る。だが、そこへ邪魔立てが入った。それは兜十蔵博士が密かに建造していたマジンガーZと、彼の孫・兜甲児だった。マジンガーZの戦闘力は驚異的で、甲児の操縦の不慣れにも係わらず、あしゅら軍団の機械獣を打ち倒す。
この予期せぬ敵の出現に驚愕したのは、あしゅら男爵のみではなかった。ドクター・ヘルも、自身の機械獣軍団を無力化したマジンガーZの出現に驚萎した。だが、あしゅら男爵は先の戦闘で、まだマジンガーZの操縦者が操縦不慣れであることを見抜いて、今のうちに猛攻を加えることを進言する。その進言を受けてドクター・ヘルはあしゅら男爵に新機械獣グロマゼンR9を遣わして、マジンガーZ撃滅を命じた。強力なイオン光線で、まずアフロダイAを葬ったグロマゼンR9だったが、しかし、マジンガーZの性能のまえには敗れ去ってしまう。
気を良くしていた甲児と光子力研究所の面々の前に、あしゅら男爵はドクター・ヘルにかわってマジンガーZの放棄と全世界の征服を宣言・通告、そして、次なる挑戦が始まった。だが、その度にマジンガーZに機械獣は倒され、度重なる敗戦にあしゅら男爵は、ドクター・ヘルに死を願い出た。しかしその懇願はドクター・ヘルに却下される。世界征服が完了するまで死ぬことは許さない、悪知恵の限りを尽くしてマジンガーZを倒せというのがあしゅら男爵に与えられた言葉だった。
その言葉を受け、あしゅら男爵は再び戦闘の采配を取る。ある時は挟み撃ちを策し、ある時は市民を煽動して光子力研究所閉鎖を画すなど、マジンガーZをあわやというところまで幾度も追い詰めるのだが、しかしその度に、甲児の闘志や光子力研究所の知恵の前に敵わず敗れていく。
だが、ドクター・ヘルはその敗戦を研究し続け、マジンガーZが海に弱いことを見抜いてきた。あしゅら男爵は、グロッサムX2を差し向けてマジンガーZに襲い掛かる。しかし、かねてからマジンガーZが海に弱いことを危惧していた弓博士は、アメリカのロケット工学の権威・ゴードン博士とともにマジンガーZを改造して、海でも活動できるようにしたのだった。マジンガーが海中活動が可能になったことにあしゅら男爵は戦慄する。だが、ドクター・ヘルは、次は空からとばかりに闘志を新たにしてきた。その空からの猛攻の一環として、あしゅら男爵自身も機械獣に乗り込んでマジンガーZに挑戦するが、ダイマーU5も惜敗してしまう。命からがら逃れたあしゅら男爵だったが、ドクター・ヘルはあしゅら男爵が無事であったことをことさらに喜んでみせる。あるいはそれはヘルの懐柔作戦だったのかもしれないが、あしゅら男爵はヘルのその言葉に感激したようである。
連敗が続いたとはいえ、空からの攻撃はマジンガーZに対してかなり有効だった。後一歩というところまで何度も追い詰められた光子力研究所の弓博士は、密かにマジンガーZに空を飛べるようにするパーツを開発していた。それを察知したドクター・ヘルの命によりあしゅら男爵は、飛行機を打ち落とし、乗客を人質にとって弓博士にジェットスクランダーの設計図の引渡しを迫って、見事に奪取に成功したのだった。しかし、弓博士の殺害という重大事を逃して詰めを誤ったために、光子力研究所の弓博士はジェットスクランダーを完成させた。
ジェットスクランダーの実戦投入により、空の覇権もいまやマジンガーZに奪われたあしゅら軍団。敗北が重なるにつれ、あしゅら男爵はドクター・ヘルの信頼を失っていった。ヘルは、あしゅら男爵をマジンガーZ攻撃司令官から外して、参謀のブロッケン伯爵に委任することを決意した。、それを知ったあしゅら男爵は、最後のチャンスをもらってマジンガーZに挑みかかる。地震を誘発させることができるザリガンG8を使って、東京に大地震を起こして、マジンガーZを海に誘い出す作戦だ。まんまと苦手な海へ引きずりこまれてマジンガーZはサルードに閉じ込められる。マジンガーZを上手く捕獲したあしゅら男爵は、ザリガンG8に命じてマジンガーZの処刑を始める。しかし、弓博士とさやかの大地震予防のためのエネルギー照射により、サルード近辺の海域に地震が発生した。そのチャンスを捉えたマジンガーZは、ザリガンG8を葬り去り、海の要塞サルードをも壊滅させた。時に昭和48年8月26日。サルードを失ったあしゅら男爵はほうほうの体で、バードス島へと逃げ帰った。
バードス島では、サルードを失ったあしゅら男爵に成り代わり、飛行要塞グールを与えられたブロッケン伯爵がマジンガーZ攻撃司令官に任命された。ここにあしゅら男爵の地下帝国における権力は大きく低下した。指揮権をブロッケン伯爵に奪われたあしゅら男爵は、ブロッケン伯爵の作戦行動を横目に穏忍自重させられる。自分の地位の低下と、ドクター・ヘルの恩寵がブロッケン伯爵に移ったことの焦りからか、あしゅら男爵はヘルへの忠誠度は以前と比べて格段に高くなったといえよう。
そんな、切歯扼腕していたあしゅら男爵を、ドクター・ヘルはまだ見捨て去ったわけではなかった。即ち、昭和48年9月30日、サルードに代わる新海底要塞ブードがあしゅら男爵に与えられたのだ。その恩顧に感激したあしゅら男爵は、以前にも増してドクター・ヘルに忠勤を励む。だが、マジンガーZ攻撃司令官の地位は、ブロッケン伯爵と兼任する形となり、いきおい、ブロッケン伯爵との功名争いが激化するようになった。そのため、あしゅら男爵はブロッケン伯爵を毛嫌いして、ブロッケン伯爵をこそ不倶戴天の敵と目すようになる。そして、それこそはドクター・ヘルの意図するところであった。あしゅら男爵とブロッケン伯爵、その両輪をいがみ合わせて持てる能力を搾り出させてマジンガー撃滅に力を尽くさせるのが狙いだったのだ。
しかし、その二人のいがみ合いは、かえって作戦の齟齬をきたすようになってゆく。昭和48年12月、ドクター・ヘルはあしゅら男爵とブロッケン伯爵に共同作戦を命じて、あしゅら男爵にマジンガーZを引き付けて捕獲させた。首尾良くマジンガーZを捕えたあしゅら男爵ではあったが、その隙にとドクター・ヘルとブロッケン伯爵がブードで光子力研究所の制圧を果たすと、あしゅら男爵は光子力研究所制圧の栄光の瞬間に自分が居合わせないのを不服として、折角マジンガーZを捕獲しておきながら、その監視を放棄して大挙光子力研究所へと駒を進めてしまった。
果たせるかな、マジンガーZはその間に脱出を果たして、アフロダイAやボスボロットと協力して、機械獣や光子力研究所を占拠していた鉄仮面・鉄十字軍団を蹴散らした。ヘル以下あしゅら、ブロッケンはほうほうの体で研究所を放棄して、バードス島へと逃げ帰る。
このあしゅら男爵の失策は、自身の重大な岐路となった。あしゅらの抜け駆けから光子力研究所の制圧に失敗したドクター・ヘルは激怒して、あしゅら男爵を地下牢に幽閉して、処刑せんと決意するに至った。だが、あしゅら男爵の哀願により、一命は助けおくことにしたのだった。
しかし、以後のあしゅら男爵は最早以前とは違って、決してヘル軍団の主力としては扱われることはなくなった。失意のあしゅら男爵に与えられた任務は、対マジンガー戦の華々しい舞台ではなく、前線基地の建設であった。遠いバードス島からでは充分な采配がとれないと判断したドクター・ヘルは、日本の伊豆七島の附近・地獄島と呼ばれる無人島に基地を設けることを考えたのだ。ブロッケン伯爵のあわや光子力研究所制圧という善戦を横目に、あしゅら男爵は焦燥しながらも前線基地を完成させた。それを地獄城と謂う。幸いにも、ブロッケン伯爵の作戦は失敗したため、地獄城は無駄にならずにすんだ。そして、ヘル以下あしゅら、ブロッケンとその軍団はバードス島の地下帝国を引き払い本格的にその地を本拠として構える。
前線の移動により、光子力研究所との戦いは今までより更に激化していった。
だが、あしゅら、ブロッケンの善戦空しく、マジンガーZはアイアンカッターやドリルミサイルといった新兵器を引っさげてドクター・ヘルの挑戦を悉く退けていった。その戦闘の長期化に伴い、ドクター・ヘルは焦りを生じるようになり、遂には独力での世界征服を断念するに至り、以前に世界征服後の共同統治を誓い合ったゴーゴン大公に援軍要請を出す。あしゅら男爵はその使者としてヘルの親書をゴーゴン大公に捧げ、協力要請をする。ヘル、あしゅらの懇願を飲んでゴーゴン大公はいよいよ動き出した。ゴーゴン大公の妖機械獣を借り受けたあしゅら男爵は、そのグシオスβVを指揮して、たちまちマジンガーZのホバーパイルダーを溶かしてしまい戦闘不能に陥れる。マジンガーZにかくも打撃を与えたこの戦果は確かに快挙と呼ぶにふさわしかった。だが、光子力研究所側もすぐに巻き返しを図り、新パイルダーを繰り出し、新武器に出力増強、更にはジェットスクランダーの速度アップと戦闘力を増強して互角に渡り合ってきた。そしてゴーゴン大公指揮の元、アフロダイAの破壊に成功するものの、光子力研究所制圧に勇むゴーゴン大公を牽制しようと、あしゅら男爵はヘルの密命を受けて、光子力研究所制圧の為の戦車軍を進めた。だが、怒りに燃える甲児の前に制圧軍は蹴散らされるのだった。
また、甲児が暴走族との乱闘から怪我を負った時には、さながら伝言ゲームのような誇張した情報となり、あしゅら男爵は「兜甲児が死んだ」とゴーゴン大公を煽動して軍を起こさせた。結局は、誤報からまたしてもマジンガーZにしてやられるのだが、ブロッケンともども機械獣を持たぬまま、ゴーゴン大公にいいように使われることには相当の鬱積はあったようである。
そんな中、久しぶりにドクター・ヘルが自陣の機械獣を押し立ててきた。指揮するはブロッケン伯爵である。だが、作戦途中にマジンガーZと交戦状態に陥り、ブロッケン伯爵は胴体を切られるという重傷を負って退却してきた。作戦の引継ぎを命ぜられたあしゅら男爵は、グールに乗り込み鉄十字軍団を指揮することとなった。グールの代行指揮者であるあしゅら男爵は、グールに愛着などあろうはずもなく、無茶な命令を連発する。そして、作戦は失敗して、グールは大爆発を起こし、逃げ帰るも操縦不能に陥り、地獄城に激突してグールと地獄城双方に甚大な損壊をもたらしてしまった。その愚行に、ドクター・ヘルは嘲りの眼差しを向け、ブロッケン伯爵も憎悪を向けてきた。だが、事態はそれに留まらなかった。あしゅら男爵のグール損壊に憤怒した一部の鉄十字軍団員は、あしゅら男爵こそは獅子心中の虫と目して、あしゅら男爵暗殺を策した。だが、陥ちたりとはいえ、鉄十字軍団員こどきはあしゅら男爵の敵ではなかった。あしゅら男爵は鉄十字軍団員を返り討ちにする。しかし、もはや地獄城に自分の居場所はないことを悟ったあしゅら男爵は、ブードで鉄仮面軍団とともに地獄城を脱出し、ゴーゴン大公を頼る。
あしゅら男爵の決死の懇願により、ゴーゴン大公は妖機械獣・エレファンスγ3を貸し与えた。名誉と意地を賭けて、あしゅら男爵は最後の戦いに挑む。マジンガーZを海底におびき出して、ブードで特攻をかけるあしゅら男爵。その隙にエレファンスγ3が光子力研究所を襲う。そのあしゅら男爵の死を賭した戦いには、さすがのドクター・ヘルも、そしてライバルのブロッケン伯爵も胸を打たれる。そして、足止めが適わないと悟ったあしゅら男爵は、ブードごとマジンガーZに突っ込み、自爆させる。海中からゴーゴン大公によりすくい上げられたあしゅら男爵は、マジンガーZを倒したことを信じきって、ゴーゴン大公の手の中で逝った。
「ドクター・ヘルに伝えてください、あしゅらは最後まで勇敢に戦ったとーーー」
それが、あしゅら男爵の最期の言葉であった。昭和49年5月26日のことであった。
死後、あしゅら男爵は軍神として奉られる。そして、その死は皮肉にも、地獄城の内部抗争を止めさせ、兵士たちの心をひとつにさせたのだった。


暗黒大将軍

生年月日 紀元前1200年代か?
血液型   不明
身長   35m
体重   480t

紀元前1100年代頃、暗黒大将軍の前身となった人物は、ミケーネ文明圏のアレス王国の将軍だったということである。このアレス王国がどこの場所にあったものであるか分明の限りではないのだが、ギリシャ神話にあらわれるアレス神の本拠地とされるトラキア、あるいは、アレス神の後裔の国とされるテーバイ、もしくは黒海にあったというアレス島あたりがこれに比定できようか?
この国において彼は「鬼将軍」と称されていたとのことで、軍紀厳しく武勇の誉れ高い将軍だったことと推察される。だが、このアレス王国はやがて“闇の帝王”と名乗る怪人物に攻め寄せられ、滅ぼされてしまう。この戦いにおいて「彼」は最も勇敢に闇の帝王に抵抗して、そして敗れて殺されたということである。だが、その勇敢な戦い振りは闇の帝王の目に留まり、闇の帝王は「彼」の勇武を惜しんで戦闘獣に改造して蘇えらせた。それこそが「暗黒大将軍」だったのである。蘇えった暗黒大将軍は闇の帝王に忠誠を誓い、その配下として行動することとなった。
当初の暗黒大将軍は人間大の大きさであり、同じく等身大の戦闘兵を指揮していたようである。そして、闇の帝王の世界征服の野望をかなえるためにその命令により、当時随一の大国だったミケーネ王国を攻める。暗黒大将軍は破竹の勢いでミケーネ王国を滅ぼし、国王は打ち殺し、王子のケルビニウスを捕える。また、この戦いで勇敢な抵抗を示した七人のミケーネ王国の勇者たちは、その実力を見込んで指揮官ロボットへと改造して己が配下とした。それがユリシーザー、ライガーン、ドレイドウ、バーダラー、ハーディアス、スカラベス、アンゴラスの七大将軍である。そして、ミケーネ王国の臣民たちはサイボークへと改造して、ミケーネスとして雑役に従事させることとした。こうして、ミケーネ帝国が樹立したのだ。
暗黒大将軍は、軍事面での最高指揮官として事実上軍政面の全てを取り仕切ることとなる。彼の権限の及ばないところは諜報軍のみであり、諜報軍長官のアルゴスとは犬猿の仲だったという。
世界全土の制覇を目指す闇の帝王の命令により、暗黒大将軍はロードス島を一大ロボット戦闘員工場にして、戦闘獣を製造させてゆく。だが、ミケーネ帝国の世界征服の野望は意外なところから齟齬をきたす。それがギリシャ全土を襲った大地震だ。闇の帝王は早くからこのことがあることを予測していて、一族以下優秀な人材のみを選りすぐって巨大な円盤型カプセルに乗り込んで地下深くに潜行したというが、地下に逃れ去った彼らを待つものもまた艱苦の世界だった。ミケーネ帝国は、地底に人工太陽を作り豊富な地下資源を利用して科学食料を合成したりして生き延びていたというが、かつて地上を席捲した科学力をもってしても、最初の1000年ほどは食料を維持したりの生活必需品の確保に精一杯だったという。やがて、食糧確保という難事が解決すると、ようやくにしてミケーネ帝国は今度は地上への帰還を目論むようになる。
しかし、永らく食料確保などにその科学力を傾け過ぎて、肝心の軍事力は弱体していることに気付いた彼らは、軍事力の再建に力を注ぎ始めた。かつて地上に君臨していた時に無敵を誇った軍事用ロボットを、更に研究して強力で巨大なロボットに仕立て上げたのだ。そしてそれはそれぞれの能力を特化した七大軍団を形成していくこととなる。その過程で、暗黒大将軍自身も体を巨大化したようである。
暗黒大将軍は、戦闘獣としてもミケーネ帝国最強の力を持ち、剣はその長さ20メートル、一振りすると風速120メートルの風を巻き起こし、5メートル以上の鋼鉄を断ち切る能力を持ち、グレート=ブーメランやマジンガー=ブレードをもへし折る力を持っている。また、剣にはエネルギーを吸収する力があり、サンダー=ブレークをも無力化する。そして口からは5万度の高熱の炎の竜巻を吐き、重さは10トンのそのマントは、バリアーとしても機能し、ネーブル=ミサイルをものともしないということである。目から5万度の高熱線を発射し、馬力はグレートマジンガー以上。ライバルのアルゴス長官すらもこの暗黒大将軍の戦闘力には遠く及ばないということである。
その戦闘力を背景に七大軍団をまとめ上げた暗黒大将軍は、虎視眈々と地上進出を目論む。だが、今度は慎重な闇の帝王は、即時の地上侵攻は認めなかった。闇の帝王は地上の状況を探ることを諜報軍に命じ、諜報軍スパイ長のゴーゴン大公を地上に派遣して、地上調査及びロードス島のロボット工場の回収を命ずる。そこでゴーゴン大公は、ロードス島においてドクターヘルと出会うのだ。同じく世界征服を企むドクターヘルに対し、闇の帝王は諜報軍の意見を採り上げて暫し静観することにした。そして、暗黒大将軍の地上侵攻は控えさせられることとなったのだ。
その間に課せられた暗黒大将軍の任務は、戦闘獣軍団の更なる拡充に尽きるであろう。そして、昭和47年12月、ドクターヘルの世界征服戦争が開始されたが、当初の計画どおりにヘルをミケーネ帝国の走狗とすべく、積極的な介入は一切手控えられた。
だが、ドクターヘルの野望は「鉄の城・マジンガーZ」に阻まれてしまう。ドクターヘル率いる機械獣軍団はマジンガーZに次々と薙ぎ倒されていったのだ。その恐るべき戦闘能力の前に、ドクターヘルもついに音を上げてゴーゴン大公へ協力を依頼してきたのだった。
ドクターヘルとマジンガーZの共倒れを願っていた闇の帝王は、旗色の悪くなったヘルに梃入れすべく、諜報軍の先遣隊であるゴーゴン大公にドクターヘルの協力をさせることとした。ゴーゴン大公は手持ちの「妖機械獣」を駆使してマジンガーZに挑んでゆく。
しかし、その間暗黒大将軍はいわば「爪弾き状態」に置かれており、諜報軍が探り当てた情報も知らされていないような按配だった。ゴーゴンの妖機械獣もことごとく惜敗し、ドクターヘルも疲弊しきった状態になり、ようやく闇の帝王は世界の主要都市の壊滅を暗黒大将軍に命じたのだった。
昭和49年7月24日、暗黒大将軍は勇躍して世界の各都市を戦闘獣に襲わせた。そして各都市に壊滅的打撃を与えるのだった。しかし、ゴーゴン大公が攻撃を受け持った東京だけはマジンガーZに阻まれて、ゴーゴンに貸し与えた四体の戦闘獣も失う始末であった。暗黒大将軍は、ゴーゴン大公がマジンガーZの存在を戦闘部門の長である自分に告げなかったことを責め、激怒する。そしてマジンガーZに報復せんと、今度は自分の副官の獣魔将軍をマジンガーZ討伐隊の司令官に任じて、襲わせた。ゴーゴンの駆使していた妖機械獣より更に強力な七つの軍団配下の戦闘獣は、マジンガーZを圧倒していき、マジンガーZを追い詰める。だが突如現れた謎のロボット(グレートマジンガー)に阻まれて、獣魔将軍以下の戦闘獣軍団は全滅の憂き目を見るのだった。
己が片腕だった獣魔将軍を討ち取られ、怒り心頭の暗黒大将軍は雌雄を決することを望むが、闇の帝王は、ドクターヘルの最後の悪足掻きを利用しようと待ち、両虎を噛み合わせる目算で、暗黒大将軍を待機させる。そして、ドクターヘルの必死の戦いにより、昭和49年8月25日、ヘル自身は死亡するも、マジンガーZにも甚大な被害を負わすことに成功する。
地上制圧に唯一の障壁となるマジンガーZが傷つきボロボロになっていることを掴んだゴーゴン大公は、闇の帝王についに地上侵攻の機が来たことを注進する。その報告を受けた闇の帝王は、本格的な地上侵攻を暗黒大将軍に号令する。昭和49年9月1日、ミケーネ帝国はついに立ち上がったのだ。闇の帝王の命を受けた暗黒大将軍は、戦闘獣グラトニオスとビラニアスを派遣、両戦闘獣は見事にマジンガーZを破る。だが、マジンガーZ絶体絶命の危機に立ち上がった者がいた。その名はグレートマジンガー。この新たな魔神の前に、グラトニオスとビラニアスは敗れ去る。
謎のロボット・グレートマジンガーにより野望を阻まれ、暗黒大将軍はその正体を先ず探るべくアルゴス長官に要請する。しかし、マジンガーZに代わる敵の出現に激怒した闇の帝王に叱責され、暗黒大将軍は諜報軍の報告を待たず、再度の出撃を命ぜられた。今度は万能要塞ミケロスまでを出動させての戦いである。戦闘獣バルバリとオベリウスが暴れまわり、両戦闘獣は首尾よくグレートマジンガーを誘い出す。だが、グレートの戦闘力の前に、またもミケーネ側は敗北を喫する。
しかし、この戦いにより、敵の名前が「グレートマジンガー」であることを暗黒大将軍は知る。暗黒大将軍は七大将軍に向け、グレートマジンガー打倒の檄を飛ばす。
地上制覇に最大の障壁となるグレートマジンガーと科学要塞研究所の打倒に向けて、暗黒大将軍は七大将軍を使って挑戦を繰り返す。だが、戦いはその都度、グレートマジンガーに敗れるという始末だった。その間、ライバルのアルゴス長官は、ビューナスAの発進基地や科学要塞研究所の発見をするなど、殊勲を重ねてゆく。暗黒大将軍はわずかに科学要塞研究所の責任者が兜剣造であることを突き止めるのみで、諜報軍が闇の帝王より賛辞を受けるのとは対照的に、軍事的に失敗を続ける七大軍団に帝王の叱責が続く。
部下の度重なる敗戦に業を煮やした暗黒大将軍は自ら陣頭に立つことを決意する。すなわち、戦闘獣ビーコンクとギロニアンを東京に派遣して、グレートマジンガーとビューナスAを釘付けとして、自身はミケロスで留守の科学要塞研究所を強襲したのだ。その猛攻の前に科学要塞研究所は転覆寸前まで追い詰められ、危険を察した科学要塞研究所所長の兜剣造は、所員の避難を命じて一人研究所に残るのだった。だが、脱出者をそのまま見逃す暗黒大将軍ではなかった。大将軍の号令で次々と脱出艇が爆破されてゆく。そして、客員として招かれていてグレートマジンガーの改造にも大いに功績のあった飛田博士も、同乗のシローを庇って焼死する。そして、飛田博士の仇討ちを目指すボロットとシローをミケロス内に捕えて暗黒大将軍は兜剣造に降伏を勧告した。ボロットとシローを人質に取られた兜剣造は遂に降伏を受諾するのだった。だが、投降する剣造がミケロスに収容される前に、危急を知ったグレートが戦闘獣を倒して取って返してきた。科学要塞研究所を攻め落とすことに集中していた暗黒大将軍とミケロス搭乗員たちは、グレートの襲来に気付かずあと一歩とまで科学要塞研究所を追い詰めながらもグレートの反撃に遭い、ミケロスに中破を被って撤退を余儀なくされた。十中八九まで勝利を目前にしながら作戦が失敗したことに暗黒大将軍は激怒する。
だが、科学要塞研究所に大打撃を与えたことを知悉する暗黒大将軍は、科学要塞研究所が立ち直る暇を与えずに次なる攻撃指令を下す。科学要塞研究所追撃を買って出たのはユリシーザー将軍だ。ユリシーザー将軍は、ハーキュリーズを放ってミケロスとの挟撃により、瀕死の科学要塞研究所をさらに窮地に追い込む。だが、科学要塞研究所やグレートの必死の反撃の前にミケロスも少なからず打撃を受けて、ユリシーザー将軍は軍を引き返した。その不徹底な攻撃に暗黒大将軍は怒りを下す。曰く、「あれだけ科学要塞研究所を追い込んで、かつミケロスも痛手を負ったのであればかまわずミケロスを自爆させてでも止めを刺すべき」というものだ。要塞ミケロスの温存に囚われずに、攻撃すべきときには犠牲をいとわず攻めることを暗黒大将軍は諭す。そして、科学要塞研究所が体制を立て直すその前に再度の攻撃を指示するのだが、作戦を開始したその時は既に時を逸し、頽勢を挽回した科学要塞研究所の前にトカゲ地獄作戦は失敗に帰す。続く、元ミケーネ王国王子・ケルビニウス偽誘によるグレートへのぶつけ合いも、ケルビニウスの敗北に終わった。
科学要塞研究所の攻略が遅々として進まないことに苛立ちを覚え始めたアルゴス長官と暗黒大将軍は、これまでの作戦の失敗を互いの不実の責任として詰り合う。そんな姿を怒る闇の帝王は、この二幹部に一致協力して事に当たることを命じた。闇の帝王の命令の前に、暗黒大将軍も、アルゴス長官も共闘して戦うことを誓い合う。しかし、七大軍団と諜報部の協力にも関わらず、優勢なはずの戦局は天佑に助けられたグレートマジンガーの前に崩れ去る。以後も数度に亘って暗黒大将軍はグレートと干戈を交えるのだが、戦いは利有らず、敗戦が続く。その不甲斐なさに、ついに闇の帝王の怒りが爆発した。その凄まじいばかりの怒りを前に暗黒大将軍もついに我を折った。戦闘を有利に進めていくためにはどうしても前線基地が必要と考えた暗黒大将軍は面子を捨てて、諜報部のアルゴス長官に協力を依頼するのだった。自分の力を認めての暗黒大将軍の依頼に、アルゴス長官も過去のいきさつは水に流して七大軍団への助力を誓う。ここにミケーネ二大幹部はようやく一致団結を見る。
暗黒大将軍はアルゴス長官と話し合い
、ゴーゴン大公を新基地建設の責任者に任命した。
マジンガーZとの闘いで示した手腕を期待しての大抜擢だった。だが、ゴーゴン大公の抜擢に嫉妬を抱き、かつゴーゴン大公の俄か成り上がりの傲慢な態度に業を煮やしたアンゴラス・ユリシーザー両将軍は、ゴーゴン大公に面従腹背の態度をもって対した。そして、ゴーゴンを出し抜いてグレートに闘いを挑み、ゴーゴンの立場を潰そうと謀るのだった。この二将軍の背反行為により、ゴーゴン大公は戦死に至った。だがゴーゴンはその死の直前火山島基地建設を見事果たす。闇の帝王は、ゴーゴンを出し抜こうとして抜け駆けしたアンゴラス・ユリシーザーの二将軍を裏切者として厳罰に処して幽閉する。
この二将軍の背反行為は、暗黒大将軍の立場をも微妙なものにした。すなわち、大功を果たし死にゆくゴーゴン大公に味方した闇の帝王は、つかの間ではあれゴーゴン大公を基地司令官に任じたのだ。そしてゴーゴン没後たちまちにして空位になった火山島司令官の座は、引き続き諜報部が占めることとなりアルゴス長官の部下のヤヌス公爵が務めることとなったのだ。これにより、戦闘の
指令系統は諜報軍が主導することとなり、暗黒大将軍の指揮権は大いに削られてしまった。
だが、暗黒大将軍は黙って諜報軍に屈したわけではなかった。
七大軍団の勢威を回復するためにも、闇の帝王の不興を買って幽閉されていたアンゴラス・ユリシーザー両将軍を暗黒大将軍は頼み込んで罪を許してもらい、将軍位に復させる。だが、それ以上の挽回は難しく、暗黒大将軍は屈辱を飲んで七大軍団を、諜報部の火山島基地司令官の隷属に甘んじてでも少しずつ功を積んで励んで、闇の帝王の憶えを目出度くする他なかったのだ。しかしそれすらも、功の独占欲を剥き出しにする諜報郡の心無い仕打ちのために部下の将軍たちの不満は募り、かつ作戦は齟齬を来たしつつあった。倣岸に振舞う諜報軍への反感と、部下の七大将軍に功のない状態にしびれを切らした暗黒大将軍は、ついに不退転の決意を闇の帝王に示して、自らが陣頭に立って科学要塞研究所に総攻撃を仕掛けることを決意した。指揮権の奪取を目指して、科学要塞研究所の攻略ならないときには生きて帰らぬ覚悟での出撃だった。
暗黒大将軍は、先ずは真っ先に科学要塞研究所の新兵器サンダービームロケット砲を、そしてグレートマジンガーを戦闘不能に陥れた。そうして攻撃力を奪っておいてから牙を失った科学要塞研究所に猛攻を掛け、科学要塞研究所を壊滅寸前にまで追い込む。頃や善しと、暗黒大将軍は兜剣造に科学要塞研究所の明け渡しを要求し、かつグレートマジンガーも併せて引き渡すことを要求する。戦闘能力を奪われ、抗戦継続し難しと悟った兜剣造は、遂に降伏を受諾する。だが引渡しの直前、降伏を拒否する剣鉄也により、グレートマジンガーは奪い返されてミケロスにも打撃を受けて、暗黒大将軍は一時後退する。グレートはジュランに足止めをさせ、その間にミケロスの修理を急いで一方ではバニガンにビューナスAとボスボロットの合流を阻ませる。
しかしやがてジュランを葬ったグレートはバニンガンをも破る。暗黒大将軍は完成したばかりのダンザニアを出撃させてグレートに深手を負わすのだが、そのダンザニアもグレートの前には敵しえず二つに斬り倒された。グレートが大きな傷を負ったことを見届けた暗黒大将軍は、いまこそグレートに止めを刺さんとして打って出てきた! 大将軍自らの出馬にヤヌス公爵は引き止めるのだが、暗黒大将軍は
「ここぞという時にやらなくて何時戦う時がある!」
と制止を振り切ってグレートに迫る。その心意気に打たれたヤヌス公爵は、今はとばかりに暗黒大将軍を全面的に協力し科学要塞研究所にミサイルを撃ちまくる。そして鉄也は
「やつにだけは後ろをみせたくない」
と、兜剣造の帰還命令を無視して満身創痍のグレートマジンガーで暗黒大将軍に立ち向かう。
戦端が開かれてから半年余、遂に両雄が直接激突する日が来たのだ!!
二雄の激闘は、将に天を裂き大地を揺るがすという形容が相応しい戦いだった。必殺技と必殺技の応酬で、腕を裂き、足が砕ける戦いが繰り広げられる中、両雄は確実に互いの戦闘力を相殺していった。そして、お互い最後の一閃をと揮った剣は、遂にグレートを動かなくせしめ、かつ暗黒大将軍は腹部の真の顔には深々とマジンガーブレードを受けていた。その瞬間、暗黒大将軍は自分の勝利を確信した。そして自分の死期も同時に訪れてきたことを確信した暗黒大将軍は、ヤヌス公爵の救援部隊の派遣を断る。
「今の俺に必要なのは地獄の
責苦にも耐え得る勇者の歌だ」
そう高笑いした暗黒大将軍の哄笑は、やがて苦悶のうめきに変ずる。真の顔に剣を受けた
暗黒大将軍の身体は徐々に亀裂が走り・・・やがて崩れ伏したと見えるや大爆発を起こす。
時に昭和50年4月6日、一代の勇将・
暗黒大将軍の最期だった。
暗黒大将軍の死に、ライバルの鉄也は道を違えどもその勇敢さを褒め称え、闇の帝王は片腕と恃んだ彼の死を悼んだのだった・・・。

宇門源蔵

生年月日 大正14年6月16日〜10月12日の間
血液型   A型
身長    174p
体重    69s

大正14年6月16日〜10月12日の間に生まれる。詳しい前半生は伝わっていない。だが、源蔵が生まれた世相もまた、激動の昭和前期に重なり合う不幸な世代でもある。
世は軍靴の響く時代へと移行してゆき、源蔵が12歳のころには泥沼の日中戦争が、そして16歳のころからはアメリカと太平洋戦争が勃発している。食料物資も不足しがちなそんな世の中で、源蔵は育っていった。恐らくは、普通に尋常小学校を出て、中学校、高等学校、そして帝国大学へと進んでいったものではないだろうか?
昭和18年10月、いわゆる学徒動員が発っせられた。もちろん、この学徒動員は全ての学生が戦場に送られたわけではなく、主に法文系の学生が戦争に従事したものであり、理系の学生は概ね22〜3歳までは猶予されていたという。源蔵は後年天文学や宇宙開発にその志を向けていることから見ると、恐らくは高等学校では理系だったのであろう。そのため、終戦を迎える昭和20年当時でようやく20歳ぐらいになった源蔵はあの悪夢のような太平洋戦争には参加を免れたものと考える。
但し、同じ学窓の先輩たちや法文系の学生たちは戦争に従事させられているはずで、源蔵はそんな彼らを見送りながら申し訳なさと寂寥を感じながら歯を食いしばって学業に就いていたのではないだろうか。
やがて戦争が終わると、源蔵は引き続き大学で学問を修め、そして卒業してからも大学院などに残って主に天文学などの学業を続けたことであろう。あるいは。この時期長野県附近で天体観測のために赴任していて牧葉団兵衛と知り合いになったものかもしれない。
源蔵は研究一筋に生きてきて、女性にも目もくれずに結婚はしなかったそうである。昭和29年前後には海外に留学して世界的に著名なシュバイラー博士について学問を修めたようである。
昭和43年頃には、友人の牧葉団兵衛と共同出資で「シラカバ牧場」を開設する。そしてこの頃には既に宇宙科学研究所も開設していたものであろう。その宇宙科学研究所は世界一の電波望遠鏡を装備するなど、世界でも有数の天文台であったようだ。
しかし、源蔵は「宇宙人実在説」を唱えていたため、学会では相手にされていなかったそうである。あるいは団兵衛が「宇宙人と仲良くなる会」の会長を名乗るようになったのも、源蔵の影響が大きかったのかもしれない。
パチンコが趣味だったという。

昭和49年2月頃、源蔵は八ヶ岳に墜落する未確認飛行物体をキャッチする。現場に急行する源蔵はそこで、UFOロボグレンダイザーとフリード星から亡命してきたデュークフリードという青年に出会う。源蔵は大怪我を負っていたデュークを助け、グレンダイザーを宇宙科学研究所に収容した。デュークの傷は相当に深かったらしく、暫らくは重態だったようである。そして源蔵はその病床の中のデュークから、フリード星がベガ星に滅ぼされたこと、父母もみな死んでしまったこと、そしてグレンダイザーを使って地球に逃れてきたことを知る。
本来ならばデュークの存在は、源蔵が永年唱えていて受け入れられなかった「宇宙人実在説」を証明する格好の証拠だった。だが、源蔵はこの不幸な身の上の青年を世間に晒すには偲びず、周囲にはとうとう彼の秘密を喋らなかった。そして、デュークの回復を待ち、彼を自分の息子として「宇門大介」という名を与えて、一人の地球人として余生を送らせようとした。恐らくは昭和50年の春ごろからリハビリを兼ねてシラカバ牧場に働かせるようにしたものであろう。
団兵衛には、「外国にいた時に出来ていた子で、最近になってようやくそのことを知った。母親は死んだので自分が今度引き取ることにした」という形ででも紹介したのであろう。また、彼を「一人の地球人」として幸せに暮らせるようにと、戸籍上も偽証して「実子」として作ったのではないかと考えられる。
本当の血の繋がりはなくても、源蔵は大介を実の息子のように遇した。それは、研究一筋に生きてきて妻子を持たなかった源蔵の自分の人生を振り返った時、もう一つの可能性とでもいうべき幸せの形だったのかもしれない。
だが、この「平凡な父親」としての幸福を噛みしめる時間は少なかった。
昭和50年10月、宇宙人実在を信じる一人の青年・兜甲児が、「宇宙人実在説」を唱えていた源蔵の高名を慕って研究所にやって来た。源蔵はこの若者の意欲的な研究熱に動かされて客員として迎え入れることを決定する。その甲児の「地球開港論」に源蔵は大いに興味をそそられたようだ。だが、源蔵は外宇宙には友好的な宇宙人ばかりではないことも知っていた。特に、甲児が目撃したというUFOは、大介の話に聞いたベガ星のものと考えられたからだ。果たして、フリード星を滅ぼしたベガ大王の率いるベガ星連合軍は、銀河系の完全制覇を目指していよいよ地球侵略を開始してきたのだ。
源蔵は大介を戦わせたくはなかった。だが、甲児の危機を前に遂に大介はデュークフリードへと戻って、グレンダイザーを起動させたのだった。助けられた甲児は、グレンダイザーのパイロットが大介であることを知って彼の正体を探る。そんな甲児にもう隠し立ては出来ないと悟った大介と源蔵は、大介の秘密を打ち明ける。事態の重大さを知った甲児はマジンガーZでの参戦を願い出たと思われるが、この対ベガ星連合軍との戦いは源蔵一人の手におえるものではなく、光子力研究所の弓教授と、国防軍も交えて協議が為されたものであろう。その結果、戦いの拡充を防ぐためと、戦いに必要な超合金NZの補給その他のために光子力研究所とマジンガーZの参戦は見送られてグレンダイザーのみでの防衛が決定されたようである。
この時から宇宙科学研究所は国家の援助を受けるようになり、平行して源蔵は研究所の要塞化を開始する。一方で、戦いの激化を予想して源蔵はグレンダイザーの動力である光量子と光量子エンジンの研究を本格的に始める。
また、グレンダイザーの基地としての宇宙科学研究所の存在を知られないようにと、附近の地下洞穴を利用して発射口として秘密ルートを作り上げた。
だが、そんな戦いとは別に源蔵は本来の夢であった「宇宙開発」もけっして疎かにはしていなかった。3年後には宇宙船が発着できる基地となるような宇宙ステーションの建造を夢見て、ロケットを打ち上げる。しかし、ベガ星連合軍はこの源蔵の計画を危険視して一挙に宇宙科学研究所を占拠してきた。
なんとかブラツキー以下の兵団を打ち破るダイザーだったが、源蔵は自分の夢であった「宇宙開発」を進めるにはベガ星連合軍を排除してからでないと叶わないことを痛感する。そしてその夢はひとまず預けておいて、今はベガ星連合軍の撲滅が急務と、以後対ベガ星連合軍戦に全知全能を傾ける。
折から、先の大戦でTFOを失った甲児はTFOに替わる新兵器の開発に余念がなかった。甲児は、ダイザーと共闘できるというコンセプトの戦闘機の建造を考え、源蔵に相談してくる。源蔵は、かねてより研究していた光量子エンジンの技術を投入して甲児と共同開発でダブルスペイザーを完成させた。もちろん光子力研究所の協力と技術供与もあってのことであろう。この頃から宇宙科学研究所には人員が増え、恐らくは国家より技術者が大勢回されてきたのであろう。
また、新しく開発したダブルスペイザーは期待以上の戦果を挙げ、源蔵は更なる新スペイザーの開発を検討し始める。それがマリンスペイザー・ドリルスペイザーである。ひかるを戦闘員に迎え、マリンスペイザーの完成とともにグレンダイザーチームの結成がなる。
しかし、ダブルスペイザー・マリンスペイザーを保有して公然とベガ星連合軍と戦う宇宙科学研究所は、もはやはっきりとベガ星連合軍の標的となった。ベガ星連合軍は宇宙科学研究所に大攻勢をかけてくる。その攻撃の前にとうとう宇宙科学研究所は破壊される。だが、かねてから宇宙科学研究所を要塞化してきた源蔵は、研究所を戦いの基地にすることに悩みながらも遂に瓦礫の中から新・宇宙科学研究所をセットアップさせる。
この新宇宙科学研究所は非常に堅固な要塞で、ついに最後の決戦に至るまでさしたる被害も被らないままベガ星連合軍の攻撃を寄せ付けなかったほどである。
昭和51年8月ごろには地中で活動できるドリルスペイザーが完成する。源蔵はこのドリルスペイザーの操縦を甲児に兼任してもらうことにした。しかし、9月、死んだと思われていた大介の妹のマリアが生きていて地球に逃れていたことがわかり、大介の強い希望によりマリアをダイザーチームに向かい入れることとした。源蔵はマリアの親代わりとしても接するようになる。
ベガ星連合軍は、本星を失って月のスカルムーンに本拠地を移すようになると、明らかにその戦術を変えてきた。新兵器のベガ獣の投入、そして地球上への基地の建設等等。源蔵は新たな戦いの局面を迎えて、監視衛星のスペースアイを打ち上げて、国際会議を招集して地球上の全世界が協力一致してベガ星連合軍と戦うことを提案する。今はスイスに住む恩師シュバイラー博士にも相談して源蔵は国際会議に臨む。ところが、この計画はズリル長官の姦計により、崩れ去った。ズリル長官は源蔵の恩師・シュバイラー博士に扮装して、源蔵が世界征服の野望に取り付かれて宇宙人と結託しているという濡れ衣を着せてくる。元々、学会では非主流だった源蔵と、世界的に高名なシュバイラー博士との戦いはあからさまに源蔵に不利で、会議はボイコットされスペースアイは国防軍の手で撃ち落されることになってしまった。本物のシュバイラー博士が救出され巻き返しを図るが、それはもう後の祭りだった。
一般の人々には永らくベガ星連合軍やグレンダイザーの存在を極秘にしてきた国防軍と新宇宙科学研究所ではあったが、ズリルの東京爆破計画を期にこれらの秘密はようやく一般公開されたようである。恐らくは政府の広報を通じて発表されたものであろう。源蔵の責務は益々大きくなったといえよう。それに応えるかのように新宇宙科学研究所では深海用アタッチメント・ウルトラサブマリンや、宇宙用のコズモスペシャルを建造してゆく。
大介・甲児・ひかる・マリアの活躍によって、ベガ星連合軍は壊滅した。放射能で汚染されたはずのフリード星も今は星自身の生命力により復活しつつあるという。ベガ星連合軍を滅ぼした大介は故郷を復興させるべくフリード星に戻ることを決意する。その決意を止めるわけにはいかない源蔵は星へ還る大介を見送る。それは息子の巣立ちの日だった。